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泣かないver.
イベント 久遠side
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私はまた体調を崩してしまい、保健室のベッドで横にならせてもらっていた。
(また迷惑をかけちゃった...)
最後の授業だけとはいえ、抜けてしまったのは少し心苦しい。
そんなことを考えながら目を閉じていると、がらがらと扉が開かれる音がした。
「久遠」
「大翔...?」
「大丈夫か?」
「どうしても頭痛が治まらなかったんだけど、もう平気だよ。
迷惑をかけてごめんなさい...」
「気にしなくていい。俺も他の人たちも、誰も迷惑だなんて思ってないから」
大翔は起きあがった私に1枚の紙を渡してくれる。
「『参加する人は提出すること』...これってどういうこと?」
私は詳しく知らなかったのだ。
...この場所に、そういったものがあるなんて。
「というわけで、2週間後に研修旅行がある」
「え...?」
体調を崩して保健室で休んでいる私のところに、大翔が手紙を持ってきて説明してくれる。
「参加したら、特別点が6点もらえるよ」
「そうなの?」
特別点...それが足りないと、単位をとれても卒業できなくなってしまう。
だからいくつか、こういった特別点が多めに入る行事があるらしい。
「俺は行くけど、久遠はどうしたい?」
「私は...」
本当はものすごく行ってみたい。
大翔と一緒にいたいし、プチ観光みたいで楽しそうだから。
けれど、私には問題がある。
(楽しそうだけど、体調を崩して迷惑をかけるわけにはいかないし...どうしよう)
そんな迷いを見透かしたように、大翔は私に向かって笑みを浮かべて言葉をかけてくれた。
「一応参加で提出して、もし体調が悪くなかったら一緒に行こう。
ちゃんと迎えに行くし、無理そうだったら当日不参加にすることもできるから」
「本当...?」
「本当。実際当日になって仕事や子どもの世話でこられなくなる人もいる」
色々な事情の人が通っているだけのことはあって、フォローも徹底しているように感じた。
「それじゃあ行こう。...というか、帰ろう。
生徒会の仕事、もう終わらせてきたから」
「うん」
参加で出して、無理なら休む...その制度が取れるのはとてもありがたい。
「因みに今年は見学場所の近くに温泉街がある。
自由時間、そこに行ってみるのもいいかもしれない」
「え、全部決まってる訳じゃないの?」
「行き先は見学場所以外は自由。まずはみんなで見学して、それから決められた時間に集合場所まで戻ってこられる範囲なら基本的にはどこに行ってもいい」
「想像しただけで楽しそう...!」
しかも今年の見学先は美術館。
少し身構えていたけれど、それなら頑張って行ってみたい。
「お疲れ」
「お疲れさまです」
「さ、さようなら...」
先生からの挨拶にどきまぎしながらふたりで駅まで手を繋ぐ。
空は晴れていて、私の未来もこんなふうだといいなと思った。
(また迷惑をかけちゃった...)
最後の授業だけとはいえ、抜けてしまったのは少し心苦しい。
そんなことを考えながら目を閉じていると、がらがらと扉が開かれる音がした。
「久遠」
「大翔...?」
「大丈夫か?」
「どうしても頭痛が治まらなかったんだけど、もう平気だよ。
迷惑をかけてごめんなさい...」
「気にしなくていい。俺も他の人たちも、誰も迷惑だなんて思ってないから」
大翔は起きあがった私に1枚の紙を渡してくれる。
「『参加する人は提出すること』...これってどういうこと?」
私は詳しく知らなかったのだ。
...この場所に、そういったものがあるなんて。
「というわけで、2週間後に研修旅行がある」
「え...?」
体調を崩して保健室で休んでいる私のところに、大翔が手紙を持ってきて説明してくれる。
「参加したら、特別点が6点もらえるよ」
「そうなの?」
特別点...それが足りないと、単位をとれても卒業できなくなってしまう。
だからいくつか、こういった特別点が多めに入る行事があるらしい。
「俺は行くけど、久遠はどうしたい?」
「私は...」
本当はものすごく行ってみたい。
大翔と一緒にいたいし、プチ観光みたいで楽しそうだから。
けれど、私には問題がある。
(楽しそうだけど、体調を崩して迷惑をかけるわけにはいかないし...どうしよう)
そんな迷いを見透かしたように、大翔は私に向かって笑みを浮かべて言葉をかけてくれた。
「一応参加で提出して、もし体調が悪くなかったら一緒に行こう。
ちゃんと迎えに行くし、無理そうだったら当日不参加にすることもできるから」
「本当...?」
「本当。実際当日になって仕事や子どもの世話でこられなくなる人もいる」
色々な事情の人が通っているだけのことはあって、フォローも徹底しているように感じた。
「それじゃあ行こう。...というか、帰ろう。
生徒会の仕事、もう終わらせてきたから」
「うん」
参加で出して、無理なら休む...その制度が取れるのはとてもありがたい。
「因みに今年は見学場所の近くに温泉街がある。
自由時間、そこに行ってみるのもいいかもしれない」
「え、全部決まってる訳じゃないの?」
「行き先は見学場所以外は自由。まずはみんなで見学して、それから決められた時間に集合場所まで戻ってこられる範囲なら基本的にはどこに行ってもいい」
「想像しただけで楽しそう...!」
しかも今年の見学先は美術館。
少し身構えていたけれど、それなら頑張って行ってみたい。
「お疲れ」
「お疲れさまです」
「さ、さようなら...」
先生からの挨拶にどきまぎしながらふたりで駅まで手を繋ぐ。
空は晴れていて、私の未来もこんなふうだといいなと思った。
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