路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Other Story(記念ものが多いです。本篇ネタバレはできるだけ避けます)

Happy,Happy,Halloween!

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傷がそんなに癒えぬまま、この季節がやってきてしまった。
本当は楽しませたいのに、ほとんど出掛けられない今の状況が恨めしい。
...メルは経験がないはずだ。
だから、どうしてもこの日は...
ー*ー
なんだか最近、カムイが何かを隠しているような気がする。
(エリックさんとよくお話していますし...何か事件でしょうか?)
冷蔵庫の中は、なんだかカボチャでいっぱいになってしまっている。
外を歩く人たちの声も、いつもより賑やかだ。
「メル」
「はい!」
「...服、決めた?」
「何のお洋服ですか?」
「...分からないなら、いい」
アイリスさんが困ったような驚いたような顔をしている。
何と言えば、アイリスさんを困らせないだろうか。
「カムイとエリックさんが話しているのは、お洋服のことなんですか?」
ー**ー
「ごめん、あれすごく重いのに...」
「俺たちには、農家出身の『天性の運び屋』がついてるんだぞ?」
エリックは笑顔でそう言ってくれたが、ベンがいても大変だったと思う。
いつもなら俺が調達し、みんなで切り分けて色々なものを作っていた。
...そこまで本気で作っていたわけではなかった。
だが、今年からは違う。
メルがいるからやろうと思えた。
(ナイフってこんなに使いづらかったっけ...)
「厄除けどころか患者まで追い払ってしまいそうだな」
はっとして俺は目の前のカボチャを見ると、それは悲惨な姿になっていた。
「...こんなに怖いとメルが怖がるね」
「それよりおまえ、仮装の説明はしたのか?」
俺は首を横にふる。
「何も話さない方が、楽しみになっていいのかなって...」
「だが、あまり隠しすぎると、」
「お二人とも、やっぱりお洋服のお話ですか?」
恐る恐る、声がした方を見る。
そこには、むすっとした顔のメルと...申し訳なさそうにしているアイリスがいた。
(しまった、アイリスに黙っててって言ってない!)
ー*ー
「...私には、言えないことですか?」
私が聞いてはいけなかったのだろうか。
「ううん。そうじゃないんだ...」
「きゃっ!」
転がっているカボチャには顔があり...それは、すごく怖かった。
「メルは、ハロウィンって知ってる?」
「言葉だけは、おばあさまから聞いたことがあります」
準備が大変でできなくてごめんね...そう言っていたおばあさまのことを思い出す。
「何かお手伝いできることはありますか?」
「...メルならそう言うと思った。だから秘密にしておきたかったんだ」
私は傷だらけのカムイに無理をしてほしくない。
でもカムイは...私に何もさせたくないと思っているのだろうか。
「ならメル、一つ手伝ってほしいことがある」
「なんでしょうか?」
「...してもいい?」
「なっ!おまえ、そういうことは二人の時に、」
「はい!サイズを測るんですよね?」
何故かエリックさんが顔を真っ赤にしていたけれど、いつもどおり私はカムイに一歩近づいた。
(どうして真っ赤になっていらっしゃるんでしょう?)
ー**ー
「どんな意味を思い浮かべたの、エリック?」
「おまえ、あとで覚えておけよ」
俺はにやけが止まらなくなりながら、なんとかメルのサイズを測り終えた。
「...っ」
腹部に鈍痛がはしる。
「カムイ、今日はお仕舞いにしてください」
「どうして?」
「今、痛かったんですよね...?」
メルが今にも泣き出しそうな顔でこちらを見ている。
仕方がないのでエリックに買い物メモをこっそり渡し、メルが寝るのを待つことにした。
(あとはランタンを作って...)
ナタリーたちには店がある。
エリックにも仕事がある。
アイリスは最近、警察署に馴染んだらしい。
だからせめて、メルのことだけは俺がやりたい。
「カムイ、これ...つけてみてくれますか?」
「これ...耳?狼の?」
「はい!でも、なんだか可愛くなってしまって...」
メルは恐らく、色々な本を読みながら作ってくれたのだろう。
そう思うと、一気に愛しさがこみあげてきた。
「ありがとう、メル」
「私は何も...」
「俺、これをつけるよ。これくらいなら、怪我にも響かないでしょ?」
「カムイ...」
その心配も含めて、俺は嬉しかった。
「メル、今日はもう遅いから...おやすみ」
「おやすみなさい」
最近、傷に障ってはと別々に寝ている。
そのせいか、メルの背中は酷く寂しげに見えた。
(まさか自分の病院のベッドで作業することになるとは思わなかったけど)
俺は自分に苦笑しながら、せっせと洋服を仕上げた。
...数日後、その日がやってきた。
ー*ー
「あの、これを着ればいいんですか?」
「...うん」
「これ、魔女さんですか...?」
それにしては、オレンジが多いような気がする。
私は一応カムイに聞いてみた。
「真っ黒だと、メルらしくないかなって...」
「だから、明るめの魔女さんですか?」
「うん。今日は本当なら、パレードに連れ出したかったんだけど...」
カムイはお腹のあたりをさすっていた。
(傷に誰かがぶつかるかもしれませんし...我儘は言いません)
「いいんです。私は、こうやってハロウィンを過ごすのは初めてですから!」
「メル...それなら、これも食べてくれる?」
「これ、カボチャのタルトですか?」
「メルが食べてくれるかなって思って...うろ覚えで作ったんだ」
「ありがとうございます!紅茶も持ってくるので、カムイも」
「向こうの部屋へ行くから、先に着替えて?」
「分かりました」
私はなんとか着替え終えた。
「どうでしょう?」
「...!」
「カムイ?」
カムイは私を見て固まっている。
私は何か間違えたのか不安になった。
「...いつもより可愛くて、ビックリした」
「それって...」
私は頬が熱くなるのを感じた。
「か、カムイも耳が似合います」
「それは嬉しいな」
抱き寄せられたそのとき、かちゃりと玄関の扉が開く音がした。
「おい、何度もドアを叩いたのに何をやっているのかと思えば...」
「...こんにちは」
「エリックさん、アイリスさん」
私はカムイからぱっと体を離した。
アイリスはコウモリの羽のような飾りをつけた悪魔のような姿で、エリックさんは...顔にツギハギができていた。
「それ、アイリスにやってもらったの?」
「ああ」
(本物みたいです...)
「さあ、パーティーをはじめようか」
「外、人がすごかった」
「これで全員とは、少ない気もするが...」
「紅茶を淹れました!」
これから賑やかなパーティーのはじまりだ。
確かに人数も少なくて、小さなものだけど...私には、この時間がとても大切なものに思えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読者様方、こんばんは。
五日かけてこれだけって...なんかもう、ごめんなさい。
かなり久しぶりの更新なような気がします。
細かいパーティーの模様を入れるかどうか悩みましたが、本日はひとまずここまでで。
もしリクエストがあれば...或いは、気が向いたら続きをハロウィンまでに書けるといいかなと思います。
色々丁重に放置状態にしてしまい、申し訳ありません。
本当なら、本篇がもう少し進んでいた予定なのでナタリーやベンももっと出番があったはずなのですが...。
最終章の続き、という設定で書いてあるので、カムイはまだ万全ではない方向でいきました。
何かあれば教えてください。
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