泣けない、泣かない。

黒蝶

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泣かないver.

作戦会議

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「私は何をすればいいの?」
大翔ははっとした表情で私をじっと見つめる。
「兄貴がいるところでは言えなかったからな...」
「優翔さんに関することなの?」
「...クリスマス、なんとかして詩音さんを呼び出してくれないか?」
話の筋が見えなくて困惑していると、大翔が詳しく説明をしてくれる。
ふたりがいる学校の卒業式がそれまでに終わること。
そうなければ優翔さんの研修期間が終わって普通の恋人に戻れる...。
けれど、期間が短すぎて会えるかどうか分からないのだと寂しそうに告げた。
「兄貴は諦めかけてる。詩音さんにも迷惑はかけられないし、きっと無理だろうって。
でも、すごい悲しそうで...だから何もせずに入られないんだ」
その気持ちは何となく理解できるような気がする。
プレゼントを選んだときの詩音は、少しだけ浮かない表情をしていた。
そして、それをちゃんと渡すことができるかどうかも考えこんでいた様子を思い出す。
(私も何かしたい。...友だちだから)
「呼ぶのはどこがいいかな?」
「ふたりきりになれて、邪魔が入る可能性がない場所...そうだ、俺の家!」
「家って、この前まで大翔が住んでいた場所?」
確かに大翔たちのご両親の顔なんて見たことがない。
ふたりとも忙しいのか、それとも...。
「久遠、悪いけど作戦一緒に考えてもらってもいい?」
「勿論。急に呼び出すとなると変に思われちゃうよね...。
...そうだ、クリスマスパーティーをするからおいでっていうのは?」
「けど、それだと家まで来てもらうのが大変にならないか?」
「会場を内緒にして、そのまま家まで誘導すれば...駄目かな」
浅はかな作戦だったかもしれない。
そう思っていたのに、大翔の目は輝いていた。
「それいいな!ついでに多少のパーティーをすればカモフラージュになるし、途中から俺たちが抜ければふたりきりにできる。
...ありがとう、久遠。それでいこう」
「うん」
4人でも楽しめるし、そのあとは私たちもふたりきりで...想像するだけでにやけそうになる。
「久遠、難しいことは分かってるけど頼んでもいいか?」
「任せて」
「本当に感謝しかない。...ありがとな」
優しく抱きしめてくれる彼にときめきながら、その背中に腕をまわす。
クリスマスが楽しみで仕方ない。
「ねえ、やっぱり私も作るのを手伝ってもいい?」
「...少しだけなら。無理だと思ったらすぐ休憩して」
「ありがとう」
「やっぱり今日泊まっていって」
「そうさせてもらおうかな」
ふたりで一緒にいられるなら、どんな作業だって苦にならない。
きっとふたりでなら無敵になれる...キッチンで具材を切りながらそう感じた。
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