118 / 220
Until the day when I get engaged. -Of light, ahead of it...-
第78話
しおりを挟む
ー*ー
翌朝、私は横で寝ているカムイを起こす。
「おはようございます、カムイ」
「うん、おはよう...」
「熱、さがったみたいです!ありがとうございます」
「ああ、うん」
カムイがとても疲れているように見える。
私をずっと看ていてくれていたせいだろうか。
「大丈夫ですか...?」
「ん?何が?」
「何かに疲れているように見えます。ちょっとおやすみした方がいいのではないでしょうか...」
「全然元気だよ?」
そう言っているカムイの表情は曇っている。
「...クッキー、焼きますね」
私は私にできることをしよう。
そう決心し、キッチンへ向かった。
「クッキー、できました」
私はアールグレイと一緒にカムイにサーブする。
「ありがとう」
ほんの少しだけ、元気になったような気がする。
(よかったです...)
ー**ー
メルには俺の偽物の笑顔は通用しない。
だが、メルに事件のことを言えるわけがない。
『私も手伝います』と言い出すのが目に見えているからだ。
だからといって、このまま誤魔化しきる自信もない。
それに、メルに嘘をつきたくない。
「...メル」
「はい」
メルは俺が話すのを待ってくれている。
俺も甘くなったのかもしれないと思いつつ、重い口を開いた。
「あのね、メル...」
俺は少しだけ、事件に関わっていることを話した。
ただし、一つだけ隠して。
「毒を飲まされた事件、ですか?」
「うん、そうなんだ」
あいつが関係している...なんて、それだけはどうしても言えない。
メルを、守りたい。
でも俺に、何ができるだろう。
ー*ー
『毒には種類がある』。おばあさまがよく言っていたことを思い出した。
「あの、カムイ」
「協力したい、でしょ?ダメ」
「どうしてですか?」
「危ない目に遭わせたくないから」
「でも...」
「いいから、早く忘れて?」
私はカムイに心配させてばかりなのは分かっているつもりだ。
でも、その人は...
「生きている人を、放ってはおけません」
「どういうこと?」
「まだ、バラバラにはしてないんですよね?」
「え?うん...」
(だったらまだ、可能性があります)
私は毒について聞こうと思った。
「その毒って、もしかして...『サイレント』というものなのではないでしょうか?」
「っ、どうして...」
カムイの反応からして、どうやら正解だったようだ。
「毒には種類があります。一つ目は飲めば確実に死ぬものです。二つ目はある一定時間苦しめば自然と抜けるもの...そして三つ目は、仮死状態になってから死ぬものです。『サイレント』は三つ目だったはずです」
「つまり、その人はまだ生きている可能性がある...」
「はい!」
「メル、解毒剤の作り方分かる?」
「えっと...」
私は取り敢えず知っている材料の名前をあげた。
「ありがとう。取り敢えず、診療所で手当てしてみるよ」
カムイはその人を運び出した。
(よかった、カムイの役にたてました)
それにしても、先程運ばれた人。
あの方はもしかして...。
ー**ー
またメルに助けられた。
俺にはあまり、毒物の知識がない。
毒だと分かっても、仮死状態になるものがあるのは知らなかった。
解毒し終えたあと、エリックが『死体』を引き取りにやってきた。
「メルのお陰で、生きかえるみたいだよ」
「生きっ...⁉いいかメル、死んだ人間は二度と息をふきかえしたりしない、」
「ここは、どこだ?」
エリックが失神しそうになっている。
半分白目むきかけだ。
「気づきましたか?ここは病院です」
「助けてくれて、ありがとう」
「な、な、...」
「エリックさん、『サイレント』は、仮死状態の間に解毒すれば死なないんですよ」
メルはにこにことしている。
普通の人なら速攻で倒れてしまうのに、倒れないメルを俺は心の底から誇りに思った。
「申し訳ないが、調書をとらせてもらえないだろうか」
「私のですか?分かりました。医師、ありがとうございました」
『遺体』だった彼にお礼を言われ、俺は取り敢えず笑顔を作った。
「あとで報告にくる」
エリックには、そう耳打ちされた。
「メル、ご飯食べられそう?またパンケーキでも焼こうか」
「...はい!」
メルは無邪気に目をキラキラとさせている。
(ダメだ、可愛い、可愛すぎる...)
「わあっ⁉カムイ、急にどうしたんですか...?」
「離したくなくなっただけ」
「今日のカムイは甘えんぼさんで可愛いです」
「いつもより可愛いのは、メルだから!」
俺たちは診療所であることも忘れ、しばらくいちゃいちゃしていた。
「あの、カムイ」
「ん?」
「さっきの人なんですけど...知り合いじゃなかったですか?」
「...どういうこと?」
俺は記憶力もあまりいいとは言えない。
だから、周りがいうことには耳を傾けておきたい。
メルの口から溢れた言葉は、俺にとって最悪な物語を連想させた。
「確か、ナタリーさんとベンさんの結婚式のお手伝いさんだった気がするんです」
翌朝、私は横で寝ているカムイを起こす。
「おはようございます、カムイ」
「うん、おはよう...」
「熱、さがったみたいです!ありがとうございます」
「ああ、うん」
カムイがとても疲れているように見える。
私をずっと看ていてくれていたせいだろうか。
「大丈夫ですか...?」
「ん?何が?」
「何かに疲れているように見えます。ちょっとおやすみした方がいいのではないでしょうか...」
「全然元気だよ?」
そう言っているカムイの表情は曇っている。
「...クッキー、焼きますね」
私は私にできることをしよう。
そう決心し、キッチンへ向かった。
「クッキー、できました」
私はアールグレイと一緒にカムイにサーブする。
「ありがとう」
ほんの少しだけ、元気になったような気がする。
(よかったです...)
ー**ー
メルには俺の偽物の笑顔は通用しない。
だが、メルに事件のことを言えるわけがない。
『私も手伝います』と言い出すのが目に見えているからだ。
だからといって、このまま誤魔化しきる自信もない。
それに、メルに嘘をつきたくない。
「...メル」
「はい」
メルは俺が話すのを待ってくれている。
俺も甘くなったのかもしれないと思いつつ、重い口を開いた。
「あのね、メル...」
俺は少しだけ、事件に関わっていることを話した。
ただし、一つだけ隠して。
「毒を飲まされた事件、ですか?」
「うん、そうなんだ」
あいつが関係している...なんて、それだけはどうしても言えない。
メルを、守りたい。
でも俺に、何ができるだろう。
ー*ー
『毒には種類がある』。おばあさまがよく言っていたことを思い出した。
「あの、カムイ」
「協力したい、でしょ?ダメ」
「どうしてですか?」
「危ない目に遭わせたくないから」
「でも...」
「いいから、早く忘れて?」
私はカムイに心配させてばかりなのは分かっているつもりだ。
でも、その人は...
「生きている人を、放ってはおけません」
「どういうこと?」
「まだ、バラバラにはしてないんですよね?」
「え?うん...」
(だったらまだ、可能性があります)
私は毒について聞こうと思った。
「その毒って、もしかして...『サイレント』というものなのではないでしょうか?」
「っ、どうして...」
カムイの反応からして、どうやら正解だったようだ。
「毒には種類があります。一つ目は飲めば確実に死ぬものです。二つ目はある一定時間苦しめば自然と抜けるもの...そして三つ目は、仮死状態になってから死ぬものです。『サイレント』は三つ目だったはずです」
「つまり、その人はまだ生きている可能性がある...」
「はい!」
「メル、解毒剤の作り方分かる?」
「えっと...」
私は取り敢えず知っている材料の名前をあげた。
「ありがとう。取り敢えず、診療所で手当てしてみるよ」
カムイはその人を運び出した。
(よかった、カムイの役にたてました)
それにしても、先程運ばれた人。
あの方はもしかして...。
ー**ー
またメルに助けられた。
俺にはあまり、毒物の知識がない。
毒だと分かっても、仮死状態になるものがあるのは知らなかった。
解毒し終えたあと、エリックが『死体』を引き取りにやってきた。
「メルのお陰で、生きかえるみたいだよ」
「生きっ...⁉いいかメル、死んだ人間は二度と息をふきかえしたりしない、」
「ここは、どこだ?」
エリックが失神しそうになっている。
半分白目むきかけだ。
「気づきましたか?ここは病院です」
「助けてくれて、ありがとう」
「な、な、...」
「エリックさん、『サイレント』は、仮死状態の間に解毒すれば死なないんですよ」
メルはにこにことしている。
普通の人なら速攻で倒れてしまうのに、倒れないメルを俺は心の底から誇りに思った。
「申し訳ないが、調書をとらせてもらえないだろうか」
「私のですか?分かりました。医師、ありがとうございました」
『遺体』だった彼にお礼を言われ、俺は取り敢えず笑顔を作った。
「あとで報告にくる」
エリックには、そう耳打ちされた。
「メル、ご飯食べられそう?またパンケーキでも焼こうか」
「...はい!」
メルは無邪気に目をキラキラとさせている。
(ダメだ、可愛い、可愛すぎる...)
「わあっ⁉カムイ、急にどうしたんですか...?」
「離したくなくなっただけ」
「今日のカムイは甘えんぼさんで可愛いです」
「いつもより可愛いのは、メルだから!」
俺たちは診療所であることも忘れ、しばらくいちゃいちゃしていた。
「あの、カムイ」
「ん?」
「さっきの人なんですけど...知り合いじゃなかったですか?」
「...どういうこと?」
俺は記憶力もあまりいいとは言えない。
だから、周りがいうことには耳を傾けておきたい。
メルの口から溢れた言葉は、俺にとって最悪な物語を連想させた。
「確か、ナタリーさんとベンさんの結婚式のお手伝いさんだった気がするんです」
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる