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泣かないver.
直接聞く事実
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「悪い、ここからは足場が悪いかもしれない」
「大丈夫だよ、気をつけるから」
流石に何も持っていかないのは失礼になるからと、近くのお店に立ち寄って花束を買って少しだけ急になっている坂道を歩いてのぼる。
「わっ、」
「大丈夫だったか?」
「ごめんね。ありがとう」
「いや、気にするな」
大翔の表情に少しずつ陰がついていくような気がして、何も持っていない方の手を繋ぐ。
彼は驚いたような様子だったけれど、やがて握りかえしてくれて再び歩きはじめた。
そして少し進んだ場所で立ち止まる。
「...ここだ」
「お友だちのお墓なの?」
「兄貴のな。...ただ、俺もよくしてもらったから時々挨拶には来てる」
孤独と悲哀が入り乱れるような瞳から目が離せない。
「ちょっと長くなるけど、話をしてもいいか?」
「勿論だよ」
きっとこの人に関係することで悩みがあるんだ...そのくらいは理解できた。
大翔は言いづらそうに話しはじめる。
「...自殺だったんだ」
「え?」
「この下に眠ってるその人、自殺だったんだ」
一言目があまりにも衝撃的すぎて、何も言葉を発することができない。
ただ立ち尽くしていると、大翔は哀しそうに話を続けた。
「色々あって、限界がきたみたいで...俺は何もできなかった。
...兄貴は今でも後悔してる」
「そう、だったんだ...」
頭が真っ白になって、上手く言葉が出てこない。
そこで大翔は教えてくれた。
「もうずっと前に、なんで自分のカフェを持ちたいか訊かれたことがあったよな?」
「...うん」
前に訊いたときは上手くはぐらかされてしまって、話を聞くことができなかった。
話したくないならと思っていたけれど、ずっと気になっていたことではある。
「色々なことが複雑に絡まりあった理由だ」
よく分からなくて首を傾げていると、丁寧に説明してくれた。
「複雑な思いを抱えて、居場所がない人たちの拠り所にしてもらえるような場所を作りたい。
...ここに来る度、もうすぐ達成してやるって約束してるんだ。この人が生きている頃からの約束だから」
「大翔...」
「死人に縛られてるって思われるかもしれないけど、それでも俺は実現したいと思ってる。
賢くないし、不器用だし、できることは少ないけど...」
それでも、と言葉を詰まらせながら大翔は空に向かって叫んだ。
「絶対に叶えるって、俺が実現してやるって、約束したんだ...!」
拳を握りしめ、そのまま崩れるように膝をつく。
私はただ隣に寄り添うことしかできなくて、下を向いてぽたぽたと涙を流す大翔にハンカチを差し出す。
空は誰かの哀しみを背負っているような真っ赤な色をしていた。
「大丈夫だよ、気をつけるから」
流石に何も持っていかないのは失礼になるからと、近くのお店に立ち寄って花束を買って少しだけ急になっている坂道を歩いてのぼる。
「わっ、」
「大丈夫だったか?」
「ごめんね。ありがとう」
「いや、気にするな」
大翔の表情に少しずつ陰がついていくような気がして、何も持っていない方の手を繋ぐ。
彼は驚いたような様子だったけれど、やがて握りかえしてくれて再び歩きはじめた。
そして少し進んだ場所で立ち止まる。
「...ここだ」
「お友だちのお墓なの?」
「兄貴のな。...ただ、俺もよくしてもらったから時々挨拶には来てる」
孤独と悲哀が入り乱れるような瞳から目が離せない。
「ちょっと長くなるけど、話をしてもいいか?」
「勿論だよ」
きっとこの人に関係することで悩みがあるんだ...そのくらいは理解できた。
大翔は言いづらそうに話しはじめる。
「...自殺だったんだ」
「え?」
「この下に眠ってるその人、自殺だったんだ」
一言目があまりにも衝撃的すぎて、何も言葉を発することができない。
ただ立ち尽くしていると、大翔は哀しそうに話を続けた。
「色々あって、限界がきたみたいで...俺は何もできなかった。
...兄貴は今でも後悔してる」
「そう、だったんだ...」
頭が真っ白になって、上手く言葉が出てこない。
そこで大翔は教えてくれた。
「もうずっと前に、なんで自分のカフェを持ちたいか訊かれたことがあったよな?」
「...うん」
前に訊いたときは上手くはぐらかされてしまって、話を聞くことができなかった。
話したくないならと思っていたけれど、ずっと気になっていたことではある。
「色々なことが複雑に絡まりあった理由だ」
よく分からなくて首を傾げていると、丁寧に説明してくれた。
「複雑な思いを抱えて、居場所がない人たちの拠り所にしてもらえるような場所を作りたい。
...ここに来る度、もうすぐ達成してやるって約束してるんだ。この人が生きている頃からの約束だから」
「大翔...」
「死人に縛られてるって思われるかもしれないけど、それでも俺は実現したいと思ってる。
賢くないし、不器用だし、できることは少ないけど...」
それでも、と言葉を詰まらせながら大翔は空に向かって叫んだ。
「絶対に叶えるって、俺が実現してやるって、約束したんだ...!」
拳を握りしめ、そのまま崩れるように膝をつく。
私はただ隣に寄り添うことしかできなくて、下を向いてぽたぽたと涙を流す大翔にハンカチを差し出す。
空は誰かの哀しみを背負っているような真っ赤な色をしていた。
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