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泣けないver.
疲弊
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今握りしめているお守りは、数日前に優翔からもらったものだ。
『あんまり器用じゃないから綺麗にできなくて...ごめんね』
優翔はそう話していたけれど、私にはその気持ちだけで充分だった。
けれど、私の心は早くも折れかけている。
保健室だけは安全だと思っていたけれど、それはきっと先生や優翔が担任を止めてくれていたからだ。
もし明日からも毎日のように教室に来るように怒鳴られたら、迷惑をかけてしまう。
「...私なんていなくなればいい」
精神的に限界で、ただ泣くことしかできなかった。
どうして私の世界は、いつも試練に溢れているのだろう。
「如月さん、起きて」
「先生...」
「始業式が終わったから、今日の学校はもうおしまいよ。
さっきのことは心配しなくていいから、もう帰りなさい」
私はただ一礼して、その場を急ぎ足で後にする。
早く部屋に閉じ籠りたい、その一心で走り続けた。
「...ただいま、お母さん」
仏壇にそれだけ話して、検索をかけてみることにする。
(学校の名前と、3年前の事件...検索)
それは、決して見てはいけないものだった。
「生徒が自殺...」
記事によるといじめが原因だったらしいけれど、加害生徒としてネットの海に曝されているものを目にして呆然と立ち尽くした。
...私に嫌がらせをしては愉しそうに笑っているボスと、同じ名字だったから。
「...結局何も変わってないんじゃない」
そこそこの権力者で、私のような者では歯が立たない相手。
そして自殺した生徒の物と思われる遺書には、《いいんです、僕が間違っていたんです》の一言。
「沢山苦しんだんだよね...」
気づいたときにはぽたぽたと雫が零れていた。
間違っているのはこの世界なのか、それとも私なのか。
私にはたまたまいい人が側にいて、その人が気づいてくれたからここにいる。
この生徒には家族がいたようだけれど、きっと今の私と同じ...心が孤独だったのだ。
周りに迷惑をかけられない、だから自ら死を選択するしかなかった。
その気持ちは理解できる。理解できてしまう。
(私もあのとき、死ぬべきだったのかな)
明日からどうしようと思うと絶望しかない。
今すぐに実行してしまおうか...そう思うほど、私の心は曲がっていた。
そうして夜まで悩み続けて、けれど答えなんて出るはずもない。
結局、優翔に電話してみることにした。
(泣いて困らせないようにしよう)
声を聞いたら少しはなんとかなるんじゃないか...そう信じてコールをタップする。
2回ほど鳴ったところでぷつっと音がした。
『詩音?どうしたの?』
「優翔...今何かしてた?」
『ううん。テレビを見ていただけ。今日から学校だったでしょ?...大丈夫?』
その言葉だけで、枯れたと思っていた涙がぼろぼろと零れてしまった。
困らせてしまう前に何か答えないと...そう思った瞬間、向こう側から優しい声と短い息づかいが耳にはいった。
『これから詩音の家に行く。...直接会って話そう』
『あんまり器用じゃないから綺麗にできなくて...ごめんね』
優翔はそう話していたけれど、私にはその気持ちだけで充分だった。
けれど、私の心は早くも折れかけている。
保健室だけは安全だと思っていたけれど、それはきっと先生や優翔が担任を止めてくれていたからだ。
もし明日からも毎日のように教室に来るように怒鳴られたら、迷惑をかけてしまう。
「...私なんていなくなればいい」
精神的に限界で、ただ泣くことしかできなかった。
どうして私の世界は、いつも試練に溢れているのだろう。
「如月さん、起きて」
「先生...」
「始業式が終わったから、今日の学校はもうおしまいよ。
さっきのことは心配しなくていいから、もう帰りなさい」
私はただ一礼して、その場を急ぎ足で後にする。
早く部屋に閉じ籠りたい、その一心で走り続けた。
「...ただいま、お母さん」
仏壇にそれだけ話して、検索をかけてみることにする。
(学校の名前と、3年前の事件...検索)
それは、決して見てはいけないものだった。
「生徒が自殺...」
記事によるといじめが原因だったらしいけれど、加害生徒としてネットの海に曝されているものを目にして呆然と立ち尽くした。
...私に嫌がらせをしては愉しそうに笑っているボスと、同じ名字だったから。
「...結局何も変わってないんじゃない」
そこそこの権力者で、私のような者では歯が立たない相手。
そして自殺した生徒の物と思われる遺書には、《いいんです、僕が間違っていたんです》の一言。
「沢山苦しんだんだよね...」
気づいたときにはぽたぽたと雫が零れていた。
間違っているのはこの世界なのか、それとも私なのか。
私にはたまたまいい人が側にいて、その人が気づいてくれたからここにいる。
この生徒には家族がいたようだけれど、きっと今の私と同じ...心が孤独だったのだ。
周りに迷惑をかけられない、だから自ら死を選択するしかなかった。
その気持ちは理解できる。理解できてしまう。
(私もあのとき、死ぬべきだったのかな)
明日からどうしようと思うと絶望しかない。
今すぐに実行してしまおうか...そう思うほど、私の心は曲がっていた。
そうして夜まで悩み続けて、けれど答えなんて出るはずもない。
結局、優翔に電話してみることにした。
(泣いて困らせないようにしよう)
声を聞いたら少しはなんとかなるんじゃないか...そう信じてコールをタップする。
2回ほど鳴ったところでぷつっと音がした。
『詩音?どうしたの?』
「優翔...今何かしてた?」
『ううん。テレビを見ていただけ。今日から学校だったでしょ?...大丈夫?』
その言葉だけで、枯れたと思っていた涙がぼろぼろと零れてしまった。
困らせてしまう前に何か答えないと...そう思った瞬間、向こう側から優しい声と短い息づかいが耳にはいった。
『これから詩音の家に行く。...直接会って話そう』
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