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約束のスピカ
プロローグ
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俺の1日は日記を読むことからはじまる。
【折原詩乃が蹴鞠の噂と決着をつけるが、腕に怪我を負う】
それは今でも変わらないことで、そこから知った情報を使ってどうにか学園生活を送っている。
面倒事はできるだけ避けたいが、そういうわけにもいかないらしい。
「先生、またそれ読んでるの?」
「意外と重要なことが書かれていたりするからな。というより、習慣」
「そういうものなんだ…」
目の前にいるのは生者ではない。
それでも、俺が1番大切な相手であることに変わりはないし、これから先も変わることはないだろう。
「ねえ、それに書いてあることってどれくらいの確率で当たるの?」
「ほぼ百発百中」
「へえ、本当にすごいものなんだね」
真っ黒な革に覆われた日記帳。
持ち主以外が強引に中身を見ると呪われるといわれているこれは、未来予知日記と呼ばれる怪異だ。
俺が前の持ち主から貰い受けたとき、言われたことがある。
【どんなに理不尽なことがあっても、現実から目を背けないでください】
それには従ってきたつもりではあるが、あまりに理不尽な光景に目をつぶることはできない。
「どんな内容のことが外れたの?」
「…忘れた」
「ええ、何それ。気になるな…」
いくらこいつのお願いでも、それだけは聞けない。
未来予知日記の内容は絶対に現実になるものだと信じていた。
それが覆ったあの事件のことを、俺は1度も忘れたことはない。
「先生」
キャラメルの箱を投げた顔は希望に満ちている。
「ありがとう」
「それじゃあ僕行くね」
「瞬」
「なに?」
「…気をつけろ」
「分かってる」
瞬は目の前から忽然と姿を消した。
死霊だからできるのか、こちらに残ると決めたからそうなったのか。
日記の表紙を撫でながら、絶望の日までを思い返す。
──流山瞬という生徒は、いつも怪我だらけだった。
【折原詩乃が蹴鞠の噂と決着をつけるが、腕に怪我を負う】
それは今でも変わらないことで、そこから知った情報を使ってどうにか学園生活を送っている。
面倒事はできるだけ避けたいが、そういうわけにもいかないらしい。
「先生、またそれ読んでるの?」
「意外と重要なことが書かれていたりするからな。というより、習慣」
「そういうものなんだ…」
目の前にいるのは生者ではない。
それでも、俺が1番大切な相手であることに変わりはないし、これから先も変わることはないだろう。
「ねえ、それに書いてあることってどれくらいの確率で当たるの?」
「ほぼ百発百中」
「へえ、本当にすごいものなんだね」
真っ黒な革に覆われた日記帳。
持ち主以外が強引に中身を見ると呪われるといわれているこれは、未来予知日記と呼ばれる怪異だ。
俺が前の持ち主から貰い受けたとき、言われたことがある。
【どんなに理不尽なことがあっても、現実から目を背けないでください】
それには従ってきたつもりではあるが、あまりに理不尽な光景に目をつぶることはできない。
「どんな内容のことが外れたの?」
「…忘れた」
「ええ、何それ。気になるな…」
いくらこいつのお願いでも、それだけは聞けない。
未来予知日記の内容は絶対に現実になるものだと信じていた。
それが覆ったあの事件のことを、俺は1度も忘れたことはない。
「先生」
キャラメルの箱を投げた顔は希望に満ちている。
「ありがとう」
「それじゃあ僕行くね」
「瞬」
「なに?」
「…気をつけろ」
「分かってる」
瞬は目の前から忽然と姿を消した。
死霊だからできるのか、こちらに残ると決めたからそうなったのか。
日記の表紙を撫でながら、絶望の日までを思い返す。
──流山瞬という生徒は、いつも怪我だらけだった。
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