98 / 220
Until the day when I get engaged. -In linear light-
第58話
しおりを挟む
ー*ー
次の日。目を開けると、視界いっぱいにカムイの顔がうつる。
穏やかな寝息をたてて寝ている彼を見て、私は心の底から安心した。
(ちゃんと寝てくれてよかったです...)
カムイの髪に目をやると、寝癖がついている。
何度撫でてもぴょんぴょんとはねる髪に、私は思わず笑みをこぼした。
「ん...」
カムイが私の手をとる。
「ん、メル?」
「おはようございます」
「うん、おはよう...」
カムイはそう言って目を閉じてしまう。
(え...)
いつもなら目を開けて、すぐに食事の支度をするカムイが、再び眠ってしまった。
疲れているのだろうか。
私は掴まれたままの手をそっと振り払おうとすると、逆にひかれてしまう。
「カムイ⁉」
「くぅ...」
カムイとの距離が近くなって、昨夜のことを思い出す。
(なんだか頭がふわふわする、不思議なキスでした...)
自分の口から漏れ出ていた声を思い出して、私は頬が熱くなっていくのを感じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから二時間後。ようやくカムイは起きた。
「おはようございます」
「うん、おはよう」
カムイが優しく私の頭を撫でてくれる。
その感覚が心地よくて、私はつい、身体を預けてしまう。
「メル、今夜馬車がくるから...だから、もう一度海に行こうか」
「はい!」
(お昼ご飯にサンドイッチを作っていきましょう)
ー**ー
メルの右手の包帯を替える。
消毒したとき、傷に滲みて少し苦しそうな表情をするメルを見るたび、罪悪感でいっぱいになる。
「ごめんね...」
「もう謝らないでくださいって、昨日も言ったじゃないですか。カムイが悪い訳じゃないんです。それに、カムイの苦しみが半分もらえるなら、全然平気ですよ?」
「メル、それじゃあその代わりに...メルの悲しみや苦しみも、半分頂戴?」
「えっ...、いいんですか?」
「当たり前でしょ、だってメルは俺の大事な彼女だから」
メルは顔を真っ赤にしている。
(可愛い...)
メルの頭をわしゃわしゃと撫で、俺は立ち上がる。
「メル、着替えたらおいで」
「はい」
俺はシャツの上にベストを着て、素早くベッドルームをあとにした。
(メルと思い出になるようなことがしたいな...さて、何がいいか)
ー*ー
「おまたせしました!」
「寒くない?」
「大丈夫です」
カムイがいつものように手をさしのべてくれる。
「ありがとうございます」
「それじゃあ行こうか」
「はい!」
私はバスケットを持っていく。
(今日はハムサンドにしてみましたが、カムイは気に入ってくださるのでしょうか?)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
三分もたたないうちに、海にたどりつく。
波が暴れるように動いている。
「うーん...やっぱり雨あがりだとこうなるよね」
「そうなんですか?」
「うん、高い波がくるんだ。でも...まあ、砂浜近くまでは大きい波はこないから、この間みたいには遊べると思うよ」
「本当ですか?」
「うん。...ほら、こんなふうにね!」
パシャッ!
「カムイ、ずるいです。私もやります」
パシャッ!パシャッ!
何度も何度もかけあううちに、いつの間にか右手にかかってしまっていた。
(...!滲みます!)
「ごめんメル!大丈夫...?」
「はい...」
「ちょっときて」
「え?」
ー**ー
傷が膿んでいないかを調べ、俺は急いでメルの包帯を替えた。
「ごめんね...痛かったよね」
「いえ、大丈夫です!それよりも、おなかすきませんか?」
「ちょっとだけ」
「じゃあ、これ食べてください!紅茶も淹れてきましたから」
メルがにこにこしながらバスケットを開ける。
(ハムサンドか...こんなものまで作れるのか)
メルは本当にすごい子だと思う。
「美味しいよ」
「よかったです...!」
メルは本当に幸せそうに笑っていた。
「メル」
「...⁉」
メルは驚いたような顔をしていたが、ハムサンドをもぐもぐと食べはじめる。
「カムイはいきなりすぎます...」
恥ずかしそうに目を逸らされてしまう。
「ごめんごめん。...もうそろそろ馬車がくるかもしれない」
「ええ⁉もうですか...?」
残念そうに言うメルの頭を撫でて、
「大丈夫、またいつでも連れてくるから!約束ね」
「はい!」
俺たちはゆびきりをして、コテージに戻った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
帰りの馬車のなかで、俺はメルに密かに作っていたものを渡した。
(海の思い出...にはならないけど、喜んでくれるといいな)
「わあ...」
それは、ライムグリーンのケープ。
コテージに置いてあった裁縫道具で密かに作ったのだ。
「ごめんね、布がそれしかなくて...」
「嬉しいです、ありがとうございます!」
メルが早速羽織ろうとしたので、ネグリジェに羽織った方がいいと薦めておいた。
「カムイ」
「んー?」
「やっぱり、カムイが一番好きです!」
「...!」
メルが顔を寄せてきて、そっとキスしてくれた。
(どうしてこうも可愛いんだ...)
馬車が揺れるなか、家にたどりつくまで厭きるほどに口づけを繰り返した...。
次の日。目を開けると、視界いっぱいにカムイの顔がうつる。
穏やかな寝息をたてて寝ている彼を見て、私は心の底から安心した。
(ちゃんと寝てくれてよかったです...)
カムイの髪に目をやると、寝癖がついている。
何度撫でてもぴょんぴょんとはねる髪に、私は思わず笑みをこぼした。
「ん...」
カムイが私の手をとる。
「ん、メル?」
「おはようございます」
「うん、おはよう...」
カムイはそう言って目を閉じてしまう。
(え...)
いつもなら目を開けて、すぐに食事の支度をするカムイが、再び眠ってしまった。
疲れているのだろうか。
私は掴まれたままの手をそっと振り払おうとすると、逆にひかれてしまう。
「カムイ⁉」
「くぅ...」
カムイとの距離が近くなって、昨夜のことを思い出す。
(なんだか頭がふわふわする、不思議なキスでした...)
自分の口から漏れ出ていた声を思い出して、私は頬が熱くなっていくのを感じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから二時間後。ようやくカムイは起きた。
「おはようございます」
「うん、おはよう」
カムイが優しく私の頭を撫でてくれる。
その感覚が心地よくて、私はつい、身体を預けてしまう。
「メル、今夜馬車がくるから...だから、もう一度海に行こうか」
「はい!」
(お昼ご飯にサンドイッチを作っていきましょう)
ー**ー
メルの右手の包帯を替える。
消毒したとき、傷に滲みて少し苦しそうな表情をするメルを見るたび、罪悪感でいっぱいになる。
「ごめんね...」
「もう謝らないでくださいって、昨日も言ったじゃないですか。カムイが悪い訳じゃないんです。それに、カムイの苦しみが半分もらえるなら、全然平気ですよ?」
「メル、それじゃあその代わりに...メルの悲しみや苦しみも、半分頂戴?」
「えっ...、いいんですか?」
「当たり前でしょ、だってメルは俺の大事な彼女だから」
メルは顔を真っ赤にしている。
(可愛い...)
メルの頭をわしゃわしゃと撫で、俺は立ち上がる。
「メル、着替えたらおいで」
「はい」
俺はシャツの上にベストを着て、素早くベッドルームをあとにした。
(メルと思い出になるようなことがしたいな...さて、何がいいか)
ー*ー
「おまたせしました!」
「寒くない?」
「大丈夫です」
カムイがいつものように手をさしのべてくれる。
「ありがとうございます」
「それじゃあ行こうか」
「はい!」
私はバスケットを持っていく。
(今日はハムサンドにしてみましたが、カムイは気に入ってくださるのでしょうか?)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
三分もたたないうちに、海にたどりつく。
波が暴れるように動いている。
「うーん...やっぱり雨あがりだとこうなるよね」
「そうなんですか?」
「うん、高い波がくるんだ。でも...まあ、砂浜近くまでは大きい波はこないから、この間みたいには遊べると思うよ」
「本当ですか?」
「うん。...ほら、こんなふうにね!」
パシャッ!
「カムイ、ずるいです。私もやります」
パシャッ!パシャッ!
何度も何度もかけあううちに、いつの間にか右手にかかってしまっていた。
(...!滲みます!)
「ごめんメル!大丈夫...?」
「はい...」
「ちょっときて」
「え?」
ー**ー
傷が膿んでいないかを調べ、俺は急いでメルの包帯を替えた。
「ごめんね...痛かったよね」
「いえ、大丈夫です!それよりも、おなかすきませんか?」
「ちょっとだけ」
「じゃあ、これ食べてください!紅茶も淹れてきましたから」
メルがにこにこしながらバスケットを開ける。
(ハムサンドか...こんなものまで作れるのか)
メルは本当にすごい子だと思う。
「美味しいよ」
「よかったです...!」
メルは本当に幸せそうに笑っていた。
「メル」
「...⁉」
メルは驚いたような顔をしていたが、ハムサンドをもぐもぐと食べはじめる。
「カムイはいきなりすぎます...」
恥ずかしそうに目を逸らされてしまう。
「ごめんごめん。...もうそろそろ馬車がくるかもしれない」
「ええ⁉もうですか...?」
残念そうに言うメルの頭を撫でて、
「大丈夫、またいつでも連れてくるから!約束ね」
「はい!」
俺たちはゆびきりをして、コテージに戻った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
帰りの馬車のなかで、俺はメルに密かに作っていたものを渡した。
(海の思い出...にはならないけど、喜んでくれるといいな)
「わあ...」
それは、ライムグリーンのケープ。
コテージに置いてあった裁縫道具で密かに作ったのだ。
「ごめんね、布がそれしかなくて...」
「嬉しいです、ありがとうございます!」
メルが早速羽織ろうとしたので、ネグリジェに羽織った方がいいと薦めておいた。
「カムイ」
「んー?」
「やっぱり、カムイが一番好きです!」
「...!」
メルが顔を寄せてきて、そっとキスしてくれた。
(どうしてこうも可愛いんだ...)
馬車が揺れるなか、家にたどりつくまで厭きるほどに口づけを繰り返した...。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる