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Until the day when I get engaged. -Of light, ahead of it...-
第86話
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ー**ー
エリックと落ち合う予定の日の朝。
俺はやるべき準備をしておこうと思った。
「メル、行きたいところがあるんだけど...」
「噂の廃墟、ですか?」
「うん」
流石だなと思いつつ、一緒についてくると言うメルと手を繋いで歩く。
エリックは大丈夫だろうか。
そんなことを考えていると、何故か胸騒ぎがした。
「カムイ?」
「ごめん、なんでもないよ」
しばらく道なりに進むと、その場所に辿り着いた。
(ここか...)
「誰か暮らしているみたいです」
メルが何かの食べかすを指さす。
「そうだね。ここで間違いないみたいだ」
(ここでいいか)
俺はひっそりとやり遂げた。
「メル、帰ろう。長居したらあいつが帰ってくるかもしれない」
「はい!」
こうして俺たちはその場をあとにした。
ー*ー
お昼からはカムイと一緒にお部屋をお掃除した。
(エリックさんがいらっしゃるなら、綺麗にしておかないと失礼です...)
「メル、もうそこはいいよ」
「はい!次は何をすればいいでしょうか?」
「...こっちにきて」
カムイの方に行くと、体を抱きしめられる。
「か、カムイ...」
「こうやって、抱きしめさせて?あと、そのままお昼寝しちゃおう」
「は、はい...」
なんだかカムイの様子がおかしいと思いつつ、私は眠りにおちていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その夜。
「エリックさん、きませんね...」
「...バーに行ってみよう」
「え?」
「行き違いになると困るから、メモを挟んでおくよ」
カムイはいつもより早い歩調でバーへと向かう。
(嫌な予感がします...)
バーに入ると、いつもの男性がふらふらして立っていた。
「あの...」
「これ、『呪いの悪夢』に渡され、た」
「ありがとう」
「ぐ...あ...」
男性の様子がおかしい。
「あの、大丈夫ですか?」
「ぐ...」
「誰か医者を!早く!」
カムイがそう叫んだ。
「急...げ、誰...かが、死、」
「もういい!喋らなくていいから!」
医者が到着したのを見送ったあと、私たちは部屋へ戻った。
まだエリックさんはきていない。
カムイが男性からもらった手紙を開ける。
「...カムイ、それってもしかして、」
「うわああああああ!」
「カムイ!落ち着いてください!カムイ!」
その手紙には、こう書かれていた。
《待つの、飽きちゃった。
だから彼と遊んで待ってるね!
早くこないと、お片づけしちゃうよ》
それと一緒に、血だらけの星のストラップが入っていた。
ー**ー
許さない、許サナイ、ユルサナイ!
「カムイ!」
「...!」
今にも暴れだしそうになっていた俺を、メルが宥めてくれていた。
「メル、ごめん...」
「まだエリックさんが殺されたわけじゃありません。だから、絶対に間に合います」
「...そうだね」
こうなることをなんとなく想像はしていたけど、やはり実際になると殺気だってしまった。
俺は通信機の電源を入れる。
「私にも聞かせてください」
そう強く訴えてくるメルに、予備の通信機を渡した。
『ねえ、あのぼうやはどこにいるの?』
『知らんな』
バキバキ!
『ああああああ!』
「...!」
メルが息をのんだのが分かった。
「メル、どうする?凄惨な状態になってるかもしれないよ?きたくなかったらこなくていい。メルはどうしたい?」
「...行きます。行かせてください」
「急ごう!」
「はい!」
俺たちは走る。
ひたすらに、走る。
空は曇っていて、星一つ見えなかった。
ー*ー
「ぐ...」
「もっと遊ぼうよ!きゃは♪」
「ぐあああああ!」
廃墟に近づけば近づくほど、大きな音が聞こえてきた。
エリックさんの悲鳴だ。
(でもどうしてでしょう?なんだか本物の悲鳴に聞こえません...)
「おい、エリックから離れろ!」
カムイが『呪いの悪夢』に近づいていく。
「やあっと会えたね、ぼうや♪」
「カムイ...」
エリックさんの状態は、決していいと言えるものではなかった。
恐らく骨折している右腕。
殴られすぎて腫れた頬。
出血している手足...。
右腕は目を背けたくなるような状態だった。
「憎しみを解放してよ、ぼうや。僕と遊ぼうよ!」
「逃げろ、カムイ。俺は...いいから」
「そんなことできるわけないだろ」
カムイからは今まで見たことがないほどの殺気が溢れでていた。
(このままでは、カムイが危ないです)
いつかに言われたエリックさんの言葉を思い出す。
《あいつが暴走しそうになったら、きみが止めてやってくれ》
私しかいない。
今まともに動けるのは、私しかいないんだ。
そう思うと、不思議と怖くなかった。
「...カムイ」
「やめろ、頼むから...やめてくれ...」
(エリックさん、演技をしているのでしょうか...?)
何故かそう思ってしまう。
だが、カムイはそうでないことが分かる。
(先にカムイを止めなくては!)
