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クロス×ストーリー(通常運転のイベントもの多め)
勝負のバレンタイン-詩音×久遠-
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『一緒に買い物に行かない?』
そんな電話がかかってきたのは、つい昨日のことだ。
「詩音」
「久遠、久しぶり」
久遠は前に会ったときよりもおしゃれをしているような気がして、思わずじっと見てしまう。
「詩音、どうかした?」
「あ...ごめんなさい。可愛いなって思ったんだ」
不快な思いをさせてしまったんじゃないだろうか...そう思うと、1番はじめに出てきたのは謝罪の言葉だった。
長く友人を作ってこなかったからか、どうしても接し方が分からなくなってしまう。
「チョコレートの材料ならこっちにあると思うよ」
「どうして...」
「この時期にお出掛けなんて、きっとそうなんじゃないかって思ったんだ」
久遠は人の気持ちを察するのが上手い。
いつだって私がやりたいことを先回りして予測してしまえるその力は、きっと彼女にしかないものだ。
「久遠は誰かと一緒に作るの?」
「多分お母さんと、かな。でも、最近お母さん忙しそうだから...詩音は?」
「私は1人でやる予定」
独りだからそうなる、なんて話してしまったらきっと気を遣わせてしまう。
どうしてもそれが嫌で、つい予定なんて言葉を付け加えてしまった。
できれば嘘は吐きたくないけれど、こればっかりは隠すしかない。
(今年は何を作ろうかな...)
「去年は何か作った?」
「う、ウィスキーボンボンと生チョコ。久遠は?」
「...久遠?」
もしかして具合が悪いんじゃないかと不安になって隣に視線を向けると、突然がしっと両手を握られる。
「ウィスキーボンボンなんて作ったことがない...本格的ですごいね!」
「そ、そうかな?因みに久遠は何を作ったの?」
「フォンダンショコラ。去年はずっと部屋に引きこもっていたから、大翔が来てくれた日に渡したよ」
「フォンダンショコラの方が本格的なような気が...」
久遠は眩しすぎるくらいの笑顔で、とても楽しそうに話してくれる。
「今年はもう少し日持ちしそうなもので、あとデートしたいなって思うんだ。...ずっと気遣わせてばかりだから」
「きっと久遠の気持ちはちゃんと伝わるよ。...私はデートは無理そうだけど、何とか渡したい。
保健室登校するのも、その前からもずっと支えてもらっているから」
「それじゃあ、ふたりとも愛情と感謝を沢山こめたチョコレートにしないとね!」
「うん」
久遠のことを少しだけ聞くことができたのはすごく嬉しい。
明るい彼女に何があったのかは分からないけれど、きっと沢山のことを乗り越えてきたのだろう。
「あ、あの...何かリクエストはある?」
「私にも作ってくれるの?」
「と、友チョコ...?みたいな」
「みたいなって、ちゃんと友チョコだよ。
詩音が作ってくれたものならどんなものでも食べてみたいな」
「が、頑張って作ってみる...」
久しぶりの友チョコの約束。
久遠とふたりで話せるのは、すごく楽しい。
どんなチョコレートなら喜んでもらえるだろう...そんなことを考えながら、帰り道を歩き出す。
そんな私の背中を、夕陽が優しく照らしつけていた。
そんな電話がかかってきたのは、つい昨日のことだ。
「詩音」
「久遠、久しぶり」
久遠は前に会ったときよりもおしゃれをしているような気がして、思わずじっと見てしまう。
「詩音、どうかした?」
「あ...ごめんなさい。可愛いなって思ったんだ」
不快な思いをさせてしまったんじゃないだろうか...そう思うと、1番はじめに出てきたのは謝罪の言葉だった。
長く友人を作ってこなかったからか、どうしても接し方が分からなくなってしまう。
「チョコレートの材料ならこっちにあると思うよ」
「どうして...」
「この時期にお出掛けなんて、きっとそうなんじゃないかって思ったんだ」
久遠は人の気持ちを察するのが上手い。
いつだって私がやりたいことを先回りして予測してしまえるその力は、きっと彼女にしかないものだ。
「久遠は誰かと一緒に作るの?」
「多分お母さんと、かな。でも、最近お母さん忙しそうだから...詩音は?」
「私は1人でやる予定」
独りだからそうなる、なんて話してしまったらきっと気を遣わせてしまう。
どうしてもそれが嫌で、つい予定なんて言葉を付け加えてしまった。
できれば嘘は吐きたくないけれど、こればっかりは隠すしかない。
(今年は何を作ろうかな...)
「去年は何か作った?」
「う、ウィスキーボンボンと生チョコ。久遠は?」
「...久遠?」
もしかして具合が悪いんじゃないかと不安になって隣に視線を向けると、突然がしっと両手を握られる。
「ウィスキーボンボンなんて作ったことがない...本格的ですごいね!」
「そ、そうかな?因みに久遠は何を作ったの?」
「フォンダンショコラ。去年はずっと部屋に引きこもっていたから、大翔が来てくれた日に渡したよ」
「フォンダンショコラの方が本格的なような気が...」
久遠は眩しすぎるくらいの笑顔で、とても楽しそうに話してくれる。
「今年はもう少し日持ちしそうなもので、あとデートしたいなって思うんだ。...ずっと気遣わせてばかりだから」
「きっと久遠の気持ちはちゃんと伝わるよ。...私はデートは無理そうだけど、何とか渡したい。
保健室登校するのも、その前からもずっと支えてもらっているから」
「それじゃあ、ふたりとも愛情と感謝を沢山こめたチョコレートにしないとね!」
「うん」
久遠のことを少しだけ聞くことができたのはすごく嬉しい。
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「あ、あの...何かリクエストはある?」
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「と、友チョコ...?みたいな」
「みたいなって、ちゃんと友チョコだよ。
詩音が作ってくれたものならどんなものでも食べてみたいな」
「が、頑張って作ってみる...」
久しぶりの友チョコの約束。
久遠とふたりで話せるのは、すごく楽しい。
どんなチョコレートなら喜んでもらえるだろう...そんなことを考えながら、帰り道を歩き出す。
そんな私の背中を、夕陽が優しく照らしつけていた。
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