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Until the day when I get married.-Light of a new request-
第121話
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ー**ー
見慣れない景色。
晴れやかな空。
そして、
「カムイ」
「...!」
純白のドレスに身を包んだメル。
(俺はこの先一生、メルを幸せにする)
ベールをあげると、メルがいつものようににこにこしていた。
「カムイ」
「どうしたの?」
「...一緒に、幸せになりましょうね」
「そうだね」
俺は照れくさくなって下を向きそうになる。
そのとき、銃声が響いた。
聞こえるのは、みんなの悲鳴。
目の前を彩るのは、みんなの血。
白かったドレスが朱に染まる。
「メルっ...」
周りは全て、朱、赤、紅。
俺はメルに手を伸ばす...。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「...イ、...て...い」
「う...」
「...ムイ?」
「ぐっ...」
「カムイ!」
「...!」
俺は大量に汗をかいていた。
伸ばした手はメルが握っていてくれた。
(...夢か)
それにしても、嫌な夢だった。
「ごめん、メル。変な夢を見てて...」
「昔の夢ですか?」
「ううん。...ちょっと不吉な夢だったんだ」
「すごく辛そうでしたよ...?」
メルが心配そうに俺を見ているのが伝わってきた。
「もう平気だよ。メルが側にいてくれたから。ありがとう」
メルはまだ不安そうな顔をしていた。
「あまり眠れていないのではありませんか...?」
ー*ー
カムイがあまり寝ていないような気がする。
なんとなく、そう思った。
「ううん。メルと一緒に寝ていると、本当に安心できるんだ。...今日はたまたま嫌な夢を見ただけだよ」
「そうですか...」
カムイが聞かれたくないのなら、これ以上は聞かないでおこうと思った。
「何か作ろうか」
「ハニートーストを作りたいです」
「...分かった、そうしよう」
私の頭を撫でてくれたその手は、なんだかいつもより冷たいような気がした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「メル、カムイ!いる?」
「ナタリーさん、こんにちは」
カムイは診察で医務室へ行っていた。
「カムイは...仕事か。それで?何かあったの?」
「えっ...」
「メルを見ていれば分かるわ。あたしが思うに、二人の間に何かあったんでしょ」
ナタリーさんにバレてしまうなんて...私は隠すのが下手になったのかもしれない。
「実は...」
事件のことは話してはいけない気がしたので、カムイが眠れていないようだということだけ伝えた。
「それならいいものがあるわ!」
ナタリーさんは、小さな袋を私にくれた。
「いい香りですね」
「サシェっていうの。あたしが作ったから下手だけど、あげる!寝るときに枕元に置いてみて」
この香りを知っているような気がするが、どこで知ったのか分からなかった。
「ありがとうございます。やってみます」
「それじゃあ、あたしは帰るわ。...王子様が後ろに立ってるわよ」
「...?」
ナタリーさんが言っていた意味が分からなかったが、後ろを振り返った瞬間、その意味を理解した。
「カムイ!」
ー**ー
ナタリーとなにやら盛り上がっているようだったので、声をかけずに見守っていた。
それにナタリーが気づき、話が終わってしまったようだ。
「ごめん。話の途中だったんじゃない?」
「いえ、ちょうど終わったところだったので。カムイは診察は終わったんですか?」
「うん。さっききていたのは軽傷の人だったからね」
...しばらく沈黙がながれる。
メルが何か話そうとしている。
「メル、話して」
「これ、試してみませんか?」
それは、ラベンダーの香りがするサシェだった。
たしか、安眠効果があると言われているはずだ。
(俺のためにって考えてくれたのか)
俺は思わずメルを抱きしめた。
「メル、ありがとう」
「...!はい!」
このところ寝ていなかったのは事実だ。
『特別捜査官』としての報告書に『医師』としての診断書...書類仕事が大量に残っていたのだ。
「カムイ、緊張しているんですか...?」
「そう言うメルの心臓は、ばくばく言ってるよ?」
「...!」
メルが頬を赤らめてこちらをじっと見ている。
俺は惹きつけられたように、そのままキスをした。
「は、恥ずかしいです...」
「我慢できなかった」
メルは困ったような、照れているような表情をしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「さて、と」
メルの包帯を換えながら、俺はあの夢が何をさすのか考えていた。
(あの男を捕まえないといけないのか...)
