88 / 220
Until the day when I get engaged. -In linear light-
第48話
しおりを挟む
ー*ー
「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ...」
私は瞼を閉じる。
(ね、眠いです...)
私は襲いくる睡魔と全力で戦う。
「...もう寝たかな?」
頭をそっと撫でられる。
「...おやすみ」
唇に柔らかい感触がして、扉が開く音がする。
(うう...すごく恥ずかしいです!)
私は目を開けそっと扉に近づく。
カムイの足音がどんどん遠ざかっていくのが聞こえた。
(よし、これで...)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私はベッドルームの扉をそっと開き、カムイがいないか確認する。
...いないようだ。
カムイは何処へ行ってしまったのか...
そんなことを悠長に考えていると、カタカタと音がする。
(あそこは...)
近づいてはいけないと言われた、奥の部屋だった。
「細かす...。...れは、ここ?」
カチャカチャという音と共に、カムイの声がする。
入ってはいけないと言われている。
でも、カムイが眠れない原因がそこにあるとしたら...。
私は、力になりたい。
私は思いきって扉を開けた。
「メル⁉」
「カムイ、ごめんな...」
そこには、とんでもないものがあった。
「それって...」
白くて固い物体。
それはまさしく、
「どうしてここに人の骨があるんですか?」
ー**ー
見られてしまったものは仕方ない。
(全てを話そう)
「これは、最近あった殺人事件の遺体だよ」
「殺、人...?」
「うん。エリックにできるだけ元の形にしてほしいと頼まれたんだ。でも、パーツが細かすぎて終わらなくて...」
「私にも、やらせてください」
...メルならそう言うと思っていた。
だから言いたくなかったのだ。
メルをコインの裏側の世界に...こんな汚い世界の事情に巻きこみたくない。
「嫌だ」
「どうしてですか?だって、私の眼を使えば簡単に...」
「『使う』なんて嫌なんだ。俺はメルに、ただの恋人として側にいてほしいんだ。俺は、メルを利用するみたいな真似をしたくない」
本心だった。
メルだけは、表側の世界で輝けるように...それが俺の願いだ。
「この眼が一つの才能だって、そう教えてくれたのはカムイじゃないですか。だったら、私はその才能を生かしたいんです。この、死んでしまった人のためにも。...お願いします、カムイ。私にも手伝わせてください」
ー*ー
カムイが私の方を見る。
「...分かった。じゃあそこにある手袋をして」
「ありがとうございます!」
私は急いで手袋をする。
「...これが、バラバラに砕け散って粉々になった分。直せる...?」
「はい、大丈夫です」
一見、一つ一つが全く同じに見えるが、微妙な傷などから判断できる。
(これはここです...。そういえば、)
私はある疑問を口にした。
「この方は、どうしてこんなにバラバラになっているのですか?」
「どうやら爆発に巻きこまれたらしいんだ」
「それで、骨だけ砕けたんですか?」
「...そこが疑問なんだ。でも、どうして死んだのかを調べるには、骨をできるだけ元の状態に戻さないと分からないんだ」
カムイが困ったような表情で私を見る。
「もうすぐ終わります」
「やっぱり、早いね」
「そうでしょうか...?」
カムイが気遣ってくれるのは正直に言うと、とても嬉しい。
でも、カムイにはもっと自分の心配をしてほしいと私は思う。
「できました!でも、ここの部分はへこんで...」
「斧かなにかで切られたあとみたいだね」
「では、この粉々になっている場所は...」
「...なるほど。どうやらこの人は薬を飲んでいたようだ。でも、この日は違った。恐らく...毒で思うように動けなかったんだ」
カムイの推理力に、私は感動してしまう。
「すごいです!私には全然分からないのに...」
「はい、じゃあこの仕事はおしまい。寒いでしょ?今日は俺が、何か温かい飲み物を淹れるよ」
「ありがとうございます」
カムイの表情は少しだけ曇って見えた。
ー**ー
もっとメルにバレないように、うまく立ち回れなかったのだろうか。
結局ほとんどメルにやらせてしまった。
「メル」
「はいっ...⁉」
リビングまで戻ったところで、俺はメルを抱きしめる。
「ごめんね、もうこんな仕事は受けないから...」
「...そうですよ」
「え?」
「カムイはもっと、自分を大切にしてください。何日も眠れなくなるようなお仕事は受けちゃダメです。カムイがやりたいと思う仕事を受けてください」
メルが少しだけ怒ったように言う。
どうしてメルは、そんなにも俺のことを想ってくれるのだろうか。
俺はメルのために、何ができるだろう。
(俺もメルのことを強く想うことくらいか。あとは、絶対に守る)
「ごめんごめん、もう無理な仕事は受けないよ」
「...じゃあ、約束しましょう!」
メルはぱっと顔をあげると、小指をさしだしてくる。
俺ははじめ、意味が分からなかったがようやく理解した。
俺はメルの小指に自らの小指を絡める。
「ゆびきりげんまん...」
メルが可愛らしく歌っている。
「絶対に破ったらダメですからね?」
「うん、分かった」
俺はメルが眠そうにしているのに気づく。
「...一緒に寝ようか」
「はい!」
俺たちはベッドルームへ向かい、そのままお昼まで眠ってしまっていた。
「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ...」
私は瞼を閉じる。
(ね、眠いです...)
私は襲いくる睡魔と全力で戦う。
「...もう寝たかな?」
頭をそっと撫でられる。
「...おやすみ」
唇に柔らかい感触がして、扉が開く音がする。
(うう...すごく恥ずかしいです!)
私は目を開けそっと扉に近づく。
カムイの足音がどんどん遠ざかっていくのが聞こえた。
(よし、これで...)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私はベッドルームの扉をそっと開き、カムイがいないか確認する。
...いないようだ。
カムイは何処へ行ってしまったのか...
そんなことを悠長に考えていると、カタカタと音がする。
(あそこは...)
近づいてはいけないと言われた、奥の部屋だった。
「細かす...。...れは、ここ?」
カチャカチャという音と共に、カムイの声がする。
入ってはいけないと言われている。
でも、カムイが眠れない原因がそこにあるとしたら...。
私は、力になりたい。
私は思いきって扉を開けた。
「メル⁉」
「カムイ、ごめんな...」
そこには、とんでもないものがあった。
「それって...」
白くて固い物体。
それはまさしく、
「どうしてここに人の骨があるんですか?」
ー**ー
見られてしまったものは仕方ない。
(全てを話そう)
「これは、最近あった殺人事件の遺体だよ」
「殺、人...?」
「うん。エリックにできるだけ元の形にしてほしいと頼まれたんだ。でも、パーツが細かすぎて終わらなくて...」
「私にも、やらせてください」
...メルならそう言うと思っていた。
だから言いたくなかったのだ。
メルをコインの裏側の世界に...こんな汚い世界の事情に巻きこみたくない。
「嫌だ」
「どうしてですか?だって、私の眼を使えば簡単に...」
「『使う』なんて嫌なんだ。俺はメルに、ただの恋人として側にいてほしいんだ。俺は、メルを利用するみたいな真似をしたくない」
本心だった。
メルだけは、表側の世界で輝けるように...それが俺の願いだ。
「この眼が一つの才能だって、そう教えてくれたのはカムイじゃないですか。だったら、私はその才能を生かしたいんです。この、死んでしまった人のためにも。...お願いします、カムイ。私にも手伝わせてください」
ー*ー
カムイが私の方を見る。
「...分かった。じゃあそこにある手袋をして」
「ありがとうございます!」
私は急いで手袋をする。
「...これが、バラバラに砕け散って粉々になった分。直せる...?」
「はい、大丈夫です」
一見、一つ一つが全く同じに見えるが、微妙な傷などから判断できる。
(これはここです...。そういえば、)
私はある疑問を口にした。
「この方は、どうしてこんなにバラバラになっているのですか?」
「どうやら爆発に巻きこまれたらしいんだ」
「それで、骨だけ砕けたんですか?」
「...そこが疑問なんだ。でも、どうして死んだのかを調べるには、骨をできるだけ元の状態に戻さないと分からないんだ」
カムイが困ったような表情で私を見る。
「もうすぐ終わります」
「やっぱり、早いね」
「そうでしょうか...?」
カムイが気遣ってくれるのは正直に言うと、とても嬉しい。
でも、カムイにはもっと自分の心配をしてほしいと私は思う。
「できました!でも、ここの部分はへこんで...」
「斧かなにかで切られたあとみたいだね」
「では、この粉々になっている場所は...」
「...なるほど。どうやらこの人は薬を飲んでいたようだ。でも、この日は違った。恐らく...毒で思うように動けなかったんだ」
カムイの推理力に、私は感動してしまう。
「すごいです!私には全然分からないのに...」
「はい、じゃあこの仕事はおしまい。寒いでしょ?今日は俺が、何か温かい飲み物を淹れるよ」
「ありがとうございます」
カムイの表情は少しだけ曇って見えた。
ー**ー
もっとメルにバレないように、うまく立ち回れなかったのだろうか。
結局ほとんどメルにやらせてしまった。
「メル」
「はいっ...⁉」
リビングまで戻ったところで、俺はメルを抱きしめる。
「ごめんね、もうこんな仕事は受けないから...」
「...そうですよ」
「え?」
「カムイはもっと、自分を大切にしてください。何日も眠れなくなるようなお仕事は受けちゃダメです。カムイがやりたいと思う仕事を受けてください」
メルが少しだけ怒ったように言う。
どうしてメルは、そんなにも俺のことを想ってくれるのだろうか。
俺はメルのために、何ができるだろう。
(俺もメルのことを強く想うことくらいか。あとは、絶対に守る)
「ごめんごめん、もう無理な仕事は受けないよ」
「...じゃあ、約束しましょう!」
メルはぱっと顔をあげると、小指をさしだしてくる。
俺ははじめ、意味が分からなかったがようやく理解した。
俺はメルの小指に自らの小指を絡める。
「ゆびきりげんまん...」
メルが可愛らしく歌っている。
「絶対に破ったらダメですからね?」
「うん、分かった」
俺はメルが眠そうにしているのに気づく。
「...一緒に寝ようか」
「はい!」
俺たちはベッドルームへ向かい、そのままお昼まで眠ってしまっていた。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
物置小屋
黒蝶
大衆娯楽
言葉にはきっと色んな力があるのだと証明したい。
けれど私は、失声症でもうやりたかった仕事を目指せない...。
そもそももう自分じゃただ読みあげることすら叶わない。
どうせ眠ってしまうなら、誰かに使ってもらおう。
ーーここは、そんな作者が希望をこめた台詞や台本の物置小屋。
1人向けから演劇向けまで、色々な種類のものを書いていきます。
時々、書くかどうか迷っている物語もあげるかもしれません。
使いたいものがあれば声をかけてください。
リクエスト、常時受け付けます。
お断りさせていただく場合もありますが、できるだけやってみますので読みたい話を教えていただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる