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Until the day when I get married.-New dark appearance-
第92話
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ー*ー
「いただきます」
「いただきます」
私とカムイがいつものように食べはじめようとしたとき、エリックさんが一枚の用紙を持っていた。
「二人とも、こういうものはきちんとしまっておかないと、」
「はわわわ...」
「エリック、あんまり見ないで...」
私は恥ずかしくて、ドキドキが止まらなかった。
でもそれは、カムイも同じだったようで。
「珍しいな、おまえがそんなに慌てるのは」
「当たり前でしょ?これは流石に、誰でも慌てる」
「ククッ...」
エリックさんが声を圧し殺して笑っていた。
「ナタリーたちにはまだ言わないつもりだから、言わないでね?」
「確かに言ったら色々はりきりそうだな。...分かった」
ナタリーさんのことが少しだけ気になった。
さっきは本当に元気をなくして帰ってしまったから、どうなったのか...
「メル」
「は、はい!」
ぼーっとしていると、カムイに話しかけられた。
「ちょっといいかな?」
「はい」
「エリック、ゆっくりしてて」
「ああ」
私はカムイについていく。
ベッドルームに入ったところで、カムイがいつもより真剣な表情で問いかけてきた。
「もしかして...メルの左眼は、力を抑えたりしてるの?」
「...!」
ー**ー
やはり図星だったようだ。
「ナタリーにアドバイスしてるとき、なんだかやったことがあるような言い方だったから...。話したくなかったらいいんだ。でも、俺はメルのことをもっと知りたい」
「カムイ...」
メルは呼吸を整えてから、ゆっくりと話しはじめた。
「私、この前あの方に会ったとき...あの方の心
のなかまで視えたんです」
「心が、形になっていたってこと?」
「...はい」
今までは、そんなことなかったはずなのに。
ー*ー
全てを話そう。
「よくよく思い出してみると、前にもあったんです。おばあさまに、落ち着きなさいって言われて...」
その日から私は、左眼を使うときは無意識のうちに心を落ち着かせていたようだ。
《落ち着けば大丈夫だからねえ...》
あのときはおばあさまの心が視えてしまった。
(たしか、お花の形でした)
「...そっか」
「カムイ?」
(何か言ってはいけないことを言ってしまったのでしょうか...?)
ー**ー
メルの様子が少しだけおかしかったのは気づいていた。
だが、あと一歩のところで踏みこまずにいた。
...いや、違う。
踏みこまずに逃げていた。
俺はメルを勢いよく抱きしめた。
「カムイ...?」
「ごめんね、メルが辛い思いをしているのに気づかなくて...」
「いえ、私は平気ですよ?」
「無理しなくていいんだよ」
「...っ、それなら、少しだけ泣いてもいいですか...?」
「いいよ。俺が側にいるから」
メルは小さく嗚咽をもらした。
隠すのは、どれだけ辛かったのだろう。
一人で生きてきた間は、きっと今よりも辛かったはずだ。
あの日出会えて本当によかったと、心から思った。
ー*ー
「ごめんなさい、たくさん泣いてしまって...」
「気にしないで。俺は、嬉しかったから」
カムイはいつも優しいけれど、今日は一段と優しくしてくれているような気がした。
「そういえば、ご飯まだだったね」
「はい」
「行こうか。エリックも待ってるし」
「...はい」
私は差し出された手を、そっと握った。
「...メル、カムイに泣かされたのか?」
「いえ!そうではなくて、えっと、その...」
「メル、慌てなくていいよ」
カムイがくすくすと笑っている。
「なんでもありません」
「...カムイに何かされたら、すぐに俺に言え」
「ありがとうございます!」
「何かある前提で言わないでくれるとありがたいなあ...」
ー**ー
「ご、ごめんなさい!」
「怒ってないよ」
メルがものすごい早さで謝ってきた。
俺は、なんだか悪いことをした気分になった。
「本当に怒ってないから...ね?」
「むう...」
メルは少しだけ頬をふくらませていた。
「よしよし、やっぱりメルは可愛いね」
「そんなことないですよ」
「...俺はもう戻る。邪魔したな」
「ああ、一人で動かすのは大変だから、俺が押すよ」
エリックがいることをすっかり忘れて、メルといつものようにいちゃいちゃしてしまった。
「すまない」
「気にしないで」
俺は急いでメルの所へ戻る。
「メル」
「はい」
「俺たちも食べようか」
「はい!」
メルは勢いよく頷いた。
(やっぱりメルのこういうところ、俺は好きだな...)
怒った顔も、素直なところも...すごく可愛い。
メルが能力と共に生きると決めたなら、俺はその道を一緒に歩いていきたい。
「カムイ」
「ん?」
「その、婚姻届はどうするんですか?」
「...ベンに、出してもらっておこうか」
「はい。それがいいと思います」
エリックが心配で離れられない。
そういう気持ちを察してくれているのだと思うと、俺は頬を緩めずにはいられなかった。
「いただきます」
「いただきます」
私とカムイがいつものように食べはじめようとしたとき、エリックさんが一枚の用紙を持っていた。
「二人とも、こういうものはきちんとしまっておかないと、」
「はわわわ...」
「エリック、あんまり見ないで...」
私は恥ずかしくて、ドキドキが止まらなかった。
でもそれは、カムイも同じだったようで。
「珍しいな、おまえがそんなに慌てるのは」
「当たり前でしょ?これは流石に、誰でも慌てる」
「ククッ...」
エリックさんが声を圧し殺して笑っていた。
「ナタリーたちにはまだ言わないつもりだから、言わないでね?」
「確かに言ったら色々はりきりそうだな。...分かった」
ナタリーさんのことが少しだけ気になった。
さっきは本当に元気をなくして帰ってしまったから、どうなったのか...
「メル」
「は、はい!」
ぼーっとしていると、カムイに話しかけられた。
「ちょっといいかな?」
「はい」
「エリック、ゆっくりしてて」
「ああ」
私はカムイについていく。
ベッドルームに入ったところで、カムイがいつもより真剣な表情で問いかけてきた。
「もしかして...メルの左眼は、力を抑えたりしてるの?」
「...!」
ー**ー
やはり図星だったようだ。
「ナタリーにアドバイスしてるとき、なんだかやったことがあるような言い方だったから...。話したくなかったらいいんだ。でも、俺はメルのことをもっと知りたい」
「カムイ...」
メルは呼吸を整えてから、ゆっくりと話しはじめた。
「私、この前あの方に会ったとき...あの方の心
のなかまで視えたんです」
「心が、形になっていたってこと?」
「...はい」
今までは、そんなことなかったはずなのに。
ー*ー
全てを話そう。
「よくよく思い出してみると、前にもあったんです。おばあさまに、落ち着きなさいって言われて...」
その日から私は、左眼を使うときは無意識のうちに心を落ち着かせていたようだ。
《落ち着けば大丈夫だからねえ...》
あのときはおばあさまの心が視えてしまった。
(たしか、お花の形でした)
「...そっか」
「カムイ?」
(何か言ってはいけないことを言ってしまったのでしょうか...?)
ー**ー
メルの様子が少しだけおかしかったのは気づいていた。
だが、あと一歩のところで踏みこまずにいた。
...いや、違う。
踏みこまずに逃げていた。
俺はメルを勢いよく抱きしめた。
「カムイ...?」
「ごめんね、メルが辛い思いをしているのに気づかなくて...」
「いえ、私は平気ですよ?」
「無理しなくていいんだよ」
「...っ、それなら、少しだけ泣いてもいいですか...?」
「いいよ。俺が側にいるから」
メルは小さく嗚咽をもらした。
隠すのは、どれだけ辛かったのだろう。
一人で生きてきた間は、きっと今よりも辛かったはずだ。
あの日出会えて本当によかったと、心から思った。
ー*ー
「ごめんなさい、たくさん泣いてしまって...」
「気にしないで。俺は、嬉しかったから」
カムイはいつも優しいけれど、今日は一段と優しくしてくれているような気がした。
「そういえば、ご飯まだだったね」
「はい」
「行こうか。エリックも待ってるし」
「...はい」
私は差し出された手を、そっと握った。
「...メル、カムイに泣かされたのか?」
「いえ!そうではなくて、えっと、その...」
「メル、慌てなくていいよ」
カムイがくすくすと笑っている。
「なんでもありません」
「...カムイに何かされたら、すぐに俺に言え」
「ありがとうございます!」
「何かある前提で言わないでくれるとありがたいなあ...」
ー**ー
「ご、ごめんなさい!」
「怒ってないよ」
メルがものすごい早さで謝ってきた。
俺は、なんだか悪いことをした気分になった。
「本当に怒ってないから...ね?」
「むう...」
メルは少しだけ頬をふくらませていた。
「よしよし、やっぱりメルは可愛いね」
「そんなことないですよ」
「...俺はもう戻る。邪魔したな」
「ああ、一人で動かすのは大変だから、俺が押すよ」
エリックがいることをすっかり忘れて、メルといつものようにいちゃいちゃしてしまった。
「すまない」
「気にしないで」
俺は急いでメルの所へ戻る。
「メル」
「はい」
「俺たちも食べようか」
「はい!」
メルは勢いよく頷いた。
(やっぱりメルのこういうところ、俺は好きだな...)
怒った顔も、素直なところも...すごく可愛い。
メルが能力と共に生きると決めたなら、俺はその道を一緒に歩いていきたい。
「カムイ」
「ん?」
「その、婚姻届はどうするんですか?」
「...ベンに、出してもらっておこうか」
「はい。それがいいと思います」
エリックが心配で離れられない。
そういう気持ちを察してくれているのだと思うと、俺は頬を緩めずにはいられなかった。
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