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Until the day when I get married.-New dark appearance-
第104話
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ー**ー
俺はメルの手を部屋に入るまで離さなかった。
「あの、カムイ」
「どうしたの?」
「その、ご飯やお風呂は...」
「お風呂はあそこだよ。先に入っておいで」
「はい!」
メルはパタパタとバスルームへと向かった。
(メルが出た頃にディナーがくるかな)
ナタリーたちの結婚式の時に気づいたのだが、メルはたしかにマナーについて詳しい。
もしかすると俺よりもマナーについて詳しいのではと思う。
ただ、人が多いところはやはり緊張して喋れなくなってしまうようなので、夕食は部屋に運んでもらうことにしたのだった。
これならマナーもそこまで堅くしなくてもいいし、なによりメルと話しながら食事ができる。
...エリックには独占欲だと言われてしまったけれど。
(さて、メルがくるまで何をしようかな?)
俺は途中で買った林檎をむくことにした。
ー*ー
「ふう...」
馬車にずっと乗っていたせいなのか、少しだけ傷が痛む。
カムイには何度も謝らないでほしいと伝えているけれど、包帯を換えてもらう度にカムイが辛そうにしているのが目にはいる。
私は湯船をちゃぷちゃぷさせながら、ずっと考えていた。
...どうすればカムイが自分を責めないでいてくれるのか。
(...こういうときは、やっぱりノートを使いましょう)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「いいお湯でした」
「あれ?もう出ちゃったの?」
「いけませんでしたか...?」
「ううん!そういうことじゃなくて、もっとゆっくり入ってもよかったのになって...」
(やっぱりカムイは優しいです)
「色々なお部屋、見ていてもいいですか...?」
「勿論」
「ありがとうございます」
私は自分の荷物にこっそり忍ばせておいたノートとペンをとり、ベッドルームだと予想した部屋へと向かった。
ー**ー
俺は隠しておいた林檎を手にとり、作業を再開した。
(普通に切るよりは...)
俺は細かく切った林檎を並べていく。
仕上げに蜂蜜をかけて完成だ。
「メル、ちょっといいかな?」
「...?」
メルがちょこんと扉から顔を出した。
...やはり可愛い。
そのまま抱きしめてしまいたいほど、可愛い。
「林檎、食べる?」
「わあ...」
俺は、細かく切った林檎を花びらに見立て、花に見えるように並べた...つもりだ。
小さめの林檎で作ったので、流石に満腹になることはないと思う。
「綺麗なお花の形ですね」
メルはにこにこしながら言ってくれた。
(よかった、失敗しなくて)
「なんだか食べてしまうのが勿体無いです...」
メルがじっと林檎を見つめているのを、俺は遠くから見ていた。
「お客様、夕食をお持ちしました!」
(残念。最近のルームサービスは早いんだな...)
「メル、先にご飯にしよう」
「え?ここで食べられるんですか?」
「そうだよ。...ありがとうございます」
「仲のいいご夫婦ですね」
「...はい」
俺はなんとかそう答えたものの、その場から去りたいほど照れてしまった。
メルも先程から黙ってしまっている。
「と、取り敢えず食べようか」
「はい」
ー*ー
「はわわわ...このお魚、とってもじゅわじゅわです!」
「白身魚のポワレとしか書かれてないから、何の魚かは定かじゃないけど、確かに美味しいね」
ほかほかの魚に、温かいパン。
それに、ひんやりとしたデザート...。
「カムイ、これって...」
「それは、ジェラートっていうんだよ。冷たくて、甘い。多分これは、ラズベリー味じゃないかな?」
「美味しいです!」
「慌てなくても大丈夫だよ」
カムイがくすっと笑っているのを見て、少しだけ恥ずかしくなってしまった。
「私だけがはしゃいでるみたいです...」
カムイはいつでも冷静だから仕方ないとは思う。
でも、なんだか私ばかりが楽しんでいるようで。
それがいけないことに思えてきて...。
つい、口から言葉が出てしまっていた。
「これでも、俺だってはしゃいでるんだけどな...」
「え?」
「メルと二人きりで、邪魔がはいることもない。久しぶりに二人で過ごせて、俺も楽しいよ」
「...!」
ー**ー
メルがぱあっと明るくなる。
...これでいい。
メルが楽しんでくれないと、俺も楽しくない。
それに、意味がない。
食事が終わったあと、メルがいつものように話しかけてきた。
「カムイ」
「ん?」
「大好きです!」
「...!」
いきなり抱きつかれたうえに、『大好き』なんて言われて...俺はおもわず勢いで深く口づけてしまった。
「はぁ...んっ...」
「俺から離れないで」
俺が強く抱きしめると、メルは小さく頷いた。
俺は、失うのが怖い。
だが、このぬくもりを手放すつもりもない。
「ごめんね、嫌じゃなかった?」
「はい。でも...少しだけ恥ずかしかったです」
「ごめんね。あ、お風呂に入ってくるね!俺、汗くさかったでしょ?ごめんね」
「私は、嬉しかったですよ」
「またあとで、色々話そう」
「はい!」
俺は恥ずかしさを隠しながら、急いでバスルームへと向かった。
俺はメルの手を部屋に入るまで離さなかった。
「あの、カムイ」
「どうしたの?」
「その、ご飯やお風呂は...」
「お風呂はあそこだよ。先に入っておいで」
「はい!」
メルはパタパタとバスルームへと向かった。
(メルが出た頃にディナーがくるかな)
ナタリーたちの結婚式の時に気づいたのだが、メルはたしかにマナーについて詳しい。
もしかすると俺よりもマナーについて詳しいのではと思う。
ただ、人が多いところはやはり緊張して喋れなくなってしまうようなので、夕食は部屋に運んでもらうことにしたのだった。
これならマナーもそこまで堅くしなくてもいいし、なによりメルと話しながら食事ができる。
...エリックには独占欲だと言われてしまったけれど。
(さて、メルがくるまで何をしようかな?)
俺は途中で買った林檎をむくことにした。
ー*ー
「ふう...」
馬車にずっと乗っていたせいなのか、少しだけ傷が痛む。
カムイには何度も謝らないでほしいと伝えているけれど、包帯を換えてもらう度にカムイが辛そうにしているのが目にはいる。
私は湯船をちゃぷちゃぷさせながら、ずっと考えていた。
...どうすればカムイが自分を責めないでいてくれるのか。
(...こういうときは、やっぱりノートを使いましょう)
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「いいお湯でした」
「あれ?もう出ちゃったの?」
「いけませんでしたか...?」
「ううん!そういうことじゃなくて、もっとゆっくり入ってもよかったのになって...」
(やっぱりカムイは優しいです)
「色々なお部屋、見ていてもいいですか...?」
「勿論」
「ありがとうございます」
私は自分の荷物にこっそり忍ばせておいたノートとペンをとり、ベッドルームだと予想した部屋へと向かった。
ー**ー
俺は隠しておいた林檎を手にとり、作業を再開した。
(普通に切るよりは...)
俺は細かく切った林檎を並べていく。
仕上げに蜂蜜をかけて完成だ。
「メル、ちょっといいかな?」
「...?」
メルがちょこんと扉から顔を出した。
...やはり可愛い。
そのまま抱きしめてしまいたいほど、可愛い。
「林檎、食べる?」
「わあ...」
俺は、細かく切った林檎を花びらに見立て、花に見えるように並べた...つもりだ。
小さめの林檎で作ったので、流石に満腹になることはないと思う。
「綺麗なお花の形ですね」
メルはにこにこしながら言ってくれた。
(よかった、失敗しなくて)
「なんだか食べてしまうのが勿体無いです...」
メルがじっと林檎を見つめているのを、俺は遠くから見ていた。
「お客様、夕食をお持ちしました!」
(残念。最近のルームサービスは早いんだな...)
「メル、先にご飯にしよう」
「え?ここで食べられるんですか?」
「そうだよ。...ありがとうございます」
「仲のいいご夫婦ですね」
「...はい」
俺はなんとかそう答えたものの、その場から去りたいほど照れてしまった。
メルも先程から黙ってしまっている。
「と、取り敢えず食べようか」
「はい」
ー*ー
「はわわわ...このお魚、とってもじゅわじゅわです!」
「白身魚のポワレとしか書かれてないから、何の魚かは定かじゃないけど、確かに美味しいね」
ほかほかの魚に、温かいパン。
それに、ひんやりとしたデザート...。
「カムイ、これって...」
「それは、ジェラートっていうんだよ。冷たくて、甘い。多分これは、ラズベリー味じゃないかな?」
「美味しいです!」
「慌てなくても大丈夫だよ」
カムイがくすっと笑っているのを見て、少しだけ恥ずかしくなってしまった。
「私だけがはしゃいでるみたいです...」
カムイはいつでも冷静だから仕方ないとは思う。
でも、なんだか私ばかりが楽しんでいるようで。
それがいけないことに思えてきて...。
つい、口から言葉が出てしまっていた。
「これでも、俺だってはしゃいでるんだけどな...」
「え?」
「メルと二人きりで、邪魔がはいることもない。久しぶりに二人で過ごせて、俺も楽しいよ」
「...!」
ー**ー
メルがぱあっと明るくなる。
...これでいい。
メルが楽しんでくれないと、俺も楽しくない。
それに、意味がない。
食事が終わったあと、メルがいつものように話しかけてきた。
「カムイ」
「ん?」
「大好きです!」
「...!」
いきなり抱きつかれたうえに、『大好き』なんて言われて...俺はおもわず勢いで深く口づけてしまった。
「はぁ...んっ...」
「俺から離れないで」
俺が強く抱きしめると、メルは小さく頷いた。
俺は、失うのが怖い。
だが、このぬくもりを手放すつもりもない。
「ごめんね、嫌じゃなかった?」
「はい。でも...少しだけ恥ずかしかったです」
「ごめんね。あ、お風呂に入ってくるね!俺、汗くさかったでしょ?ごめんね」
「私は、嬉しかったですよ」
「またあとで、色々話そう」
「はい!」
俺は恥ずかしさを隠しながら、急いでバスルームへと向かった。
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