127 / 220
Until the day when I get engaged. -Of light, ahead of it...-
第87話
しおりを挟む
ー**ー
どす黒い何かが俺のなかを満たしていく。
「ふふ♪いいよ、その調子!」
「...」
俺が動こうとしたとき、メルに抱きしめられていた。
「カムイ、ダメです」
「...メル」
「お願いですから...」
「ごめん、でも黙ってられない」
「だったら二人でやっつけちゃいましょう?」
「メルは危ないから」
「嫌です」
メルは右手首を見せた。
「それって、」
それは、黒いリストバンド。
二人で約束した、誓いのリストバンド。
「『二人一緒なら負けません』。...そうでしょう?」
「メル...」
俺の左手首にも同じものがついている。
忘れかけていたが、あのとき約束したんだ。
「あーあ!きみはやっぱり邪魔だね!きみがきてから、計画が総崩れだよ!」
(計画?)
疑問に思いながらも、メルから体を離す。
「...当ててやろうか」
ー*ー
「当てるって?」
「計画が何かだよ」
私はエリックさんに感じている違和感に気づいた。
(この人は気づいていないのでしょうか...)
「それは、」
「俺が本気になるところを見たかったんだろ?」
「...」
カムイが言ったことが図星だったようだ。
(私にできることは...)
辺りを見回して気づいたことがあった。
「俺は、そんなに脆くない」
「...僕の側にきてよ」
カムイが引きつけている間に、私は小声で通信機に向かって話しかけた。
「エリックさん、聞こえますか?聞こえたら、一度頷いてください。小さくでいいので、痛くならないように頷いてください」
エリックさんは、一度頷いた。
(あとは場所を教えられたら、きっと上手くいきます)
「エリックさんの足元に大きな岩があるの、見えますか?」
エリックさんは頷く。
「その岩は、なかったはずなんです。だから恐らく、下に...」
「何ぶつぶつ言ってるの?」
「...!」
(気づかれてしまいました...)
「僕はぼうやが好きなんだ。だから、結婚式の時も笑顔が見られて嬉しかったんだよ」
...結婚式。
恐らく、ベンさんとナタリーさんのだ。
「笑顔も悲しみも怒りも...全てを僕のものにしたかったのに」
あの人はどんどん近づいてくる。
私は後退りしていたが、ひんやりとした感触が背中にはしった。
「...っ」
「きみのせいで、僕がぼうやを独り占めできなかったんだ!」
私の首に、手がかかる。
「うう...」
「メル!」
「さあぼうや。僕と一緒にきてくれるね?」
「メルを離せ」
私はいつも不思議に思っていた。
どうしてカムイに固執するのか。
どうしてカムイが独りになるようなことばかりするのか...。
「あなたは、寂しかったんですね」
「...は?」
「だからあなたは、独りになったカムイを、自分のものに...したかったのでしょう...?それなのに、私が現れたから...できなかったんじゃないですか...?」
言葉が途切れ途切れになってしまう。
寝てはダメだと思いながら、だんだん意識がとおのいているような気がする。
「黙れ!」
「く...苦し...」
「メル!」
悲痛に満ちたカムイの叫びが聞こえる。
ここで終わりなのだろうか。
しゅるりと音がして、眼帯が地面に落ちる。
(この方の心。バラバラです...)
「きみは稀有な存在なんだね。化け物が、僕のぼうやに近づくな!」
『化け物』...ずっと言われつづけた言葉。
でも、それを綺麗だと言ってくれた人たちが...カムイがいるから、まだここで終わりたくない!
ーーパン!
「ぐっ...」
私の首から手が離れる。
その人は建物の端までふきとんだ。
(カムイが撃ったのでしょうか...?)
そう思っていたけれど、銃弾がとんできた方向には...
「借りはきっちりかえさせてもらおう」
エリックさんがいた。
ー**ー
「遅いよエリック。もう少しでメルが死んでしまうところだっただろ?」
「そんなに責めるな。いくら俺でもこれは痛い」
「なんで動けるの?」
「ゲホゲホ...」
俺はあいつを無視してメルにかけよる。
「ごめんね、メル。俺のナイフじゃ間に合わないと思ったから...」
「あの、どういうことですか?エリックさんが演技していたのはなんとなく分かりましたけど...あの怪我で痛まないはずがありません」
やはりメルは見抜いていた。
「その辺の説明は全部が片づいたあとにしよう」
それこそ今説明をしていたら、確実に全員が死ぬ。
動けるとはいえ致命傷を負っているエリック。
首を絞められた痕からして、意識が途切れてもおかしくない状態のメル。
そして、怒りが抑えられないとどうなるか分からない俺。
(さて、どうするか)
エリックの読みどおりにいったが、ここからの作戦は考えていない。
「ぼうやぁ...」
あいつは怒っている。
当然だ、自分が捕まえたと思って完全に油断していた相手に肩を撃ち抜かれたのだから。
(怒りをあげる方法でいこう)
「ねえ、知ってる?...絶対に勝てると慢心している相手ほど弱いものはないってこと」
「おのれええええ!」
...計画どおりだ。
「カムイ!」
どす黒い何かが俺のなかを満たしていく。
「ふふ♪いいよ、その調子!」
「...」
俺が動こうとしたとき、メルに抱きしめられていた。
「カムイ、ダメです」
「...メル」
「お願いですから...」
「ごめん、でも黙ってられない」
「だったら二人でやっつけちゃいましょう?」
「メルは危ないから」
「嫌です」
メルは右手首を見せた。
「それって、」
それは、黒いリストバンド。
二人で約束した、誓いのリストバンド。
「『二人一緒なら負けません』。...そうでしょう?」
「メル...」
俺の左手首にも同じものがついている。
忘れかけていたが、あのとき約束したんだ。
「あーあ!きみはやっぱり邪魔だね!きみがきてから、計画が総崩れだよ!」
(計画?)
疑問に思いながらも、メルから体を離す。
「...当ててやろうか」
ー*ー
「当てるって?」
「計画が何かだよ」
私はエリックさんに感じている違和感に気づいた。
(この人は気づいていないのでしょうか...)
「それは、」
「俺が本気になるところを見たかったんだろ?」
「...」
カムイが言ったことが図星だったようだ。
(私にできることは...)
辺りを見回して気づいたことがあった。
「俺は、そんなに脆くない」
「...僕の側にきてよ」
カムイが引きつけている間に、私は小声で通信機に向かって話しかけた。
「エリックさん、聞こえますか?聞こえたら、一度頷いてください。小さくでいいので、痛くならないように頷いてください」
エリックさんは、一度頷いた。
(あとは場所を教えられたら、きっと上手くいきます)
「エリックさんの足元に大きな岩があるの、見えますか?」
エリックさんは頷く。
「その岩は、なかったはずなんです。だから恐らく、下に...」
「何ぶつぶつ言ってるの?」
「...!」
(気づかれてしまいました...)
「僕はぼうやが好きなんだ。だから、結婚式の時も笑顔が見られて嬉しかったんだよ」
...結婚式。
恐らく、ベンさんとナタリーさんのだ。
「笑顔も悲しみも怒りも...全てを僕のものにしたかったのに」
あの人はどんどん近づいてくる。
私は後退りしていたが、ひんやりとした感触が背中にはしった。
「...っ」
「きみのせいで、僕がぼうやを独り占めできなかったんだ!」
私の首に、手がかかる。
「うう...」
「メル!」
「さあぼうや。僕と一緒にきてくれるね?」
「メルを離せ」
私はいつも不思議に思っていた。
どうしてカムイに固執するのか。
どうしてカムイが独りになるようなことばかりするのか...。
「あなたは、寂しかったんですね」
「...は?」
「だからあなたは、独りになったカムイを、自分のものに...したかったのでしょう...?それなのに、私が現れたから...できなかったんじゃないですか...?」
言葉が途切れ途切れになってしまう。
寝てはダメだと思いながら、だんだん意識がとおのいているような気がする。
「黙れ!」
「く...苦し...」
「メル!」
悲痛に満ちたカムイの叫びが聞こえる。
ここで終わりなのだろうか。
しゅるりと音がして、眼帯が地面に落ちる。
(この方の心。バラバラです...)
「きみは稀有な存在なんだね。化け物が、僕のぼうやに近づくな!」
『化け物』...ずっと言われつづけた言葉。
でも、それを綺麗だと言ってくれた人たちが...カムイがいるから、まだここで終わりたくない!
ーーパン!
「ぐっ...」
私の首から手が離れる。
その人は建物の端までふきとんだ。
(カムイが撃ったのでしょうか...?)
そう思っていたけれど、銃弾がとんできた方向には...
「借りはきっちりかえさせてもらおう」
エリックさんがいた。
ー**ー
「遅いよエリック。もう少しでメルが死んでしまうところだっただろ?」
「そんなに責めるな。いくら俺でもこれは痛い」
「なんで動けるの?」
「ゲホゲホ...」
俺はあいつを無視してメルにかけよる。
「ごめんね、メル。俺のナイフじゃ間に合わないと思ったから...」
「あの、どういうことですか?エリックさんが演技していたのはなんとなく分かりましたけど...あの怪我で痛まないはずがありません」
やはりメルは見抜いていた。
「その辺の説明は全部が片づいたあとにしよう」
それこそ今説明をしていたら、確実に全員が死ぬ。
動けるとはいえ致命傷を負っているエリック。
首を絞められた痕からして、意識が途切れてもおかしくない状態のメル。
そして、怒りが抑えられないとどうなるか分からない俺。
(さて、どうするか)
エリックの読みどおりにいったが、ここからの作戦は考えていない。
「ぼうやぁ...」
あいつは怒っている。
当然だ、自分が捕まえたと思って完全に油断していた相手に肩を撃ち抜かれたのだから。
(怒りをあげる方法でいこう)
「ねえ、知ってる?...絶対に勝てると慢心している相手ほど弱いものはないってこと」
「おのれええええ!」
...計画どおりだ。
「カムイ!」
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説


【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる