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Until the day when I get engaged. -In linear light-
第55話
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ー**ー
「メル!」
ジェンガがメルにあたらないようにメルを床に倒し、俺が上に被さるようになる。
メルに怪我がなかったのはよかったが...俺がメルを押し倒す形になってしまった。
「カムイ...?」
(メルに変な気はない、メルに変な気はない...)
俺は頭のなかで呪文のように繰り返し、なんとか理性を保つ。
「本当によかった...」
俺はメルの小さな身体を抱きしめる。
「カムイが守ってくれたおかげです。ありがとうございます」
「いや、本当にメルが無事でよかった」
俺はメルにキスを一つ落とす。
「...っ」
メルの顔は真っ赤になっている。
そういうところも、可愛くて好きだ。
「カムイ、ジェンガを拾わなくては...」
「そうだね、ごめん」
俺はメルから身体を離し、急いでジェンガをかき集める...。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「それじゃあ俺は、入浴してくるよ」
「はい!」
ジェンガを片づけ終え、俺はバスルームへと向かう。
(今日はどの入浴剤をいれようかな...。メルが好きそうな、柑橘系の香りのものを入れようか)
俺はそんなことを考えながら、『ホーム・スイート・ホーム』を口ずさんでいた。
ー*ー
カムイが戻ってくる前に、夕食を完成させようと思った。
(カムイは胡瓜が苦手だったはずです)
私はサラダに胡瓜を入れかけて、その手を止めて胡瓜をこっそり分からないように冷蔵庫にしまった。
(明日はブランチにキッシュでも作りましょう)
そんなことを呑気に考えていると...
ゴロゴロ!
「...!」
私は耳を塞いで、その場にしゃがみこんだ。
昔から雷はとても苦手で、いつもこんな調子だった。
(また光りました...)
ゴロゴロ!
私は思いきり目を閉じて、悲鳴をあげそうになるのを必死で堪える。
雷鳴は立て続けに轟き、コテージが揺れるほどの強い雷が落ちた。
(もうダメです...)
私はバスルームまで走る。
「カムイ...一緒に入ってもいいですか?」
「え?あ、うん...ちょっと待ってね」
カムイが動く音がする。
「はい、もういいよ」
私はバスタオルを身につけ、中に入る。
その時、この日一番の雷が落ちた。
「きゃっ...」
ー**ー
メルと一緒に入浴するのは何度目だろうか。
俺はもう、なれてきてしまっていた。
「はい、もういいよ」
メルが入ってきた瞬間、大きな雷鳴が轟いた。
「きゃっ...」
「⁉」
メルは俺に抱きついてきた。
(そ、そんなに身体を密着させられると...)
それどころではないと思い直し、メルを抱きしめる。
「雷、怖い?」
メルはこくこくと頷く。
「...そっか」
「すみません...」
メルは申し訳なさそうに湯船につかる。
「俺も入っていい?」
「はい」
メルは少しだけ避けてくれる。
俺はその隙間に入り、肩までつかる。
「ごめんね、雨が酷くなければすぐにでも家に帰れたのに...」
「お空のご機嫌は変わりやすいですから、仕方ありませんよ。それに、ここでカムイと過ごした数日間は、とっても充実してましたから!楽しかったですし...」
「それはよかった」
この様子だと、あと二、三日は帰れそうにない。
「明日は何をしようか」
「うーん...」
メルは一生懸命考えている。
「あの、久しぶりにやりたいことがあるのですが...」
「うん、何?」
「ぽ、ポーカーがしたいです」
...どうして子どもがしそうな遊びは知らないのに、何故ポーカーなんていう恐ろしいゲームは知っているんだろうか。
ー*ー
カムイは固まってしまった。
「あの、嫌ならいいんですけど...」
「そうじゃなくて、ちょっと驚いただけだよ。ポーカーは誰かに教わったの?」
「おばあさまが教えてくれました。あとはメランコリーとかダウトとかブラックジャックとかですかね」
トランプでおばあさまに負けたことはない。
でも、自分がどれだけ強いのかは分からない。
「ダウトは流石に三人以上じゃないとできないから...メランコリーからにしようか」
「はい!」
私は明日が楽しみになってきた。
するとまた、雷がおちた。
「...!」
「大丈夫だよ」
カムイがそっと手を握ってくれる。
そのぬくもりは、やはり安心できるもので。
私はその手を握りかえした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
食事を済ませ寝る時間になった頃、また雷が落ちた。
ゴロゴロ!
「...っ!」
私はカムイにしがみついてしまった。
「あ、ごめんなさい!」
「気にしないで。...さて、と」
「きゃっ⁉」
私はいきなりカムイに横抱きにされる。
「このままベッドまで運んであげるよ、お姫様」
「ち、ちょっと恥ずかしいです...」
「いいからいいから。こうすれば怖くないでしょ?」
私のために気を遣ってくれたのだと、そう思ってもいいだろうか。
「はい、到着」
カムイも横になる。
「カムイ...離れないでくださいね」
私はカムイを抱きしめる。
「勿論だよ」
カムイは私を包みこんでくれる。
「おやすみ」
「おやすみなさい...」
その温かな微睡みにつつまれて、いつの間にか眠りにおちていた。
「メル!」
ジェンガがメルにあたらないようにメルを床に倒し、俺が上に被さるようになる。
メルに怪我がなかったのはよかったが...俺がメルを押し倒す形になってしまった。
「カムイ...?」
(メルに変な気はない、メルに変な気はない...)
俺は頭のなかで呪文のように繰り返し、なんとか理性を保つ。
「本当によかった...」
俺はメルの小さな身体を抱きしめる。
「カムイが守ってくれたおかげです。ありがとうございます」
「いや、本当にメルが無事でよかった」
俺はメルにキスを一つ落とす。
「...っ」
メルの顔は真っ赤になっている。
そういうところも、可愛くて好きだ。
「カムイ、ジェンガを拾わなくては...」
「そうだね、ごめん」
俺はメルから身体を離し、急いでジェンガをかき集める...。
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「それじゃあ俺は、入浴してくるよ」
「はい!」
ジェンガを片づけ終え、俺はバスルームへと向かう。
(今日はどの入浴剤をいれようかな...。メルが好きそうな、柑橘系の香りのものを入れようか)
俺はそんなことを考えながら、『ホーム・スイート・ホーム』を口ずさんでいた。
ー*ー
カムイが戻ってくる前に、夕食を完成させようと思った。
(カムイは胡瓜が苦手だったはずです)
私はサラダに胡瓜を入れかけて、その手を止めて胡瓜をこっそり分からないように冷蔵庫にしまった。
(明日はブランチにキッシュでも作りましょう)
そんなことを呑気に考えていると...
ゴロゴロ!
「...!」
私は耳を塞いで、その場にしゃがみこんだ。
昔から雷はとても苦手で、いつもこんな調子だった。
(また光りました...)
ゴロゴロ!
私は思いきり目を閉じて、悲鳴をあげそうになるのを必死で堪える。
雷鳴は立て続けに轟き、コテージが揺れるほどの強い雷が落ちた。
(もうダメです...)
私はバスルームまで走る。
「カムイ...一緒に入ってもいいですか?」
「え?あ、うん...ちょっと待ってね」
カムイが動く音がする。
「はい、もういいよ」
私はバスタオルを身につけ、中に入る。
その時、この日一番の雷が落ちた。
「きゃっ...」
ー**ー
メルと一緒に入浴するのは何度目だろうか。
俺はもう、なれてきてしまっていた。
「はい、もういいよ」
メルが入ってきた瞬間、大きな雷鳴が轟いた。
「きゃっ...」
「⁉」
メルは俺に抱きついてきた。
(そ、そんなに身体を密着させられると...)
それどころではないと思い直し、メルを抱きしめる。
「雷、怖い?」
メルはこくこくと頷く。
「...そっか」
「すみません...」
メルは申し訳なさそうに湯船につかる。
「俺も入っていい?」
「はい」
メルは少しだけ避けてくれる。
俺はその隙間に入り、肩までつかる。
「ごめんね、雨が酷くなければすぐにでも家に帰れたのに...」
「お空のご機嫌は変わりやすいですから、仕方ありませんよ。それに、ここでカムイと過ごした数日間は、とっても充実してましたから!楽しかったですし...」
「それはよかった」
この様子だと、あと二、三日は帰れそうにない。
「明日は何をしようか」
「うーん...」
メルは一生懸命考えている。
「あの、久しぶりにやりたいことがあるのですが...」
「うん、何?」
「ぽ、ポーカーがしたいです」
...どうして子どもがしそうな遊びは知らないのに、何故ポーカーなんていう恐ろしいゲームは知っているんだろうか。
ー*ー
カムイは固まってしまった。
「あの、嫌ならいいんですけど...」
「そうじゃなくて、ちょっと驚いただけだよ。ポーカーは誰かに教わったの?」
「おばあさまが教えてくれました。あとはメランコリーとかダウトとかブラックジャックとかですかね」
トランプでおばあさまに負けたことはない。
でも、自分がどれだけ強いのかは分からない。
「ダウトは流石に三人以上じゃないとできないから...メランコリーからにしようか」
「はい!」
私は明日が楽しみになってきた。
するとまた、雷がおちた。
「...!」
「大丈夫だよ」
カムイがそっと手を握ってくれる。
そのぬくもりは、やはり安心できるもので。
私はその手を握りかえした。
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食事を済ませ寝る時間になった頃、また雷が落ちた。
ゴロゴロ!
「...っ!」
私はカムイにしがみついてしまった。
「あ、ごめんなさい!」
「気にしないで。...さて、と」
「きゃっ⁉」
私はいきなりカムイに横抱きにされる。
「このままベッドまで運んであげるよ、お姫様」
「ち、ちょっと恥ずかしいです...」
「いいからいいから。こうすれば怖くないでしょ?」
私のために気を遣ってくれたのだと、そう思ってもいいだろうか。
「はい、到着」
カムイも横になる。
「カムイ...離れないでくださいね」
私はカムイを抱きしめる。
「勿論だよ」
カムイは私を包みこんでくれる。
「おやすみ」
「おやすみなさい...」
その温かな微睡みにつつまれて、いつの間にか眠りにおちていた。
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