エリックと落ち合う予定の日の朝。
俺はやるべき準備をしておこうと思った。
「メル、行きたいところがあるんだけど...」
「噂の廃墟、ですか?」
「うん」
流石だなと思いつつ、一緒についてくると言うメルと手を繋いで歩く。
エリックは大丈夫だろうか。
そんなことを考えていると、何故か胸騒ぎがした。
「カムイ?」
「ごめん、なんでもないよ」
しばらく道なりに進むと、その場所に辿り着いた。
(ここか...)
「誰か暮らしているみたいです」
メルが何かの食べかすを指さす。
「そうだね。ここで間違いないみたいだ」
(ここでいいか)
俺はひっそりとやり遂げた。
「メル、帰ろう。長居したらあいつが帰ってくるかもしれない」
「はい!」
こうして俺たちはその場をあとにした。
ー*ー
お昼からはカムイと一緒にお部屋をお掃除した。
(エリックさんがいらっしゃるなら、綺麗にしておかないと失礼です...)
「メル、もうそこはいいよ」
「はい!次は何をすればいいでしょうか?」
「...こっちにきて」
カムイの方に行くと、体を抱きしめられる。
「か、カムイ...」
「こうやって、抱きしめさせて?あと、そのままお昼寝しちゃおう」
「は、はい...」
なんだかカムイの様子がおかしいと思いつつ、私は眠りにおちていった。
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その夜。
「エリックさん、きませんね...」
「...バーに行ってみよう」
「え?」
「行き違いになると困るから、メモを挟んでおくよ」
カムイはいつもより早い歩調でバーへと向かう。
(嫌な予感がします...)
バーに入ると、いつもの男性がふらふらして立っていた。
「あの...」
「これ、『呪いの悪夢』に渡され、た」
「ありがとう」
「ぐ...あ...」
男性の様子がおかしい。
「あの、大丈夫ですか?」
「ぐ...」
「誰か医者を!早く!」
カムイがそう叫んだ。
「急...げ、誰...かが、死、」
「もういい!喋らなくていいから!」
医者が到着したのを見送ったあと、私たちは部屋へ戻った。
まだエリックさんはきていない。
カムイが男性からもらった手紙を開ける。
「...カムイ、それってもしかして、」
「うわああああああ!」
「カムイ!落ち着いてください!カムイ!」
その手紙には、こう書かれていた。
《待つの、飽きちゃった。
だから彼と遊んで待ってるね!
早くこないと、お片づけしちゃうよ》
それと一緒に、血だらけの星のストラップが入っていた。
ー**ー
許さない、許サナイ、ユルサナイ!
「カムイ!」
「...!」
今にも暴れだしそうになっていた俺を、メルが宥めてくれていた。
「メル、ごめん...」
「まだエリックさんが殺されたわけじゃありません。だから、絶対に間に合います」
「...そうだね」
こうなることをなんとなく想像はしていたけど、やはり実際になると殺気だってしまった。
俺は通信機の電源を入れる。
「私にも聞かせてください」
そう強く訴えてくるメルに、予備の通信機を渡した。
『ねえ、あのぼうやはどこにいるの?』
『知らんな』
バキバキ!
『ああああああ!』
「...!」
メルが息をのんだのが分かった。
「メル、どうする?凄惨な状態になってるかもしれないよ?きたくなかったらこなくていい。メルはどうしたい?」
「...行きます。行かせてください」
「急ごう!」
「はい!」
俺たちは走る。
ひたすらに、走る。
空は曇っていて、星一つ見えなかった。
ー*ー
「ぐ...」
「もっと遊ぼうよ!きゃは♪」
「ぐあああああ!」
廃墟に近づけば近づくほど、大きな音が聞こえてきた。
エリックさんの悲鳴だ。
(でもどうしてでしょう?なんだか本物の悲鳴に聞こえません...)
「おい、エリックから離れろ!」
カムイが『呪いの悪夢』に近づいていく。
「やあっと会えたね、ぼうや♪」
「カムイ...」
エリックさんの状態は、決していいと言えるものではなかった。
恐らく骨折している右腕。
殴られすぎて腫れた頬。
出血している手足...。
右腕は目を背けたくなるような状態だった。
「憎しみを解放してよ、ぼうや。僕と遊ぼうよ!」
「逃げろ、カムイ。俺は...いいから」
「そんなことできるわけないだろ」
カムイからは今まで見たことがないほどの殺気が溢れでていた。
(このままでは、カムイが危ないです)
いつかに言われたエリックさんの言葉を思い出す。
《あいつが暴走しそうになったら、きみが止めてやってくれ》
私しかいない。
今まともに動けるのは、私しかいないんだ。
そう思うと、不思議と怖くなかった。
「...カムイ」
「やめろ、頼むから...やめてくれ...」
(エリックさん、演技をしているのでしょうか...?)
何故かそう思ってしまう。
だが、カムイはそうでないことが分かる。
(先にカムイを止めなくては!)
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