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Until the day when I get engaged. -In linear light-
第61話
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ー*ー
この日は朝から大忙しだった。
「メル、チェリーパイできた?」
「はい」
「それじゃあ次は、シチューを作ろうか」
「はい!」
大量の料理を家で作り、しかも夕方までに警察署まで運ばなければならない。
「それからマフィンも焼かないと...」
「私、焼きます!」
「じゃあ、俺はシチューを作るよ」
お昼前、ようやく料理が完成した。
「三時間くらいかかったね」
「はい...」
「お疲れ様」
カムイが口のなかにできたてのパンケーキをいれてくれる。
「美味しいです」
「よかった」
「いつの間に作ったんですか?」
「んー?あ、ちょっとだけ余裕ができたから。お昼御飯にもなるかなって」
カムイは微笑みながら言うけれど、相当大変だったにちがいない。
「ありがとうございます」
私は感謝の気持ちでいっぱいだった。
(私は何も作れませんでした...)
「メルがいっぱい頑張ってくれたおかげで、去年よりずっと早く終わったよ。こちらこそありがとう」
頭を撫でられて、私はほっとしてしまう。
「私、ちゃんと役にたちましたか?」
「うん、上出来」
ー**ー
メルがぱあっと明るくなる。
(役にたててないわけないのに...)
「メルは、昨日からあれだけ手伝ってくれてるでしょ?役にたつどころか、メルがいなかったら料理を作るのが間に合わなかったよ。本当にありがとう」
「...!」
メルは本当に嬉しそうに笑っていた。
「さて、と。あとは恐らく五分後にくるであろうエリックを引き止めるだけだよ」
「お料理はどうやって運ぶんですか?」
「家の前に馬車がきてるから、早速運んでもらおう」
「はい!」
俺たちは馬車に乗っているナタリーたちに料理を渡して、急いで食器を片づけた。
ー*ー
食器を片づけ終えた頃、ちょうどエリックさんがやってきた。
「こ、こんにちは」
「ああ」
「紅茶を淹れますね。コーヒーも...」
エリックさんの好みは、コーヒーに角砂糖五つだ。
「どうぞ」
「ありがとう」
「エリックって意外と甘党だよね」
「うるせー」
エリックさんはゴクゴク飲み干してしまう。
「エリック、これで勝負しないか?」
そう言ってカムイが出したのは、トランプだった。
「メルはルールが分かるのか?」
「はい!」
「メルはポーカーが強いんだよ。ブラックジャックも」
「そんなマニアックなものを...」
「でも私、一番得意なのはメランコリーです」
「ならば、メランコリー、ポーカー、ブラックジャックの順番にやっていけばいいんじゃないか?」
「そうしようか」
こうして私たちは、トランプで遊んだ。
今日はコインの代わりにキャンディーを使った。
「なっ...。競技が変わってないか?」
「メル、またたくさん揃ったね」
「はい!」
メランコリーは私の圧勝だった。
エリックさんはとても驚いていた。
次は、ポーカーだ。
「コインベット!」
「レイズです」
「コールだ」
しばらくやりとりが続き...
「ショウ・ダウン」
私はセブンのスリーカード、カムイはエースとテンのツーペア...エリックさんは、ロイヤルストレートフラッシュだった。
「エリックさん、強いです」
「まあ、なれてるからな」
「あー、今日は手札がいまいちだ...」
それからブラックジャックをした。
「ヒット、ヒット、ヒット、スタンド」
「スタンドです」
「スタンドかな」
「「「オープン」」(です)」
エリックさんは十八、私は二十、カムイは...
「ブラックジャック」
「相変わらずおまえはブラックジャックが強いんだな」
「まあね」
「なあ、一つ聞きたかったのだが...メルがいつも腕にしているそれは、大切なものなのか?」
エリックさんが指さしているのは、ブルーのブレスレットだ。
「はい、とっても大切なものなんです」
ー**ー
とっても大切なもの、か。
そんなふうに思われているのが嬉しくて、俺はメルの手をそっと握った。
「いいか、大事なものなら絶対に手離すな。大事なものほど、失いやすいからな...」
「...?はい、分かりました」
エリックの過去からすればそうなのだろう。
だが、俺がメルのすべてを守ってみせる。
...そろそろ、馬車がくる時間だ。
「エリック、一緒にきてくれる?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「今日はもう休めと言われたのだが...」
「いいから、ほら」
キイ、と音をたてて扉を開けた瞬間、
クラッカーが宙を舞う。
「エリック警部補、お誕生日おめでとうございます!」
「は?え?あ?」
エリックは混乱している。
「そうか、今日は俺の誕生日か...」
毎年のように、エリックは自分の誕生日を忘れる。
「俺の好きなものばかり...プレゼントまである。毎年ありがとう」
エリックはかなり感激したようだ。
その後、無事にパーティーは成功し、俺とメルは家に帰った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ベッドの中で二人で今日のことを話す。
「メル、ありがとう」
「...?」
「それのこと、『とっても大切なもの』って言ってくれて」
俺はブレスレットを指さす。
「あ...」
メルがかあっと赤くなる。
「た、大切なのは本当ですから」
「ありがとう」
俺はメルを腕のなかに閉じこめて、そっと頭を撫でた。
しばらくすると、メルが抱きしめかえしてくれる。
そのあたたかさに安心して、俺はそっと瞼を閉じた。
この日は朝から大忙しだった。
「メル、チェリーパイできた?」
「はい」
「それじゃあ次は、シチューを作ろうか」
「はい!」
大量の料理を家で作り、しかも夕方までに警察署まで運ばなければならない。
「それからマフィンも焼かないと...」
「私、焼きます!」
「じゃあ、俺はシチューを作るよ」
お昼前、ようやく料理が完成した。
「三時間くらいかかったね」
「はい...」
「お疲れ様」
カムイが口のなかにできたてのパンケーキをいれてくれる。
「美味しいです」
「よかった」
「いつの間に作ったんですか?」
「んー?あ、ちょっとだけ余裕ができたから。お昼御飯にもなるかなって」
カムイは微笑みながら言うけれど、相当大変だったにちがいない。
「ありがとうございます」
私は感謝の気持ちでいっぱいだった。
(私は何も作れませんでした...)
