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Until the day when I get engaged. -In linear light-
第57話
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ー*ー
「カムイ」
「うん、なに?」
「い、一緒に休んでください」
「...?」
カムイはよく分からないといった顔でこちらを見ている。
「最近、その...全然休んでいないように感じましたから」
実は私は、カムイが最近眠れていないことに薄々気づいていた。
「私が眠ったあと、少しお仕事をしていますよね?」
「...!」
「私は、カムイの笑顔を守りたいんです。守られてばかりでは嫌なんです...!」
「メル...」
カムイが神妙そうな顔をしたあと、こくりと頷いた。
「分かった。仕事はちょうど終わったし、今日はゆっくり休むよ」
「よかったです...」
「それにしても、よく気づいたね」
「あ、はい、まあ...」
カムイの顔色を見ると、すぐに分かる。
今日は元気がないとかあまり寝てないとか、そんなことしか気づけない自分がもどかしい。
「じゃあ、俺のお願いも聞いてくれる?」
「はい!」
「俺のお願いは...お風呂に入ってから話すよ」
「え、あ、はい」
私はテーブルの上の片づけにかかる。
(カムイが戻ってくる前に、このお部屋をピカピカにしておきましょう!)
ー**ー
まさかあんなに可愛いお願いをされるとは思わなかった。
(顔に出さないようにしてたつもりだったのにな...)
メルに心配をかけさせるわけにはいかないと思ったのに...。
何を願えばいいのか、分からなくなってしまった。
俺は湯船に頭まではいる。
「ぶくぶく...」
今夜は美しい偃月だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「お風呂あがったよ...⁉」
見違えるほどの部屋の綺麗さに、俺はただただ驚くしかなかった。
「あ、カムイ」
あ、じゃないよ!という言葉を呑みこみ、汚れてしまったメルの服をはたく。
「もう...掃除なら二人ですればよかったのに」
「カムイを驚かせたくて、ついやってしまいました」
「メル...ありがとう」
俺が頭を撫でてあげると、メルはぱあっと明るくなる。
(か、可愛い...)
「いつもありがとう」
「私は、私にできることをやっているだけですから」
メルはにこにこしながらこちらを見あげる。
「それじゃあ私も入ってきます!」
メルはパタパタと行ってしまった。
「さて...」
俺はキッチンに立つ。
(お礼になにか作ろう)
ー*ー
「ふう...」
そんな気の抜けた息が思わずこぼれてしまう。
(カムイに喜んでもらえてよかったです)
無理して笑っている様子もなかった。
本当によかったと思う。
バスルームから見える月はとても綺麗だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「メル、今作ったんだけど...食べる?」
「カップケーキ?美味しそうです!」
私はもぐもぐと食べる。
「やっぱりカムイの料理が一番です!」
「それはよかった」
カムイは最後の一口を食べてから食器洗いに取りかかる。
「私も洗います」
「いや、メルは先に髪を乾かした方がいい。風邪ひいちゃうよ?」
「分かりました」
私は急いで髪を乾かした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あの、カムイのお願いって...」
「ん?ああ、今からお願い言うよ?」
ベッドルームまできて、私はカムイに抱きしめられていた。
「...ここ、頂戴?」
ー**ー
「ええ⁉」
メルは真っ赤になる。
当然だ。
俺はメルの唇を指先でなぞった。
「...ダメ?」
こう言うとメルが断れないであろうことを知っていて言う俺は、卑怯者なのかもしれない。
「カムイに色々されるのは、嫌じゃありませんから」
メルはますます真っ赤になって言う。
俺はメルの顎を持ちあげ、自分の身を屈めて...
「...っ」
メルに口づけをおとす。
いつもより長い口づけに、メルは息苦しくなったのか口を薄く開く。
(ごめんね、メル)
「カムイっ...」
俺はその隙間に舌をいれる。
そのまま舌を絡ませて、長く深い口づけを交わす。
「んぅっ...ぁ...」
メルの口から出る甘い声に目眩がしそうになる。
俺の胸をやんわりと押してくる。
(しまった、メルに無理をさせてしまった)
「ごめん!こういうキスって初めてだから、どうしたらいいのか分からなくて...」
「はあ...はあ...だ、大丈夫です。でも、私も、初めて...だったので、ちょっと、びっくりしました」
息を整えながらメルが潤んだ瞳で俺の方を見る。
「ごめん。もう平気?」
「...はい」
「だったら、次は俺がメルのお願いを聞く番だね」
「はい!」
メルはベッドに寝転がる。
それに続いて、俺も寝転がった。
寝転がった直後、メルにぎゅっと抱きしめられる。
「メル...?」
「こうやって、朝までずーっとぎゅーってしていたら、カムイも眠れますよね...?」
不安そうに聞いてくる彼女に俺は答えた。
「メルが起きるまで側にいるから心配しないで?」
俺はその小さな身体を抱きしめかえす。
「はい。...おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
灯りを消すと、偃月の儚い輝きが部屋に差しこんでいた...。
「カムイ」
「うん、なに?」
「い、一緒に休んでください」
「...?」
カムイはよく分からないといった顔でこちらを見ている。
「最近、その...全然休んでいないように感じましたから」
実は私は、カムイが最近眠れていないことに薄々気づいていた。
「私が眠ったあと、少しお仕事をしていますよね?」
「...!」
「私は、カムイの笑顔を守りたいんです。守られてばかりでは嫌なんです...!」
「メル...」
カムイが神妙そうな顔をしたあと、こくりと頷いた。
「分かった。仕事はちょうど終わったし、今日はゆっくり休むよ」
「よかったです...」
「それにしても、よく気づいたね」
「あ、はい、まあ...」
カムイの顔色を見ると、すぐに分かる。
今日は元気がないとかあまり寝てないとか、そんなことしか気づけない自分がもどかしい。
「じゃあ、俺のお願いも聞いてくれる?」
「はい!」
「俺のお願いは...お風呂に入ってから話すよ」
「え、あ、はい」
私はテーブルの上の片づけにかかる。
(カムイが戻ってくる前に、このお部屋をピカピカにしておきましょう!)
ー**ー
まさかあんなに可愛いお願いをされるとは思わなかった。
(顔に出さないようにしてたつもりだったのにな...)
メルに心配をかけさせるわけにはいかないと思ったのに...。
何を願えばいいのか、分からなくなってしまった。
俺は湯船に頭まではいる。
「ぶくぶく...」
今夜は美しい偃月だ。
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「お風呂あがったよ...⁉」
見違えるほどの部屋の綺麗さに、俺はただただ驚くしかなかった。
「あ、カムイ」
あ、じゃないよ!という言葉を呑みこみ、汚れてしまったメルの服をはたく。
「もう...掃除なら二人ですればよかったのに」
「カムイを驚かせたくて、ついやってしまいました」
「メル...ありがとう」
俺が頭を撫でてあげると、メルはぱあっと明るくなる。
(か、可愛い...)
「いつもありがとう」
「私は、私にできることをやっているだけですから」
メルはにこにこしながらこちらを見あげる。
「それじゃあ私も入ってきます!」
メルはパタパタと行ってしまった。
「さて...」
俺はキッチンに立つ。
(お礼になにか作ろう)
ー*ー
「ふう...」
そんな気の抜けた息が思わずこぼれてしまう。
(カムイに喜んでもらえてよかったです)
無理して笑っている様子もなかった。
本当によかったと思う。
バスルームから見える月はとても綺麗だった。
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「メル、今作ったんだけど...食べる?」
「カップケーキ?美味しそうです!」
私はもぐもぐと食べる。
「やっぱりカムイの料理が一番です!」
「それはよかった」
カムイは最後の一口を食べてから食器洗いに取りかかる。
「私も洗います」
「いや、メルは先に髪を乾かした方がいい。風邪ひいちゃうよ?」
「分かりました」
私は急いで髪を乾かした。
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「あの、カムイのお願いって...」
「ん?ああ、今からお願い言うよ?」
ベッドルームまできて、私はカムイに抱きしめられていた。
「...ここ、頂戴?」
ー**ー
「ええ⁉」
メルは真っ赤になる。
当然だ。
俺はメルの唇を指先でなぞった。
「...ダメ?」
こう言うとメルが断れないであろうことを知っていて言う俺は、卑怯者なのかもしれない。
「カムイに色々されるのは、嫌じゃありませんから」
メルはますます真っ赤になって言う。
俺はメルの顎を持ちあげ、自分の身を屈めて...
「...っ」
メルに口づけをおとす。
いつもより長い口づけに、メルは息苦しくなったのか口を薄く開く。
(ごめんね、メル)
「カムイっ...」
俺はその隙間に舌をいれる。
そのまま舌を絡ませて、長く深い口づけを交わす。
「んぅっ...ぁ...」
メルの口から出る甘い声に目眩がしそうになる。
俺の胸をやんわりと押してくる。
(しまった、メルに無理をさせてしまった)
「ごめん!こういうキスって初めてだから、どうしたらいいのか分からなくて...」
「はあ...はあ...だ、大丈夫です。でも、私も、初めて...だったので、ちょっと、びっくりしました」
息を整えながらメルが潤んだ瞳で俺の方を見る。
「ごめん。もう平気?」
「...はい」
「だったら、次は俺がメルのお願いを聞く番だね」
「はい!」
メルはベッドに寝転がる。
それに続いて、俺も寝転がった。
寝転がった直後、メルにぎゅっと抱きしめられる。
「メル...?」
「こうやって、朝までずーっとぎゅーってしていたら、カムイも眠れますよね...?」
不安そうに聞いてくる彼女に俺は答えた。
「メルが起きるまで側にいるから心配しないで?」
俺はその小さな身体を抱きしめかえす。
「はい。...おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
灯りを消すと、偃月の儚い輝きが部屋に差しこんでいた...。
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