路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Until the day when I get married.-Light of a new request-

番外編『The story spun with you』ーSelect1,Forestー(中篇)

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試してみて分かったことがある。
それは、固体にも気体にも液体にもできるということ。
特に呪文などは必要ないということ。
これでグレーテルを...メルを助けられる。
(失敗したら元の世界に還れなくなるかもしれない)
ーーチャンスは明日の朝一度だ。
ー*ー
「グレーテル、竈を見ておくれ」
「...はい」
なんだか時の進みが早く感じるのは気のせいだろうか。
「『私、見方が分からないわ』」
(また勝手に...!)
「全く、使えない子だね!」
...使えない子。
そう、私は本当にダメな子なんです。
何にもできない子なんです。
そもそもこうなったのは、私が書店で油断していたからだ。
「...『ヘンゼルを助けなきゃ』」
(このお話って、どうなるんでしょう?)
竈はごうごうと音をたてて燃えている。
私の腕は勝手に動いていく。
(このままでは魔女さんを殺してしまいます...!)
私は踏んばってなんとか止まった。
けれど、どんどん足や手が動いていって...
「止めろ!」
「...!」
私の手が思い切り魔女に当たったあと、魔女は竈の方へ転んだ。
いつの間にか炎は消えていて、魔女は転んだだけで済んだのだ。
《どう?これが俺の能力》
よく見ると、カムイの手からは水が溢れだしている。
カムイはふっと微笑んでいるようだった。
(カムイのお陰です...)
ー**ー
なんとかメルは無事だったようだ。
...魔女も、殺しはしなかった。
だが、そこに突然林檎が出現したのだ。
「グレーテル...おまえなんぞこうしてやる!」
魔女は林檎をメルの口のなかに放りこみ、櫛を頭に突き刺した。
(...どういうことだ?)
「はあっ...」
メルは胸を抑えてそのまま倒れた。
「おまえは檻でいい子で待ってな!ひひひ...」
魔女はお菓子の家から姿を消した。
俺はメルにもらっていた鍵で牢屋をこじ開ける。
「メル!」
俺は取り敢えず櫛をメルの頭から引き抜き、脈をとる。
メルの呼吸は...止まっていた。
「メル!」
(林檎が喉につまったのか?)
それとも、毒だろうか。
俺は櫛をじっと見る。
...間違いない、少なくともこれは毒が染みこんでいる。
俺は童話を思い出す。
『毒が入ったであろう林檎』、『毒を染みこませた櫛』...童話が、混ざっている?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
親切なグレーテルは、なんとか魔女を殺さないようにヘンゼルと作戦を成功させることができました。
ですが、その魔女は本当に恐ろしい魔女だったのです...。
グレーテルは林檎の毒攻撃に敗れ、そのまま息絶えてしまいました。
ここからは、ヘンゼルと魔女の知恵比べ。
元の世界に還るという約束の為、ヘンゼルはグレーテルを起こす方法がなかったか、一度推理してみることにしました。
魔女は城に戻り、鏡に訪ねました。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰だい!」
「...それは、お妃様です」
魔女は、恐ろしいお妃でした。
ヘンゼルの苦しむ様子を見るため、お妃はしばらく休んだあと、再び森へ向かうことにしました。
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