「メルがいっぱい頑張ってくれたおかげで、去年よりずっと早く終わったよ。こちらこそありがとう」
頭を撫でられて、私はほっとしてしまう。
「私、ちゃんと役にたちましたか?」
「うん、上出来」
ー**ー
メルがぱあっと明るくなる。
(役にたててないわけないのに...)
「メルは、昨日からあれだけ手伝ってくれてるでしょ?役にたつどころか、メルがいなかったら料理を作るのが間に合わなかったよ。本当にありがとう」
「...!」
メルは本当に嬉しそうに笑っていた。
「さて、と。あとは恐らく五分後にくるであろうエリックを引き止めるだけだよ」
「お料理はどうやって運ぶんですか?」
「家の前に馬車がきてるから、早速運んでもらおう」
「はい!」
俺たちは馬車に乗っているナタリーたちに料理を渡して、急いで食器を片づけた。
ー*ー
食器を片づけ終えた頃、ちょうどエリックさんがやってきた。
「こ、こんにちは」
「ああ」
「紅茶を淹れますね。コーヒーも...」
エリックさんの好みは、コーヒーに角砂糖五つだ。
「どうぞ」
「ありがとう」
「エリックって意外と甘党だよね」
「うるせー」
エリックさんはゴクゴク飲み干してしまう。
「エリック、これで勝負しないか?」
そう言ってカムイが出したのは、トランプだった。
「メルはルールが分かるのか?」
「はい!」
「メルはポーカーが強いんだよ。ブラックジャックも」
「そんなマニアックなものを...」
「でも私、一番得意なのはメランコリーです」
「ならば、メランコリー、ポーカー、ブラックジャックの順番にやっていけばいいんじゃないか?」
「そうしようか」
こうして私たちは、トランプで遊んだ。
今日はコインの代わりにキャンディーを使った。
「なっ...。競技が変わってないか?」
「メル、またたくさん揃ったね」
「はい!」
メランコリーは私の圧勝だった。
エリックさんはとても驚いていた。
次は、ポーカーだ。
「コインベット!」
「レイズです」
「コールだ」
しばらくやりとりが続き...
「ショウ・ダウン」
私はセブンのスリーカード、カムイはエースとテンのツーペア...エリックさんは、ロイヤルストレートフラッシュだった。
「エリックさん、強いです」
「まあ、なれてるからな」
「あー、今日は手札がいまいちだ...」
それからブラックジャックをした。
「ヒット、ヒット、ヒット、スタンド」
「スタンドです」
「スタンドかな」
「「「オープン」」(です)」
エリックさんは十八、私は二十、カムイは...
「ブラックジャック」
「相変わらずおまえはブラックジャックが強いんだな」
「まあね」
「なあ、一つ聞きたかったのだが...メルがいつも腕にしているそれは、大切なものなのか?」
エリックさんが指さしているのは、ブルーのブレスレットだ。
「はい、とっても大切なものなんです」
ー**ー
とっても大切なもの、か。
そんなふうに思われているのが嬉しくて、俺はメルの手をそっと握った。
「いいか、大事なものなら絶対に手離すな。大事なものほど、失いやすいからな...」
「...?はい、分かりました」
エリックの過去からすればそうなのだろう。
だが、俺がメルのすべてを守ってみせる。
...そろそろ、馬車がくる時間だ。
「エリック、一緒にきてくれる?」
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「今日はもう休めと言われたのだが...」
「いいから、ほら」
キイ、と音をたてて扉を開けた瞬間、
クラッカーが宙を舞う。
「エリック警部補、お誕生日おめでとうございます!」
「は?え?あ?」
エリックは混乱している。
「そうか、今日は俺の誕生日か...」
毎年のように、エリックは自分の誕生日を忘れる。
「俺の好きなものばかり...プレゼントまである。毎年ありがとう」
エリックはかなり感激したようだ。
その後、無事にパーティーは成功し、俺とメルは家に帰った。
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ベッドの中で二人で今日のことを話す。
「メル、ありがとう」
「...?」
「それのこと、『とっても大切なもの』って言ってくれて」
俺はブレスレットを指さす。
「あ...」
メルがかあっと赤くなる。
「た、大切なのは本当ですから」
「ありがとう」
俺はメルを腕のなかに閉じこめて、そっと頭を撫でた。
しばらくすると、メルが抱きしめかえしてくれる。
そのあたたかさに安心して、俺はそっと瞼を閉じた。
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