どこにいるのかも分からない相手を追わなくてはいけないのは、正直言って不可能に思えた。
だが、あの男を捕まえなければ、あの夢が正夢になる可能性があることは否定できない。
「カムイ?」
「ごめん、終わったよ」
「ありがとうございます」
メルの笑顔を見て、今は目の前にいる事を考えようと思った。
「メル、今度フェスティバルがやり直されるらしいよ。...また一緒に行ってくれる?」
「はい!楽しみですね」
メルがとても嬉しそうにしているのを見て、俺もつられて笑みを溢した。
...このとき俺はまだ知らなかった。
これから訪れる新たな出会いと、最大であろう試練に。
見慣れない景色。
晴れやかな空。
そして、
「カムイ」
「...!」
純白のドレスに身を包んだメル。
(俺はこの先一生、メルを幸せにする)
ベールをあげると、メルがいつものようににこにこしていた。
「カムイ」
「どうしたの?」
「...一緒に、幸せになりましょうね」
「そうだね」
俺は照れくさくなって下を向きそうになる。
そのとき、銃声が響いた。
聞こえるのは、みんなの悲鳴。
目の前を彩るのは、みんなの血。
白かったドレスが朱に染まる。
「メルっ...」
周りは全て、朱、赤、紅。
俺はメルに手を伸ばす...。
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「...イ、...て...い」
「う...」
「...ムイ?」
「ぐっ...」
「カムイ!」
「...!」
俺は大量に汗をかいていた。
伸ばした手はメルが握っていてくれた。
(...夢か)
それにしても、嫌な夢だった。
「ごめん、メル。変な夢を見てて...」
「昔の夢ですか?」
「ううん。...ちょっと不吉な夢だったんだ」
「すごく辛そうでしたよ...?」
メルが心配そうに俺を見ているのが伝わってきた。
「もう平気だよ。メルが側にいてくれたから。ありがとう」
メルはまだ不安そうな顔をしていた。
「あまり眠れていないのではありませんか...?」
ー*ー
カムイがあまり寝ていないような気がする。
なんとなく、そう思った。
「ううん。メルと一緒に寝ていると、本当に安心できるんだ。...今日はたまたま嫌な夢を見ただけだよ」
「そうですか...」
カムイが聞かれたくないのなら、これ以上は聞かないでおこうと思った。
「何か作ろうか」
「ハニートーストを作りたいです」
「...分かった、そうしよう」
私の頭を撫でてくれたその手は、なんだかいつもより冷たいような気がした。
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「メル、カムイ!いる?」
「ナタリーさん、こんにちは」
カムイは診察で医務室へ行っていた。
「カムイは...仕事か。それで?何かあったの?」
「えっ...」
「メルを見ていれば分かるわ。あたしが思うに、二人の間に何かあったんでしょ」
ナタリーさんにバレてしまうなんて...私は隠すのが下手になったのかもしれない。
「実は...」
事件のことは話してはいけない気がしたので、カムイが眠れていないようだということだけ伝えた。
「それならいいものがあるわ!」
ナタリーさんは、小さな袋を私にくれた。
「いい香りですね」
「サシェっていうの。あたしが作ったから下手だけど、あげる!寝るときに枕元に置いてみて」
この香りを知っているような気がするが、どこで知ったのか分からなかった。
「ありがとうございます。やってみます」
「それじゃあ、あたしは帰るわ。...王子様が後ろに立ってるわよ」
「...?」
ナタリーさんが言っていた意味が分からなかったが、後ろを振り返った瞬間、その意味を理解した。
「カムイ!」
ー**ー
ナタリーとなにやら盛り上がっているようだったので、声をかけずに見守っていた。
それにナタリーが気づき、話が終わってしまったようだ。
「ごめん。話の途中だったんじゃない?」
「いえ、ちょうど終わったところだったので。カムイは診察は終わったんですか?」
「うん。さっききていたのは軽傷の人だったからね」
...しばらく沈黙がながれる。
メルが何か話そうとしている。
「メル、話して」
「これ、試してみませんか?」
それは、ラベンダーの香りがするサシェだった。
たしか、安眠効果があると言われているはずだ。
(俺のためにって考えてくれたのか)
俺は思わずメルを抱きしめた。
「メル、ありがとう」
「...!はい!」
このところ寝ていなかったのは事実だ。
『特別捜査官』としての報告書に『医師』としての診断書...書類仕事が大量に残っていたのだ。
「カムイ、緊張しているんですか...?」
「そう言うメルの心臓は、ばくばく言ってるよ?」
「...!」
メルが頬を赤らめてこちらをじっと見ている。
俺は惹きつけられたように、そのままキスをした。
「は、恥ずかしいです...」
「我慢できなかった」
メルは困ったような、照れているような表情をしていた。
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「さて、と」
メルの包帯を換えながら、俺はあの夢が何をさすのか考えていた。
(あの男を捕まえないといけないのか...)
どこにいるのかも分からない相手を追わなくてはいけないのは、正直言って不可能に思えた。
だが、あの男を捕まえなければ、あの夢が正夢になる可能性があることは否定できない。
「カムイ?」
「ごめん、終わったよ」
「ありがとうございます」
メルの笑顔を見て、今は目の前にいる事を考えようと思った。
「メル、今度フェスティバルがやり直されるらしいよ。...また一緒に行ってくれる?」
「はい!楽しみですね」
メルがとても嬉しそうにしているのを見て、俺もつられて笑みを溢した。
...このとき俺はまだ知らなかった。
これから訪れる新たな出会いと、最大であろう試練に。
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