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Until the day when I get married.-New dark appearance-
第114話
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ー**ー
真夜中...メルが眠ったのを確認して、俺は通信機を手にとった。
「エリック、起きてる?」
『どうした?』
「...メアの父親の特徴を教えて」
『だが、それではメルは...』
「メルには言わないでね。だけど俺は、どちらかを...『メアとの約束』も『メルとの時間』も捨てるようなことはできない」
普通なら、どちらかを選択するべきなのだろう。
だが、俺はどちらも諦めない。
メアの父親を捕まえるのも、メルと精一杯楽しむのも。
ただ、メルが知ればきっと手伝うと言って聞かないに違いない。
だから...
『背中に十字架の火傷。あと、左頬に十字架の切り傷があるらしい』
「分かった、できるだけ探してみる。ありがとう。それと、ごめん」
『何を謝る必要がある?別に悪いことをしているわけではないだろう、俺たちは友人だからな』
「...ありがとう」
個人的な事情なのに、エリックはいつだって協力してくれる。
(やっぱりエリックは、正義の味方だ)
ー*ー
朝起きると、隣で寝ているはずのカムイがいなかった。
「カムイ...?」
(診療所の方から音がします)
しばらくして、子どもの泣き声が聞こえた。
何かを片づける音、お礼の言葉...。
私は朝食を作ることにした。
「おはようございます。どなたか怪我されてたんですか...?」
「ああ、メル。おはよう...。木から落ちて骨折した子がきてたんだけど、『痛いのは嫌だ』って大騒ぎされちゃって...」
カムイは疲れているようだった。
「紅茶を淹れますね」
カムイが私の紅茶で元気になってくれればと思った。
「ありがとう」
カムイはいつものように私の頭を撫でてくれたけれど、何かが違うように思えた。
(どうしてでしょう?なんだかざわざわします...)
「メル?」
「...!今日はホットサンドを作ってみたんです」
「ありがとう」
カムイは笑顔で私の方を見てくれた。
(疲れがとれたようで、よかったです)
でも、私が感じた違和感の正体は結局分からなかった。
ー**ー
まさか朝から急患がくるとは思っていなかった。
メルが朝食を作ってくれたのを知って、申し訳なく思った。
「今日は俺が作る番だったのに...ごめんね」
「いえ、気にしないでください!カムイはお仕事だったんですから」
メルはいつものようににこにこしながらそう言ってくれた。
どうやら、気づかれていないようだ。
「もうすぐフェスティバルだね。それもあって、街がいつも以上に賑わっているみたい。あとで行ってみる?」
「はい!」
俺たちは朝食後、街へとくりだした。
ー*ー
「わあ...」
それには、私が見たことがなかった世界が広がっていた。
小さなお店、キラキラした飾り...。
何より、街の人たちがいつも以上に幸せそうに笑っていた。
「サマーフェスティバルの会場を見るのは初めて?」
「はい!とってもキラキラしていますね!」
小さな子どもも、おじいさんおばあさんも...みんなの笑顔でいっぱいだった。
(クリスマスとはまた違った雰囲気です)
「こっちへ行ってみよう」
カムイが私の手をひいてくれる。
そのまま歩いていると、エリックさんに会った。
「こんにちは」
「二人もきたのか」
「エリックは仕事?」
「...ああ。巡回も仕事のうちだからな」
「...そっか」
「じゃあな。メル、当日はカムイとフェスティバルを楽しめよ」
「ありがとうございます」
エリックさんは忙しそうに、私たちが歩いてきた方向へと行ってしまった。
「エリックは、当日の警備担当なんだ。毎年してるんだよ」
「そうなんですか...」
「だから、当日は何か差し入れを持っていこうか」
「はい!」
私は今から楽しみになってきた。
ー**ー
エリックは、メルに話さないでいてくれた。
(ありがとう、エリック)
メルは初めて見るものが多いのか、目をキラキラとさせて辺りを見回している。
「カムイ、あの小さなお店みたいなものは...」
「あれは出店だよ。食べものとか飲み物とか...あとは、当日にならないと分からないものが多いかな」
メルはとてもわくわくした様子で俺の隣を歩いていた。
...可愛い。
今すぐこれでもかと言うほど撫でたい。
(当日までに、エリックに警備の状態を聞いておかないとな...)
俺はメルの側を離れない。
だがやはり、メアの父親も捕まえたい。
欲張りだと言われてしまうだろうか。
「カムイ」
メルの方を見ると、にこっとしていた。
...メルに気づかれてはいけない。
だが俺は、隠しとおせる自信がなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「お疲れ様でした!」
俺も一応、周りのやつに合わせて、声を出す。
騎士団なんてどうでもいいが...今回仕入れた情報は、とてつもなく大きかった。
お忍びでくるターゲットを、この手で殺す。
考えただけで、俺は興奮した。
「愉しいフェスティバルまで、あと少しだ」
俺の口には、笑みが浮かんでいることだろう。
俺はすぐさま周りに溶けこんだ。
...これから愉しみで眠れそうにない。
ーーフェスティバルまで、あと三日。
真夜中...メルが眠ったのを確認して、俺は通信機を手にとった。
「エリック、起きてる?」
『どうした?』
「...メアの父親の特徴を教えて」
『だが、それではメルは...』
「メルには言わないでね。だけど俺は、どちらかを...『メアとの約束』も『メルとの時間』も捨てるようなことはできない」
普通なら、どちらかを選択するべきなのだろう。
だが、俺はどちらも諦めない。
メアの父親を捕まえるのも、メルと精一杯楽しむのも。
ただ、メルが知ればきっと手伝うと言って聞かないに違いない。
だから...
『背中に十字架の火傷。あと、左頬に十字架の切り傷があるらしい』
「分かった、できるだけ探してみる。ありがとう。それと、ごめん」
『何を謝る必要がある?別に悪いことをしているわけではないだろう、俺たちは友人だからな』
「...ありがとう」
個人的な事情なのに、エリックはいつだって協力してくれる。
(やっぱりエリックは、正義の味方だ)
ー*ー
朝起きると、隣で寝ているはずのカムイがいなかった。
「カムイ...?」
(診療所の方から音がします)
しばらくして、子どもの泣き声が聞こえた。
何かを片づける音、お礼の言葉...。
私は朝食を作ることにした。
「おはようございます。どなたか怪我されてたんですか...?」
「ああ、メル。おはよう...。木から落ちて骨折した子がきてたんだけど、『痛いのは嫌だ』って大騒ぎされちゃって...」
カムイは疲れているようだった。
「紅茶を淹れますね」
カムイが私の紅茶で元気になってくれればと思った。
「ありがとう」
カムイはいつものように私の頭を撫でてくれたけれど、何かが違うように思えた。
(どうしてでしょう?なんだかざわざわします...)
「メル?」
「...!今日はホットサンドを作ってみたんです」
「ありがとう」
カムイは笑顔で私の方を見てくれた。
(疲れがとれたようで、よかったです)
でも、私が感じた違和感の正体は結局分からなかった。
ー**ー
まさか朝から急患がくるとは思っていなかった。
メルが朝食を作ってくれたのを知って、申し訳なく思った。
「今日は俺が作る番だったのに...ごめんね」
「いえ、気にしないでください!カムイはお仕事だったんですから」
メルはいつものようににこにこしながらそう言ってくれた。
どうやら、気づかれていないようだ。
「もうすぐフェスティバルだね。それもあって、街がいつも以上に賑わっているみたい。あとで行ってみる?」
「はい!」
俺たちは朝食後、街へとくりだした。
ー*ー
「わあ...」
それには、私が見たことがなかった世界が広がっていた。
小さなお店、キラキラした飾り...。
何より、街の人たちがいつも以上に幸せそうに笑っていた。
「サマーフェスティバルの会場を見るのは初めて?」
「はい!とってもキラキラしていますね!」
小さな子どもも、おじいさんおばあさんも...みんなの笑顔でいっぱいだった。
(クリスマスとはまた違った雰囲気です)
「こっちへ行ってみよう」
カムイが私の手をひいてくれる。
そのまま歩いていると、エリックさんに会った。
「こんにちは」
「二人もきたのか」
「エリックは仕事?」
「...ああ。巡回も仕事のうちだからな」
「...そっか」
「じゃあな。メル、当日はカムイとフェスティバルを楽しめよ」
「ありがとうございます」
エリックさんは忙しそうに、私たちが歩いてきた方向へと行ってしまった。
「エリックは、当日の警備担当なんだ。毎年してるんだよ」
「そうなんですか...」
「だから、当日は何か差し入れを持っていこうか」
「はい!」
私は今から楽しみになってきた。
ー**ー
エリックは、メルに話さないでいてくれた。
(ありがとう、エリック)
メルは初めて見るものが多いのか、目をキラキラとさせて辺りを見回している。
「カムイ、あの小さなお店みたいなものは...」
「あれは出店だよ。食べものとか飲み物とか...あとは、当日にならないと分からないものが多いかな」
メルはとてもわくわくした様子で俺の隣を歩いていた。
...可愛い。
今すぐこれでもかと言うほど撫でたい。
(当日までに、エリックに警備の状態を聞いておかないとな...)
俺はメルの側を離れない。
だがやはり、メアの父親も捕まえたい。
欲張りだと言われてしまうだろうか。
「カムイ」
メルの方を見ると、にこっとしていた。
...メルに気づかれてはいけない。
だが俺は、隠しとおせる自信がなかった。
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「お疲れ様でした!」
俺も一応、周りのやつに合わせて、声を出す。
騎士団なんてどうでもいいが...今回仕入れた情報は、とてつもなく大きかった。
お忍びでくるターゲットを、この手で殺す。
考えただけで、俺は興奮した。
「愉しいフェスティバルまで、あと少しだ」
俺の口には、笑みが浮かんでいることだろう。
俺はすぐさま周りに溶けこんだ。
...これから愉しみで眠れそうにない。
ーーフェスティバルまで、あと三日。
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