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泣かないver.
最近の悩み 大翔side
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「小野、今日ちょっと元気ない?」
「大丈夫です」
「あんまり無理するな。休憩室のベッドで休ませてもらえ」
「...すみません、御舟さん」
実は最近、あまり眠れていない。
疲れてはいるはずなのに、どれだけ寝返りをうっても寝ることができないのだ。
何故そうなってしまったのかは自分では分からない。
「何かあったのか?」
「御舟さん、眠れなくなったことってありますか?」
「いや、俺はそういう経験ないな...」
ちょっと待ってろと言われて5分ほどたち、御舟さんと一緒にやってきたのは恋人の佐藤さんだった。
「すみません、俺邪魔なら、」
「そうじゃなくて、眠れないとかいう悩みならこいつの方が詳しいからきてもらっただけだ」
「小野さん、眠れないんですか...?」
「最近全然眠れなくて、2時間位しか寝てないんだ。佐藤さんも眠れないの?」
彼女は首を小さく縦にふる。
『意思疏通をとるにも照れ屋でなかなか難しいところがあるかもしれない』...店長や御舟さんが言っていたとおりらしい。
「アロマ、とかはどうでしょうか?」
「試したことなかったな...ありがとう、ちょっと買ってみる」
「何かあったらすぐ言えよ」
「はい、ありがとうございます」
親身になって聞いてくれる人がいるというのはこんなにも心強い。
兄貴や久遠以外に相談相手がいない俺にとって、このカフェの人たちは優しさで溢れているかけがえのない存在だ。
(アロマか...キャンドルが主流なのかもな)
バイト終わり、雑貨屋を物色してみる。
男でこれはひかれてしまうのかもしれないが、そんなことは言っていられない。
「大翔?」
「久遠...おまえもきてたのか」
「このお店、品揃えがいいからよく来るんだ」
久遠が持つかごには沢山のものが入っていて、とても楽しそうだ。
「それで、どうしてアロマキャンドルを見てたの?」
「やっぱり男が持ってたら変だよな」
「そんなことないよ!ただ、大翔は匂いがするものって苦手だったなって思っただけで...。
もしかして何か悩み事?」
久遠に隠し事をするのははじめから無理だったらしい。
「実は...」
俺は最近眠れていないこと、バイト先にいる先輩カップルにアドバイスをもらったことを話した。
久遠は話を遮ることなく最後まで真剣に聞いてくれて、様々な種類のアロマキャンドルが置かれているなかからオレンジの香りがするものを指さす。
「このシリーズだと火をつけなくていいからおすすめだよ。照明で少しずつ溶けていって、いい匂いがするの」
「使ったことあるのか?」
「うん。私も眠れないとき色々試したんだ。私のおすすめはバニラだけど、大翔はオレンジが好きそうだなって...」
真剣に悩んでくれるのがこんなにも嬉しいと感じてしまうなんて、俺は重症だろうか。
「久遠、その...久遠さえよければなんだけど、今夜泊まりにこないか?
キャンドルのこととか聞きたいし...」
もっと素直に一緒にいたいと伝えられれば、どんなによかったことか。
断られると思っていたのに、久遠はふたつ返事で来てくれることになった。
「7時に駅に行くから、迎えにきてもらってもいいかな?」
「勿論」
これだけで夜が楽しみになるのだから、本当に不思議だ。
またあとでとだけ言葉を交わして買い物に戻る。
何か久遠が使えそうなものを買っておこう、そう思いながら雑貨屋をぶらぶらした。
...かごには、彼女おすすめのキャンドルを入れて。
「大丈夫です」
「あんまり無理するな。休憩室のベッドで休ませてもらえ」
「...すみません、御舟さん」
実は最近、あまり眠れていない。
疲れてはいるはずなのに、どれだけ寝返りをうっても寝ることができないのだ。
何故そうなってしまったのかは自分では分からない。
「何かあったのか?」
「御舟さん、眠れなくなったことってありますか?」
「いや、俺はそういう経験ないな...」
ちょっと待ってろと言われて5分ほどたち、御舟さんと一緒にやってきたのは恋人の佐藤さんだった。
「すみません、俺邪魔なら、」
「そうじゃなくて、眠れないとかいう悩みならこいつの方が詳しいからきてもらっただけだ」
「小野さん、眠れないんですか...?」
「最近全然眠れなくて、2時間位しか寝てないんだ。佐藤さんも眠れないの?」
彼女は首を小さく縦にふる。
『意思疏通をとるにも照れ屋でなかなか難しいところがあるかもしれない』...店長や御舟さんが言っていたとおりらしい。
「アロマ、とかはどうでしょうか?」
「試したことなかったな...ありがとう、ちょっと買ってみる」
「何かあったらすぐ言えよ」
「はい、ありがとうございます」
親身になって聞いてくれる人がいるというのはこんなにも心強い。
兄貴や久遠以外に相談相手がいない俺にとって、このカフェの人たちは優しさで溢れているかけがえのない存在だ。
(アロマか...キャンドルが主流なのかもな)
バイト終わり、雑貨屋を物色してみる。
男でこれはひかれてしまうのかもしれないが、そんなことは言っていられない。
「大翔?」
「久遠...おまえもきてたのか」
「このお店、品揃えがいいからよく来るんだ」
久遠が持つかごには沢山のものが入っていて、とても楽しそうだ。
「それで、どうしてアロマキャンドルを見てたの?」
「やっぱり男が持ってたら変だよな」
「そんなことないよ!ただ、大翔は匂いがするものって苦手だったなって思っただけで...。
もしかして何か悩み事?」
久遠に隠し事をするのははじめから無理だったらしい。
「実は...」
俺は最近眠れていないこと、バイト先にいる先輩カップルにアドバイスをもらったことを話した。
久遠は話を遮ることなく最後まで真剣に聞いてくれて、様々な種類のアロマキャンドルが置かれているなかからオレンジの香りがするものを指さす。
「このシリーズだと火をつけなくていいからおすすめだよ。照明で少しずつ溶けていって、いい匂いがするの」
「使ったことあるのか?」
「うん。私も眠れないとき色々試したんだ。私のおすすめはバニラだけど、大翔はオレンジが好きそうだなって...」
真剣に悩んでくれるのがこんなにも嬉しいと感じてしまうなんて、俺は重症だろうか。
「久遠、その...久遠さえよければなんだけど、今夜泊まりにこないか?
キャンドルのこととか聞きたいし...」
もっと素直に一緒にいたいと伝えられれば、どんなによかったことか。
断られると思っていたのに、久遠はふたつ返事で来てくれることになった。
「7時に駅に行くから、迎えにきてもらってもいいかな?」
「勿論」
これだけで夜が楽しみになるのだから、本当に不思議だ。
またあとでとだけ言葉を交わして買い物に戻る。
何か久遠が使えそうなものを買っておこう、そう思いながら雑貨屋をぶらぶらした。
...かごには、彼女おすすめのキャンドルを入れて。
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