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Until the day when I get engaged.-The light which comes over darkness-
第37話
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ー*ー
この日は晴れていた。
「おはようございます」
「うん、おはよう」
(カムイに気づかれないように...)
私は密かに早起きをして、サンドイッチを作った。
「今日は公園に行ってみようか」
「はい!」
カムイは私の手をとり、公園へと向かっていく...。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「わあ...」
今までなんとも思わなかった雪景色が、とても輝いて見える。
「このあたりは、すぐに雪が積もるんだ。綺麗だよね」
「はい!」
私は持っていたバスケットをベンチに置き、カムイに駆け寄る。
「メル、雪ウサギ作ろうか」
「雪ウサギ...?」
「ほら、こんな感じで形にして...」
カムイが作ったものはとても綺麗で、今にも動き出しそうだった。
「可愛いです」
「メルもやってごらん?」
「はい!」
私はやってみたものの、なかなか形が整わない。
「あ、それはこうして...」
カムイの手が私の手を包みこむ。
とても寒いはずなのに、とても温かく感じて心地よかった。
「ほら、できたよ」
「可愛いです」
二人で微笑みあっていると、カムイの顔に雪玉がぶつかった。
「...相変わらずの怪力だね、ナタリー?」
ー**ー
メルと微笑ましく過ごしていたというのに、恐ろしい怪力が現れた。
「はじめてカムイの顔に当てた!」
「二人とも、すまねえだよ...」
ベンが申し訳なさそうにしている。
「いや、別にいいよ」
「カムイ、顔が赤くなってしまっています!」
「メル、大丈夫だから...っ」
メルは自分の手で俺の両頬を挟んだ。
「こうすればあたたかくなりますから...」
「あ、ありがとう」
そんなメルの行動に、つい照れてしまいそうになる。
俺は顔が火照るのを必死に抑えた。
「ところで...人の顔に当てたんだ。覚悟はできてるよね、ナタリー」
「え、あ、いや...」
「問答無用」
俺はナタリーに向かって雪玉を投げる。
「ぐはっ!」
しかし俺が当ててしまったのは...
「仲良くやっているようだな、おまえたち」
エリックの肩だった。
「ごめんねエリック。きみの後ろのレディに当てようとしたんだ」
「まったく...休憩だからときてみれば、何故勢揃いしている?」
俺だけ仲間外れかよ...とエリックが小さく呟いていた。
「あ、えっと...みなさんも食べますか?あまり自信はないのですが...」
メルはバスケットを開ける。
中には、大量のサンドイッチが入っていた。
(朝からなにかそわそわしていたのはこれか)
ー*ー
「いいの⁉いただきます!」
「ナタリー、一気に食べるのはよくないだよ」
「俺もいただこう」
みんなが喜んで食べてくれて、本当によかったと思う。
余分に作っておいて正解だったようだ。
ふとカムイの方を見ると、少しだけむすっとしている。
「カムイ...?」
「俺だけが独占できるはずだったのに」
「え?」
(もしかして、ヤキモチというやつでしょうか?)
「カムイには、また別の日に別のものを作りますから...」
私は隣に座っているカムイの頭をそっと撫でた。
「楽しみにしてる」
カムイは元気になったようだ。
「ねえ、二人とも」
「なんだあ?」
「雪だるま作りたいから手伝ってよ」
「俺はもう少し食べてから行く」
「おいらはもう大丈夫だぞお」
カムイはベンさんと一緒に、何かをやりに行ってしまった。
「メルはカムイとラブラブなんだね」
「ラブラブ...?」
ナタリーさんに言われたことの意味がよく分からなかった。
「メル、要するにきみとカムイの仲がとてもいいという意味だ」
エリックさんが丁寧に教えてくれる。
「ありがとうございます。でも...ナタリーさんたちには負けていると思います。本当にお二人は仲がいいですから」
「そうかな?」
ナタリーさんが少し照れている。
「そういえばナタリーさんとベンさんは、どこで出会ったのですか?」
「メル、それは...」
エリックさんが言いづらそうにしている。
「...あたしはね、ベンたちに助けてもらったの。本当はもうとっくに死んでいたはずなの」
「どういうことですか...?」
「ナタリーはこう見えて実は...」
エリックさんが話している途中、遠くでカムイが呼ぶ声がした。
「すまない。俺は行ってくる」
エリックさんは行ってしまった。
「ごめんなさい、言いたくないなら聞きませんから」
私はナタリーさんに謝る。
本当に申し訳ないことをしたと、とても反省した。
「いやいや、メルが悪い訳じゃないし気にしないで!今から四、五年前の話だけど...話すと長くなるから」
ナタリーさんはとても寂しそうにしていた。
(なにか事情があるのでしょうか)
色々考えていると、
「メル、雪だるまができたよ!」
カムイの声が聞こえた。
「ナタリーさんも行きましょう!」
「うん!」
大きな雪の塊が二つ。
目と鼻と口もちゃんとある。
「これが雪だるまですか?」
「うん」
「雪だるまもはじめてなの⁉メルってやっぱり面白いね」
「ナタリー、お嬢さんをいじめるようなことを言うのはダメだよ」
「まったく、おまえはいつまでたっても子どもだな」
「今のは聞き捨てならないわ」
このあとナタリーさんが雪だるまの顔を持ちあげ、ベンさんとエリックさんを追いかけていた...。
ー**ー
「今日はとても楽しかったです!」
メルが嬉しそうに言うものだから、俺も嬉しくなる。
俺も決して楽しくなかったわけではない。
エリックたちと調査し、ナタリーの『事件』を解決した頃を少しだけ思い出した。
「次は二人きりでどこかに出掛けようね」
「はい!」
俺はベッドルームでメルを抱きよせ、口づけを落とした。
この日は晴れていた。
「おはようございます」
「うん、おはよう」
(カムイに気づかれないように...)
