49 / 220
Until the day when Christmas comes.
番外編『It's a wish in a star in Christmas Eve.』
しおりを挟む
「はあ...」
すっかり寒くなったこの季節。
白い息を吐きながら、俺はいつもどおりに過ごす。
...いや、今年からはきっと、違う過ごし方になるだろう。
これは、俺の聖夜の物語...。
《エリック目線》
「警部補!ご苦労様です!」
「...ああ、みんなもご苦労様」
俺たちは勤務時間後にパーティーをする。
「うまあっ!」
「このチキン、丁度よく焼けているぞ!」
「誰が持ってきたんだ...?」
...カムイから教わった影響なのか、チキンの焼き具合等が分かるようになった。
(はじめの頃は、何もできなかったのに...)
カムイとの出会いは唐突だったが、今では悪くないと思っている。
「...すまない、俺は抜ける。おまえたちは楽しめ」
「あ、ありがとうございます!」
「お疲れ様です!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は、しまったと思った。
(いつもだと、日付が変わるこの頃に、このバーにきていたな)
カムイと共に、ここで世間話をしていた。
仕事の話もしながら、二人でいろいろ持ち寄って...。
だが、今のあいつの側には大切な人がいる。
ナタリーたちはさておき、あいつとはいつもここで...。
彼女は拐われて怖い思いをしたばかりだ。こられるわけがないのに、何故俺はきてしまったのだろうか。
「...帰るか」
俺がそう呟いたとき、近くで声がした。
「え?もう帰るの?」
「...!おまえ、彼女は」
「寝てる。それに、あいつらも馬鹿じゃないし、俺の家を突き止められている訳ではない。だから...こうしてきみと過ごすためにきたんだ」
まさかきてくれるとは思っていなかった。
だから俺は、激しく動揺した。
「しかし...」
「エリック、言いたいことは分かる。俺も、やってることは最低だと思ってるよ。でも、俺は彼女も親友も大切にしたいんだ」
「...そうか」
この男のこういうところは出会った頃から全く変わらない。
『傍にある全てを守る』。
そんな決意が簡単にできるわけがない。
そういう所を俺は尊敬している。
「それに、寂しがってるかなって」
「なっ⁉べ、別に寂しくなんかないんだからな」
...嘘だ。
本当はきてくれて嬉しいくせに、俺はそれを素直に言えない。
「...エリック、拳銃持ってる?」
「は?何故だ?」
「サンタクロースが、プレゼントを届けにきたみたいだよ」
周りを見ると、赤い服を着た強盗たちがレジに向かっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「...四、五人かな?」
「ああ」
「あの悪いサンタを片づけたら、プレゼント交換ね」
「ああ...っておい!今はそれどころじゃないだろ」
「だから、あれを片づけたらだよ」
強盗を『あれ』呼ばわりできるのは、きっとこいつだけだろう。
「じゃあ、まずは俺からいく。おまえは裏に回りこめ」
「了解」
カムイは研ぎ澄まされたナイフを手を持つ。
「おい、動くなよ?」
「た、助けて...」
店員は震えてしまっている。
俺は威嚇射撃をしようとしたが、そんな暇はないと判断した。
「ぐわあっ!」
まずは一人。
「...動くな。俺は警官だ。人質を解放しろ」
「なんだと!」
...後ろから二人。
俺は蹴り倒した。
素早く手錠を出し、そのままはめる。
人質も無事に奪還した。
「怪我はありませんか?」
「あ、ありがとうございます...!」
俺は気づいていなかった。
...あと一人、足りていなかったことに。
「おりゃあ!」
「しまっ...」
ひゅん、と音がする。
「ぐわあっ!」
「...俺の親友に何してくれてるの?」
「カムイ、わざわざ足に命中させることなかっただろう...」
「動けなくしないとダメかなって」
カムイは自前の手錠をはめる。
「この強盗たちは、明日の朝警察に突き出してください。俺もいますから」
「あ、ありがとうございました...!」
客が少ない時間だったことも幸いして、死傷者を出さずにすんだ。
...あいつがいたからできたことだ。
「行こう」
「ああ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はい、これ」
それは、オランジェットだった。
「いつもすまない」
「今年は食べ物しか用意できなかったから...ついでにこれもあげる」
それは、星のストラップだった。
「ベンには内緒ね。これは、俺とエリックしか持ってないから」
「そうなのか?」
「うん、エリックのは金でしょ?俺のは、銀なんだ」
そう言ってバッグにつけているものを見せてくれる。
...この喜びを、どう伝えればいいのだろうか。
「ありがとう」
俺は、手袋を渡した。
「おまえは危なっかしい。...それに、手が悴めばナイフが使えないだろうが」
「エリックは、いつも俺がほしいものをくれるね。ありがとう。大切にするよ」
いつも以上に微笑んでいるカムイを目にすると、俺はほっと息をついた。
「じゃあね」
「ああ」
一人歩く帰り道...俺は柄にもなく、この平和な日々が続くようにとそっと夜空の星に願うのだった。
すっかり寒くなったこの季節。
白い息を吐きながら、俺はいつもどおりに過ごす。
...いや、今年からはきっと、違う過ごし方になるだろう。
これは、俺の聖夜の物語...。
《エリック目線》
「警部補!ご苦労様です!」
「...ああ、みんなもご苦労様」
俺たちは勤務時間後にパーティーをする。
「うまあっ!」
「このチキン、丁度よく焼けているぞ!」
「誰が持ってきたんだ...?」
...カムイから教わった影響なのか、チキンの焼き具合等が分かるようになった。
(はじめの頃は、何もできなかったのに...)
カムイとの出会いは唐突だったが、今では悪くないと思っている。
「...すまない、俺は抜ける。おまえたちは楽しめ」
「あ、ありがとうございます!」
「お疲れ様です!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は、しまったと思った。
(いつもだと、日付が変わるこの頃に、このバーにきていたな)
カムイと共に、ここで世間話をしていた。
仕事の話もしながら、二人でいろいろ持ち寄って...。
だが、今のあいつの側には大切な人がいる。
ナタリーたちはさておき、あいつとはいつもここで...。
彼女は拐われて怖い思いをしたばかりだ。こられるわけがないのに、何故俺はきてしまったのだろうか。
「...帰るか」
俺がそう呟いたとき、近くで声がした。
「え?もう帰るの?」
「...!おまえ、彼女は」
「寝てる。それに、あいつらも馬鹿じゃないし、俺の家を突き止められている訳ではない。だから...こうしてきみと過ごすためにきたんだ」
まさかきてくれるとは思っていなかった。
だから俺は、激しく動揺した。
「しかし...」
「エリック、言いたいことは分かる。俺も、やってることは最低だと思ってるよ。でも、俺は彼女も親友も大切にしたいんだ」
「...そうか」
この男のこういうところは出会った頃から全く変わらない。
『傍にある全てを守る』。
そんな決意が簡単にできるわけがない。
そういう所を俺は尊敬している。
「それに、寂しがってるかなって」
「なっ⁉べ、別に寂しくなんかないんだからな」
...嘘だ。
本当はきてくれて嬉しいくせに、俺はそれを素直に言えない。
「...エリック、拳銃持ってる?」
「は?何故だ?」
「サンタクロースが、プレゼントを届けにきたみたいだよ」
周りを見ると、赤い服を着た強盗たちがレジに向かっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「...四、五人かな?」
「ああ」
「あの悪いサンタを片づけたら、プレゼント交換ね」
「ああ...っておい!今はそれどころじゃないだろ」
「だから、あれを片づけたらだよ」
強盗を『あれ』呼ばわりできるのは、きっとこいつだけだろう。
「じゃあ、まずは俺からいく。おまえは裏に回りこめ」
「了解」
カムイは研ぎ澄まされたナイフを手を持つ。
「おい、動くなよ?」
「た、助けて...」
店員は震えてしまっている。
俺は威嚇射撃をしようとしたが、そんな暇はないと判断した。
「ぐわあっ!」
まずは一人。
「...動くな。俺は警官だ。人質を解放しろ」
「なんだと!」
...後ろから二人。
俺は蹴り倒した。
素早く手錠を出し、そのままはめる。
人質も無事に奪還した。
「怪我はありませんか?」
「あ、ありがとうございます...!」
俺は気づいていなかった。
...あと一人、足りていなかったことに。
「おりゃあ!」
「しまっ...」
ひゅん、と音がする。
「ぐわあっ!」
「...俺の親友に何してくれてるの?」
「カムイ、わざわざ足に命中させることなかっただろう...」
「動けなくしないとダメかなって」
カムイは自前の手錠をはめる。
「この強盗たちは、明日の朝警察に突き出してください。俺もいますから」
「あ、ありがとうございました...!」
客が少ない時間だったことも幸いして、死傷者を出さずにすんだ。
...あいつがいたからできたことだ。
「行こう」
「ああ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はい、これ」
それは、オランジェットだった。
「いつもすまない」
「今年は食べ物しか用意できなかったから...ついでにこれもあげる」
それは、星のストラップだった。
「ベンには内緒ね。これは、俺とエリックしか持ってないから」
「そうなのか?」
「うん、エリックのは金でしょ?俺のは、銀なんだ」
そう言ってバッグにつけているものを見せてくれる。
...この喜びを、どう伝えればいいのだろうか。
「ありがとう」
俺は、手袋を渡した。
「おまえは危なっかしい。...それに、手が悴めばナイフが使えないだろうが」
「エリックは、いつも俺がほしいものをくれるね。ありがとう。大切にするよ」
いつも以上に微笑んでいるカムイを目にすると、俺はほっと息をついた。
「じゃあね」
「ああ」
一人歩く帰り道...俺は柄にもなく、この平和な日々が続くようにとそっと夜空の星に願うのだった。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる