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Until the day when I get engaged. -Of light, ahead of it...-
第82話
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ー**ー
...何が『お片づけ』だ。
俺と少しだけ関わった、ただそれだけなのに、次々と人が殺されていく。
(俺は、どうすればいい)
「おい、大丈夫か?」
「別に大丈夫」
エリックが心配そうにこちらを見ていた。
「カムイ...」
きゅっと手を握られて気づいた。
エリックだけじゃない。
メルまで俺の方を心配そうに見ている。
「ごめんね、本当に大丈夫だから」
俺はわしゃわしゃとメルの頭を撫でた。
「カムイ...」
今はメルを守ることだけに集中しようと決めた。
(メルにまで悲しい思いをさせるわけにはいかない)
「メル、少しだけエリックと待っててくれる?」
「分かりました」
俺は早速情報を集めることにした。
ー*ー
「カムイ...」
「...心配か?」
私はエリックさんの問いにこくりと頷く。
「少しだけ、昔話をしてやる」
ーーーーーーーーーー《エリックの回想》ーーーーーーーーーー
あいつは昔から、正義感の塊だった。
「おい、そこで何してる?」
「...お金をとられた人がいたから、取り返してた」
こんな人間がいるのかと、感心させられた。
だが、カムイのそれは人とは違う。
ある殺人犯を追ったとき、俺は銃で足を撃たれた。
そのとき、あいつは...
「おい、やめろ!」
「人の命の重みが分からないなら、おまえが失せろ」
「俺は平気だから、もうやめろ!やめてくれ!」
それでもあいつは止まらず犯人に殴りかかって、全治三ヶ月の大怪我を負わせた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「そんなことが...」
「どうやらカムイの正義は、時折いきすぎるようだ。だが...」
エリックさんが私の方をじっと見つめる。
「メル、きみなら止められる。メルの言葉だけはちゃんと聞くからな」
「私なら、止められる...?本当ですか?」
「ああ。だからもし、あいつが暴走しそうになったら...止めてやってくれ」
「...!はい!」
エリックさんはよし、と立ち上がり、私をカムイがいる場所へと連れていってくれた。
「さっきの話は秘密な」
「はい」
「エリッ...もう帰るの?」
「ああ。じゃあな」
エリックさんは行ってしまった。
(私にしかできないこと...カムイ暴走したときに止めること、ちゃんとやりとげたいです)
私は体をカムイにぴったりとくっつけた。
ー**ー
危うくエリックの名を出してしまうところだった。
警察の関係者となれば、なかなか話してくれなくなる。
ついつい油断してしまった。
「...で、殺人鬼の噂を知りたいと」
「そうなんだ。何か知らない?」
「ただで教えるわけにはいかないな...」
そう言うと男はメルの方をじろじろと見つめている。
「悪いが、彼女は俺の連れなんだ。他の情報と交換じゃダメかな?」
「...阿片の裏ルート、知ってるか?」
「弓姫バイパスのこと?」
「それだ」
エリックに数日後に逮捕してほしいと情報を渡しているので、この男が何かをする心配はない。
したとしても、即刻逮捕だ。
「いいよ。...はい」
「すっげ!いいぜ、じゃあこっちも約束のもんだ」
「ありがとう」
俺はメルの方を向き、物珍しそうに色々なものを見ている彼女の手を繋ぐ。
「そろそろ行こうか」
「はい」
俺たちはバーをあとにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「大丈夫?」
「ごめんなさい...」
どうやらメルは、あのバーの空気に酔ってしまったらしい。
急に環境が変わったのもあってか、とても疲れたように見える。
「お水、飲めそう?」
「...はい」
少しボロいこの場所は、家と比べると少し狭い。
人は新しい環境に適応するのに時間がかかる。
それを分かっていたはずなのに、何故メルがこうなるまで気づかなかったんだろうか。
俺はそれがとても悔しかった。
メルの背中をさすっていると、くすぐったそうにしている。
「メル、背中弱いの?」
「く、くすぐったいんです」
いつもとは違う、どこか子どもらしい笑顔。
俺はそれも嫌いじゃないと思った。
あの男からもらった紙。
一体何が書かれているのだろうか。
俺はそれをポケットから取り出し、広げてみる。
《『悪夢の再来』
その男は何かを探し求めている。
親か友人かは分からない。
ただ、邪魔するものはお片づけされてしまう。
この街でも数人殺された。
あんたも気をつけろ》
(いい人だったみたいだけど、肝心なことが書かれてないな...)
「カムイ?」
「ごめん、メル。明日もあのバーに行かないといけない。体調が悪いなら留守番してた方が...」
「私のことは気にしないでください。私も、連れていってください。置いていかないでください...」
メルは寂しそうにこちらを見ている。
やはり俺は、メルには勝てない。
「じゃあ、俺から離れないでね?」
「はい!」
「取り敢えず今日は寝ようか」
「はい。おやすみなさい」
しばらくしていると、メルが寝息をたてはじめた。
(疲れさせないようにしないと)
俺は寝ているメルに、そっと口づけをおとした。
...何が『お片づけ』だ。
俺と少しだけ関わった、ただそれだけなのに、次々と人が殺されていく。
(俺は、どうすればいい)
「おい、大丈夫か?」
「別に大丈夫」
エリックが心配そうにこちらを見ていた。
「カムイ...」
きゅっと手を握られて気づいた。
エリックだけじゃない。
メルまで俺の方を心配そうに見ている。
「ごめんね、本当に大丈夫だから」
俺はわしゃわしゃとメルの頭を撫でた。
「カムイ...」
今はメルを守ることだけに集中しようと決めた。
(メルにまで悲しい思いをさせるわけにはいかない)
「メル、少しだけエリックと待っててくれる?」
「分かりました」
俺は早速情報を集めることにした。
ー*ー
「カムイ...」
「...心配か?」
私はエリックさんの問いにこくりと頷く。
「少しだけ、昔話をしてやる」
ーーーーーーーーーー《エリックの回想》ーーーーーーーーーー
あいつは昔から、正義感の塊だった。
「おい、そこで何してる?」
「...お金をとられた人がいたから、取り返してた」
こんな人間がいるのかと、感心させられた。
だが、カムイのそれは人とは違う。
ある殺人犯を追ったとき、俺は銃で足を撃たれた。
そのとき、あいつは...
「おい、やめろ!」
「人の命の重みが分からないなら、おまえが失せろ」
「俺は平気だから、もうやめろ!やめてくれ!」
それでもあいつは止まらず犯人に殴りかかって、全治三ヶ月の大怪我を負わせた。
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「そんなことが...」
「どうやらカムイの正義は、時折いきすぎるようだ。だが...」
エリックさんが私の方をじっと見つめる。
「メル、きみなら止められる。メルの言葉だけはちゃんと聞くからな」
「私なら、止められる...?本当ですか?」
「ああ。だからもし、あいつが暴走しそうになったら...止めてやってくれ」
「...!はい!」
エリックさんはよし、と立ち上がり、私をカムイがいる場所へと連れていってくれた。
「さっきの話は秘密な」
「はい」
「エリッ...もう帰るの?」
「ああ。じゃあな」
エリックさんは行ってしまった。
(私にしかできないこと...カムイ暴走したときに止めること、ちゃんとやりとげたいです)
私は体をカムイにぴったりとくっつけた。
ー**ー
危うくエリックの名を出してしまうところだった。
警察の関係者となれば、なかなか話してくれなくなる。
ついつい油断してしまった。
「...で、殺人鬼の噂を知りたいと」
「そうなんだ。何か知らない?」
「ただで教えるわけにはいかないな...」
そう言うと男はメルの方をじろじろと見つめている。
「悪いが、彼女は俺の連れなんだ。他の情報と交換じゃダメかな?」
「...阿片の裏ルート、知ってるか?」
「弓姫バイパスのこと?」
「それだ」
エリックに数日後に逮捕してほしいと情報を渡しているので、この男が何かをする心配はない。
したとしても、即刻逮捕だ。
「いいよ。...はい」
「すっげ!いいぜ、じゃあこっちも約束のもんだ」
「ありがとう」
俺はメルの方を向き、物珍しそうに色々なものを見ている彼女の手を繋ぐ。
「そろそろ行こうか」
「はい」
俺たちはバーをあとにした。
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「大丈夫?」
「ごめんなさい...」
どうやらメルは、あのバーの空気に酔ってしまったらしい。
急に環境が変わったのもあってか、とても疲れたように見える。
「お水、飲めそう?」
「...はい」
少しボロいこの場所は、家と比べると少し狭い。
人は新しい環境に適応するのに時間がかかる。
それを分かっていたはずなのに、何故メルがこうなるまで気づかなかったんだろうか。
俺はそれがとても悔しかった。
メルの背中をさすっていると、くすぐったそうにしている。
「メル、背中弱いの?」
「く、くすぐったいんです」
いつもとは違う、どこか子どもらしい笑顔。
俺はそれも嫌いじゃないと思った。
あの男からもらった紙。
一体何が書かれているのだろうか。
俺はそれをポケットから取り出し、広げてみる。
《『悪夢の再来』
その男は何かを探し求めている。
親か友人かは分からない。
ただ、邪魔するものはお片づけされてしまう。
この街でも数人殺された。
あんたも気をつけろ》
(いい人だったみたいだけど、肝心なことが書かれてないな...)
「カムイ?」
「ごめん、メル。明日もあのバーに行かないといけない。体調が悪いなら留守番してた方が...」
「私のことは気にしないでください。私も、連れていってください。置いていかないでください...」
メルは寂しそうにこちらを見ている。
やはり俺は、メルには勝てない。
「じゃあ、俺から離れないでね?」
「はい!」
「取り敢えず今日は寝ようか」
「はい。おやすみなさい」
しばらくしていると、メルが寝息をたてはじめた。
(疲れさせないようにしないと)
俺は寝ているメルに、そっと口づけをおとした。
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