路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Until the day when I get married.-New dark appearance-

第116話

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ー**ー
フェスティバルは三日間行われる。
初日の今日...剣舞が行われる。
つまり、今日捕まえてしまえば、残りの日は自由にできるということだ。
(メルにバレないように、なんとか誤魔化さないと)
「おはようございます、カムイ」
「おはよう。今日は朝食を少なめにしたよ。何かいいものが売ってたらいいんだけど...」
「楽しみです!」
メルがとてもわくわくしているのが見ていてよく分かった。
その気持ちを壊さない為にも、早く捕まえたい。
(そういえば...射的の話をしたとき、やったことないって言ってたな)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一時間後、俺はメルの手をひいて街を歩いていた。
「メル、具合が悪くなったらすぐ言ってね」
「ありがとうございます」
俺は辺りを見回す。
すぐ近くに射的の店を見つけた。
「メル、やってみようか」
「私に、できるでしょうか...」
「ちゃんと教えるから...ね?」
「分かりました」
メルはぎこちない動きをしている。
やはり緊張しているようだ。
俺は耳につけている通信機の電源を入れた。
「エリック、おはよう。俺は今、射的スペースにいるよ」
『俺はガレットの店だ』
「今のところ不審者及び不審物はなし。そっちは?」
『こちらも同じくだ。それより...メルが困ってるみたいだぞ?』
メルの方を見ると、店員に声をかけられていた。
(俺の奥さんには、すぐに悪いやつがよってくる...)
ー*ー
「あの、えっと...」
「俺と回らない?嫌?」
「一緒にきている人がいるので...」
「その人は置いとけばいいじゃん!だから...」
ずっと言いよられてしまい、私は断りきれずに困っていた。
私はぬいぐるみがほしくて見ていただけだったのだけれど、話しかけられた瞬間から、恐怖を感じてしまっていた。
どうしようと泣きそうになったそのとき、明らかに不機嫌そうな足音が聞こえてきた。
「俺の彼女に何の用かな?」
「ああ、失礼。...で、あんたやるのか?」
「...ああ」
「カムイ...?」
なんだかカムイが少しだけ怖い。
(顔は笑っているのに、笑っていない気がします)
「...」
カムイが無言で銃を構える。
ーーパン!パン!パン!
全ての弾が私が見ていたぬいぐるみに当たって、ぬいぐるみが倒れた。
「なっ...」
「すごいです!」
「はい、どうぞ。メルが見てたの、ちゃんと分かってたから」
「ありがとうございます...!」
私たちはすぐにそのお店から離れて、カムイがとってくれたくまのぬいぐるみを抱えた。
「ごめんね、メル...やり方を教えるって言っておきながら、あの店主に腹がたって自分でやっちゃった」
カムイが苦笑いしながら私の頭を撫でてくれた。
「おまえらしいな」
「エリックさん!」
ー**ー
「エリック、なんでここに...」
「偶然通りかかっただけだ」
耳元を指さしながら、エリックはそう言った。
(さっきまでの会話を元に、通信機で探りながらきたのか)
「それは、カムイにやってもらったのか?」
「はい!カムイがとってくれました」
メルはにこにこしながらエリックに言っていた。
エリックがここまで直接きたのは、きっと俺が怒って問題を起こさないか見にきたわけじゃない。
「メル、どのお店に行きたいか、ここから見ててくれる?」
「はい!」
メルの目が露店に向いている間、俺はエリックに話しかけた。
「問題発生?」
「ああ。実は...いいニュースと悪いニュースがある」
...嫌な予感しかしない。
「まず、今日の標的になる人物が恐らく特定できた」
「それがいいニュース?」
「ああ。だが、その相手というのが...お忍びできている国家運営に携わる人間らしい」
「それって、すごくまずいんじゃ...」
「最悪だ。紋章等も全て外しているらしい」
一般市民にしか見えない人間の中から、国の重鎮を探す?
...ほぼ不可能だ。
(さて、どうするか)
ー*ー
「カム、」
振り返ってみると、エリックさんもカムイもなんだか深刻そうな顔をしていた。
「お二人とも、何かあったんですか...?」
「ううん、なんでもないよ。興味があるお店は見つけた?」
「はい!」
「それなら、そのお店へ行こうか。エリックも一緒に行こうよ」
「ああ」
三人でお店に向かっていると、剣を持った人たちとすれ違う。
(騎士団の方たちでしょうか?)
私はそのとき、よろけてしまった。
「...っ」
眼帯が外れて、一瞬だけ嫌いな左眼が見えてしまった。
「メル、大丈夫?」
「...はい」
そのとき見えたものがあった。
「カムイ、さっきの人たちを追いかけたいのですが...」
さっきすれ違った人のなかで、一人なんだか怪しい人がいた。
「どうしてなのか、聞いてもいい?」
「剣舞って、ワイヤーは必要ないですよね...?」
私は眼帯を結び直して立ちあがる。
「ああ、ワイヤーは使わないな」
「メル、まさか...」
二人に私は視えたものを話した。
「さっきすれ違った騎士団の方のなかに、ワイヤーを持っていた方がいました」













ーー実行まで、あと二時間二十七分。
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