私は密かに早起きをして、サンドイッチを作った。
「今日は公園に行ってみようか」
「はい!」
カムイは私の手をとり、公園へと向かっていく...。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「わあ...」
今までなんとも思わなかった雪景色が、とても輝いて見える。
「このあたりは、すぐに雪が積もるんだ。綺麗だよね」
「はい!」
私は持っていたバスケットをベンチに置き、カムイに駆け寄る。
「メル、雪ウサギ作ろうか」
「雪ウサギ...?」
「ほら、こんな感じで形にして...」
カムイが作ったものはとても綺麗で、今にも動き出しそうだった。
「可愛いです」
「メルもやってごらん?」
「はい!」
私はやってみたものの、なかなか形が整わない。
「あ、それはこうして...」
カムイの手が私の手を包みこむ。
とても寒いはずなのに、とても温かく感じて心地よかった。
「ほら、できたよ」
「可愛いです」
二人で微笑みあっていると、カムイの顔に雪玉がぶつかった。
「...相変わらずの怪力だね、ナタリー?」
ー**ー
メルと微笑ましく過ごしていたというのに、恐ろしい怪力が現れた。
「はじめてカムイの顔に当てた!」
「二人とも、すまねえだよ...」
ベンが申し訳なさそうにしている。
「いや、別にいいよ」
「カムイ、顔が赤くなってしまっています!」
「メル、大丈夫だから...っ」
メルは自分の手で俺の両頬を挟んだ。
「こうすればあたたかくなりますから...」
「あ、ありがとう」
そんなメルの行動に、つい照れてしまいそうになる。
俺は顔が火照るのを必死に抑えた。
「ところで...人の顔に当てたんだ。覚悟はできてるよね、ナタリー」
「え、あ、いや...」
「問答無用」
俺はナタリーに向かって雪玉を投げる。
「ぐはっ!」
しかし俺が当ててしまったのは...
「仲良くやっているようだな、おまえたち」
エリックの肩だった。
「ごめんねエリック。きみの後ろのレディに当てようとしたんだ」
「まったく...休憩だからときてみれば、何故勢揃いしている?」
俺だけ仲間外れかよ...とエリックが小さく呟いていた。
「あ、えっと...みなさんも食べますか?あまり自信はないのですが...」
メルはバスケットを開ける。
中には、大量のサンドイッチが入っていた。
(朝からなにかそわそわしていたのはこれか)
ー*ー
「いいの⁉いただきます!」
「ナタリー、一気に食べるのはよくないだよ」
「俺もいただこう」
みんなが喜んで食べてくれて、本当によかったと思う。
余分に作っておいて正解だったようだ。
ふとカムイの方を見ると、少しだけむすっとしている。
「カムイ...?」
「俺だけが独占できるはずだったのに」
「え?」
(もしかして、ヤキモチというやつでしょうか?)
「カムイには、また別の日に別のものを作りますから...」
私は隣に座っているカムイの頭をそっと撫でた。
「楽しみにしてる」
カムイは元気になったようだ。
「ねえ、二人とも」
「なんだあ?」
「雪だるま作りたいから手伝ってよ」
「俺はもう少し食べてから行く」
「おいらはもう大丈夫だぞお」
カムイはベンさんと一緒に、何かをやりに行ってしまった。
「メルはカムイとラブラブなんだね」
「ラブラブ...?」
ナタリーさんに言われたことの意味がよく分からなかった。
「メル、要するにきみとカムイの仲がとてもいいという意味だ」
エリックさんが丁寧に教えてくれる。
「ありがとうございます。でも...ナタリーさんたちには負けていると思います。本当にお二人は仲がいいですから」
「そうかな?」
ナタリーさんが少し照れている。
「そういえばナタリーさんとベンさんは、どこで出会ったのですか?」
「メル、それは...」
エリックさんが言いづらそうにしている。
「...あたしはね、ベンたちに助けてもらったの。本当はもうとっくに死んでいたはずなの」
「どういうことですか...?」
「ナタリーはこう見えて実は...」
エリックさんが話している途中、遠くでカムイが呼ぶ声がした。
「すまない。俺は行ってくる」
エリックさんは行ってしまった。
「ごめんなさい、言いたくないなら聞きませんから」
私はナタリーさんに謝る。
本当に申し訳ないことをしたと、とても反省した。
「いやいや、メルが悪い訳じゃないし気にしないで!今から四、五年前の話だけど...話すと長くなるから」
ナタリーさんはとても寂しそうにしていた。
(なにか事情があるのでしょうか)
色々考えていると、
「メル、雪だるまができたよ!」
カムイの声が聞こえた。
「ナタリーさんも行きましょう!」
「うん!」
大きな雪の塊が二つ。
目と鼻と口もちゃんとある。
「これが雪だるまですか?」
「うん」
「雪だるまもはじめてなの⁉メルってやっぱり面白いね」
「ナタリー、お嬢さんをいじめるようなことを言うのはダメだよ」
「まったく、おまえはいつまでたっても子どもだな」
「今のは聞き捨てならないわ」
このあとナタリーさんが雪だるまの顔を持ちあげ、ベンさんとエリックさんを追いかけていた...。
ー**ー
「今日はとても楽しかったです!」
メルが嬉しそうに言うものだから、俺も嬉しくなる。
俺も決して楽しくなかったわけではない。
エリックたちと調査し、ナタリーの『事件』を解決した頃を少しだけ思い出した。
「次は二人きりでどこかに出掛けようね」
「はい!」
俺はベッドルームでメルを抱きよせ、口づけを落とした。
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