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Until the day when I get engaged. -Of light, ahead of it...-
第78話
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ー*ー
翌朝、私は横で寝ているカムイを起こす。
「おはようございます、カムイ」
「うん、おはよう...」
「熱、さがったみたいです!ありがとうございます」
「ああ、うん」
カムイがとても疲れているように見える。
私をずっと看ていてくれていたせいだろうか。
「大丈夫ですか...?」
「ん?何が?」
「何かに疲れているように見えます。ちょっとおやすみした方がいいのではないでしょうか...」
「全然元気だよ?」
そう言っているカムイの表情は曇っている。
「...クッキー、焼きますね」
私は私にできることをしよう。
そう決心し、キッチンへ向かった。
「クッキー、できました」
私はアールグレイと一緒にカムイにサーブする。
「ありがとう」
ほんの少しだけ、元気になったような気がする。
(よかったです...)
ー**ー
メルには俺の偽物の笑顔は通用しない。
だが、メルに事件のことを言えるわけがない。
『私も手伝います』と言い出すのが目に見えているからだ。
だからといって、このまま誤魔化しきる自信もない。
それに、メルに嘘をつきたくない。
「...メル」
「はい」
メルは俺が話すのを待ってくれている。
俺も甘くなったのかもしれないと思いつつ、重い口を開いた。
「あのね、メル...」
俺は少しだけ、事件に関わっていることを話した。
ただし、一つだけ隠して。
「毒を飲まされた事件、ですか?」
「うん、そうなんだ」
あいつが関係している...なんて、それだけはどうしても言えない。
メルを、守りたい。
でも俺に、何ができるだろう。
ー*ー
『毒には種類がある』。おばあさまがよく言っていたことを思い出した。
「あの、カムイ」
「協力したい、でしょ?ダメ」
「どうしてですか?」
「危ない目に遭わせたくないから」
「でも...」
「いいから、早く忘れて?」
私はカムイに心配させてばかりなのは分かっているつもりだ。
でも、その人は...
「生きている人を、放ってはおけません」
「どういうこと?」
「まだ、バラバラにはしてないんですよね?」
「え?うん...」
(だったらまだ、可能性があります)
私は毒について聞こうと思った。
「その毒って、もしかして...『サイレント』というものなのではないでしょうか?」
「っ、どうして...」
カムイの反応からして、どうやら正解だったようだ。
「毒には種類があります。一つ目は飲めば確実に死ぬものです。二つ目はある一定時間苦しめば自然と抜けるもの...そして三つ目は、仮死状態になってから死ぬものです。『サイレント』は三つ目だったはずです」
「つまり、その人はまだ生きている可能性がある...」
「はい!」
「メル、解毒剤の作り方分かる?」
「えっと...」
私は取り敢えず知っている材料の名前をあげた。
「ありがとう。取り敢えず、診療所で手当てしてみるよ」
カムイはその人を運び出した。
(よかった、カムイの役にたてました)
それにしても、先程運ばれた人。
あの方はもしかして...。
ー**ー
またメルに助けられた。
俺にはあまり、毒物の知識がない。
毒だと分かっても、仮死状態になるものがあるのは知らなかった。
解毒し終えたあと、エリックが『死体』を引き取りにやってきた。
「メルのお陰で、生きかえるみたいだよ」
「生きっ...⁉いいかメル、死んだ人間は二度と息をふきかえしたりしない、」
「ここは、どこだ?」
エリックが失神しそうになっている。
半分白目むきかけだ。
「気づきましたか?ここは病院です」
「助けてくれて、ありがとう」
「な、な、...」
「エリックさん、『サイレント』は、仮死状態の間に解毒すれば死なないんですよ」
メルはにこにことしている。
普通の人なら速攻で倒れてしまうのに、倒れないメルを俺は心の底から誇りに思った。
「申し訳ないが、調書をとらせてもらえないだろうか」
「私のですか?分かりました。医師、ありがとうございました」
『遺体』だった彼にお礼を言われ、俺は取り敢えず笑顔を作った。
「あとで報告にくる」
エリックには、そう耳打ちされた。
「メル、ご飯食べられそう?またパンケーキでも焼こうか」
「...はい!」
メルは無邪気に目をキラキラとさせている。
(ダメだ、可愛い、可愛すぎる...)
「わあっ⁉カムイ、急にどうしたんですか...?」
「離したくなくなっただけ」
「今日のカムイは甘えんぼさんで可愛いです」
「いつもより可愛いのは、メルだから!」
俺たちは診療所であることも忘れ、しばらくいちゃいちゃしていた。
「あの、カムイ」
「ん?」
「さっきの人なんですけど...知り合いじゃなかったですか?」
「...どういうこと?」
俺は記憶力もあまりいいとは言えない。
だから、周りがいうことには耳を傾けておきたい。
メルの口から溢れた言葉は、俺にとって最悪な物語を連想させた。
「確か、ナタリーさんとベンさんの結婚式のお手伝いさんだった気がするんです」
翌朝、私は横で寝ているカムイを起こす。
「おはようございます、カムイ」
「うん、おはよう...」
「熱、さがったみたいです!ありがとうございます」
「ああ、うん」
カムイがとても疲れているように見える。
私をずっと看ていてくれていたせいだろうか。
「大丈夫ですか...?」
「ん?何が?」
「何かに疲れているように見えます。ちょっとおやすみした方がいいのではないでしょうか...」
「全然元気だよ?」
そう言っているカムイの表情は曇っている。
「...クッキー、焼きますね」
私は私にできることをしよう。
そう決心し、キッチンへ向かった。
「クッキー、できました」
私はアールグレイと一緒にカムイにサーブする。
「ありがとう」
ほんの少しだけ、元気になったような気がする。
(よかったです...)
ー**ー
メルには俺の偽物の笑顔は通用しない。
だが、メルに事件のことを言えるわけがない。
『私も手伝います』と言い出すのが目に見えているからだ。
だからといって、このまま誤魔化しきる自信もない。
それに、メルに嘘をつきたくない。
「...メル」
「はい」
メルは俺が話すのを待ってくれている。
俺も甘くなったのかもしれないと思いつつ、重い口を開いた。
「あのね、メル...」
俺は少しだけ、事件に関わっていることを話した。
ただし、一つだけ隠して。
「毒を飲まされた事件、ですか?」
「うん、そうなんだ」
あいつが関係している...なんて、それだけはどうしても言えない。
メルを、守りたい。
でも俺に、何ができるだろう。
ー*ー
『毒には種類がある』。おばあさまがよく言っていたことを思い出した。
「あの、カムイ」
「協力したい、でしょ?ダメ」
「どうしてですか?」
「危ない目に遭わせたくないから」
「でも...」
「いいから、早く忘れて?」
私はカムイに心配させてばかりなのは分かっているつもりだ。
でも、その人は...
「生きている人を、放ってはおけません」
「どういうこと?」
「まだ、バラバラにはしてないんですよね?」
「え?うん...」
(だったらまだ、可能性があります)
私は毒について聞こうと思った。
「その毒って、もしかして...『サイレント』というものなのではないでしょうか?」
「っ、どうして...」
カムイの反応からして、どうやら正解だったようだ。
「毒には種類があります。一つ目は飲めば確実に死ぬものです。二つ目はある一定時間苦しめば自然と抜けるもの...そして三つ目は、仮死状態になってから死ぬものです。『サイレント』は三つ目だったはずです」
「つまり、その人はまだ生きている可能性がある...」
「はい!」
「メル、解毒剤の作り方分かる?」
「えっと...」
私は取り敢えず知っている材料の名前をあげた。
「ありがとう。取り敢えず、診療所で手当てしてみるよ」
カムイはその人を運び出した。
(よかった、カムイの役にたてました)
それにしても、先程運ばれた人。
あの方はもしかして...。
ー**ー
またメルに助けられた。
俺にはあまり、毒物の知識がない。
毒だと分かっても、仮死状態になるものがあるのは知らなかった。
解毒し終えたあと、エリックが『死体』を引き取りにやってきた。
「メルのお陰で、生きかえるみたいだよ」
「生きっ...⁉いいかメル、死んだ人間は二度と息をふきかえしたりしない、」
「ここは、どこだ?」
エリックが失神しそうになっている。
半分白目むきかけだ。
「気づきましたか?ここは病院です」
「助けてくれて、ありがとう」
「な、な、...」
「エリックさん、『サイレント』は、仮死状態の間に解毒すれば死なないんですよ」
メルはにこにことしている。
普通の人なら速攻で倒れてしまうのに、倒れないメルを俺は心の底から誇りに思った。
「申し訳ないが、調書をとらせてもらえないだろうか」
「私のですか?分かりました。医師、ありがとうございました」
『遺体』だった彼にお礼を言われ、俺は取り敢えず笑顔を作った。
「あとで報告にくる」
エリックには、そう耳打ちされた。
「メル、ご飯食べられそう?またパンケーキでも焼こうか」
「...はい!」
メルは無邪気に目をキラキラとさせている。
(ダメだ、可愛い、可愛すぎる...)
「わあっ⁉カムイ、急にどうしたんですか...?」
「離したくなくなっただけ」
「今日のカムイは甘えんぼさんで可愛いです」
「いつもより可愛いのは、メルだから!」
俺たちは診療所であることも忘れ、しばらくいちゃいちゃしていた。
「あの、カムイ」
「ん?」
「さっきの人なんですけど...知り合いじゃなかったですか?」
「...どういうこと?」
俺は記憶力もあまりいいとは言えない。
だから、周りがいうことには耳を傾けておきたい。
メルの口から溢れた言葉は、俺にとって最悪な物語を連想させた。
「確か、ナタリーさんとベンさんの結婚式のお手伝いさんだった気がするんです」
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