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Until the day when I get engaged. -Of light, ahead of it...-
第76話
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ー**ー
「それにしても...大変な結婚式になっちゃったね」
「はい...」
俺は突っ込まないことにした。
...そう、今はまだ。
俺だってメルに詳しくあいつについて話していない。
だからお互い様なのだ。
(俺が話す勇気ができたその時は...)
「カムイ?」
「ごめん、なんでもない」
俺はアールグレイを一気に飲んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「先に寝てて?」
「あ、はい」
メルがベッドルームに入ったのを見届けたあと、俺はある作業をはじめた。
現場でこっそり拾ったクッキー...。
こんなものをあの三人が持っていたとは思えない。
食べるのは気が引けたが、事件解決のためには食べるしかない。
(どこかで食べたことがあるような気がするんだけど...どの店だろう)
そんなことを考えながら、いつの間にか眠ってしまっていた。
ー*ー
私はずっと起きて待っていた。
(カムイ、何をやっているのでしょうか?)
私はそっとベッドルームを抜け出す。
「カムイ...?」
「...っ...っっ!」
そこには、何かの痛みを堪えている様子のカムイがいた。
「カムイ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
痛む足を引きずりながらなんとかベッドへ運び、カムイを寝かせる。
「...ヴッ!」
最早人の声とは思えないほどの声をあげ、何かに苦しんでいる。
「カムイ!カムイ!」
「くっ...は...」
先程よりは落ち着いたように見えるが、素人の私でも普通じゃないことは分かった。
私がベッドから離れようとしたとき、手を掴まれる。
「...あれ?メル?」
「カムイ!よかった...カムイ...」
カムイはむくりと起きあがり、そっと私を抱きしめてくれる。
「ごめん。いつの間にか寝ちゃってたみたい」
「寝てたんですか...?でも、苦しそうにしてましたよ?それに、歩いてました」
「え、歩いてた?」
「はい...」
私は今までのことを伝えた。
カムイはため息をつく。
「...ごめん。俺は悪夢を見てたんだ」
「悪夢、ですか?」
ー**ー
「うん。メルと一緒だと視ないから、最近は安眠できてたんだけどね...」
あいつについて、根をつめて考え過ぎたようだ。
「心配させてごめんね」
「いえ、でもそれなら、しばらくは一緒にベッドに入りましょう。じゃないと、今日みたいになったら大変ですから...」
「ありがとう」
メルに迷惑をかけるのは嫌だ。
ただ、どこまで話していいのか分からない。
(やはり今日は話せない)
「いいにおいです...クッキーですか?」
オーブンにセットしたままだったことを思い出す。
「まずい、焦げるかもしれない」
「え...」
俺たちは取り敢えず、クッキーとオーブンの状態を確認する。
オーブンは無事だったが、中からはドス黒いクッキーが姿を現した。
ー*ー
「あーあ...もう食べられないね」
カムイは残念そうに言った。
「えっと、誰でも失敗することはあります!だから、そんなに落ち込まなくても大丈夫ですよ!次は私も一緒に作ります」
「ありがとう」
カムイの笑顔を見ると、ほっとする。
(今の笑顔は、絶対に嘘じゃありませんでした)
私は、左眼のことを聞いてこないカムイに感謝している。
実は私もよく分かっているわけではない。
でも、今はまだ話す勇気がない。
(もっとカムイのことを知りたいです)
でもそれは、私が真実に辿り着いたときだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日。私たちはクッキーの材料を買い、作ることになった。
「あ、オーブンに入れるときはもっと距離をとって置いた方が...」
「こう?」
「はい、それで大丈夫なはずです」
できあがったクッキーを二人で食べる。
「...!」
「カムイ?」
「メル、なにか隠し味いれた?」
「...?はい、今日は蜂蜜を入れましたけど...」
ー**ー
現場に落ちていたクッキーと、ほとんど同じ味がする。
「このクッキーのレシピ、ちょっとだけでいいから教えてくれる?」
「はい」
俺はメルが起きるまでの時間で買いこんだクッキーと、現場のクッキーそっくりの味を比べていく。
「...これじゃない」
「あの、カムイ?」
メルに不審がられないようにと気をつけようとしたのだが、今の状況では無理だった。
「メル、さっきメルが作ってくれたクッキーそっくりの味のものを、この中から一緒に探してほしいんだ。...いいかな?」
「はい!」
色々なお店のクッキーを食べていく。
「...あ!カムイ、多分ですけどこれが一番近い気がします」
「この店は...」
それは、とても滑稽な店名だった。
(...『いい夢を魅せます、『ドリームクッキー ナイト・メア』』、だと?)
あいつが仕向けたものだということが、これではっきりした。
それに、『ナイト・メア』は、麻薬密売の疑いがある店だ。
「メル、先にお風呂に入って?」
「はい、ありがとうございます」
メルがバスルームへ行ったのを確認し、俺は心のなかで呟いた。
(...急いで調査する必要があるな)
俺はこっそりとエリックに連絡をいれた。
「それにしても...大変な結婚式になっちゃったね」
「はい...」
俺は突っ込まないことにした。
...そう、今はまだ。
俺だってメルに詳しくあいつについて話していない。
だからお互い様なのだ。
(俺が話す勇気ができたその時は...)
「カムイ?」
「ごめん、なんでもない」
俺はアールグレイを一気に飲んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「先に寝てて?」
「あ、はい」
メルがベッドルームに入ったのを見届けたあと、俺はある作業をはじめた。
現場でこっそり拾ったクッキー...。
こんなものをあの三人が持っていたとは思えない。
食べるのは気が引けたが、事件解決のためには食べるしかない。
(どこかで食べたことがあるような気がするんだけど...どの店だろう)
そんなことを考えながら、いつの間にか眠ってしまっていた。
ー*ー
私はずっと起きて待っていた。
(カムイ、何をやっているのでしょうか?)
私はそっとベッドルームを抜け出す。
「カムイ...?」
「...っ...っっ!」
そこには、何かの痛みを堪えている様子のカムイがいた。
「カムイ!」
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痛む足を引きずりながらなんとかベッドへ運び、カムイを寝かせる。
「...ヴッ!」
最早人の声とは思えないほどの声をあげ、何かに苦しんでいる。
「カムイ!カムイ!」
「くっ...は...」
先程よりは落ち着いたように見えるが、素人の私でも普通じゃないことは分かった。
私がベッドから離れようとしたとき、手を掴まれる。
「...あれ?メル?」
「カムイ!よかった...カムイ...」
カムイはむくりと起きあがり、そっと私を抱きしめてくれる。
「ごめん。いつの間にか寝ちゃってたみたい」
「寝てたんですか...?でも、苦しそうにしてましたよ?それに、歩いてました」
「え、歩いてた?」
「はい...」
私は今までのことを伝えた。
カムイはため息をつく。
「...ごめん。俺は悪夢を見てたんだ」
「悪夢、ですか?」
ー**ー
「うん。メルと一緒だと視ないから、最近は安眠できてたんだけどね...」
あいつについて、根をつめて考え過ぎたようだ。
「心配させてごめんね」
「いえ、でもそれなら、しばらくは一緒にベッドに入りましょう。じゃないと、今日みたいになったら大変ですから...」
「ありがとう」
メルに迷惑をかけるのは嫌だ。
ただ、どこまで話していいのか分からない。
(やはり今日は話せない)
「いいにおいです...クッキーですか?」
オーブンにセットしたままだったことを思い出す。
「まずい、焦げるかもしれない」
「え...」
俺たちは取り敢えず、クッキーとオーブンの状態を確認する。
オーブンは無事だったが、中からはドス黒いクッキーが姿を現した。
ー*ー
「あーあ...もう食べられないね」
カムイは残念そうに言った。
「えっと、誰でも失敗することはあります!だから、そんなに落ち込まなくても大丈夫ですよ!次は私も一緒に作ります」
「ありがとう」
カムイの笑顔を見ると、ほっとする。
(今の笑顔は、絶対に嘘じゃありませんでした)
私は、左眼のことを聞いてこないカムイに感謝している。
実は私もよく分かっているわけではない。
でも、今はまだ話す勇気がない。
(もっとカムイのことを知りたいです)
でもそれは、私が真実に辿り着いたときだ。
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次の日。私たちはクッキーの材料を買い、作ることになった。
「あ、オーブンに入れるときはもっと距離をとって置いた方が...」
「こう?」
「はい、それで大丈夫なはずです」
できあがったクッキーを二人で食べる。
「...!」
「カムイ?」
「メル、なにか隠し味いれた?」
「...?はい、今日は蜂蜜を入れましたけど...」
ー**ー
現場に落ちていたクッキーと、ほとんど同じ味がする。
「このクッキーのレシピ、ちょっとだけでいいから教えてくれる?」
「はい」
俺はメルが起きるまでの時間で買いこんだクッキーと、現場のクッキーそっくりの味を比べていく。
「...これじゃない」
「あの、カムイ?」
メルに不審がられないようにと気をつけようとしたのだが、今の状況では無理だった。
「メル、さっきメルが作ってくれたクッキーそっくりの味のものを、この中から一緒に探してほしいんだ。...いいかな?」
「はい!」
色々なお店のクッキーを食べていく。
「...あ!カムイ、多分ですけどこれが一番近い気がします」
「この店は...」
それは、とても滑稽な店名だった。
(...『いい夢を魅せます、『ドリームクッキー ナイト・メア』』、だと?)
あいつが仕向けたものだということが、これではっきりした。
それに、『ナイト・メア』は、麻薬密売の疑いがある店だ。
「メル、先にお風呂に入って?」
「はい、ありがとうございます」
メルがバスルームへ行ったのを確認し、俺は心のなかで呟いた。
(...急いで調査する必要があるな)
俺はこっそりとエリックに連絡をいれた。
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