75 / 220
Until the day when I get engaged.-The light which comes over darkness-
閑話『Story of a Herculean strength girl』Ⅲ
しおりを挟む
《ナタリー目線》
目を開けると、そこは全く知らない場所で。
「...?」
「起きただか?」
横を向くと、大柄の人が座っていた。
「ナタリー...」
「エリック?あれ、あたしは...」
徐々に思い出してくる。
「爆発で家が燃えて、それであたしは...っ」
「無理に思い出さなくてもいいだよ。犯人はちゃんと捕まえるだよ」
「ベン...」
あたしはみっともなく泣いてしまった。
ベンはあたしの背中をそっとさすってくれた。
あたしは泣き晴らしたあと、今更聞いた。
「あの、ここってどこなの?」
「ここは、おいらの家だよ。出ていきたいなら目的地まで運んでもいい。他に宛があるならそこにだって運ぶぞお」
「...ここに置いて」
「⁉ここは危ないぞお?おいらを恨んでるやつらがくるかもしれねえだよ」
「いいの。お願い...」
あたしは何故だか、この人から離れたくなかった。
誰かにそばにいてほしかったのかもしれない。
「いいんじゃない?消去法で俺の所が一番危ない。エリックの所は最近治安が悪い。だったら、おまえしかいないだろう?それに...もともとの目的地に行ったら、彼女が生きていることがバレて殺されてしまうかもしれない。だからせめて、事件が解決するまではその方がいいんじゃない?」
「それもそうだか。...分かっただよ」
ベンは意外にもあっさりと了承してくれた。
「じゃあ俺たちは今日は帰るよ。行こうエリック」
「そうだな」
二人が帰っていったあと、沈黙がながれる。
「...好きな食べ物はあるだか?」
ベンが遠慮がちに聞いてくる。
「パスタが、好きよ」
「分かっただよ」
(...?どういうこと?)
あたしは疑問に思いながら、ベッドからおりられなかった。
《ベン目線》
少しでも元気になってほしくて、おいらはベーコンクリームパスタを作ることにした。
おいらはあまり、料理が上手いというわけではないだろう。
しかし、どうしても何かしたかったのだ。
「取り敢えず食べるだよ」
「あ、ありがとう...」
おいらはナタリーが食べるのをじっと見ていた。
「美味しい...」
「よかっただよ」
「あの、どうしてあたしが食べるところをそんなに見てるの?」
「すまねえだよ、綺麗だなと思って...」
「綺麗⁉あたしが⁉」
「?ああ、そうだぞお」
(何か間違ったことを言っただか?)
「お世辞?」
「おいらは思ったことしか言わねえだよ」
ナタリーは顔を真っ赤にしている。
「...はじめてよ」
「え?」
「あたしを可愛いなんて言う人、はじめてなの!」
眩しすぎる笑顔でこちらを見る。
鼓動が高鳴るのを感じる。
「やっと笑っただよ」
「え?」
「絶対に笑ってた方が可愛いだよ」
「...ありがとう」
食事を終えたあと、ナタリーはすぐに眠ってしまった。
《ナタリー目線》
「しまった、学校に遅刻...」
そこまで言って気づいた。
学校に行ってもいいのだろうか?
しかし、ここからどの方角に行けば学校なのかも分からない。
「よく眠れただか?」
「...ええ」
「学校、行くだか?今日はカムイも仕事が入ってないはずだぞお」
「いいの?」
「学校ではカムイが守る。帰ってからは...おいらが守るだよ」
出会ったばかりなのに、ずっとそばにいたくなる。
とても不思議な感覚だった。
「ただ...見つかると厄介だから、学校まで狭いけどこの中で我慢してほしいだよ」
ドアを開けて、あたしは目の前の馬車の荷台にのっている大きな鍋のようなもののなかに入った。
(すごい、こんなのはじめて!)
