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Until the day when I get married.-Light of a new request-
第122話
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ー**ー
数日後。サマーフェスティバルのやり直しは、予定どおり行われることになった。
「メル、起きて」
「...ん、」
メルは珍しく、ぐっすりと寝ていた。
そっと前髪をはらうと、くすぐったそうに笑っていた。
(可愛い...)
俺はそっと顔を近づけ、メルの唇を食んだ。
「んっ...」
色っぽい声が零れるが、全く起きる気配がない。
俺はその場をそっと離れ、メルをそのまま寝かせることにした。
たっぷりのチーズをパンに塗り、オーブンでこんがり焼く。
意外とメルがお気に入りの朝食だ。
(あとはスープを作って...余ってたレタスでサラダでも作るか)
そんなことを考えていると、新聞が届いた音がした。
焼きあがるまで特にやることもないので、新聞を手に取る。
「...これは、」
そこには大きな見出しでこう書かれていた。
【未だ犯人見つからず!】
【ワイヤーにご注意ください】
普通の人たちには、ワイヤーなんて張られていても滅多なことでは分からないのに。
「おはようございます、カムイ」
「メル、おはよう。ご飯できたところだから、座っててね」
「はい!」
メルには見せない方がいいと思い、俺は新聞紙を隠した。
「丁度焼けてたよ」
俺は、どうすればいいのだろうか。
どうすべきなのだろうか...。
ー*ー
私は紅茶を淹れようと立ちあがった。
「メルはいいから、座ってて?」
「でも...カムイにしてもらってばかりでは申し訳ないです」
私がそう言うとカムイは一瞬驚いたような顔をしたが、私を椅子に座らせた。
「腕、痛むでしょ?」
「でも...」
するとカムイは私を引き寄せ、そのままキスをした。
「これ以上嫌だって言ったら...またこうして口を閉じさせるよ?」
「ご、ごめんなさい!」
私は恥ずかしくなり、思わず視線を逸らした。
そのまま大人しく座っていると、聞き覚えのあるノックが聞こえた。
二回...四回...二回。
「カムイ、エリックさんではありませんか?」
「そうだね、出てみるよ」
ー**ー
「どうしたの、エリック?こんな朝早くから...」
「すまない、至急伝えておきたいことがあってな」
どうやら、メアと色々話したらしい。
「朝食、一緒に食べる?」
「...すまない。昨日から何も食べていなかったから、腹が減っていた」
「そんなことだろうと思った」
エリックは様々な事件の報告書や発砲したことの始末書を書かなければならなくなっている。
そのうえ、通常業務も多忙を極めているはずだ。
「エリックさん、無理しないでくださいね...?」
「ああ。メルも、もう無茶して怪我するなよ?」
「...はい」
今の少しの間が気になったが、二人とも無理をしていると俺は思っている。
「ちょっと横になっていったら?そのままだと倒れちゃうよ?」
「...すまない、そうさせてもらおう」
俺は空き部屋にエリックを案内した。
「カムイは大丈夫ですか?」
「うん、平気だよ。ありがとう」
こういう時でも人に優しくできるメルは、本当にいい子だと思う。
「お皿片づけるから、待っててね」
俺はメルの頭を撫でた。
ー*ー
頭を撫でてくれたカムイは、あっという間に後片づけを済ませた。
「メル、もしよければだけど...今日からフェスティバルの仕切り直しがあるらしいんだ。騎士団の剣舞が今度こそ見られると思う。一緒に行かない?」
「...!行きたいです!」
「よし、それじゃあエリックが起きたら出掛けよう」
「はい!」
カムイはトランプを出してくれた。
「これで何かしていようか」
「はい」
ブラックジャックやポーカーのルールをおさらいしながら、ゆっくり話をした。
(こういう時間、久しぶりな気がします)
のんびりとした時の流れ...私はこういう時間が幸せだと知っている。
当たり前じゃないからこそ、幸せだと思う。
「カムイ」
「どうしたの?」
「私に色々なことを教えてくれて、ありがとうございます」
「改めて言われると、なんだか照れるな。俺の方こそ、いつもありがとう」
二人で微笑みあっていると、エリックさんが起きてきた。
(先程よりは元気になっている気がします)
「エリック、手伝えることがあったら言ってね」
「ありがとう」
エリックさんは巡回に戻っていった。
「さて、俺たちも行こうか」
「はい!」
ー**ー
俺たちが会場に行くと、騎士団が集まり剣舞前の最後の調整をしていた。
...人数が減ったのも一因だろう。
「あの格好って、暑くないんでしょうか?」
メルらしいと思うと、段々笑いがこみあげてきた。
「もう、真面目に聞いたのに...」
「ごめんごめん、可愛いことを言うなって思って」
俺は少しだけ拗ねた様子のメルをそっと撫でた。
「メル、はじまったみたいだよ」
「あれが、剣舞...すごいです!」
そのとき、メルのキラキラした表情が見られた。
(剣舞なんて、両親が死んでから見にきたことなかったな)
俺はメルを見つめながら、剣舞を見て昔のことを思い出していた。
数日後。サマーフェスティバルのやり直しは、予定どおり行われることになった。
「メル、起きて」
「...ん、」
メルは珍しく、ぐっすりと寝ていた。
そっと前髪をはらうと、くすぐったそうに笑っていた。
(可愛い...)
俺はそっと顔を近づけ、メルの唇を食んだ。
「んっ...」
色っぽい声が零れるが、全く起きる気配がない。
俺はその場をそっと離れ、メルをそのまま寝かせることにした。
たっぷりのチーズをパンに塗り、オーブンでこんがり焼く。
意外とメルがお気に入りの朝食だ。
(あとはスープを作って...余ってたレタスでサラダでも作るか)
そんなことを考えていると、新聞が届いた音がした。
焼きあがるまで特にやることもないので、新聞を手に取る。
「...これは、」
そこには大きな見出しでこう書かれていた。
【未だ犯人見つからず!】
【ワイヤーにご注意ください】
普通の人たちには、ワイヤーなんて張られていても滅多なことでは分からないのに。
「おはようございます、カムイ」
「メル、おはよう。ご飯できたところだから、座っててね」
「はい!」
メルには見せない方がいいと思い、俺は新聞紙を隠した。
「丁度焼けてたよ」
俺は、どうすればいいのだろうか。
どうすべきなのだろうか...。
ー*ー
私は紅茶を淹れようと立ちあがった。
「メルはいいから、座ってて?」
「でも...カムイにしてもらってばかりでは申し訳ないです」
私がそう言うとカムイは一瞬驚いたような顔をしたが、私を椅子に座らせた。
「腕、痛むでしょ?」
「でも...」
するとカムイは私を引き寄せ、そのままキスをした。
「これ以上嫌だって言ったら...またこうして口を閉じさせるよ?」
「ご、ごめんなさい!」
私は恥ずかしくなり、思わず視線を逸らした。
そのまま大人しく座っていると、聞き覚えのあるノックが聞こえた。
二回...四回...二回。
「カムイ、エリックさんではありませんか?」
「そうだね、出てみるよ」
ー**ー
「どうしたの、エリック?こんな朝早くから...」
「すまない、至急伝えておきたいことがあってな」
どうやら、メアと色々話したらしい。
「朝食、一緒に食べる?」
「...すまない。昨日から何も食べていなかったから、腹が減っていた」
「そんなことだろうと思った」
エリックは様々な事件の報告書や発砲したことの始末書を書かなければならなくなっている。
そのうえ、通常業務も多忙を極めているはずだ。
「エリックさん、無理しないでくださいね...?」
「ああ。メルも、もう無茶して怪我するなよ?」
「...はい」
今の少しの間が気になったが、二人とも無理をしていると俺は思っている。
「ちょっと横になっていったら?そのままだと倒れちゃうよ?」
「...すまない、そうさせてもらおう」
俺は空き部屋にエリックを案内した。
「カムイは大丈夫ですか?」
「うん、平気だよ。ありがとう」
こういう時でも人に優しくできるメルは、本当にいい子だと思う。
「お皿片づけるから、待っててね」
俺はメルの頭を撫でた。
ー*ー
頭を撫でてくれたカムイは、あっという間に後片づけを済ませた。
「メル、もしよければだけど...今日からフェスティバルの仕切り直しがあるらしいんだ。騎士団の剣舞が今度こそ見られると思う。一緒に行かない?」
「...!行きたいです!」
「よし、それじゃあエリックが起きたら出掛けよう」
「はい!」
カムイはトランプを出してくれた。
「これで何かしていようか」
「はい」
ブラックジャックやポーカーのルールをおさらいしながら、ゆっくり話をした。
(こういう時間、久しぶりな気がします)
のんびりとした時の流れ...私はこういう時間が幸せだと知っている。
当たり前じゃないからこそ、幸せだと思う。
「カムイ」
「どうしたの?」
「私に色々なことを教えてくれて、ありがとうございます」
「改めて言われると、なんだか照れるな。俺の方こそ、いつもありがとう」
二人で微笑みあっていると、エリックさんが起きてきた。
(先程よりは元気になっている気がします)
「エリック、手伝えることがあったら言ってね」
「ありがとう」
エリックさんは巡回に戻っていった。
「さて、俺たちも行こうか」
「はい!」
ー**ー
俺たちが会場に行くと、騎士団が集まり剣舞前の最後の調整をしていた。
...人数が減ったのも一因だろう。
「あの格好って、暑くないんでしょうか?」
メルらしいと思うと、段々笑いがこみあげてきた。
「もう、真面目に聞いたのに...」
「ごめんごめん、可愛いことを言うなって思って」
俺は少しだけ拗ねた様子のメルをそっと撫でた。
「メル、はじまったみたいだよ」
「あれが、剣舞...すごいです!」
そのとき、メルのキラキラした表情が見られた。
(剣舞なんて、両親が死んでから見にきたことなかったな)
俺はメルを見つめながら、剣舞を見て昔のことを思い出していた。
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