路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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One Room-black-

act.2 『好きな食べ物』(メル×カムイ×黒羽×渚×白玉)

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ー**ー
俺は、いつの間にか小さな部屋ができているのを見つけた。
「少しだけ、二人で話してきてもいいですか?」
▼「別にかまわない」
「いってらっしゃい」
俺はメルの腕をひっぱって、小部屋へと入った。
「材料は...なんでも揃ってるみたいだ」
「そうなんですね...」
先程少しだけ覗いた冷蔵庫の中には、大量の食材が入っていた。
「メルが好きな食べ物から作る?それとも、俺のでかまわないかな?」
「カムイの、でお願いします」
「分かった。じゃあ...もう暖かくなってきたから、あまり時期ではないけど、メルのマカロニグラタンがいいな」
「えっと、」
「...流石にそれは無理か。俺はスープでも作るよ。メルはどうするの?」
「やっぱり、カムイのハンバーグがいいです!」
「よし、それにしよう」
俺たちは話がまとまったところで部屋を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
▼「...それで、俺たちは何をすればいい?」
「といっても、私...」
二人は、特に黒羽さんはキッチンを見て困惑しているようだった。
▼「俺たちが住んでいる場所とは使い方が違うものでな、黒羽はこのガスコンロを使えない」
「見たことはあるんだけど、私はIHしか使ったことがないから...」
「アイエイチ、ですか?」
▼「やはり、おまえらの所にはないようだな」
俺たちの町より、文明が進んでいるということだろうか。
「それじゃあ、具材の方をお願いしてもいいですか?」
▼「ああ。黒羽、みじん切りくらいならできるだろ」
「うん」
「メル、いつもどおりにやっていこうね」
「はい!」
俺は包丁をかまえた。
ー*ー
「よいしょっと...」
四人分の材料となると、結構な量になった。
私が混ぜていると、スープを作っている方から声がした。
▼「白玉、大人しくしろ!」
その方を見てみると、白玉さんがスープ鍋に飛びこもうとしていた。
「...っ」
ぱしゃ、と飛沫がはねてしまい、黒羽さんが火傷してしまった。
▼「すまない。普段ならこんなことはしないのに...」
「黒羽さん、こっちへ」
「でも、白玉を止めないと...」
「手当てが先、でしょ?」
カムイが黒羽さんの手当てをはじめた。
(私も、私にできることをしましょう)
「あの、渚さん」
▼「...あいつは、医者かなにかか?」
「はい、もう一つお仕事がありますが...」
▼「ポケットに仕舞ってあるナイフを見れば分かる。特別捜査官か何かだろう?」
「すごい、初対面の人に見破られたのは初めてです」
いつの間にか、カムイが戻ってきていた。
▼「...俺も、同じような仕事をしているからな」
「...成る程」
白玉さんが、またバタバタとしはじめた。
今度はオーブンに入ろうとしている。
「人参あげるから、ちょっと待っててね...」
「私もお手伝いします」
私はスープの材料の中から、人参を取り出した。
スティック状に切り、白玉さんの口元に持っていく。
「はい、どうぞ」
白玉はもぐもぐと食べている。
そのあと紙を取り出して、何かを書きはじめた。
『ありがとう』
「...!白玉さん、文字が分かるんですね!」
白玉さんは頷くような動きをしてくれた。
▼「おまえ、これが読めるのか?」
「...?はい」
▼「そうか。で、一つ聞きたいんだが...何故ハンバーグが好きなんだ?まあ、理由がないならそれでいいんだが」
「...カムイと一緒に作るとき、一番楽しく作れるからです」
▼「そうか」
「...スープ、できました」
ー**ー
俺はスープを皿に盛りつけた。
「カムイくんって、お料理上手なんだね」
「そうですか?」
「カムイが作るものは、とっても美味しいんです」
メルがにこにこしながら黒羽さんに説明している。
少し、恥ずかしくなってきた。
▼「で、おまえが好きな食べ物はスープなのか?」
「いいえ。グラタンが好きなんですけど...今は時期ではないので」
「どうしてグラタンが好きなの?」
「メルが一番最初に作ってくれたものだからです」
「二人とも仲良しだね」
黒羽さんはふわりと笑って、片手で白玉に人参をあげながら普通に会話をしていた。
▼「黒羽」
「ん?」
▼「おまえも慣れたな」
「そうかな?」
▼「ああ。はじめの頃はあたふたしていただろう」
「それ、私が『ピー』だったからで...」
「『ピー』だったんですか?」
「あ!」
黒羽さんは、しまったというような顔をしている。
「『ピー』だったということは...なんだか運命的な恋ですね!」
俺はメルらしいなと思い、くすっと笑ってしまった。
▼「その、まあ、なんだ。取り敢えず、そこはあまり気にするな」
「分かりました」
「それにしても...このソース、とっても美味しいね!」
「ありがとうございます!カムイが教えてくれたソースなんです」
メルには、デミグラスソースの作り方を教えたことがあった。
メルはしっかりと覚えていてくれたらしい。
【そろそろお時間です】
一枚の紙がそう告げる。
「あ...」
▼「なら、俺たちはこれで」
「あの!...また、会ってくれますか?」
メルの突然の言葉に二人は驚いた表情をしていたが、やがて口を開いた。
「またくるね」
▼「...機会があればな」
『またね』
二人と一匹の姿は、どんどん遠ざかっていった。
「...カムイ」
「どうしたの?」
「私、楽しかったです」
「そんなに不安そうにしなくても、また会えるよ。時間があるときに、またこようね」
「...はい」
俺はメルをそっと撫でた。
それから二人で食器を洗い、そのまま帰路につく。
(何故だろう。また会えそうな気がするんだよな...)
「カムイ、手...繋いでください」
「うん」
俺たちは手を繋ぐ。
いつも見ている夕焼けが、俺たちにはいつもより少しだけ寂しくうつった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ねえ、渚」
▼「なんだ?」
『Room』を出たあと。
「メルちゃん、白玉が書いたものが読めるって言ってたよね?」
▼「ああ」
「...ということは、言語は私たちと同じ、日本語なのかな?」
▼「さあな」
「また会えるといいよね」
▼「...まあ、今日の時間は悪くなかった」
二人は手を繋ぐ。
白玉は渚に抱きかかえられ、そのままぐっすりと眠っていた。
夕暮れ時、二人は今日の出来事を話しながら、また会える日を楽しみにしようと誓ったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読者様方、こんばんは。

カムイが好きな『メルが作ったマカロニグラタン』は第6話参照、メルが好きな『カムイが作ったハンバーグ』は第23話参照です。
今の季節作ると熱い...と思い、今回はハンバーグを作る路線でいきました。
料理の場面が思ったより出せませんでした。
ごめんなさい。


...少しだけ、渚ルートの紹介を書いておこうと思います。
渚は、基本強そうに見えますが、案外寂しがり屋さんです。
渚ルートでは、彼のそういった一面がよく見えると思います。
白玉は渚ルートではほぼ毎回登場するのですが、今のところ、文字が書けるのはこのルートのみです。
お仕事はカムイと似たようなもので、表は漢方屋、裏は...といったところです。

今回早速、『ピー』という自主規制音ふうに伏せ字を入れましたが、作品のタイトルを見ていただければ、すぐに答えが分かります。
次回は他のキャラクターを出すのか、それともこのままでいくのか...少し悩んでいます。
同じキャラクターばかりをうめるより、色々なキャラクターをうめた方がいいかもしれませんね。
お付き合いいただきありがとうございました。
質問の方は色々な場所で受けつけていますので、何かあれば気軽に書きこんでください。
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