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泣けないver.
通じた想い、これからの覚悟
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「だ、大丈夫だよ...?」
「そんな寂しそうな笑顔で言われても、全然説得力がない」
どうか僕にだけはちゃんと話してほしい。
「無理に笑わなくていい、泣くのを我慢しなくてもいいから...もっと君の気持ちを聞きたいんだ。
メールでもいいから、言葉にして教えてくれないかな?
恋人としてのお願い」
そう、僕たちは恋人同士だ。
誰が何を言おうが、それが変わることは絶対にない。
「...今まで気づけなくてごめん。実習期間が終わったら、毎日連絡するよ。
それで足りないときは、できるだけ会いに行く。
だから...だから、死ぬのだけはやめて...?」
「どうしてそれを、」
そこまで言って、しまったという表情をする。
...やはり気のせいではなかったのだ。
「この前校内を掃除してたとき、君が書いてたものを見つけた。
『もう疲れました。ごめんなさい』って書いてたよね?」
「そうなんだ、あれ見つかっちゃったんだ...」
詩音は笑いながら、ゆっくりと話を進めていく。
「もう疲れちゃった。何もかも消えればいいと思った。
この先も絶望しかないなら、もういいやって思うんだ」
「君が辛いのは7月の終わりの時点で分かってるつもりだけど、死ぬのだけは絶対に嫌だよ!」
笑ってばかりいる彼女に、ちゃんと伝えなければならない。
──僕の想いを届けたい。
「僕にとって、君と過ごせる時間はすごく大事なもので...君はどんなものより大切なんだ」
「...!」
抱きしめて離さないようにしながら話を続ける。
「学校に行きたくないなら行かなくていい。保健室登校でもいい。
勉強なら僕が教えるし、最低限の授業だけ受けていれば大丈夫だよ。
高卒認定を受けたり、僕みたいに通信制高校に行ったり...手段はいくらでもある」
「...」
「だから...だから、生きることを中退するのをやめてほしいんだ」
...熱くなりすぎてしまったが、そんな余裕はない。
しばらく見つめていると、堪えきれなかったらしい涙が流れはじめた。
「死ぬのはやめる」
よかったの一言を発することはできない。
僕には止めてしまった責任が伴うからだ。
それでも僕は、彼女と一緒に生きていきたい。
「僕は明日も保健室にいるから、始業式が辛かったらおいで。
他に誰もこないから、その間に何か話をしよう。...約束ね」
「優翔、ごめんなさい...っ」
「君が謝ることじゃないよ。僕の方こそ、気づけなくてごめんね」
しばらく抱きしめて、ようやく泣きはじめた詩音を支える。
これからもこうして支えたい。
「それじゃあ、また明日。...絶対だよ」
「もう大丈夫。...絶対行く」
別れる間際、そっと口づける。
今はこんなことしかできないが、もっと恋人らしいことをしてあげたい。
後ろ姿を見送りながら、自分自身にそう誓った。
「そんな寂しそうな笑顔で言われても、全然説得力がない」
どうか僕にだけはちゃんと話してほしい。
「無理に笑わなくていい、泣くのを我慢しなくてもいいから...もっと君の気持ちを聞きたいんだ。
メールでもいいから、言葉にして教えてくれないかな?
恋人としてのお願い」
そう、僕たちは恋人同士だ。
誰が何を言おうが、それが変わることは絶対にない。
「...今まで気づけなくてごめん。実習期間が終わったら、毎日連絡するよ。
それで足りないときは、できるだけ会いに行く。
だから...だから、死ぬのだけはやめて...?」
「どうしてそれを、」
そこまで言って、しまったという表情をする。
...やはり気のせいではなかったのだ。
「この前校内を掃除してたとき、君が書いてたものを見つけた。
『もう疲れました。ごめんなさい』って書いてたよね?」
「そうなんだ、あれ見つかっちゃったんだ...」
詩音は笑いながら、ゆっくりと話を進めていく。
「もう疲れちゃった。何もかも消えればいいと思った。
この先も絶望しかないなら、もういいやって思うんだ」
「君が辛いのは7月の終わりの時点で分かってるつもりだけど、死ぬのだけは絶対に嫌だよ!」
笑ってばかりいる彼女に、ちゃんと伝えなければならない。
──僕の想いを届けたい。
「僕にとって、君と過ごせる時間はすごく大事なもので...君はどんなものより大切なんだ」
「...!」
抱きしめて離さないようにしながら話を続ける。
「学校に行きたくないなら行かなくていい。保健室登校でもいい。
勉強なら僕が教えるし、最低限の授業だけ受けていれば大丈夫だよ。
高卒認定を受けたり、僕みたいに通信制高校に行ったり...手段はいくらでもある」
「...」
「だから...だから、生きることを中退するのをやめてほしいんだ」
...熱くなりすぎてしまったが、そんな余裕はない。
しばらく見つめていると、堪えきれなかったらしい涙が流れはじめた。
「死ぬのはやめる」
よかったの一言を発することはできない。
僕には止めてしまった責任が伴うからだ。
それでも僕は、彼女と一緒に生きていきたい。
「僕は明日も保健室にいるから、始業式が辛かったらおいで。
他に誰もこないから、その間に何か話をしよう。...約束ね」
「優翔、ごめんなさい...っ」
「君が謝ることじゃないよ。僕の方こそ、気づけなくてごめんね」
しばらく抱きしめて、ようやく泣きはじめた詩音を支える。
これからもこうして支えたい。
「それじゃあ、また明日。...絶対だよ」
「もう大丈夫。...絶対行く」
別れる間際、そっと口づける。
今はこんなことしかできないが、もっと恋人らしいことをしてあげたい。
後ろ姿を見送りながら、自分自身にそう誓った。
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