122 / 220
Until the day when I get engaged. -Of light, ahead of it...-
第82話
しおりを挟む
ー**ー
...何が『お片づけ』だ。
俺と少しだけ関わった、ただそれだけなのに、次々と人が殺されていく。
(俺は、どうすればいい)
「おい、大丈夫か?」
「別に大丈夫」
エリックが心配そうにこちらを見ていた。
「カムイ...」
きゅっと手を握られて気づいた。
エリックだけじゃない。
メルまで俺の方を心配そうに見ている。
「ごめんね、本当に大丈夫だから」
俺はわしゃわしゃとメルの頭を撫でた。
「カムイ...」
今はメルを守ることだけに集中しようと決めた。
(メルにまで悲しい思いをさせるわけにはいかない)
「メル、少しだけエリックと待っててくれる?」
「分かりました」
俺は早速情報を集めることにした。
ー*ー
「カムイ...」
「...心配か?」
私はエリックさんの問いにこくりと頷く。
「少しだけ、昔話をしてやる」
ーーーーーーーーーー《エリックの回想》ーーーーーーーーーー
あいつは昔から、正義感の塊だった。
「おい、そこで何してる?」
「...お金をとられた人がいたから、取り返してた」
こんな人間がいるのかと、感心させられた。
だが、カムイのそれは人とは違う。
ある殺人犯を追ったとき、俺は銃で足を撃たれた。
そのとき、あいつは...
「おい、やめろ!」
「人の命の重みが分からないなら、おまえが失せろ」
「俺は平気だから、もうやめろ!やめてくれ!」
それでもあいつは止まらず犯人に殴りかかって、全治三ヶ月の大怪我を負わせた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「そんなことが...」
「どうやらカムイの正義は、時折いきすぎるようだ。だが...」
エリックさんが私の方をじっと見つめる。
「メル、きみなら止められる。メルの言葉だけはちゃんと聞くからな」
「私なら、止められる...?本当ですか?」
「ああ。だからもし、あいつが暴走しそうになったら...止めてやってくれ」
「...!はい!」
エリックさんはよし、と立ち上がり、私をカムイがいる場所へと連れていってくれた。
「さっきの話は秘密な」
「はい」
「エリッ...もう帰るの?」
「ああ。じゃあな」
エリックさんは行ってしまった。
(私にしかできないこと...カムイ暴走したときに止めること、ちゃんとやりとげたいです)
私は体をカムイにぴったりとくっつけた。
ー**ー
危うくエリックの名を出してしまうところだった。
警察の関係者となれば、なかなか話してくれなくなる。
ついつい油断してしまった。
「...で、殺人鬼の噂を知りたいと」
「そうなんだ。何か知らない?」
「ただで教えるわけにはいかないな...」
そう言うと男はメルの方をじろじろと見つめている。
「悪いが、彼女は俺の連れなんだ。他の情報と交換じゃダメかな?」
「...阿片の裏ルート、知ってるか?」
「弓姫バイパスのこと?」
「それだ」
エリックに数日後に逮捕してほしいと情報を渡しているので、この男が何かをする心配はない。
したとしても、即刻逮捕だ。
「いいよ。...はい」
「すっげ!いいぜ、じゃあこっちも約束のもんだ」
「ありがとう」
俺はメルの方を向き、物珍しそうに色々なものを見ている彼女の手を繋ぐ。
「そろそろ行こうか」
「はい」
俺たちはバーをあとにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「大丈夫?」
「ごめんなさい...」
どうやらメルは、あのバーの空気に酔ってしまったらしい。
急に環境が変わったのもあってか、とても疲れたように見える。
「お水、飲めそう?」
「...はい」
少しボロいこの場所は、家と比べると少し狭い。
人は新しい環境に適応するのに時間がかかる。
それを分かっていたはずなのに、何故メルがこうなるまで気づかなかったんだろうか。
俺はそれがとても悔しかった。
メルの背中をさすっていると、くすぐったそうにしている。
「メル、背中弱いの?」
「く、くすぐったいんです」
いつもとは違う、どこか子どもらしい笑顔。
俺はそれも嫌いじゃないと思った。
あの男からもらった紙。
一体何が書かれているのだろうか。
俺はそれをポケットから取り出し、広げてみる。
《『悪夢の再来』
その男は何かを探し求めている。
親か友人かは分からない。
ただ、邪魔するものはお片づけされてしまう。
この街でも数人殺された。
あんたも気をつけろ》
(いい人だったみたいだけど、肝心なことが書かれてないな...)
