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Until the day when I get married.-New dark appearance-
第103話
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ー**ー
「今日行く所は、遠いところなんですか?」
「うん、少しだけ」
メルは見慣れない景色にドキドキしているようだ。
「メル」
「ごめんなさい、なんだか見たことないものが多くて、沢山見てみたくなってしまって...」
「可愛い」
俺はメルの頬にそっと触れた。
「ひゃっ...」
メルは恥ずかしそうにしているが、嫌がっている様子はない。
俺はそこから更に、怪我が治りきっていない腕に触れた。
「...」
「カムイ、もうあまり痛くありませんから、大丈夫です」
メルが無理をして笑っている様子はない。
だが、俺はやはり気にしてしまう。
エリックにも考えすぎないようにと散々注意されたのだが、それでもやはり考えてしまう。
「...メルは、強いね」
「そんなことないです!カムイの方が強いです」
「そういうもの、かな?」
「はい!」
メルはいつものようににこにこしていて、とても楽しみにしてくれているようだ。
俺がいつまでもしらけた顔をしているわけにはいかない。
「ありがとう、メル」
「...?私は何もしていませんよ?」
「ううん、俺の側にいてくれてるでしょ?今もこうやって、側にいてくれてる。だから...ありがとう」
「...!」
メルはぱあっと明るくなる。
そのとき、丁度馬車が止まる音がした。
「さあ、着いたよ」
俺はメルに手を差し伸べる。
メルは少しだけ恥ずかしそうにしながら、きゅっと握りかえしてくれた。
ー*ー
「わあ...」
そこは、一面白でうめつくされていた。
「メルは花が好きそうだな、と思ったんだけど...」
その一言で、ナタリーさんとベンさんの結婚式の時を思い出す。
(あの時、お花を見ていたからでしょうか?)
そんな些細な事まで覚えていてくれたことに、私は嬉しくなった。
「とっても綺麗です!このお花は、なんていうお花なんですか?」
「ホワイトレースフラワーだよ」
カムイは私に歩調をあわせてくれている。
それに、怪我をしていない方の手をしっかりと繋いでくれている。
「カムイは、優しいですね」
「ん?どうして?」
「私に歩調をあわせてくれたり、私が転ばないように手を繋いでくれたり...こうして、私と行く場所を一生懸命選んでくれたり。いっぱい、いっぱい優しいからです。ありがとうございます」
「メル...ありがとう。でも、俺が手を繋ぐ理由はそれだけじゃないんだよ」
私の頭のなかは『?』でいっぱいになった。
「...俺が、繋いでいたいから」
「?」
ー**ー
メルはまだ意味が分かっていないらしく、首を傾げていた。
「だから、その...俺がメルとこうしていたいんだ」
「...!」
メルはまた、いつものようににこにこしてくれていた。
「私も、こうしていたいです!こ、これから先もずっと、ずっとこうしてカムイの隣を歩いていたいです...」
メルはいつもこうやって可愛いことを突然言ってくるから、俺はいつもドキドキさせられっぱなしだ。
(普通は、俺がメルをドキドキさせないといけないはずなのに...)
俺はいつも、メルから目を離せない。
それに、色々なことが上手く言えていない気がする。
「メル。...好きだよ」
「すっ...」
メルがぽっと赤くなる。
これからもずっと、好きだと伝えていけるだろうか。
ずっとこうして、手を繋いでいられるだろうか。
ー*ー
「すごいホテルですね...」
花畑をじっくりと見てまわったあと、カムイが泊まる場所だと言って連れてきてくれたのは、とても大きな建物だった。
「一番上の階の部屋を二日借りることができたんだ」
「二日もですか?」
「うん」
(相当お高いのでは...)
そう思ったので聞いてみたものの、カムイが気にしなくていいと言ってくれたので素直にお礼だけ言うことにした。
「カムイ、ありがとうございます」
「俺の方こそ、俺の我儘につきあってくれてありがとう」
「我儘だなんて、そんなことありませんよ。だって、私の方がはしゃいでいましたから」
「俺は、その笑顔が見たかっただけなんだ」
...カムイは、いつも私のことを一番に考えてくれている。
そんなカムイに、私は何ができるのだろうか。
何をすれば、喜んでもらえるだろうか。
「メル?どうかしたの?」
「いえ、なんでもありません!」
「それじゃあ行こうか」
「はい!」
私が階段をのぼろうとしたそのとき、私はよろけてしまった。
「...!」
「メル!」
危うく落ちそうになったところを、カムイが支えてくれた。
「大丈夫?」
「ごめんなさい...」
「怪我がないならいいんだ。よかった...」
「ありがとうございます」
私は荷物を拾い部屋へ向かおうとしたが、そのときカムイが私から荷物をとりあげた。
「あの、カムイ...?」
「俺が持つよ。だから...メルはこうしてて?」
カムイは片手で荷物を持ち、空いている方の手を私に差し出した。
(感謝してもしきれません...)
私はその手をとって、ゆっくりと歩きだした。
「今日行く所は、遠いところなんですか?」
「うん、少しだけ」
メルは見慣れない景色にドキドキしているようだ。
「メル」
「ごめんなさい、なんだか見たことないものが多くて、沢山見てみたくなってしまって...」
「可愛い」
俺はメルの頬にそっと触れた。
「ひゃっ...」
メルは恥ずかしそうにしているが、嫌がっている様子はない。
俺はそこから更に、怪我が治りきっていない腕に触れた。
「...」
「カムイ、もうあまり痛くありませんから、大丈夫です」
メルが無理をして笑っている様子はない。
だが、俺はやはり気にしてしまう。
エリックにも考えすぎないようにと散々注意されたのだが、それでもやはり考えてしまう。
「...メルは、強いね」
「そんなことないです!カムイの方が強いです」
「そういうもの、かな?」
「はい!」
メルはいつものようににこにこしていて、とても楽しみにしてくれているようだ。
俺がいつまでもしらけた顔をしているわけにはいかない。
「ありがとう、メル」
「...?私は何もしていませんよ?」
「ううん、俺の側にいてくれてるでしょ?今もこうやって、側にいてくれてる。だから...ありがとう」
「...!」
メルはぱあっと明るくなる。
そのとき、丁度馬車が止まる音がした。
「さあ、着いたよ」
俺はメルに手を差し伸べる。
メルは少しだけ恥ずかしそうにしながら、きゅっと握りかえしてくれた。
ー*ー
「わあ...」
そこは、一面白でうめつくされていた。
「メルは花が好きそうだな、と思ったんだけど...」
その一言で、ナタリーさんとベンさんの結婚式の時を思い出す。
(あの時、お花を見ていたからでしょうか?)
そんな些細な事まで覚えていてくれたことに、私は嬉しくなった。
「とっても綺麗です!このお花は、なんていうお花なんですか?」
「ホワイトレースフラワーだよ」
カムイは私に歩調をあわせてくれている。
それに、怪我をしていない方の手をしっかりと繋いでくれている。
「カムイは、優しいですね」
「ん?どうして?」
「私に歩調をあわせてくれたり、私が転ばないように手を繋いでくれたり...こうして、私と行く場所を一生懸命選んでくれたり。いっぱい、いっぱい優しいからです。ありがとうございます」
「メル...ありがとう。でも、俺が手を繋ぐ理由はそれだけじゃないんだよ」
私の頭のなかは『?』でいっぱいになった。
「...俺が、繋いでいたいから」
「?」
ー**ー
メルはまだ意味が分かっていないらしく、首を傾げていた。
「だから、その...俺がメルとこうしていたいんだ」
「...!」
メルはまた、いつものようににこにこしてくれていた。
「私も、こうしていたいです!こ、これから先もずっと、ずっとこうしてカムイの隣を歩いていたいです...」
メルはいつもこうやって可愛いことを突然言ってくるから、俺はいつもドキドキさせられっぱなしだ。
(普通は、俺がメルをドキドキさせないといけないはずなのに...)
俺はいつも、メルから目を離せない。
それに、色々なことが上手く言えていない気がする。
「メル。...好きだよ」
「すっ...」
メルがぽっと赤くなる。
これからもずっと、好きだと伝えていけるだろうか。
ずっとこうして、手を繋いでいられるだろうか。
ー*ー
「すごいホテルですね...」
花畑をじっくりと見てまわったあと、カムイが泊まる場所だと言って連れてきてくれたのは、とても大きな建物だった。
「一番上の階の部屋を二日借りることができたんだ」
「二日もですか?」
「うん」
(相当お高いのでは...)
そう思ったので聞いてみたものの、カムイが気にしなくていいと言ってくれたので素直にお礼だけ言うことにした。
「カムイ、ありがとうございます」
「俺の方こそ、俺の我儘につきあってくれてありがとう」
「我儘だなんて、そんなことありませんよ。だって、私の方がはしゃいでいましたから」
「俺は、その笑顔が見たかっただけなんだ」
...カムイは、いつも私のことを一番に考えてくれている。
そんなカムイに、私は何ができるのだろうか。
何をすれば、喜んでもらえるだろうか。
「メル?どうかしたの?」
「いえ、なんでもありません!」
「それじゃあ行こうか」
「はい!」
私が階段をのぼろうとしたそのとき、私はよろけてしまった。
「...!」
「メル!」
危うく落ちそうになったところを、カムイが支えてくれた。
「大丈夫?」
「ごめんなさい...」
「怪我がないならいいんだ。よかった...」
「ありがとうございます」
私は荷物を拾い部屋へ向かおうとしたが、そのときカムイが私から荷物をとりあげた。
「あの、カムイ...?」
「俺が持つよ。だから...メルはこうしてて?」
カムイは片手で荷物を持ち、空いている方の手を私に差し出した。
(感謝してもしきれません...)
私はその手をとって、ゆっくりと歩きだした。
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