路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Until the day when I get married.-New dark appearance-

第117話

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ー**ー
どうやらメルの左眼は、『バラバラになったものから瞬時に元の形を見いだす』だけではなく、『よく見ないと見えないものが視えてしまう』というものもあるらしい。
ワイヤーなんて、普通は細すぎてよく見ないと見えない。
(...そんなことより、さっきの奴等が犯人か)
「特徴は分かるか?」
「えっと...お顔に傷がありました。身長はエリックさんよりも大きかったと思います」
「...そうか」
どうやら当たりのようだ。
俺はどうするか迷った。
追うということは、メルを危険な目に遭わせるということだ。
...だが、そんなことを迷ったのは一瞬だった。
「カムイ、行きましょう!もしも誰かが危ないなら、私は止めたいです」
「メル...」
メルは真っ直ぐ俺を見て、決意したように言った。
(強いな、メルは)
「分かった。その代わり、俺から離れないでね」
「ありがとうございます」
「...行くぞ」
「は、はい...!」
エリックがいたことを忘れていた俺は、なんだか居たたまれない気持ちになった。
(今は事件に集中しないと...)
「一応メルにもこれを預けておく。何かあったら連絡してくれ」
「はい!」
ーーパレードまで、あと一時間五十三分。
ー*ー
私はさっきの人たちを探した。
(他のお二人はワイヤーを持っていませんでした)
つまり、顔に傷があった人さえ見つかればそれでいいのだ。
「メル、あの中にいる?」
カムイが指さしたのは、騎士団の人たちが集合している場所だった。
(あの方は違います、あの方も、あの方も...)
私は首を横にふった。
「そっか。なかなか見つかるものじゃないもんね」
「早く見つけないと、ですよね...?」
「そうだね。早い方が何もなく終わるかもしれないから...。ちょっと待ってね」
カムイが通信機に向かって話しかけようとしていたそのときだった。
『こちらエリック。部下が傷のある男を目撃。どうする?』
「どのあたり?」
『飲み物の出店のようだ』
「ワイン?」
『ああ。試飲ができるのは数ヵ所だけ...』
私はその間、また不思議な人を見つけた。
「カムイ」
「どうしたの?」
「あの方、なんだか様子がおかしい気がします」
ー**ー
俺には、ただの貴族にしか見えなかった。
「どこがおかしいの?」
「歩き方が、普通の貴族の方より早い気がします。それに...なんだか周りの方が真ん中の方を守るように歩いているような気がするんです」
メルの観察力は並外れている。
俺が全く気づいていなかった部分に、メルはすぐに気づいていた。
(そこまで細かく見ていなかったな)
「たしかにそう見えるね...。ちょっと待ってて」
俺は、その中心にいる男に声をかけた。
「あの、すみません」
「なんだね?」
怪訝そうな表情でこちらを見られている。
(周りの奴等はみんな銃を持ってるな)
「大変失礼いたしました。まさか国の重役の方がこんな場所に赴いていらっしゃるとは思っておらず、つい声をかけてしまったのです」
「...!貴様、何者だ!」
相手は焦燥している。
間違いない、彼が重役だ。
「メル...」
俺は人差し指をたて、メルに何も言わないようにお願いした。
メルはこくりと頷いてくれた。
「…Ci sono persone che uccidono. È un assassino utilizzando un filo. Fu probabilmente sepolto nei cavalieri. Si prega di guardare.」
「...!Che è proprio vero?」
「Sì, è vero. Si prega di guardare.」
「ありがとう。肝に銘じておくよ」
メルが不思議そうな顔をしている。
「大丈夫だよ、警戒してほしいってお願いしただけだから」
「今度、その言葉を教えてください」
「時間があるときにね」
ー*ー
カムイは今、どんな言葉を話したのだろうか。
私にはよく分からなかったが、エリックさんが私の通信機に話しかけてくれた。
「さっきのはとある国の言葉でな...。簡単に訳すと、『恐らく、騎士団のなかにワイヤーを使う暗殺者が紛れています』『それは本当か?』『はい。だから気をつけてください』...とまあ、こんなものだ」
「ありがとうございます」
エリックさんの訳のお陰で、さっきの人が偉い人だということはなんとなく分かった。
私は周りに騎士団の方が増えていることに気づいた。
「カムイ、もしかして...パレードはここからスタートですか?」
「そうだよ」
「それなら、ここで待っていればさっきの方もきますか?」
「...そうか、はじめから探さなくてもここにいればくるのか」
『俺もすぐ行く』
エリックさんが走る音がした。
カムイは私の手をしっかり繋ぐ。
「さっきも言ったけど、俺から離れないでね」
「はい!」
「あと、離す気もないから」
「...はい」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
男は一人、周りとは違った表情をしていた。
「どこにいるのかな...?もうすぐショータイムのはじまりだ!」
笑いを堪えるその男は、狂喜に満ちた目をしていた。











ーー実行まで、あと十三分。
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