「カムイ?」
「ごめん、メル。明日もあのバーに行かないといけない。体調が悪いなら留守番してた方が...」
「私のことは気にしないでください。私も、連れていってください。置いていかないでください...」
メルは寂しそうにこちらを見ている。
やはり俺は、メルには勝てない。
「じゃあ、俺から離れないでね?」
「はい!」
「取り敢えず今日は寝ようか」
「はい。おやすみなさい」
しばらくしていると、メルが寝息をたてはじめた。
(疲れさせないようにしないと)
俺は寝ているメルに、そっと口づけをおとした。
...何が『お片づけ』だ。
俺と少しだけ関わった、ただそれだけなのに、次々と人が殺されていく。
(俺は、どうすればいい)
「おい、大丈夫か?」
「別に大丈夫」
エリックが心配そうにこちらを見ていた。
「カムイ...」
きゅっと手を握られて気づいた。
エリックだけじゃない。
メルまで俺の方を心配そうに見ている。
「ごめんね、本当に大丈夫だから」
俺はわしゃわしゃとメルの頭を撫でた。
「カムイ...」
今はメルを守ることだけに集中しようと決めた。
(メルにまで悲しい思いをさせるわけにはいかない)
「メル、少しだけエリックと待っててくれる?」
「分かりました」
俺は早速情報を集めることにした。
ー*ー
「カムイ...」
「...心配か?」
私はエリックさんの問いにこくりと頷く。
「少しだけ、昔話をしてやる」
ーーーーーーーーーー《エリックの回想》ーーーーーーーーーー
あいつは昔から、正義感の塊だった。
「おい、そこで何してる?」
「...お金をとられた人がいたから、取り返してた」
こんな人間がいるのかと、感心させられた。
だが、カムイのそれは人とは違う。
ある殺人犯を追ったとき、俺は銃で足を撃たれた。
そのとき、あいつは...
「おい、やめろ!」
「人の命の重みが分からないなら、おまえが失せろ」
「俺は平気だから、もうやめろ!やめてくれ!」
それでもあいつは止まらず犯人に殴りかかって、全治三ヶ月の大怪我を負わせた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「そんなことが...」
「どうやらカムイの正義は、時折いきすぎるようだ。だが...」
エリックさんが私の方をじっと見つめる。
「メル、きみなら止められる。メルの言葉だけはちゃんと聞くからな」
「私なら、止められる...?本当ですか?」
「ああ。だからもし、あいつが暴走しそうになったら...止めてやってくれ」
「...!はい!」
エリックさんはよし、と立ち上がり、私をカムイがいる場所へと連れていってくれた。
「さっきの話は秘密な」
「はい」
「エリッ...もう帰るの?」
「ああ。じゃあな」
エリックさんは行ってしまった。
(私にしかできないこと...カムイ暴走したときに止めること、ちゃんとやりとげたいです)
私は体をカムイにぴったりとくっつけた。
ー**ー
危うくエリックの名を出してしまうところだった。
警察の関係者となれば、なかなか話してくれなくなる。
ついつい油断してしまった。
「...で、殺人鬼の噂を知りたいと」
「そうなんだ。何か知らない?」
「ただで教えるわけにはいかないな...」
そう言うと男はメルの方をじろじろと見つめている。
「悪いが、彼女は俺の連れなんだ。他の情報と交換じゃダメかな?」
「...阿片の裏ルート、知ってるか?」
「弓姫バイパスのこと?」
「それだ」
エリックに数日後に逮捕してほしいと情報を渡しているので、この男が何かをする心配はない。
したとしても、即刻逮捕だ。
「いいよ。...はい」
「すっげ!いいぜ、じゃあこっちも約束のもんだ」
「ありがとう」
俺はメルの方を向き、物珍しそうに色々なものを見ている彼女の手を繋ぐ。
「そろそろ行こうか」
「はい」
俺たちはバーをあとにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「大丈夫?」
「ごめんなさい...」
どうやらメルは、あのバーの空気に酔ってしまったらしい。
急に環境が変わったのもあってか、とても疲れたように見える。
「お水、飲めそう?」
「...はい」
少しボロいこの場所は、家と比べると少し狭い。
人は新しい環境に適応するのに時間がかかる。
それを分かっていたはずなのに、何故メルがこうなるまで気づかなかったんだろうか。
俺はそれがとても悔しかった。
メルの背中をさすっていると、くすぐったそうにしている。
「メル、背中弱いの?」
「く、くすぐったいんです」
いつもとは違う、どこか子どもらしい笑顔。
俺はそれも嫌いじゃないと思った。
あの男からもらった紙。
一体何が書かれているのだろうか。
俺はそれをポケットから取り出し、広げてみる。
《『悪夢の再来』
その男は何かを探し求めている。
親か友人かは分からない。
ただ、邪魔するものはお片づけされてしまう。
この街でも数人殺された。
あんたも気をつけろ》
(いい人だったみたいだけど、肝心なことが書かれてないな...)
「カムイ?」
「ごめん、メル。明日もあのバーに行かないといけない。体調が悪いなら留守番してた方が...」
「私のことは気にしないでください。私も、連れていってください。置いていかないでください...」
メルは寂しそうにこちらを見ている。
やはり俺は、メルには勝てない。
「じゃあ、俺から離れないでね?」
「はい!」
「取り敢えず今日は寝ようか」
「はい。おやすみなさい」
しばらくしていると、メルが寝息をたてはじめた。
(疲れさせないようにしないと)
俺は寝ているメルに、そっと口づけをおとした。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
物置小屋
黒蝶
大衆娯楽
言葉にはきっと色んな力があるのだと証明したい。
けれど私は、失声症でもうやりたかった仕事を目指せない...。
そもそももう自分じゃただ読みあげることすら叶わない。
どうせ眠ってしまうなら、誰かに使ってもらおう。
ーーここは、そんな作者が希望をこめた台詞や台本の物置小屋。
1人向けから演劇向けまで、色々な種類のものを書いていきます。
時々、書くかどうか迷っている物語もあげるかもしれません。
使いたいものがあれば声をかけてください。
リクエスト、常時受け付けます。
お断りさせていただく場合もありますが、できるだけやってみますので読みたい話を教えていただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる