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Until the day when I get married.-Light of a new request-
第156話
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ー**ー
そのあと二、三日は忙しかった。
ベンとナタリーに散々叱られてしまった。
「本当に死んだらどうするの!」
「カムイが死んだら、お嬢さんは誰が守るだよ?」
「二人とも、ごめん...」
それからエリックとアイリスがきて、調書をとってもらった。
「言葉は...だいぶ出るようになったようだな」
「うん、ありがとう」
「礼ならメルに言え」
「そう、だね」
そんなごたごたが落ち着いてきた頃、俺はメルと話すことにした。
「メル、ずっと聞きたかったんだ」
「はい」
「聞かせて、眼のこと」
「よく、分からないんです」
「分からない?」
メルは頷いてこう続けた。
「とにかく、『傷口を見つけて血を止めなくちゃ』って、そればかりで...もしかすると、『流れていく血を元に戻すことができたら』って考えたんです」
メルの思考に、能力が応えたのだろうか。
そういう考え方ができるメルにも驚きだが、その驚異な力にも驚いた。
「怖い思いをさせて、ごめん」
「死ななかったから今回はこれだけで許します」
メルは俺の体をきゅっと抱きしめ、俺の髪をそっと撫でた。
背伸びしてまでやってくれるその行動が可愛らしくて。
俺はそっとキスをした。
メルが小さく声をあげてないているのが落ち着くまで、俺はそのままの体勢でいた。
ー*ー
また泣いて、困らせてしまった。
そんな思いと、カムイの優しさにほっとする自分がいた。
「あのね、メル。俺も話したいことがあるんだ」
「お話、ですか?」
「うん。俺は意識を失っている間、夢を視ていたんだ」
「夢...ですか?」
「うん。俺は独りで、黒い道を歩いていた」
私はカムイの言葉を最後まで聞くことにした。
「そのとき、メルに会いたいって思ったんだ」
「嬉しいです」
「そのとき、声がした。『あの子を頼むよ』って」
「...」
「多分、メルのおばあさんが助けてくれたんだと思う。だから、もう少し怪我がよくなったら」
「お墓参り、ですね」
「うん」
(それがおばあさまだったらいいのに)
だが、おばあさまはもう既にこの世にはいない。
それでも、カムイを救ってくれたのはおばあさまだと信じたい。
「いいおばあさんだね」
「ありがとうございます」
二人でしばらく見つめあって、ごく自然に唇が重なった。
「んっ...」
「っ、はあ...」
二人で長い長い口づけを交わした。
もう二度と離れないと伝えるように。
ずっとずっと幸せが続くように。
...永遠の愛を誓うように。
ー**ー
「おばあさん」
俺は今、メルのおばあさんのお墓まできている。
「おばあさま、ありがとうございます」
道が悪いのに、メルは俺が乗っている車椅子を押してここまできてくれた。
「メルを一生守り抜くと誓います。だから...メルをもらいます」
「...っ」
後ろでメルが照れているのを感じる。
「私はカムイのお嫁さんになります」
...この子はさらっとなんてことを言うのだろう。
「カムイ?耳まで真っ赤ですよ?」
本人は無自覚のようだ。
(本当に、こういう天然なところは変わらない)
俺は顔だけメルの方を向け...
「んっ!」
ちゅっとキスを落とした。
「い、いきなりは禁止です...」
「ごめん、ダメだった?」
「...むう」
「お願いだから、そんなにご機嫌ななめにならないで?」
「このくらいじゃ、不機嫌になんてなりません」
そう言ったメルは笑顔だった。
ー*ー
私はカムイの車椅子を押しながら話しかける。
「カムイが元気になったら、またお出かけしましょうね」
「そうだね。次はどこへ行こうか...」
二人でそんな話をしながら、お店へ行ってみた。
「せんせえ、足痛いの?」
「ううん、ほとんど痛くないよ。でも、まだ歩くのはダメだって言われたんだ」
「そっかー...。じゃあまた今度遊んでね!」
「検診は遊びじゃないんだけど...」
カムイは苦笑しつつ、その声は弾んでいた。
「俺はあっちの方を少し見てくるから、ちょっと待っててね」
「はい!」
私が一人で待っていると、男が二人やってきた。
「お姉さん一人?」
「人を待っています」
「それなら俺たちと遊ぼうよ」
「いやっ...」
強引に腕を捕まれ、どこかに連れ去られそうになったそのとき。
「おい、人の女に何手え出してんだ、あ?」
「ひいっ!すいませんでした!」
男たちはあっという間に去っていった。
「カムイ、お芝居上手です!」
「そうかな?怪我はない?」
「はい!ありがとうございます」
「...悪い虫がよってこないようにしておかないとね」
そう言うと、カムイは私の首に何かをつけた。
「ひゃっ...」
「これは、いつものお礼」
見ると、可愛らしいチョーカーがつけられていた。
「ありがとうございます!」
「メル」
「...?はい」
「これからもずっと一緒にいようね」
「はい!」
そうして私たちは家まで帰って、夕暮れの空の下...吸いこまれるようにキスをした。
そのあと二、三日は忙しかった。
ベンとナタリーに散々叱られてしまった。
「本当に死んだらどうするの!」
「カムイが死んだら、お嬢さんは誰が守るだよ?」
「二人とも、ごめん...」
それからエリックとアイリスがきて、調書をとってもらった。
「言葉は...だいぶ出るようになったようだな」
「うん、ありがとう」
「礼ならメルに言え」
「そう、だね」
そんなごたごたが落ち着いてきた頃、俺はメルと話すことにした。
「メル、ずっと聞きたかったんだ」
「はい」
「聞かせて、眼のこと」
「よく、分からないんです」
「分からない?」
メルは頷いてこう続けた。
「とにかく、『傷口を見つけて血を止めなくちゃ』って、そればかりで...もしかすると、『流れていく血を元に戻すことができたら』って考えたんです」
メルの思考に、能力が応えたのだろうか。
そういう考え方ができるメルにも驚きだが、その驚異な力にも驚いた。
「怖い思いをさせて、ごめん」
「死ななかったから今回はこれだけで許します」
メルは俺の体をきゅっと抱きしめ、俺の髪をそっと撫でた。
背伸びしてまでやってくれるその行動が可愛らしくて。
俺はそっとキスをした。
メルが小さく声をあげてないているのが落ち着くまで、俺はそのままの体勢でいた。
ー*ー
また泣いて、困らせてしまった。
そんな思いと、カムイの優しさにほっとする自分がいた。
「あのね、メル。俺も話したいことがあるんだ」
「お話、ですか?」
「うん。俺は意識を失っている間、夢を視ていたんだ」
「夢...ですか?」
「うん。俺は独りで、黒い道を歩いていた」
私はカムイの言葉を最後まで聞くことにした。
「そのとき、メルに会いたいって思ったんだ」
「嬉しいです」
「そのとき、声がした。『あの子を頼むよ』って」
「...」
「多分、メルのおばあさんが助けてくれたんだと思う。だから、もう少し怪我がよくなったら」
「お墓参り、ですね」
「うん」
(それがおばあさまだったらいいのに)
だが、おばあさまはもう既にこの世にはいない。
それでも、カムイを救ってくれたのはおばあさまだと信じたい。
「いいおばあさんだね」
「ありがとうございます」
二人でしばらく見つめあって、ごく自然に唇が重なった。
「んっ...」
「っ、はあ...」
二人で長い長い口づけを交わした。
もう二度と離れないと伝えるように。
ずっとずっと幸せが続くように。
...永遠の愛を誓うように。
ー**ー
「おばあさん」
俺は今、メルのおばあさんのお墓まできている。
「おばあさま、ありがとうございます」
道が悪いのに、メルは俺が乗っている車椅子を押してここまできてくれた。
「メルを一生守り抜くと誓います。だから...メルをもらいます」
「...っ」
後ろでメルが照れているのを感じる。
「私はカムイのお嫁さんになります」
...この子はさらっとなんてことを言うのだろう。
「カムイ?耳まで真っ赤ですよ?」
本人は無自覚のようだ。
(本当に、こういう天然なところは変わらない)
俺は顔だけメルの方を向け...
「んっ!」
ちゅっとキスを落とした。
「い、いきなりは禁止です...」
「ごめん、ダメだった?」
「...むう」
「お願いだから、そんなにご機嫌ななめにならないで?」
「このくらいじゃ、不機嫌になんてなりません」
そう言ったメルは笑顔だった。
ー*ー
私はカムイの車椅子を押しながら話しかける。
「カムイが元気になったら、またお出かけしましょうね」
「そうだね。次はどこへ行こうか...」
二人でそんな話をしながら、お店へ行ってみた。
「せんせえ、足痛いの?」
「ううん、ほとんど痛くないよ。でも、まだ歩くのはダメだって言われたんだ」
「そっかー...。じゃあまた今度遊んでね!」
「検診は遊びじゃないんだけど...」
カムイは苦笑しつつ、その声は弾んでいた。
「俺はあっちの方を少し見てくるから、ちょっと待っててね」
「はい!」
私が一人で待っていると、男が二人やってきた。
「お姉さん一人?」
「人を待っています」
「それなら俺たちと遊ぼうよ」
「いやっ...」
強引に腕を捕まれ、どこかに連れ去られそうになったそのとき。
「おい、人の女に何手え出してんだ、あ?」
「ひいっ!すいませんでした!」
男たちはあっという間に去っていった。
「カムイ、お芝居上手です!」
「そうかな?怪我はない?」
「はい!ありがとうございます」
「...悪い虫がよってこないようにしておかないとね」
そう言うと、カムイは私の首に何かをつけた。
「ひゃっ...」
「これは、いつものお礼」
見ると、可愛らしいチョーカーがつけられていた。
「ありがとうございます!」
「メル」
「...?はい」
「これからもずっと一緒にいようね」
「はい!」
そうして私たちは家まで帰って、夕暮れの空の下...吸いこまれるようにキスをした。
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