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クロス×ストーリー(通常運転のイベントもの多め)
セントニコラオス-優翔×大翔-
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クリスマスには元のただの恋人に戻れる...それは希望でもあるが、きっと詩音は不安だろう。
それに、そんな直後ではただ会うのでさえ難しくなるはずだ。
「兄貴、これでいいと思う?」
「大丈夫だと思うよ」
きょうはいよいよ大翔が向かいのアパートに引っ越してくる日。
こんなときでもやはりあの家には人がいない。
「大丈夫。もう大きな家財はきているはずだから」
「だから最低限の荷物...って、そんなのいつからあるんだ!?」
これだけ驚いてくれればサプライズ成功だ。
「大翔が部屋を決めたときから。あそこから全部を運ぶのは大変だから、生活に最低限必要なものだけ搬入させてもらったよ。
あとは自分好みに改造してくれてもいいし、要らなくなったら捨ててくれていいから」
「俺の兄貴はかっこよすぎだ...」
あそこから出たい、その一心で必死にアルバイトをしながら暮らしていた大翔を助けたかった。
何でもいいから力になれることはないか...そう思ったとき、まだ家具を揃えていないという話を聞いて思いついたのがこれだ。
「ちょっとだけ早いクリスマスプレゼントだよ」
「...おう」
「ごめん、もしかしてもうこういうの好きじゃなくなってた?」
「...好きなものばっかりだから困ってるんだよ。ちょっと明るめの色が好きとか、青系でまとめるのとか...本当に兄貴には敵わないな」
「過ごしてきた時間が長いからね」
そう告げて笑ってみせると、大翔も嬉しそうに目を細める。
人の成長というのは早いものだと実感した。
「困ったらすぐ僕の部屋に来ること。約束ね」
「ありがとな、兄貴」
「僕は僕がやりたいことをやってるだけだから」
正直、近くに弟が住んでいる状況はかなり嬉しい。
昔から育児放棄とも言えるほど家に帰ってこない両親とふたりで戦ってきた。
食べ物がなくなりそうになったり、定期的に家のテーブルに置かれるお金が何故か置かれていなかったり...。
そんなときに助けてくれたのが、当時の保健室の先生だった。
だからこうして僕もなりたいとは思っているのだけれど...少しはあの人に近づけただろうか。
「なあ、兄貴」
「どうしたの?」
「その...詩音さんとはデートしないのか?」
最後まで言わなくても、クリスマスのことだということまでは理解した。
「したいけどできそうにないんだ。実は実習期間の終了がクリスマス寸前になりそうで...街を歩くのも難しいと思う」
「大変だな」
「あ、でもプレゼントは渡したいって思ってるよ」
「それなら、今からプレゼント買いに行こう。俺も久遠に何か渡したいし」
「賛成」
すっかり荷ほどきが終わった部屋をじっと見つめる。
ここでまた自分の居場所を見つけてくれればいい、そう思いながら外に出た。
──後ろから思案げに向けられている視線に気づきもせずに。
それに、そんな直後ではただ会うのでさえ難しくなるはずだ。
「兄貴、これでいいと思う?」
「大丈夫だと思うよ」
きょうはいよいよ大翔が向かいのアパートに引っ越してくる日。
こんなときでもやはりあの家には人がいない。
「大丈夫。もう大きな家財はきているはずだから」
「だから最低限の荷物...って、そんなのいつからあるんだ!?」
これだけ驚いてくれればサプライズ成功だ。
「大翔が部屋を決めたときから。あそこから全部を運ぶのは大変だから、生活に最低限必要なものだけ搬入させてもらったよ。
あとは自分好みに改造してくれてもいいし、要らなくなったら捨ててくれていいから」
「俺の兄貴はかっこよすぎだ...」
あそこから出たい、その一心で必死にアルバイトをしながら暮らしていた大翔を助けたかった。
何でもいいから力になれることはないか...そう思ったとき、まだ家具を揃えていないという話を聞いて思いついたのがこれだ。
「ちょっとだけ早いクリスマスプレゼントだよ」
「...おう」
「ごめん、もしかしてもうこういうの好きじゃなくなってた?」
「...好きなものばっかりだから困ってるんだよ。ちょっと明るめの色が好きとか、青系でまとめるのとか...本当に兄貴には敵わないな」
「過ごしてきた時間が長いからね」
そう告げて笑ってみせると、大翔も嬉しそうに目を細める。
人の成長というのは早いものだと実感した。
「困ったらすぐ僕の部屋に来ること。約束ね」
「ありがとな、兄貴」
「僕は僕がやりたいことをやってるだけだから」
正直、近くに弟が住んでいる状況はかなり嬉しい。
昔から育児放棄とも言えるほど家に帰ってこない両親とふたりで戦ってきた。
食べ物がなくなりそうになったり、定期的に家のテーブルに置かれるお金が何故か置かれていなかったり...。
そんなときに助けてくれたのが、当時の保健室の先生だった。
だからこうして僕もなりたいとは思っているのだけれど...少しはあの人に近づけただろうか。
「なあ、兄貴」
「どうしたの?」
「その...詩音さんとはデートしないのか?」
最後まで言わなくても、クリスマスのことだということまでは理解した。
「したいけどできそうにないんだ。実は実習期間の終了がクリスマス寸前になりそうで...街を歩くのも難しいと思う」
「大変だな」
「あ、でもプレゼントは渡したいって思ってるよ」
「それなら、今からプレゼント買いに行こう。俺も久遠に何か渡したいし」
「賛成」
すっかり荷ほどきが終わった部屋をじっと見つめる。
ここでまた自分の居場所を見つけてくれればいい、そう思いながら外に出た。
──後ろから思案げに向けられている視線に気づきもせずに。
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