99 / 220
Until the day when I get engaged. -In linear light-
第59話
しおりを挟む
ー*ー
それから数日後...。
「カムイ!」
「朝から大声で元気だね、ナタリー」
「ついに完成したの!あたしの自信作よ!」
ナタリーさんはカムイに箱を渡した。
「それじゃあね!」
ナタリーさんは足早に行ってしまった。
「イースターの衣装みたいだ」
「そうなんですか...?」
私は箱を開けてみる。
「これ、」
「ごめん。メルに好きな色を聞いておいて、全く違う色のものを選んじゃった」
パステルカラー、というやつだろうか。
薄いピンクの、可愛らしいブラウスとスカートだった。
(自分では絶対に選ばない色です)
「私に似合うでしょうか?」
「きっとよく似合うよ」
カムイがそう言ってくれるものの、あまり自信はない。
それと一緒に入っているのは、ウサギの耳の飾りがついた帽子だ。
「わあ...こういうのもあるんですね」
「気に入ってもらえたようでなによりだよ」
「ありがとうございます」
私はすでに、イースターが楽しみになっていた。
ー**ー
俺はもう一つの別の箱を開ける。
「...!これは、メルが選んでくれたの?」
俺は当たり前なことを聞いてしまった。
黄と黒を基調とした、トップスとボトムスが入っていた。
帽子はブラックだが、トランプのモチーフがついている。
「ごめんなさい、カムイ。好きな色を聞いておいて、私も全く違う色のものを選んでしまいました...」
全く違うというほどではないと思うのだが、メルは申し訳なさそうに俯いている。
「俺のために、一生懸命選んでくれたんでしょ?俺はそれが一番嬉しいから。ありがとうメル。俺に似合うかな?」
俺はメルの頭を撫でながら問う。
「絶対カムイが一番かっこいいです!」
どうしてこの子はこんなに純粋な瞳で俺の方を真っ直ぐ見て、こんなに恥ずかしいことを言えるのだろう。
「きっとメルが一番可愛いよ。でも...」
俺はメルを抱きしめる。
「変な男が近寄っていかないか心配だな」
「変な男、ですか?」
「うん。可愛いメルが拐われないようにしないとね」
メルはぽうっと赤くなる。
そういうところが可愛らしくて、思わず閉じこめておきたくなってしまう。
(俺も相当末期だな)
ふと箱に目をやると、一枚の紙切れが入っている。
『今年はどうするの?』
そのメモを見て、ようやく思い出した。
「しまった...!」
ー*ー
「何かあったんですか?」
いきなり慌てるカムイに疑問をなげかける。
「もうすぐエリックの誕生日なんだ」
「そうなんですか?」
「うん、三月二十三日だから...あと三日しかない!メル、これから買い物につきあってくれる?」
「はい」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「えっと、エリックさんのプレゼントを買うんですか?」
「うん。毎年みんなでお祝いしてるから...。今年はメルもいるからますます賑やかになりそうだね」
「が、頑張ります!」
私に何ができるのかは分からないけれど、エリックさんが喜んでくれるなら、カムイの力になれるなら、私は私にできることをするだけだ。
「あの、エリックさんって何がお好きなんですか?」
「チェリーパイかな。エリックはさくらんぼに目がないんだ」
「さくらんぼ大好きなんですね...」
「プレゼントは...メル、一緒に選んでくれる?」
「はい!」
ー**ー
今年は何を贈ろうかと毎年のように悩む。
「エリックさんはお外のお仕事が多いんですよね?」
「うん。本当は内勤でいいはずなんだけどね」
「ナイキン...?」
「書類を整理したり、事件についての捜査の指示を出す人のことだよ」
「でもエリックさんは見回りに...」
「エリックは書類とか苦手なんだ」
通常なら楽になったと喜びそうなものなのに、俺の親友は一ミクロンも喜んではいなかった。
寧ろ内勤を部下に譲り、自分が現場に出ている。
「ずっと使えるものがいいですよね?」
「そうだね。...あ、これはどうかな?」
「帽子ですか?たしかにいつでも使えますね!エリックさんは何色がお好きなんでしょう?」
「うーん...茶色?」
メルと色々話しながら、ようやくプレゼントが決まった。
「場所はどこでするんですか?」
「警察署だよ。多分、エリックの部下たちがサプライズでお祝いの準備しているはずだからね」
そう、毎年恒例行事のように、警察署ではサプライズパーティーが開かれる。
「私はチェリーパイを作りますね。あとは紅茶も淹れます」
「うん、俺も一緒に作るよ」
帰り道、手を繋いで歩いて帰る。
「エリックさん、喜んでくださるのでしょうか?」
「きっと喜ぶよ」
俺はそう答えつつ、若干量エリックに妬いてしまっていた。
(メルがわくわくしているのが分かるぶん、ちょっともやもやするな)
「あ」
「メル、どうかしたの?」
「いえ、なんでもありません」
メルの視線の先には、焼きたてのパンを売っているお店があった。
「...買って帰ろうか」
「え?いえ、悪いですし」
「俺も食べたいから。ほら、行こう?一つが多いなら半分こにすればいい」
「...はい」
メルのキラキラした表情を見ると、俺は心底ときめいてしまった。
帰り道、二人でパンを分けて食べながら家へと急いだ。
...今、最高に幸せだと心からそう思った。
それから数日後...。
「カムイ!」
「朝から大声で元気だね、ナタリー」
「ついに完成したの!あたしの自信作よ!」
ナタリーさんはカムイに箱を渡した。
「それじゃあね!」
ナタリーさんは足早に行ってしまった。
「イースターの衣装みたいだ」
「そうなんですか...?」
私は箱を開けてみる。
「これ、」
「ごめん。メルに好きな色を聞いておいて、全く違う色のものを選んじゃった」
パステルカラー、というやつだろうか。
薄いピンクの、可愛らしいブラウスとスカートだった。
(自分では絶対に選ばない色です)
「私に似合うでしょうか?」
「きっとよく似合うよ」
カムイがそう言ってくれるものの、あまり自信はない。
それと一緒に入っているのは、ウサギの耳の飾りがついた帽子だ。
「わあ...こういうのもあるんですね」
「気に入ってもらえたようでなによりだよ」
「ありがとうございます」
私はすでに、イースターが楽しみになっていた。
ー**ー
俺はもう一つの別の箱を開ける。
「...!これは、メルが選んでくれたの?」
俺は当たり前なことを聞いてしまった。
黄と黒を基調とした、トップスとボトムスが入っていた。
帽子はブラックだが、トランプのモチーフがついている。
「ごめんなさい、カムイ。好きな色を聞いておいて、私も全く違う色のものを選んでしまいました...」
全く違うというほどではないと思うのだが、メルは申し訳なさそうに俯いている。
「俺のために、一生懸命選んでくれたんでしょ?俺はそれが一番嬉しいから。ありがとうメル。俺に似合うかな?」
俺はメルの頭を撫でながら問う。
「絶対カムイが一番かっこいいです!」
どうしてこの子はこんなに純粋な瞳で俺の方を真っ直ぐ見て、こんなに恥ずかしいことを言えるのだろう。
「きっとメルが一番可愛いよ。でも...」
俺はメルを抱きしめる。
「変な男が近寄っていかないか心配だな」
「変な男、ですか?」
「うん。可愛いメルが拐われないようにしないとね」
メルはぽうっと赤くなる。
そういうところが可愛らしくて、思わず閉じこめておきたくなってしまう。
(俺も相当末期だな)
ふと箱に目をやると、一枚の紙切れが入っている。
『今年はどうするの?』
そのメモを見て、ようやく思い出した。
「しまった...!」
ー*ー
「何かあったんですか?」
いきなり慌てるカムイに疑問をなげかける。
「もうすぐエリックの誕生日なんだ」
「そうなんですか?」
「うん、三月二十三日だから...あと三日しかない!メル、これから買い物につきあってくれる?」
「はい」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「えっと、エリックさんのプレゼントを買うんですか?」
「うん。毎年みんなでお祝いしてるから...。今年はメルもいるからますます賑やかになりそうだね」
「が、頑張ります!」
私に何ができるのかは分からないけれど、エリックさんが喜んでくれるなら、カムイの力になれるなら、私は私にできることをするだけだ。
「あの、エリックさんって何がお好きなんですか?」
「チェリーパイかな。エリックはさくらんぼに目がないんだ」
「さくらんぼ大好きなんですね...」
「プレゼントは...メル、一緒に選んでくれる?」
「はい!」
ー**ー
今年は何を贈ろうかと毎年のように悩む。
「エリックさんはお外のお仕事が多いんですよね?」
「うん。本当は内勤でいいはずなんだけどね」
「ナイキン...?」
「書類を整理したり、事件についての捜査の指示を出す人のことだよ」
「でもエリックさんは見回りに...」
「エリックは書類とか苦手なんだ」
通常なら楽になったと喜びそうなものなのに、俺の親友は一ミクロンも喜んではいなかった。
寧ろ内勤を部下に譲り、自分が現場に出ている。
「ずっと使えるものがいいですよね?」
「そうだね。...あ、これはどうかな?」
「帽子ですか?たしかにいつでも使えますね!エリックさんは何色がお好きなんでしょう?」
「うーん...茶色?」
メルと色々話しながら、ようやくプレゼントが決まった。
「場所はどこでするんですか?」
「警察署だよ。多分、エリックの部下たちがサプライズでお祝いの準備しているはずだからね」
そう、毎年恒例行事のように、警察署ではサプライズパーティーが開かれる。
「私はチェリーパイを作りますね。あとは紅茶も淹れます」
「うん、俺も一緒に作るよ」
帰り道、手を繋いで歩いて帰る。
「エリックさん、喜んでくださるのでしょうか?」
「きっと喜ぶよ」
俺はそう答えつつ、若干量エリックに妬いてしまっていた。
(メルがわくわくしているのが分かるぶん、ちょっともやもやするな)
「あ」
「メル、どうかしたの?」
「いえ、なんでもありません」
メルの視線の先には、焼きたてのパンを売っているお店があった。
「...買って帰ろうか」
「え?いえ、悪いですし」
「俺も食べたいから。ほら、行こう?一つが多いなら半分こにすればいい」
「...はい」
メルのキラキラした表情を見ると、俺は心底ときめいてしまった。
帰り道、二人でパンを分けて食べながら家へと急いだ。
...今、最高に幸せだと心からそう思った。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる