94 / 220
Until the day when I get engaged. -In linear light-
第54話
しおりを挟む
ー*ー
パンケーキを食べたあと、カムイはチェスの遊び方を教えてくれた。
「これはポーン。はじめの一歩は二歩すすませることもできるけど、基本的にはまっすぐ前に進むだけ、駒をとるときは斜め前にしか動けない」
「じゃあ、この少しだけ頭が尖っているものは...」
「ビショップだよ。こいつは斜めにしか動けないけど、何歩でも進められるんだ」
色々な駒の動かし方を教えてもらってから、早速遊んでみる。
(落ち着いているみたいでよかったです)
暫くして...
「カムイ、強いです...」
「小さい頃からやってたからね」
カムイは眩しいくらいの笑顔をみせている。
ー**ー
「うう...」
メルが半泣きになっているのを見て、俺は正気に戻った。
(しまった、エリック相手だと本気でかからないと勝てないから、つい...)
「メル、そのビショップを動かしてごらん?」
「こう、ですか...?」
メルのポーンはほとんど俺がとってしまった。
ポーンが少ないとき、俺はビショップで攻略する。
「そうそう、上手だよ」
メルはぱあっと明るくなった。
それから俺は、分からない程度に手を抜いて...
「私の、勝ちですか...?」
まずい。どうやらメルは大事なことを忘れているようだ。
「メル、そういう時は...」
「あ!チェックメイトです」
「よくできました。俺の負けだね」
「やりました!」
メルは大喜びしている。
「どうだった?」
「はじめてやってみましたが...とても楽しかったです!」
「それはよかった。次は何をして遊ぼうか...」
ー*ー
「じ、ジェンガという遊びをやってみたいです...」
「うん、分かった。それなら多分ここに...」
ぐぅ...
「あ!えっと、ええっと...」
なんてタイミングの悪いおなかだろう。
カムイはくすっと笑って、私の方を見る。
しばらくすると、ぐぅ...と鳴った。
「俺のおなかもすいたって。先にご飯にしようか」
「はい!」
時計を見ると、三時をまわっている。
「おやつの時間だし...ブリオッシュにしようか」
「ブリオッシュ...?」
また知らない食べ物がでてきた。
「作るから待ってて」
「じゃあ、私は紅茶を...」
カムイが私の手を止める。
「いや、俺がやるよ。...怪我させちゃったし」
「いいんです、私にやらせてください。アールグレイでいいですか?」
「...ありがとう」
私はいつもどおりの手順で作っていく。
そうこうしているうちに、ブリオッシュができあがった。
私はテーブルにおかれたそれを、フォークとナイフで切り分け、カムイの口の前に持っていく。
「はい、口開けてください」
ー**ー
無邪気な笑顔でそう言ってくるメルを見て、俺はドキドキしてしまった。
可愛すぎて、どうしたらいいのか分からない。
取り敢えず口を開ける。
「...うん、ちゃんとできたみたい。よかった、実はこれのレシピ、うろ覚えだったんだ」
「そうなんですか?でも、とっても美味しそうですよ?」
「そうかな?」
俺は自分のブリオッシュを切り分け、メルの前に持っていく。
「メルも食べて?」
「...え?ええ⁉」
メルは顔を真っ赤にしている。
...当然だ。俺は切り分けたものをフォークでささず、素手で掴んでメルにさしだしたのだ。
「食べて?」
「ええっと、紅茶が冷めちゃいますよ...?」
一生懸命恥ずかしさを誤魔化すメルも可愛いと思ってしまう。
「いいから、ほら。...俺のわがまま、聞いてくれない?」
「...っ」
メルは覚悟を決めたように口を開ける。
彼女の柔らかい舌と、それほど鋭くない歯が俺の指にあたる。
「ごめんなひゃい!指に歯が...いひゃくなかったでふか?」
口のなかにブリオッシュをいれたまま喋っているメルは、少しだけふごふごとした話し方になっている。
「...ははっ!大丈夫だよ、それより...早く飲みこんだ方がいいかもしれないよ?」
「...カムイは時々意地悪です。美味しいですけど、あんまり意地悪言わないでください」
むすっとした顔で俺の方を見るメルは、少し子どもらしさが残っていて。
俺はつい、そういうところにもドキドキしてしまう。
(本当に可愛い)
ー*ー
それから、ジェンガの遊び方を教えてもらい、早速やってみた。
「ゆっくり抜けば大丈夫だよ」
「はい!」
慎重に抜いていく。
そして、ようやく一本抜けた。
「やりました!」
「よし、じゃあ次は俺の番ね」
そうして交互に抜いていき...
「そこを抜いたら終わりだよ」
「はい!」
私は最後の一本を慎重に抜いていく。
なんとか抜くことができた。
「できましたよ、カムイ!」
「うん、お疲れ様」
「ドキドキする遊びでしたね」
「そうだね...!メル!」
(え...)
積みあがっていたジェンガがボロボロと崩れていき...私の身体はいつの間にか床に転がっていた。
「メル、怪我は...」
「大丈夫です、カムイが守ってくれたので」
「不可抗力とはいえ、こんな格好になるなんて...」
カムイがそう小さく呟いた。
「?」
パンケーキを食べたあと、カムイはチェスの遊び方を教えてくれた。
「これはポーン。はじめの一歩は二歩すすませることもできるけど、基本的にはまっすぐ前に進むだけ、駒をとるときは斜め前にしか動けない」
「じゃあ、この少しだけ頭が尖っているものは...」
「ビショップだよ。こいつは斜めにしか動けないけど、何歩でも進められるんだ」
色々な駒の動かし方を教えてもらってから、早速遊んでみる。
(落ち着いているみたいでよかったです)
暫くして...
「カムイ、強いです...」
「小さい頃からやってたからね」
カムイは眩しいくらいの笑顔をみせている。
ー**ー
「うう...」
メルが半泣きになっているのを見て、俺は正気に戻った。
(しまった、エリック相手だと本気でかからないと勝てないから、つい...)
「メル、そのビショップを動かしてごらん?」
「こう、ですか...?」
メルのポーンはほとんど俺がとってしまった。
ポーンが少ないとき、俺はビショップで攻略する。
「そうそう、上手だよ」
メルはぱあっと明るくなった。
それから俺は、分からない程度に手を抜いて...
「私の、勝ちですか...?」
まずい。どうやらメルは大事なことを忘れているようだ。
「メル、そういう時は...」
「あ!チェックメイトです」
「よくできました。俺の負けだね」
「やりました!」
メルは大喜びしている。
「どうだった?」
「はじめてやってみましたが...とても楽しかったです!」
「それはよかった。次は何をして遊ぼうか...」
ー*ー
「じ、ジェンガという遊びをやってみたいです...」
「うん、分かった。それなら多分ここに...」
ぐぅ...
「あ!えっと、ええっと...」
なんてタイミングの悪いおなかだろう。
カムイはくすっと笑って、私の方を見る。
しばらくすると、ぐぅ...と鳴った。
「俺のおなかもすいたって。先にご飯にしようか」
「はい!」
時計を見ると、三時をまわっている。
「おやつの時間だし...ブリオッシュにしようか」
「ブリオッシュ...?」
また知らない食べ物がでてきた。
「作るから待ってて」
「じゃあ、私は紅茶を...」
カムイが私の手を止める。
「いや、俺がやるよ。...怪我させちゃったし」
「いいんです、私にやらせてください。アールグレイでいいですか?」
「...ありがとう」
私はいつもどおりの手順で作っていく。
そうこうしているうちに、ブリオッシュができあがった。
私はテーブルにおかれたそれを、フォークとナイフで切り分け、カムイの口の前に持っていく。
「はい、口開けてください」
ー**ー
無邪気な笑顔でそう言ってくるメルを見て、俺はドキドキしてしまった。
可愛すぎて、どうしたらいいのか分からない。
取り敢えず口を開ける。
「...うん、ちゃんとできたみたい。よかった、実はこれのレシピ、うろ覚えだったんだ」
「そうなんですか?でも、とっても美味しそうですよ?」
「そうかな?」
俺は自分のブリオッシュを切り分け、メルの前に持っていく。
「メルも食べて?」
「...え?ええ⁉」
メルは顔を真っ赤にしている。
...当然だ。俺は切り分けたものをフォークでささず、素手で掴んでメルにさしだしたのだ。
「食べて?」
「ええっと、紅茶が冷めちゃいますよ...?」
一生懸命恥ずかしさを誤魔化すメルも可愛いと思ってしまう。
「いいから、ほら。...俺のわがまま、聞いてくれない?」
「...っ」
メルは覚悟を決めたように口を開ける。
彼女の柔らかい舌と、それほど鋭くない歯が俺の指にあたる。
「ごめんなひゃい!指に歯が...いひゃくなかったでふか?」
口のなかにブリオッシュをいれたまま喋っているメルは、少しだけふごふごとした話し方になっている。
「...ははっ!大丈夫だよ、それより...早く飲みこんだ方がいいかもしれないよ?」
「...カムイは時々意地悪です。美味しいですけど、あんまり意地悪言わないでください」
むすっとした顔で俺の方を見るメルは、少し子どもらしさが残っていて。
俺はつい、そういうところにもドキドキしてしまう。
(本当に可愛い)
ー*ー
それから、ジェンガの遊び方を教えてもらい、早速やってみた。
「ゆっくり抜けば大丈夫だよ」
「はい!」
慎重に抜いていく。
そして、ようやく一本抜けた。
「やりました!」
「よし、じゃあ次は俺の番ね」
そうして交互に抜いていき...
「そこを抜いたら終わりだよ」
「はい!」
私は最後の一本を慎重に抜いていく。
なんとか抜くことができた。
「できましたよ、カムイ!」
「うん、お疲れ様」
「ドキドキする遊びでしたね」
「そうだね...!メル!」
(え...)
積みあがっていたジェンガがボロボロと崩れていき...私の身体はいつの間にか床に転がっていた。
「メル、怪我は...」
「大丈夫です、カムイが守ってくれたので」
「不可抗力とはいえ、こんな格好になるなんて...」
カムイがそう小さく呟いた。
「?」
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

[完結]思い出せませんので
シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」
父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。
同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。
直接会って訳を聞かねば
注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。
男性視点
四話完結済み。毎日、一話更新

貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる