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泣けないver.
突然の訪問 優翔side
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朝、お揃いで買ったお守りを見つめる。
「...これじゃあ駄目なのに」
そんな言葉が漏れてしまうほど、僕は会いたくて仕方ない。
この関係になる前なら連絡してすぐに会いに行けた。
だが、今は事情が事情だ。
気分を変えようと大翔の部屋に行こうとして足を止める。
もしかすると久遠さんがいるかもしれないのに、そんなことをしてもいいのだろうか。
「...何か作ろうかな」
独り呟いた言葉は、天井に吸いこまれて消えていった。
──そして、それから1時間後。
「...?はい、今開けます」
インターホンが鳴らされ、カフェエプロンをしたまま玄関へと向かう。
そこには、今1番会いたかった人物が立っていた。
「どうしたの、詩音」
「ごめんなさい。来ちゃいけないと思いつつ、どうしても我慢できなくて...」
そうか、詩音も同じだったのか。
謝り倒す彼女を止め、そのまま部屋に招き入れる。
「大丈夫だよ。本当は僕も会いたくて仕方なかったから」
「優翔...」
人に見つからないかひやひやすることはある。
だが、僕たちはもうただの恋人同士だ。
会うのに誰かの許可が必要なわけではないし、本来なら非難されるような理由もない...はず。
「丁度これからお昼だったんだけど、一緒に食べない?」
「実は何も食べずに来ちゃったから、それはありがたい」
こうしてふたりで話すのも、これから少しだけ訪れるであろうふたりだけの時間も...本当に楽しくて仕方がない。
「いただきます」
「いただきます」
ふたりして両手をあわせ、黙々と食べはじめる。
独りで食べるよりずっと美味しいご飯は、あっという間に完食してしまった。
「ごめん、少なかったかな?」
「ううん。...すごく美味しかったよ」
「それならよかった。次は何をしようか」
「あの、食器を洗うのを手伝わせてほしいな...」
詩音のお願いは可愛らしくて、僕はただそうしようと答えた。
「それじゃあエプロンは...これを使って」
渡したのは、ワンポイントに猫が描かれている普通のエプロン。
ただ、詩音には少し大きかったらしい。
「ワンピースみたいになっちゃった」
「大丈夫だよ。ふわふわしてて可愛いね」
「そ、そんなことない...」
ふたりで話しながらだと、洗い物もあっという間だ。
「今日は何か特別な用事があった訳じゃないの?」
「...うん。ただ会いたかっただけ」
詩音の表情には嘘がない。
彼女は隠し事をしたいときや嘘を吐いたとき、左の頬がひきつる謎の癖がある。
それがないということは、本当に会いに来てくれただけなのだろう。
「折角だし、何かゲームでもしようか」
「うん」
ボードゲームやテレビゲームを取り出し、詩音に選んでもらう。
そんななか、彼女が遠慮がちにやりたいと話したのは...。
「...これじゃあ駄目なのに」
そんな言葉が漏れてしまうほど、僕は会いたくて仕方ない。
この関係になる前なら連絡してすぐに会いに行けた。
だが、今は事情が事情だ。
気分を変えようと大翔の部屋に行こうとして足を止める。
もしかすると久遠さんがいるかもしれないのに、そんなことをしてもいいのだろうか。
「...何か作ろうかな」
独り呟いた言葉は、天井に吸いこまれて消えていった。
──そして、それから1時間後。
「...?はい、今開けます」
インターホンが鳴らされ、カフェエプロンをしたまま玄関へと向かう。
そこには、今1番会いたかった人物が立っていた。
「どうしたの、詩音」
「ごめんなさい。来ちゃいけないと思いつつ、どうしても我慢できなくて...」
そうか、詩音も同じだったのか。
謝り倒す彼女を止め、そのまま部屋に招き入れる。
「大丈夫だよ。本当は僕も会いたくて仕方なかったから」
「優翔...」
人に見つからないかひやひやすることはある。
だが、僕たちはもうただの恋人同士だ。
会うのに誰かの許可が必要なわけではないし、本来なら非難されるような理由もない...はず。
「丁度これからお昼だったんだけど、一緒に食べない?」
「実は何も食べずに来ちゃったから、それはありがたい」
こうしてふたりで話すのも、これから少しだけ訪れるであろうふたりだけの時間も...本当に楽しくて仕方がない。
「いただきます」
「いただきます」
ふたりして両手をあわせ、黙々と食べはじめる。
独りで食べるよりずっと美味しいご飯は、あっという間に完食してしまった。
「ごめん、少なかったかな?」
「ううん。...すごく美味しかったよ」
「それならよかった。次は何をしようか」
「あの、食器を洗うのを手伝わせてほしいな...」
詩音のお願いは可愛らしくて、僕はただそうしようと答えた。
「それじゃあエプロンは...これを使って」
渡したのは、ワンポイントに猫が描かれている普通のエプロン。
ただ、詩音には少し大きかったらしい。
「ワンピースみたいになっちゃった」
「大丈夫だよ。ふわふわしてて可愛いね」
「そ、そんなことない...」
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「今日は何か特別な用事があった訳じゃないの?」
「...うん。ただ会いたかっただけ」
詩音の表情には嘘がない。
彼女は隠し事をしたいときや嘘を吐いたとき、左の頬がひきつる謎の癖がある。
それがないということは、本当に会いに来てくれただけなのだろう。
「折角だし、何かゲームでもしようか」
「うん」
ボードゲームやテレビゲームを取り出し、詩音に選んでもらう。
そんななか、彼女が遠慮がちにやりたいと話したのは...。
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