路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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One Room-black-

act.1 出会い(メル×カムイ×?×?×?)

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ー*ー
私は人ごみになれるため、人気スポットというものにきていた。
勿論、私一人ではなく...
「メル」
カムイも一緒だ。
「あ、あの部屋だよ。知らない人と色々なことを話せる部屋...」
「そんなことが本当にあるのでしょうか?」
「やってみる価値はありそうだよ」
カムイが手をひいてくれる。
「ありがとうございます」
私はいつもカムイに助けてもらってばかりだ。
それが申し訳なくて、できることを増やしたいと考えた。
(私にできるでしょうか...?)
ドアノブを回す。
部屋に入ると、そこは...
ー**ー
そこは、漆黒の部屋だった。
「真っ黒な部屋だね」
「はい」
メルは驚いた様子だったが、俺も驚いていた。
こんな造りにした意味を、知りたいと思った。
しばらく歩いていたが、何も見えない。
(いつのまにか廊下が灰色に...)
「あ、あの...」
俺は警戒心むき出しで聞いてしまった。
「...あなたは?」
いつの間にか、黒髪の少女が目の前に立っていた。
「ごめんなさい、私から名乗りますね。私は黒羽。匣のなかで色々なことをお話できると聞いたのだけれど...あなたたちもそうなんですか?」
「はい。あなたはお一人ですか?」
「いえ、私は...」
▼「黒羽」
「渚...!」
▼「まったく...探したぞ」
疲れた様子でやってきた男性。
恐らく二人とも俺より年上だ。
「えっと、なんだか混乱してきました...」
「大丈夫?」
「はい...」
メルが辛そうにしている。
あまり空気がよくないせいだろうか。
▼「そういえば名乗ってなかったな。俺は渚。おまえたちは?」
「俺はカムイといいます。こっちはメル。すいません、メルはあまり人になれていないので...」
▼「別に敬語でなくてもかまわない」
「あのね渚、この人たちもこの匣に入ったんだって」
▼「そうなのか?それなら、俺たちの話し相手はおまえらか」
「そういうことになりますね」
親切そうな人たちだが...何がはじまるのだろうか。
「...あの、カムイ」
「ん?」
「あの紙、さっきまでなかったです」
「...!」
その紙には、こう記されていた。
【この紙の近くに小さな箱があります。
二本の棒が入っています。棒を引いてください。
引くのはどちらか一本だけです。
引いた色の部屋に誘導されます。
もしその部屋が自分の部屋だった場合、出された質問に答えなければなりません。
...『チャレンジャー』とでも名づけておきましょう。
そして、部屋に招かれた側...『セレクター』は、】
▼「...【出題する質問を選んでください】、か。どういうことだ?そっちの部屋は何色だったんだ?」
「俺たちの方は、黒でした」
▼「俺たちは白い部屋だった」
「えっと...」
メルが緊張してきている。
▼「これ、引いてくれるか?」
「は、はい!」
メルが棒を引く。
その色は...
ー*ー
「く、黒です...」
すると、いつのまにか私たちがいた部屋に戻っていた。
「じゃあ、今回は俺たちが答えるんだね」
「ごめんなさい...」
「何も謝ることはないよ。メルのせいじゃないから」
▼「...おまえらは、恋人同士なのか?」
「はい」
▼「カムイ、だったか。そんなに緊張しなくてもいい」
珍しくカムイが戸惑っている。
目上の人だからだろうか。
「じゃあ遠慮なく。...渚さんたちも、恋人同士なんですか?」
「え、あ、」
▼「一応は、な」
渚さんが素っ気なく答えている。
その隣で黒羽さんは恥ずかしそうにしている。
▼「じゃあ、早速だが...大丈夫か?」
「は、はい!」
「メル、もっとリラックスして?」
「はい...」
カムイがさりげなく手を繋いでくれた。
▼「...おまえら、いくつなんだ?」
「俺は十八」
「私は、十六歳、です」
なんとか言えた。
▼「俺は、何か言ってはいけないことを言ったか?」
「え?そんなことは...」
▼「それならば、せめて怯えずに話してくれるとありがたいのだが」
「ごめんなさい...」
私は渚さんを傷つけてしまったようだ。
(どうやって話せばいいのか分かりません...)
「メル、あの...」
そのとき、私の足に何か何かもふもふしたものがすり寄ってきていた。
「えっ...」
ー**ー
俺が話しかけようとしたとき、白い何かがメルの足元を直撃した。
「その子って、うさぎ?」
「う、うさぎさん、ですか...?」
ぴょこんとメルの膝に飛び乗った。
「可愛いです!」
メルは調子が戻ったのか、いつものようににこにこしている。
▼「おい白玉、またバッグの中に忍びこんでいたな...?」
「白玉さんっていうお名前なんですか?」
▼「ああ。だが、そいつは人見知りが激しいから、初対面でそこまでなつかれることは滅多にない」
「メルちゃんがいい子だって、白玉は思ってるんだと思うよ」
黒羽さんがふわりとメルに微笑みかける。
メルもにこりとしていた。
(よかった、心配なさそうだな)
白玉が俺の上に乗ってきた。
俺が撫でてやると、とても嬉しそうにしてくれた。
「カムイもなつかれてる?みたいですね」
「俺だけ嫌われていたらどうしようかと思ったよ」
しばらく話していると、空気が和んできた。
すると、ひらりと一枚の紙が落ちてきた。
【一枚選択してください】
ー*ー
「カムイ、あそこにカードがあります」
私はあたりを見回すと、複数枚のカードが並べられていた。
【『セレクター』、つまりは、白い部屋からきた方が引いてください】
▼「白玉、選べ」
白玉さんは言葉が分かったように、それから一枚とった。
「えっと、『好きな食べ物。また、実際に作ってください』、ってあるけど...!」
黒羽さんが固まっている。
その視線を追うと、先程まではなかったキッチンがある。
▼「調理しながら聞くというのが、正解だろうな。...とにかく、何か手伝えることがあったら言ってくれ」
「カムイ...」
「取り敢えず、やってみようか」
「はい!」
こうして、何故か四人と一匹で料理をすることになったのだった...。
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《予告》
▼「白玉、大人しくしろ!」
慌てる渚。
「手当が先、でしょ?」
冷静なカムイ。
「人参あげるから、ちょっと待っててね...」
「私もお手伝いします」
白玉を落ち着かせようと必死な一同。
ハチャメチャクッキング、スタートです。
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読者様方、こんばんは。
今回は初回の為、取り敢えず仲良くなるところから書いてみました。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、取り敢えずカムイとメルの年齢から出してみました。
次回は、『好きな食べ物』です。
一応、ざっくりとしたレシピも出すつもりではいます。
メルたちに料理させますので、そのあたりもお楽しみいただければと思います。
あと、向こう側も読んでくださっている読者様方はお分かりだと思うのですが...白玉はちょっとした特技があります。
それも含めて、ご存知ない方にもお楽しみいただける設定にしようと思っています。




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