70 / 220
Until the day when I get engaged.-The light which comes over darkness-
第35話
しおりを挟む
ー**ー
次の日。
天気は雨だった。
メルはとてもガッカリしていた。
「残念だね、公園はまた今度行こう?」
「はい...」
「雨でも本屋には行けるよ。今から行こうか」
「はい」
俺は先に外へ出て傘をさし、メルに手渡す。
「これで濡れないから」
「ありがとうございます」
俺は右手をメルに差し出す。
「行こう」
「はい!」
メルは俺の手をとって走り出す。
(よかった、さっきよりは元気になったみたいだ)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「色々な本があるんですね...」
メルが本屋の中をキョロキョロしている。
「うん。俺はこれが欲しくてきたんだ」
「分厚い本ですね...」
メルがとても驚いている。
俺が持っているそれは、千ページ以上あるからだ。
「まあね。今日はこれだけじゃなくて...メル、選んで」
「え?」
目の前には、メモ帳が大量に並んでいた。
ー*ー
私は目の前にある色とりどりの物を見渡した。
水玉模様のもの、ケーキが書かれているもの、無地のもの...。
「私が選んでいいんですか?」
「うん」
「それじゃあ...」
私はシンプルな白い無地のものを選んだ。
「なら、それはメルの分ね」
「え⁉カムイが使うんじゃないんですか⁉」
「...ははっ、俺はメルが選んだものに合わせた色のものを買おうと思っていたんだ。じゃあこの白いのはメルの分ね。俺は...黒にしようかな」
(私はお金を持っていないのに...)
こういう時、いつも申し訳なく思う。
私はお金を稼いでいないのに、カムイがいつも買ってくれるからだ。
私は何もカムイにできていないのに、カムイはいつだって優しくしてくれる。
「メルは分からないことを、一生懸命覚えようとするでしょ?それに、毎日色んなことがあるから...そういうことを、このメモ帳に書いておけばいい。それともう一つ別に、二人で書くノートを作る」
そんなふうに思っていてくれたのだと感謝しつつ、もう一つのノートというものが気になった。
「それには何を書くんですか?」
「そうだな...たとえば、嫌なことがあったり、直接言いづらいことや伝えるタイミングを見失ったとき、これに書いておけば二人とも読めるでしょ?そういうのがあってもいいんじゃないかなって」
(伝えるタイミングを見失ったとき...)
左眼のことを、書いてもいいのだろうか。
他にも、感謝の気持ちをたくさん書いてもいいのだろうか。
カムイのことをもっと知りたいと、そう書いてもいいのだろうか。
「...今から楽しみです!」
「それじゃあお会計してくるね」
「はい」
カムイがお金を払っている間、私は外を見た。
私は向かいの雑貨屋さんを見て、目をそらすことができなくなっていた。
「あれは...」
ー**ー
会計を済ませてメルの方を見ると、彼女が何かを見ていた。
メルが見ている方に視線を向けると、雑貨屋があった。
そしてそこには、大量の入浴剤があった。
「メル、少しだけあの雑貨屋さんに行ってみようか」
「はい」
メルは本当に嬉しそうにしている。
(顔に出やすいな、メルは)
俺は入浴剤を手に取って見る。
男の俺には、メルの好みが分からない。
メルが見ているものを一緒に見る。
(『ベビーピンクのお湯、安らぎのピーチの香り』、か)
この間も思ったのだが、メルはフルーツの香りが好きなのだろうか?
「メル、それ買ってみようか」
「いいんですか...?」
メルはワガママを言わない。
本当はもっと、ワガママを言ってほしい。
俺が叶えられることなら、なんだって叶えたい。
店を出たとき、雪が降っていた。
「帰ったらお風呂だね」
「はい!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺はバスタブに湯をためる。
「それじゃあメルから入ってもいいよ」
「ダメです、それではカムイが風邪をひいてしまいます!」
どうしてメルはいつも俺の心配ばかりしてくれるんだろうか。
「その、いっ...一緒に入ってください」
(この子に悪気はない、この子は純粋に一緒に入りたいだけ...)
俺は自分に自分で暗示をかける。
「それじゃあメルが身体を洗って、バスタオルを身体に巻いたあとならいいよ」
「はい!」
俺はメルにメモ帳を渡し、バスルームに向かう足音を聞いたあと、早速ノートに書く。
(...よし)
「カムイ」
「すぐ行くよ!」
俺はノートをテーブルに置き、メルのいるバスルームへ向かった。
ー*ー
ゆっくりお風呂に入った結果、もう夜になっていた。
(今日のお礼を書いてみましょう!)
私はテーブルの上にあったノートを開く。
それにはカムイの字でこう書いてあった。
『メル
お願いがあります。
もっと俺に、ワガママを言ってください。
言いたいことも、もっと俺に言ってください。
我慢しないで...どんな些細なことも、俺に教えて?
俺はどんなメルでも嫌いになんかならないし、迷惑だなんて思わないから』
(カムイ...)
私はマッチで暖炉に灯をともす。
...ワガママを言ってもいいのだろうか。
言いたいことを言っても、迷惑にならないのだろうか。
(それなら一つだけ、お願いしてもいいでしょうか?)
ー**ー
俺が入浴を済ませたときには、もう十二時をまわっていた。
「メル、寝ようか」
「はい」
いつもの調子で俺はベッドルームに入る。
メルがベッドに寝転んでこちらを見ている。
「どうしたの?」
「あの、カムイ...ぎゅーってしてもらってもいいですか?」
俺はその質問に戸惑った。
要はベッドの上で抱きしめられたいということなのだろうか。
「いいよ、もっとこっちにおいで」
メルは俺にしがみついてくる。
「...!」
「安心します。カムイの腕のなかは、一番安心できます...」
メルはうとうとしながらそう言った。
「今日はいっぱい歩いたから疲れたよね。大丈夫、絶対に離さないから。...おやすみ」
俺はそっとメルの唇に口づけをおとした。
「すぅ...」
とても幸せそうなメルの寝顔を見て、俺まで幸せな気持ちになった。
次の日。
天気は雨だった。
メルはとてもガッカリしていた。
「残念だね、公園はまた今度行こう?」
「はい...」
「雨でも本屋には行けるよ。今から行こうか」
「はい」
俺は先に外へ出て傘をさし、メルに手渡す。
「これで濡れないから」
「ありがとうございます」
俺は右手をメルに差し出す。
「行こう」
「はい!」
メルは俺の手をとって走り出す。
(よかった、さっきよりは元気になったみたいだ)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「色々な本があるんですね...」
メルが本屋の中をキョロキョロしている。
「うん。俺はこれが欲しくてきたんだ」
「分厚い本ですね...」
メルがとても驚いている。
俺が持っているそれは、千ページ以上あるからだ。
「まあね。今日はこれだけじゃなくて...メル、選んで」
「え?」
目の前には、メモ帳が大量に並んでいた。
ー*ー
私は目の前にある色とりどりの物を見渡した。
水玉模様のもの、ケーキが書かれているもの、無地のもの...。
「私が選んでいいんですか?」
「うん」
「それじゃあ...」
私はシンプルな白い無地のものを選んだ。
「なら、それはメルの分ね」
「え⁉カムイが使うんじゃないんですか⁉」
「...ははっ、俺はメルが選んだものに合わせた色のものを買おうと思っていたんだ。じゃあこの白いのはメルの分ね。俺は...黒にしようかな」
(私はお金を持っていないのに...)
こういう時、いつも申し訳なく思う。
私はお金を稼いでいないのに、カムイがいつも買ってくれるからだ。
私は何もカムイにできていないのに、カムイはいつだって優しくしてくれる。
「メルは分からないことを、一生懸命覚えようとするでしょ?それに、毎日色んなことがあるから...そういうことを、このメモ帳に書いておけばいい。それともう一つ別に、二人で書くノートを作る」
そんなふうに思っていてくれたのだと感謝しつつ、もう一つのノートというものが気になった。
「それには何を書くんですか?」
「そうだな...たとえば、嫌なことがあったり、直接言いづらいことや伝えるタイミングを見失ったとき、これに書いておけば二人とも読めるでしょ?そういうのがあってもいいんじゃないかなって」
(伝えるタイミングを見失ったとき...)
左眼のことを、書いてもいいのだろうか。
他にも、感謝の気持ちをたくさん書いてもいいのだろうか。
カムイのことをもっと知りたいと、そう書いてもいいのだろうか。
「...今から楽しみです!」
「それじゃあお会計してくるね」
「はい」
カムイがお金を払っている間、私は外を見た。
私は向かいの雑貨屋さんを見て、目をそらすことができなくなっていた。
「あれは...」
ー**ー
会計を済ませてメルの方を見ると、彼女が何かを見ていた。
メルが見ている方に視線を向けると、雑貨屋があった。
そしてそこには、大量の入浴剤があった。
「メル、少しだけあの雑貨屋さんに行ってみようか」
「はい」
メルは本当に嬉しそうにしている。
(顔に出やすいな、メルは)
俺は入浴剤を手に取って見る。
男の俺には、メルの好みが分からない。
メルが見ているものを一緒に見る。
(『ベビーピンクのお湯、安らぎのピーチの香り』、か)
この間も思ったのだが、メルはフルーツの香りが好きなのだろうか?
「メル、それ買ってみようか」
「いいんですか...?」
メルはワガママを言わない。
本当はもっと、ワガママを言ってほしい。
俺が叶えられることなら、なんだって叶えたい。
店を出たとき、雪が降っていた。
「帰ったらお風呂だね」
「はい!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺はバスタブに湯をためる。
「それじゃあメルから入ってもいいよ」
「ダメです、それではカムイが風邪をひいてしまいます!」
どうしてメルはいつも俺の心配ばかりしてくれるんだろうか。
「その、いっ...一緒に入ってください」
(この子に悪気はない、この子は純粋に一緒に入りたいだけ...)
俺は自分に自分で暗示をかける。
「それじゃあメルが身体を洗って、バスタオルを身体に巻いたあとならいいよ」
「はい!」
俺はメルにメモ帳を渡し、バスルームに向かう足音を聞いたあと、早速ノートに書く。
(...よし)
「カムイ」
「すぐ行くよ!」
俺はノートをテーブルに置き、メルのいるバスルームへ向かった。
ー*ー
ゆっくりお風呂に入った結果、もう夜になっていた。
(今日のお礼を書いてみましょう!)
私はテーブルの上にあったノートを開く。
それにはカムイの字でこう書いてあった。
『メル
お願いがあります。
もっと俺に、ワガママを言ってください。
言いたいことも、もっと俺に言ってください。
我慢しないで...どんな些細なことも、俺に教えて?
俺はどんなメルでも嫌いになんかならないし、迷惑だなんて思わないから』
(カムイ...)
私はマッチで暖炉に灯をともす。
...ワガママを言ってもいいのだろうか。
言いたいことを言っても、迷惑にならないのだろうか。
(それなら一つだけ、お願いしてもいいでしょうか?)
ー**ー
俺が入浴を済ませたときには、もう十二時をまわっていた。
「メル、寝ようか」
「はい」
いつもの調子で俺はベッドルームに入る。
メルがベッドに寝転んでこちらを見ている。
「どうしたの?」
「あの、カムイ...ぎゅーってしてもらってもいいですか?」
俺はその質問に戸惑った。
要はベッドの上で抱きしめられたいということなのだろうか。
「いいよ、もっとこっちにおいで」
メルは俺にしがみついてくる。
「...!」
「安心します。カムイの腕のなかは、一番安心できます...」
メルはうとうとしながらそう言った。
「今日はいっぱい歩いたから疲れたよね。大丈夫、絶対に離さないから。...おやすみ」
俺はそっとメルの唇に口づけをおとした。
「すぅ...」
とても幸せそうなメルの寝顔を見て、俺まで幸せな気持ちになった。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
物置小屋
黒蝶
大衆娯楽
言葉にはきっと色んな力があるのだと証明したい。
けれど私は、失声症でもうやりたかった仕事を目指せない...。
そもそももう自分じゃただ読みあげることすら叶わない。
どうせ眠ってしまうなら、誰かに使ってもらおう。
ーーここは、そんな作者が希望をこめた台詞や台本の物置小屋。
1人向けから演劇向けまで、色々な種類のものを書いていきます。
時々、書くかどうか迷っている物語もあげるかもしれません。
使いたいものがあれば声をかけてください。
リクエスト、常時受け付けます。
お断りさせていただく場合もありますが、できるだけやってみますので読みたい話を教えていただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる