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クロス×ストーリー(通常運転のイベントもの多め)
教えてください、先生。-優翔×大翔-
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「大翔、そこのスペル間違ってるよ」
「え、こうじゃないのか?」
これは、詩音とビデオ通話する前の出来事。
家でのんびりしているとインターホンが静寂を破り、そこには大翔が立っていた。
話を聞くと、無理に教科を取ろうとしすぎていくつか単位を落としそうなのだという。
分からないところがあったので教えてほしい、そういう話だった。
「大翔は英語嫌いなんだっけ」
「あんまり好きじゃない。というか国語でさえあやふやなのに、英語の長文読解なんてできない」
「それは...ちょっと違うんじゃないかな?」
僕は理系だが英語は好きだ。
ただ、国語なんて全く分からなくて好きではなかったし、今だって時々漢字が読めないことがある。
「そっか、兄貴はそうだった。本当に教壇にいる先生みたいだな。
...あ、そろそろ夕飯作る」
「僕も手伝うよ」
と言いつつ、実は今夜は豪華にしようと密かに材料を用意していたのだ。
「...これくらいはやろうと思ったのに、やっぱり兄貴はすごいな」
大翔の悲しそうな表情を目にしたとき、何か間違えてしまったのはなんとなく理解した。
こういうとき、弟に頼るべきだったのだろうか。
頼ってしまってもよかったのだろうか...そんなことを考えていると、大翔にいきなり腕を握られる。
「どうしたの、いきなり...」
「兄貴、詩音さんとちゃんとコミュニケーションとってるか?」
「え?」
女性に対するマナーや態度は、人と上手く関わっていける大翔の方が理解している。
僕の反応で全てを察したのか、小さく溜め息を吐いた。
「兄貴、詩音さんを寂しがらせたら駄目だろ。いくら立場があるとはいえ、きっと向こうからは言いにくいんじゃないか?」
「詩音が寂しがる...そうなのかな?」
「本当に、兄貴は時々変なところで抜けてるよな」
玉ねぎを刻みながら、大翔は僕相手に人と関わる為の授業をしてくれる。
「個人差はあると思うけど、友だちと数日会えなくて寂しがるタイプの人って男女問わず多いと思う。
多分詩音さんもそのタイプだ。けど、詩音さんは久遠しか友だちがいないって言ってた。ということは、会えなくて1番寂しいと感じているのはきっと兄貴相手にだ」
「すごいね、大翔は...。全然分かってなかった」
「俺にとっては兄貴の方がすごいけどな」
様々な料理を仕あげながら、何ができるかを考える。
直接会いに行くことは今はできないし、どうするのが1番詩音に気を遣わせなくて済むだろう...。
「兄貴、ビデオ通話アプリ入れてるだろ?それで連絡とってみたらいいんじゃないか?
...俺も今夜は久遠に連絡してみようかな」
「うん、そうしてみるよ。ありがとう、大翔は僕の自慢の弟だよ」
「そういうところ、狡いよな...」
「え、狡いって?」
僕は大翔より勉強はできるのかもしれない。
だが、やはり人間関係のことなら弟の方が断然分かっている。
きっとお互いがお互いの先生なのだ。
その関係が変わらないであろうことを少し嬉しく思いながら、月のような輝きを放つ食器を並べた。
「え、こうじゃないのか?」
これは、詩音とビデオ通話する前の出来事。
家でのんびりしているとインターホンが静寂を破り、そこには大翔が立っていた。
話を聞くと、無理に教科を取ろうとしすぎていくつか単位を落としそうなのだという。
分からないところがあったので教えてほしい、そういう話だった。
「大翔は英語嫌いなんだっけ」
「あんまり好きじゃない。というか国語でさえあやふやなのに、英語の長文読解なんてできない」
「それは...ちょっと違うんじゃないかな?」
僕は理系だが英語は好きだ。
ただ、国語なんて全く分からなくて好きではなかったし、今だって時々漢字が読めないことがある。
「そっか、兄貴はそうだった。本当に教壇にいる先生みたいだな。
...あ、そろそろ夕飯作る」
「僕も手伝うよ」
と言いつつ、実は今夜は豪華にしようと密かに材料を用意していたのだ。
「...これくらいはやろうと思ったのに、やっぱり兄貴はすごいな」
大翔の悲しそうな表情を目にしたとき、何か間違えてしまったのはなんとなく理解した。
こういうとき、弟に頼るべきだったのだろうか。
頼ってしまってもよかったのだろうか...そんなことを考えていると、大翔にいきなり腕を握られる。
「どうしたの、いきなり...」
「兄貴、詩音さんとちゃんとコミュニケーションとってるか?」
「え?」
女性に対するマナーや態度は、人と上手く関わっていける大翔の方が理解している。
僕の反応で全てを察したのか、小さく溜め息を吐いた。
「兄貴、詩音さんを寂しがらせたら駄目だろ。いくら立場があるとはいえ、きっと向こうからは言いにくいんじゃないか?」
「詩音が寂しがる...そうなのかな?」
「本当に、兄貴は時々変なところで抜けてるよな」
玉ねぎを刻みながら、大翔は僕相手に人と関わる為の授業をしてくれる。
「個人差はあると思うけど、友だちと数日会えなくて寂しがるタイプの人って男女問わず多いと思う。
多分詩音さんもそのタイプだ。けど、詩音さんは久遠しか友だちがいないって言ってた。ということは、会えなくて1番寂しいと感じているのはきっと兄貴相手にだ」
「すごいね、大翔は...。全然分かってなかった」
「俺にとっては兄貴の方がすごいけどな」
様々な料理を仕あげながら、何ができるかを考える。
直接会いに行くことは今はできないし、どうするのが1番詩音に気を遣わせなくて済むだろう...。
「兄貴、ビデオ通話アプリ入れてるだろ?それで連絡とってみたらいいんじゃないか?
...俺も今夜は久遠に連絡してみようかな」
「うん、そうしてみるよ。ありがとう、大翔は僕の自慢の弟だよ」
「そういうところ、狡いよな...」
「え、狡いって?」
僕は大翔より勉強はできるのかもしれない。
だが、やはり人間関係のことなら弟の方が断然分かっている。
きっとお互いがお互いの先生なのだ。
その関係が変わらないであろうことを少し嬉しく思いながら、月のような輝きを放つ食器を並べた。
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