ガタガタと揺れるものの、そんなに嫌な思いはしなかった。
カタン、とどこかで止まった音がする。
「ついただよ。取り敢えず出すから待つだよ」
すると、あたしがいた鍋のようなものの底が抜けた。
「...!」
「あれ?もう開けちゃっただか?すぐにどけるから待っててだよ」
周りの鉄のようなものをどけてくれた。
目の前は学校だった。
『ベン、ナタリーはどうしてる?』
「ああ、今学校の前だよ」
『何っ⁉』
バタバタと足音がする。
「ナタリー、大丈夫なのか?」
「ええ、全然平気よ」
なんだかんだで、全てベンのお陰だ。
「ベン、『底鍋作戦』で運んできたのか」
「ああ。帰りはお願いするだよ、エリック」
「あ?ああ...」
「それじゃあおいらはこれからそのまま仕事に行くぞお」
「あの...ありがとう!」
ベンは嬉しそうに笑っていた。
手をふって、そのまま馬車をはしらせていってしまった。
「ベンとは仲良くなれたみたいだな」
「ええ!」
「よかったな」
「...ええ」
ベンの笑顔が、頭に焼きついて離れない。
「ナタリー?」
エリックが心配そうにしている。
「ううん、なんでもない!」
あたしはエリックと一緒に、学校へ入っていく。
この時のあたしはまだ、この気持ちの名前を知らなかった。
目を開けると、そこは全く知らない場所で。
「...?」
「起きただか?」
横を向くと、大柄の人が座っていた。
「ナタリー...」
「エリック?あれ、あたしは...」
徐々に思い出してくる。
「爆発で家が燃えて、それであたしは...っ」
「無理に思い出さなくてもいいだよ。犯人はちゃんと捕まえるだよ」
「ベン...」
あたしはみっともなく泣いてしまった。
ベンはあたしの背中をそっとさすってくれた。
あたしは泣き晴らしたあと、今更聞いた。
「あの、ここってどこなの?」
「ここは、おいらの家だよ。出ていきたいなら目的地まで運んでもいい。他に宛があるならそこにだって運ぶぞお」
「...ここに置いて」
「⁉ここは危ないぞお?おいらを恨んでるやつらがくるかもしれねえだよ」
「いいの。お願い...」
あたしは何故だか、この人から離れたくなかった。
誰かにそばにいてほしかったのかもしれない。
「いいんじゃない?消去法で俺の所が一番危ない。エリックの所は最近治安が悪い。だったら、おまえしかいないだろう?それに...もともとの目的地に行ったら、彼女が生きていることがバレて殺されてしまうかもしれない。だからせめて、事件が解決するまではその方がいいんじゃない?」
「それもそうだか。...分かっただよ」
ベンは意外にもあっさりと了承してくれた。
「じゃあ俺たちは今日は帰るよ。行こうエリック」
「そうだな」
二人が帰っていったあと、沈黙がながれる。
「...好きな食べ物はあるだか?」
ベンが遠慮がちに聞いてくる。
「パスタが、好きよ」
「分かっただよ」
(...?どういうこと?)
あたしは疑問に思いながら、ベッドからおりられなかった。
《ベン目線》
少しでも元気になってほしくて、おいらはベーコンクリームパスタを作ることにした。
おいらはあまり、料理が上手いというわけではないだろう。
しかし、どうしても何かしたかったのだ。
「取り敢えず食べるだよ」
「あ、ありがとう...」
おいらはナタリーが食べるのをじっと見ていた。
「美味しい...」
「よかっただよ」
「あの、どうしてあたしが食べるところをそんなに見てるの?」
「すまねえだよ、綺麗だなと思って...」
「綺麗⁉あたしが⁉」
「?ああ、そうだぞお」
(何か間違ったことを言っただか?)
「お世辞?」
「おいらは思ったことしか言わねえだよ」
ナタリーは顔を真っ赤にしている。
「...はじめてよ」
「え?」
「あたしを可愛いなんて言う人、はじめてなの!」
眩しすぎる笑顔でこちらを見る。
鼓動が高鳴るのを感じる。
「やっと笑っただよ」
「え?」
「絶対に笑ってた方が可愛いだよ」
「...ありがとう」
食事を終えたあと、ナタリーはすぐに眠ってしまった。
《ナタリー目線》
「しまった、学校に遅刻...」
そこまで言って気づいた。
学校に行ってもいいのだろうか?
しかし、ここからどの方角に行けば学校なのかも分からない。
「よく眠れただか?」
「...ええ」
「学校、行くだか?今日はカムイも仕事が入ってないはずだぞお」
「いいの?」
「学校ではカムイが守る。帰ってからは...おいらが守るだよ」
出会ったばかりなのに、ずっとそばにいたくなる。
とても不思議な感覚だった。
「ただ...見つかると厄介だから、学校まで狭いけどこの中で我慢してほしいだよ」
ドアを開けて、あたしは目の前の馬車の荷台にのっている大きな鍋のようなもののなかに入った。
(すごい、こんなのはじめて!)
ガタガタと揺れるものの、そんなに嫌な思いはしなかった。
カタン、とどこかで止まった音がする。
「ついただよ。取り敢えず出すから待つだよ」
すると、あたしがいた鍋のようなものの底が抜けた。
「...!」
「あれ?もう開けちゃっただか?すぐにどけるから待っててだよ」
周りの鉄のようなものをどけてくれた。
目の前は学校だった。
『ベン、ナタリーはどうしてる?』
「ああ、今学校の前だよ」
『何っ⁉』
バタバタと足音がする。
「ナタリー、大丈夫なのか?」
「ええ、全然平気よ」
なんだかんだで、全てベンのお陰だ。
「ベン、『底鍋作戦』で運んできたのか」
「ああ。帰りはお願いするだよ、エリック」
「あ?ああ...」
「それじゃあおいらはこれからそのまま仕事に行くぞお」
「あの...ありがとう!」
ベンは嬉しそうに笑っていた。
手をふって、そのまま馬車をはしらせていってしまった。
「ベンとは仲良くなれたみたいだな」
「ええ!」
「よかったな」
「...ええ」
ベンの笑顔が、頭に焼きついて離れない。
「ナタリー?」
エリックが心配そうにしている。
「ううん、なんでもない!」
あたしはエリックと一緒に、学校へ入っていく。
この時のあたしはまだ、この気持ちの名前を知らなかった。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる