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Until the day when I get married.-New dark appearance-
第94話
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ー*ー
「メル」
「はい」
「クッキー食べる?」
「...はい!」
私はいつものように紅茶の準備をする。
(エリックさんの分は、淹れておいた方がいいのでしょうか...)
私が迷っていることに気づいてくれたのか、カムイが声をかけてくれた。
「エリックの分は、エリックがきてから淹れた方がいいと思うよ。メルが面倒じゃなければだけど...」
「そうします。エリックさんにも、美味しい紅茶を飲んでほしいですから」
「そうだね」
カムイが私の頭をぽん、と撫でる。
(もっとしてほしい...なんて我儘は言えません)
すると、いつの間にかクッキーを焼きあげたカムイが私の頭をまた撫でてくれた。
「...?」
「紅茶、できた?」
「は、はい!」
私は急いでトレーを運んだ。
ー**ー
どうやらメルの様子から察するに、ぽつりと言葉が零れていたことに気づかなかったようだ。
『もっとしてほしいなんて、我儘は言えません』。
(ダメだ、可愛い)
...心臓がもたない。
「メル」
「はい」
「あとでエリックを運んだら...」
『すまない、自力であがろうとしたが無理そうだ』
「すぐ行く」
「カムイ?」
「ごめん、またあとで話すよ」
俺はバスルームへと向かった。
必死に動いたであろうエリックが湯船におちていた。
「怪我にひびいてない?」
「ああ、それはなさそうだ」
「なら...よっと」
俺はエリックを車椅子に乗せる。
「着替えはここにあるけど、自力でできそう?」
「ああ。すまない」
エリックが悪い訳じゃないのに、いつも謝らせてしまっている。
俺はそれが嫌でたまらなかった。
「謝らないで。エリックが悪い訳じゃないから」
「だが...」
「あんまり謝りすぎると、あっという間におじいちゃんになっちゃうよ?」
「おじ...」
「じゃあ、あとでね」
俺はバスルームから出た。
「あの...紅茶を用意しました」
「うん、ありがとう」
俺はそっと頭を撫でた。
「...っ」
メルは照れたように紅茶に視線をおとした。
(やっぱり、メルは撫でられるのが好きなのかな)
ー*ー
「...美味いな」
「ありがとうございます」
エリックさんがバスルームから出てきたあと、私たちはささやかなティータイムが開かれた。
「クッキー、美味しいです!」
「じゃあもう一つあげる」
「はむ、もぐもぐ...」
「...」
エリックさんがじっと見ていることに気づいた。
「あの...」
「すまない。その、仲がいいなと思って、だな、」
エリックさんは顔を真っ赤にしている。
私にはエリックさんが何を言いたいのか、よく分からなかった。
「...!」
カムイも顔が真っ赤になっていた。
「あの、お二人とも...?」
「その、いつものくせで...」
「いつも、なのか?」
「...うん、まあね」
「?」
私には分からないが、何かまずいことをしたような気がした。
ー**ー
...『あーん』なんて、人に見られないところでするのが普通なのに。
(何をやってるんだ、俺は...)
エリックが大変気まずそうにしている。
「ごめん」
「いや...。俺はそろそろ診療所へ戻る」
「俺が押していくよ」
俺は居たたまれない気持ちを抱えながら、診療所へと向かう。
「ああいうのを、いちゃいちゃというのか...」
「恥ずかしいからやめて!」
「ふっ...。いい夜になった。ありがとう。おやすみ」
「あ、うん」
エリックとこういう話をするのは初めてで、正直戸惑うことが多かったけど...『いちゃいちゃというのか』なんて言われるとは思っていなかった。
(あー...恥ずかしい!)
ー*ー
「おまたせ」
「あの、カムイ」
「どうしたの?」
私は思っていることを直接聞いてみることにした。
「私、変なことをしましたか?」
「どうして?」
「カムイもエリックさんもなんだか照れているように見えたので...」
カムイは驚いた表情を見せたあと、くすくすと笑っていた。
「なんでもないよ」
「本当ですか...?」
カムイがぎゅっと抱きしめてくれた。
「本当だよ」
「カムイ、恥ずかしいです...」
「でも、俺はメルが好きだから」
「...!」
私もきちんと言葉にしなくてはと思うものの、なかなか言葉にできない。
私はカムイにしがみついた。
「...!」
「カムイ、温かいです」
ー**ー
この子は俺を殺す気なんだろうか。
こんなふうにしがみつかれると、俺はどうすればいいのか分からない。
「わっ...」
俺はメルをそのまま抱きあげた。
そしてベッドルームへと向かう。
ベッドにメルをおろすと、視線が重なった。
「カムイ...?」
このまま襲ってしまいそうだ。
「おやすみ、メル」
俺は口づけだけしてなんとか誤魔化した。
「はい、おやすみなさい」
俺の理性が、だんだんと崩れてきているような気がする。
(俺はメルを怖がらせたくない)
そんな思いをかかえたまま、俺はメルを抱きしめて無理やり眠りについた。
「メル」
「はい」
「クッキー食べる?」
「...はい!」
私はいつものように紅茶の準備をする。
(エリックさんの分は、淹れておいた方がいいのでしょうか...)
私が迷っていることに気づいてくれたのか、カムイが声をかけてくれた。
「エリックの分は、エリックがきてから淹れた方がいいと思うよ。メルが面倒じゃなければだけど...」
「そうします。エリックさんにも、美味しい紅茶を飲んでほしいですから」
「そうだね」
カムイが私の頭をぽん、と撫でる。
(もっとしてほしい...なんて我儘は言えません)
すると、いつの間にかクッキーを焼きあげたカムイが私の頭をまた撫でてくれた。
「...?」
「紅茶、できた?」
「は、はい!」
私は急いでトレーを運んだ。
ー**ー
どうやらメルの様子から察するに、ぽつりと言葉が零れていたことに気づかなかったようだ。
『もっとしてほしいなんて、我儘は言えません』。
(ダメだ、可愛い)
...心臓がもたない。
「メル」
「はい」
「あとでエリックを運んだら...」
『すまない、自力であがろうとしたが無理そうだ』
「すぐ行く」
「カムイ?」
「ごめん、またあとで話すよ」
俺はバスルームへと向かった。
必死に動いたであろうエリックが湯船におちていた。
「怪我にひびいてない?」
「ああ、それはなさそうだ」
「なら...よっと」
俺はエリックを車椅子に乗せる。
「着替えはここにあるけど、自力でできそう?」
「ああ。すまない」
エリックが悪い訳じゃないのに、いつも謝らせてしまっている。
俺はそれが嫌でたまらなかった。
「謝らないで。エリックが悪い訳じゃないから」
「だが...」
「あんまり謝りすぎると、あっという間におじいちゃんになっちゃうよ?」
「おじ...」
「じゃあ、あとでね」
俺はバスルームから出た。
「あの...紅茶を用意しました」
「うん、ありがとう」
俺はそっと頭を撫でた。
「...っ」
メルは照れたように紅茶に視線をおとした。
(やっぱり、メルは撫でられるのが好きなのかな)
ー*ー
「...美味いな」
「ありがとうございます」
エリックさんがバスルームから出てきたあと、私たちはささやかなティータイムが開かれた。
「クッキー、美味しいです!」
「じゃあもう一つあげる」
「はむ、もぐもぐ...」
「...」
エリックさんがじっと見ていることに気づいた。
「あの...」
「すまない。その、仲がいいなと思って、だな、」
エリックさんは顔を真っ赤にしている。
私にはエリックさんが何を言いたいのか、よく分からなかった。
「...!」
カムイも顔が真っ赤になっていた。
「あの、お二人とも...?」
「その、いつものくせで...」
「いつも、なのか?」
「...うん、まあね」
「?」
私には分からないが、何かまずいことをしたような気がした。
ー**ー
...『あーん』なんて、人に見られないところでするのが普通なのに。
(何をやってるんだ、俺は...)
エリックが大変気まずそうにしている。
「ごめん」
「いや...。俺はそろそろ診療所へ戻る」
「俺が押していくよ」
俺は居たたまれない気持ちを抱えながら、診療所へと向かう。
「ああいうのを、いちゃいちゃというのか...」
「恥ずかしいからやめて!」
「ふっ...。いい夜になった。ありがとう。おやすみ」
「あ、うん」
エリックとこういう話をするのは初めてで、正直戸惑うことが多かったけど...『いちゃいちゃというのか』なんて言われるとは思っていなかった。
(あー...恥ずかしい!)
ー*ー
「おまたせ」
「あの、カムイ」
「どうしたの?」
私は思っていることを直接聞いてみることにした。
「私、変なことをしましたか?」
「どうして?」
「カムイもエリックさんもなんだか照れているように見えたので...」
カムイは驚いた表情を見せたあと、くすくすと笑っていた。
「なんでもないよ」
「本当ですか...?」
カムイがぎゅっと抱きしめてくれた。
「本当だよ」
「カムイ、恥ずかしいです...」
「でも、俺はメルが好きだから」
「...!」
私もきちんと言葉にしなくてはと思うものの、なかなか言葉にできない。
私はカムイにしがみついた。
「...!」
「カムイ、温かいです」
ー**ー
この子は俺を殺す気なんだろうか。
こんなふうにしがみつかれると、俺はどうすればいいのか分からない。
「わっ...」
俺はメルをそのまま抱きあげた。
そしてベッドルームへと向かう。
ベッドにメルをおろすと、視線が重なった。
「カムイ...?」
このまま襲ってしまいそうだ。
「おやすみ、メル」
俺は口づけだけしてなんとか誤魔化した。
「はい、おやすみなさい」
俺の理性が、だんだんと崩れてきているような気がする。
(俺はメルを怖がらせたくない)
そんな思いをかかえたまま、俺はメルを抱きしめて無理やり眠りについた。
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