158 / 220
Until the day when I get married.-New dark appearance-
第117話
しおりを挟む
ー**ー
どうやらメルの左眼は、『バラバラになったものから瞬時に元の形を見いだす』だけではなく、『よく見ないと見えないものが視えてしまう』というものもあるらしい。
ワイヤーなんて、普通は細すぎてよく見ないと見えない。
(...そんなことより、さっきの奴等が犯人か)
「特徴は分かるか?」
「えっと...お顔に傷がありました。身長はエリックさんよりも大きかったと思います」
「...そうか」
どうやら当たりのようだ。
俺はどうするか迷った。
追うということは、メルを危険な目に遭わせるということだ。
...だが、そんなことを迷ったのは一瞬だった。
「カムイ、行きましょう!もしも誰かが危ないなら、私は止めたいです」
「メル...」
メルは真っ直ぐ俺を見て、決意したように言った。
(強いな、メルは)
「分かった。その代わり、俺から離れないでね」
「ありがとうございます」
「...行くぞ」
「は、はい...!」
エリックがいたことを忘れていた俺は、なんだか居たたまれない気持ちになった。
(今は事件に集中しないと...)
「一応メルにもこれを預けておく。何かあったら連絡してくれ」
「はい!」
ーーパレードまで、あと一時間五十三分。
ー*ー
私はさっきの人たちを探した。
(他のお二人はワイヤーを持っていませんでした)
つまり、顔に傷があった人さえ見つかればそれでいいのだ。
「メル、あの中にいる?」
カムイが指さしたのは、騎士団の人たちが集合している場所だった。
(あの方は違います、あの方も、あの方も...)
私は首を横にふった。
「そっか。なかなか見つかるものじゃないもんね」
「早く見つけないと、ですよね...?」
「そうだね。早い方が何もなく終わるかもしれないから...。ちょっと待ってね」
カムイが通信機に向かって話しかけようとしていたそのときだった。
『こちらエリック。部下が傷のある男を目撃。どうする?』
「どのあたり?」
『飲み物の出店のようだ』
「ワイン?」
『ああ。試飲ができるのは数ヵ所だけ...』
私はその間、また不思議な人を見つけた。
「カムイ」
「どうしたの?」
「あの方、なんだか様子がおかしい気がします」
ー**ー
俺には、ただの貴族にしか見えなかった。
「どこがおかしいの?」
「歩き方が、普通の貴族の方より早い気がします。それに...なんだか周りの方が真ん中の方を守るように歩いているような気がするんです」
メルの観察力は並外れている。
俺が全く気づいていなかった部分に、メルはすぐに気づいていた。
(そこまで細かく見ていなかったな)
「たしかにそう見えるね...。ちょっと待ってて」
俺は、その中心にいる男に声をかけた。
「あの、すみません」
「なんだね?」
怪訝そうな表情でこちらを見られている。
(周りの奴等はみんな銃を持ってるな)
「大変失礼いたしました。まさか国の重役の方がこんな場所に赴いていらっしゃるとは思っておらず、つい声をかけてしまったのです」
「...!貴様、何者だ!」
相手は焦燥している。
間違いない、彼が重役だ。
「メル...」
俺は人差し指をたて、メルに何も言わないようにお願いした。
メルはこくりと頷いてくれた。
「…Ci sono persone che uccidono. È un assassino utilizzando un filo. Fu probabilmente sepolto nei cavalieri. Si prega di guardare.」
「...!Che è proprio vero?」
「Sì, è vero. Si prega di guardare.」
「ありがとう。肝に銘じておくよ」
メルが不思議そうな顔をしている。
「大丈夫だよ、警戒してほしいってお願いしただけだから」
「今度、その言葉を教えてください」
「時間があるときにね」
ー*ー
カムイは今、どんな言葉を話したのだろうか。
私にはよく分からなかったが、エリックさんが私の通信機に話しかけてくれた。
「さっきのはとある国の言葉でな...。簡単に訳すと、『恐らく、騎士団のなかにワイヤーを使う暗殺者が紛れています』『それは本当か?』『はい。だから気をつけてください』...とまあ、こんなものだ」
「ありがとうございます」
エリックさんの訳のお陰で、さっきの人が偉い人だということはなんとなく分かった。
私は周りに騎士団の方が増えていることに気づいた。
「カムイ、もしかして...パレードはここからスタートですか?」
「そうだよ」
「それなら、ここで待っていればさっきの方もきますか?」
「...そうか、はじめから探さなくてもここにいればくるのか」
『俺もすぐ行く』
エリックさんが走る音がした。
カムイは私の手をしっかり繋ぐ。
「さっきも言ったけど、俺から離れないでね」
「はい!」
「あと、離す気もないから」
「...はい」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
男は一人、周りとは違った表情をしていた。
「どこにいるのかな...?もうすぐショータイムのはじまりだ!」
笑いを堪えるその男は、狂喜に満ちた目をしていた。
ーー実行まで、あと十三分。
どうやらメルの左眼は、『バラバラになったものから瞬時に元の形を見いだす』だけではなく、『よく見ないと見えないものが視えてしまう』というものもあるらしい。
ワイヤーなんて、普通は細すぎてよく見ないと見えない。
(...そんなことより、さっきの奴等が犯人か)
「特徴は分かるか?」
「えっと...お顔に傷がありました。身長はエリックさんよりも大きかったと思います」
「...そうか」
どうやら当たりのようだ。
俺はどうするか迷った。
追うということは、メルを危険な目に遭わせるということだ。
...だが、そんなことを迷ったのは一瞬だった。
「カムイ、行きましょう!もしも誰かが危ないなら、私は止めたいです」
「メル...」
メルは真っ直ぐ俺を見て、決意したように言った。
(強いな、メルは)
「分かった。その代わり、俺から離れないでね」
「ありがとうございます」
「...行くぞ」
「は、はい...!」
エリックがいたことを忘れていた俺は、なんだか居たたまれない気持ちになった。
(今は事件に集中しないと...)
「一応メルにもこれを預けておく。何かあったら連絡してくれ」
「はい!」
ーーパレードまで、あと一時間五十三分。
ー*ー
私はさっきの人たちを探した。
(他のお二人はワイヤーを持っていませんでした)
つまり、顔に傷があった人さえ見つかればそれでいいのだ。
「メル、あの中にいる?」
カムイが指さしたのは、騎士団の人たちが集合している場所だった。
(あの方は違います、あの方も、あの方も...)
私は首を横にふった。
「そっか。なかなか見つかるものじゃないもんね」
「早く見つけないと、ですよね...?」
「そうだね。早い方が何もなく終わるかもしれないから...。ちょっと待ってね」
カムイが通信機に向かって話しかけようとしていたそのときだった。
『こちらエリック。部下が傷のある男を目撃。どうする?』
「どのあたり?」
『飲み物の出店のようだ』
「ワイン?」
『ああ。試飲ができるのは数ヵ所だけ...』
私はその間、また不思議な人を見つけた。
「カムイ」
「どうしたの?」
「あの方、なんだか様子がおかしい気がします」
ー**ー
俺には、ただの貴族にしか見えなかった。
「どこがおかしいの?」
「歩き方が、普通の貴族の方より早い気がします。それに...なんだか周りの方が真ん中の方を守るように歩いているような気がするんです」
メルの観察力は並外れている。
俺が全く気づいていなかった部分に、メルはすぐに気づいていた。
(そこまで細かく見ていなかったな)
「たしかにそう見えるね...。ちょっと待ってて」
俺は、その中心にいる男に声をかけた。
「あの、すみません」
「なんだね?」
怪訝そうな表情でこちらを見られている。
(周りの奴等はみんな銃を持ってるな)
「大変失礼いたしました。まさか国の重役の方がこんな場所に赴いていらっしゃるとは思っておらず、つい声をかけてしまったのです」
「...!貴様、何者だ!」
相手は焦燥している。
間違いない、彼が重役だ。
「メル...」
俺は人差し指をたて、メルに何も言わないようにお願いした。
メルはこくりと頷いてくれた。
「…Ci sono persone che uccidono. È un assassino utilizzando un filo. Fu probabilmente sepolto nei cavalieri. Si prega di guardare.」
「...!Che è proprio vero?」
「Sì, è vero. Si prega di guardare.」
「ありがとう。肝に銘じておくよ」
メルが不思議そうな顔をしている。
「大丈夫だよ、警戒してほしいってお願いしただけだから」
「今度、その言葉を教えてください」
「時間があるときにね」
ー*ー
カムイは今、どんな言葉を話したのだろうか。
私にはよく分からなかったが、エリックさんが私の通信機に話しかけてくれた。
「さっきのはとある国の言葉でな...。簡単に訳すと、『恐らく、騎士団のなかにワイヤーを使う暗殺者が紛れています』『それは本当か?』『はい。だから気をつけてください』...とまあ、こんなものだ」
「ありがとうございます」
エリックさんの訳のお陰で、さっきの人が偉い人だということはなんとなく分かった。
私は周りに騎士団の方が増えていることに気づいた。
「カムイ、もしかして...パレードはここからスタートですか?」
「そうだよ」
「それなら、ここで待っていればさっきの方もきますか?」
「...そうか、はじめから探さなくてもここにいればくるのか」
『俺もすぐ行く』
エリックさんが走る音がした。
カムイは私の手をしっかり繋ぐ。
「さっきも言ったけど、俺から離れないでね」
「はい!」
「あと、離す気もないから」
「...はい」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
男は一人、周りとは違った表情をしていた。
「どこにいるのかな...?もうすぐショータイムのはじまりだ!」
笑いを堪えるその男は、狂喜に満ちた目をしていた。
ーー実行まで、あと十三分。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
物置小屋
黒蝶
大衆娯楽
言葉にはきっと色んな力があるのだと証明したい。
けれど私は、失声症でもうやりたかった仕事を目指せない...。
そもそももう自分じゃただ読みあげることすら叶わない。
どうせ眠ってしまうなら、誰かに使ってもらおう。
ーーここは、そんな作者が希望をこめた台詞や台本の物置小屋。
1人向けから演劇向けまで、色々な種類のものを書いていきます。
時々、書くかどうか迷っている物語もあげるかもしれません。
使いたいものがあれば声をかけてください。
リクエスト、常時受け付けます。
お断りさせていただく場合もありますが、できるだけやってみますので読みたい話を教えていただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる