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Until the day when I get engaged. -In linear light-
第53話
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ー*ー
息をするような、小さな声。
「俺は...」
「落ち着きましたか...?」
「なんで、どうして...」
カムイはかなり落ちこんでいるようだ。
「何かあったんですか?」
「話したくない」
...無理やり聞くのがよくないことだというのは分かっている。
それでも聞かなければはじまらないのだ。
「じゃあ、話してくれるまでこの手を離しません」
「メル!血が出てる...。ダメだよ、離して」
「嫌です」
「お願いだから離して」
「絶対に離しません」
「...離すんだ」
「それなら話してください」
カムイは諦めたように息をはく。
「...笑わないでね」
「はい」
「両親が殺されたことを思い出したんだ」
カムイのご両親...。
カムイが幼い頃に殺されてしまったはずだ。
「あの時の俺は無力で...何もできなかった。だから思い出す度に、暴走してしまうんだ」
「でも、今までそんな様子は一度も...」
私はそこまで言って気づいた。
あの人を...父親だった人と『オークス家』のご令嬢を捕まえるときも、カムイは今まで見たこともないような顔をしていた。
それは彼の、過去の記憶からくるものなのだろうか?
「こんなになったのは久しぶりだよ。まだメルと出会っていない頃、家で暴れたのが最後だった。『オークス』を捕まえるときに暴走しそうになった時は、メルが止めてくれたから...」
私はカムイのナイフを掴んでいた手を離し、反対の手に力を入れる。
「メルっ、ちょっと苦しい...」
「どうして教えてくれなかったんですか...?」
ー**ー
俺はまた、メルを傷つけてしまった。
「ごめん...かっこわるいね、俺は」
「そうじゃなくて!...どうしてその苦しみを私に教えてくれなかったんですか?カムイはずるいです。いつもいつも人のことばかりで、自分の辛い気持ちは押しこめて我慢して...そんなのダメです!」
「メル」
「カムイの悲しい気持ちを、私に半分ください。嬉しいことも悲しいことも、半分こしましょう」
ダメだと思うのに、体から何かがこみあげてくる。
「だって私は、カムイのこと大好きですから。だから...その気持ちを、私に半分ください」
「ごめん、メル」
「カムイ...?」
「...泣いても、いいかな?」
「勿論です。今まで一人で我慢していた分、沢山泣いてください」
その言葉を合図に、俺の手からナイフが落ちる。
メルを力いっぱい抱きしめて、情けないことに俺は声をあげて泣いた。
堰を切ったように溢れ落ちる涙を俺は止められず、メルはそんな俺の頭をそっと撫でてくれた。
「偉かったですね...」
俺が泣き止むまで、メルはずっと側にいてくれた。
ー*ー
カムイはそのまま寝てしまった。
ぐちゃぐちゃのベッドの上に寝かせるわけにはいかない。
でも、このままでは風邪をひいてしまう。
私はちょうど手の届くところにあった戸棚を開ける。
(マットレスと...シーツの替えでしょうか?)
私は床に、マットレスを敷き、その上からシーツをかけた。
カムイを横にさせ、傷一つついていなかった毛布をかける。
「おやすみなさい...」
私はカムイの隣ですぐに眠ってしまっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ありがとう、メル...」
そんな優しい声で目が覚める。
「おはようございます!」
「うん、おはよう...。メル、どうして何も敷かずに床で寝たの?」
「それは...」
マットレスが一つしかなかったから、カムイに寝てほしかった...なんて言えるわけがない。
「床で眠るのはなれていますから」
「...ごめん」
「謝らないでください。カムイが悪いわけではありませんから!」
「じゃあ...これからベッドを直すよ」
「私も他のところとか直しますね」
「その前に...」
カムイは私の右手の甲にキスをおとした。
「...っ」
「先に手当てしよう。俺、手当てする前に寝ちゃってて...ごめん」
「いっ、いえ、気にしないでください。昨日は私が知らないカムイが見られて嬉しかったですから」
私はカムイに丁寧に手当てしてもらい、リビングへと向かった。
ー**ー
またメルに痛い思いをさせてしまった。
(メルにお詫びしないと...)
何がいいかと考えながら、ベッドの修繕作業にはいる。
自分では分からなかったが、ベッドは支柱の部分が傷だらけで、いつ崩れてもおかしくない状況だった。
(俺がやったことなんだよな)
小さく息が漏れる。
どうして暴走するとああなってしまうのか、俺には分からない。
「~♪」
キッチンの方から美しい旋律が聞こえてくる。
俺は、その歌声を守りたい。
「カムイ!」
そうやって無邪気に駆け寄ってくる姿を守りたい。
「リビングのお片づけ、終わりました!」
そのふわふわとした笑顔を守りたい。
「ありがとう」
俺はメルを、お姫様にしたい。
だが、俺にそれができるのだろうか。
俺は...ずっとメルの側にいて、メルの全てを守ることができるだろうか。
息をするような、小さな声。
「俺は...」
「落ち着きましたか...?」
「なんで、どうして...」
カムイはかなり落ちこんでいるようだ。
「何かあったんですか?」
「話したくない」
...無理やり聞くのがよくないことだというのは分かっている。
それでも聞かなければはじまらないのだ。
「じゃあ、話してくれるまでこの手を離しません」
「メル!血が出てる...。ダメだよ、離して」
「嫌です」
「お願いだから離して」
「絶対に離しません」
「...離すんだ」
「それなら話してください」
カムイは諦めたように息をはく。
「...笑わないでね」
「はい」
「両親が殺されたことを思い出したんだ」
カムイのご両親...。
カムイが幼い頃に殺されてしまったはずだ。
「あの時の俺は無力で...何もできなかった。だから思い出す度に、暴走してしまうんだ」
「でも、今までそんな様子は一度も...」
私はそこまで言って気づいた。
あの人を...父親だった人と『オークス家』のご令嬢を捕まえるときも、カムイは今まで見たこともないような顔をしていた。
それは彼の、過去の記憶からくるものなのだろうか?
「こんなになったのは久しぶりだよ。まだメルと出会っていない頃、家で暴れたのが最後だった。『オークス』を捕まえるときに暴走しそうになった時は、メルが止めてくれたから...」
私はカムイのナイフを掴んでいた手を離し、反対の手に力を入れる。
「メルっ、ちょっと苦しい...」
「どうして教えてくれなかったんですか...?」
ー**ー
俺はまた、メルを傷つけてしまった。
「ごめん...かっこわるいね、俺は」
「そうじゃなくて!...どうしてその苦しみを私に教えてくれなかったんですか?カムイはずるいです。いつもいつも人のことばかりで、自分の辛い気持ちは押しこめて我慢して...そんなのダメです!」
「メル」
「カムイの悲しい気持ちを、私に半分ください。嬉しいことも悲しいことも、半分こしましょう」
ダメだと思うのに、体から何かがこみあげてくる。
「だって私は、カムイのこと大好きですから。だから...その気持ちを、私に半分ください」
「ごめん、メル」
「カムイ...?」
「...泣いても、いいかな?」
「勿論です。今まで一人で我慢していた分、沢山泣いてください」
その言葉を合図に、俺の手からナイフが落ちる。
メルを力いっぱい抱きしめて、情けないことに俺は声をあげて泣いた。
堰を切ったように溢れ落ちる涙を俺は止められず、メルはそんな俺の頭をそっと撫でてくれた。
「偉かったですね...」
俺が泣き止むまで、メルはずっと側にいてくれた。
ー*ー
カムイはそのまま寝てしまった。
ぐちゃぐちゃのベッドの上に寝かせるわけにはいかない。
でも、このままでは風邪をひいてしまう。
私はちょうど手の届くところにあった戸棚を開ける。
(マットレスと...シーツの替えでしょうか?)
私は床に、マットレスを敷き、その上からシーツをかけた。
カムイを横にさせ、傷一つついていなかった毛布をかける。
「おやすみなさい...」
私はカムイの隣ですぐに眠ってしまっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ありがとう、メル...」
そんな優しい声で目が覚める。
「おはようございます!」
「うん、おはよう...。メル、どうして何も敷かずに床で寝たの?」
「それは...」
マットレスが一つしかなかったから、カムイに寝てほしかった...なんて言えるわけがない。
「床で眠るのはなれていますから」
「...ごめん」
「謝らないでください。カムイが悪いわけではありませんから!」
「じゃあ...これからベッドを直すよ」
「私も他のところとか直しますね」
「その前に...」
カムイは私の右手の甲にキスをおとした。
「...っ」
「先に手当てしよう。俺、手当てする前に寝ちゃってて...ごめん」
「いっ、いえ、気にしないでください。昨日は私が知らないカムイが見られて嬉しかったですから」
私はカムイに丁寧に手当てしてもらい、リビングへと向かった。
ー**ー
またメルに痛い思いをさせてしまった。
(メルにお詫びしないと...)
何がいいかと考えながら、ベッドの修繕作業にはいる。
自分では分からなかったが、ベッドは支柱の部分が傷だらけで、いつ崩れてもおかしくない状況だった。
(俺がやったことなんだよな)
小さく息が漏れる。
どうして暴走するとああなってしまうのか、俺には分からない。
「~♪」
キッチンの方から美しい旋律が聞こえてくる。
俺は、その歌声を守りたい。
「カムイ!」
そうやって無邪気に駆け寄ってくる姿を守りたい。
「リビングのお片づけ、終わりました!」
そのふわふわとした笑顔を守りたい。
「ありがとう」
俺はメルを、お姫様にしたい。
だが、俺にそれができるのだろうか。
俺は...ずっとメルの側にいて、メルの全てを守ることができるだろうか。
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