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Until the day when I get engaged.-The light which comes over darkness-
第26話
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ー*ー
外で泣いてしまったあと、すぐに支度をした。
「ごめんなさい...」
「メルのせいじゃないから謝らないで?」
「あの、隠れ家っていくつもあったりするんですか?」
「そうだな...小さな洞穴なんかも合わせると、二十くらいかな」
「にっ...」
それを聞いた私はふと思う。それだけ隠れ家を持っているのなら、実はカムイはお金持ちなのではないだろうか。
その疑問を見透かしたように、カムイが私に話しかける。
「俺はお金持ちじゃないよ?ベンやナタリー、それにエリックに手伝ってもらって自分たちで建てた建物なんだ」
「大工さんを呼ばずにですか?」
「うん、材料は廃材置き場からもらったものが多いよ」
(カムイって、本当になんでもできる人なんですね...)
「よし、それじゃあ行こうか」
私の荷物はトランク一つのみ。
「はい!」
「メル、持っていくものが少ないね」
「これだけあれば充分です!」
カムイの荷物は大きなスーツケース一つ。
(私はカムイの役に立ちたいです)
「そっか。雨も止んでいるし、今のうちに行こう」
そう言ってカムイがさりげなく手を差し出す。
「...はい」
こういうカムイのさりげない優しさに、私はいつも救われる。
ー**ー
隠れ家に辿り着くと、俺たちはびしょ濡れだった。
「ごめんね、まさか途中で雨が降ってくるとは思ってなくて...」
「いえ、大丈夫です。全然寒くありませんでしたから」
ただ無理をして言っているのか、それともこの冬の冷たい雨よりも酷いものに遭ってきたからなのか...どちらなのか、俺には分からなかった。
(取り敢えず暖炉に火を...)
「あ、そのマッチ...」
「うん、俺とメルを出会わせてくれたものだよ」
メルからマッチを買ったあの日の事を、俺は忘れたことがない。
「よかったです、いい人に使ってもらえて」
「メルがいい子だから、このマッチは綺麗に輝くんだと思うよ」
メルがにこにこしている。
部屋をあたためた後、俺はバスタブに湯を入れる。
「メル、先に入って?」
「でもそれでは、カムイが風邪をひいてしまいます」
(いつも俺の心配ばかりしているな)
「俺は鍛えているから大丈夫だよ。それに、エリックに伝えないといけないから、先に行ってくるよ」
「分かりました。気をつけてくださいね...」
「うん」
俺はメルの頭を撫で、急ぎ足でエリックの元へ向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なんだと、あのばば...お嬢様がおまえらの家にきた⁉」
「エリック、女性にばばあはいけないよ」
「あのボンボン嬢が情報を掴んでいるとはどういうことなんだ?」
俺はまた、一つの仮定をたてた。
「警察上層部が買収されているなら、不可能ではないだろう?」
「...もうあの警察署も、掃除の時期か」
「膿をだす、の間違いでしょ?...くしゅっ!」
「そういえばおまえ、何故濡れている?」
「色々あってね...。それじゃあそういうことで!」
俺は急いでメルのところへ帰る。
...一人で置いておくのは心配だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は隠れ家に戻り、ソファーに腰掛ける。
(たしかここの隠れ家は、誰かと一緒に隠れる想定で作ったから、ベッドもシングルのものが並んで二つあったはず...。食料は買う場所を変えて...)
そんなことを考えていると、
「きゃあ⁉」
バスルームの方から悲鳴が聞こえた。
「メル!」
ー*ー
私の目の前には、黒いカサカサとした生き物。
(ど、どうしましょう...殺すなんてできませんし、でも触れませんし...)
私が焦っていると、バスルームの扉が勢いよく開く。
「メル!大丈...」
「カムイ、その...その虫さんを逃がしてあげたいのですが、怖くて触れないんです」
「う、うん。取り敢えず逃がすね」
カムイはぱしっと掴むと、窓を開け、瞬時に逃がして窓を閉めた。
「カムイ、ありがとうございます!」
(虫さん、ちゃんと逃がせてよかったです)
「あの、メル...大変言いづらいんだけど」
カムイが顔を真っ赤にしてそっぽを向く。
「湯船に入ってくれる?」
「...!ごめんなさい!」
私は湯船に入る。
「いや、気にしな...くしゅっ!」
このままではカムイが風邪をひいてしまう。
そう思った私は、恥ずかしい気持ちを抑え、カムイに言った。
「あの...カムイも一緒に入りませんか?」
ー**ー
この子はなんて純真無垢なんだろう。
(うん、メルはただ、俺が心配なだけで...)
俺は必死に動揺を抑える。
「じゃあ、入浴剤を使ってみようか」
「入浴剤、ですか?」
(そうか、入浴剤も使ったことがないのか...)
女性なら大抵どんな香りがいいだとか、そういうのがあるのだが、メルとは無縁だったのだと思うと、なんだか切なくなる。
「うん、色々な香りがあるんだけど...今日はこの、シトラスオレンジの香りを使ってみようか」
俺は後ろを向いたまま、バスタブに向かって入浴剤を投げ入れる。
「わあ...。お湯の色が変わりました!オレンジの香りがします。なんだかとっても温かいです」
メルは気に入ってくれたようだ。
「じゃあ...俺も準備してくるね」
俺は扉を閉め、服を脱ぎながら考える。
一瞬だけ見た、メルの身体...。
細かった、綺麗だった。だが、俺は見逃していなかった。
...身体中にある、青アザや切り傷の痕を。
外で泣いてしまったあと、すぐに支度をした。
「ごめんなさい...」
「メルのせいじゃないから謝らないで?」
「あの、隠れ家っていくつもあったりするんですか?」
「そうだな...小さな洞穴なんかも合わせると、二十くらいかな」
「にっ...」
それを聞いた私はふと思う。それだけ隠れ家を持っているのなら、実はカムイはお金持ちなのではないだろうか。
その疑問を見透かしたように、カムイが私に話しかける。
「俺はお金持ちじゃないよ?ベンやナタリー、それにエリックに手伝ってもらって自分たちで建てた建物なんだ」
「大工さんを呼ばずにですか?」
「うん、材料は廃材置き場からもらったものが多いよ」
(カムイって、本当になんでもできる人なんですね...)
「よし、それじゃあ行こうか」
私の荷物はトランク一つのみ。
「はい!」
「メル、持っていくものが少ないね」
「これだけあれば充分です!」
カムイの荷物は大きなスーツケース一つ。
(私はカムイの役に立ちたいです)
「そっか。雨も止んでいるし、今のうちに行こう」
そう言ってカムイがさりげなく手を差し出す。
「...はい」
こういうカムイのさりげない優しさに、私はいつも救われる。
ー**ー
隠れ家に辿り着くと、俺たちはびしょ濡れだった。
「ごめんね、まさか途中で雨が降ってくるとは思ってなくて...」
「いえ、大丈夫です。全然寒くありませんでしたから」
ただ無理をして言っているのか、それともこの冬の冷たい雨よりも酷いものに遭ってきたからなのか...どちらなのか、俺には分からなかった。
(取り敢えず暖炉に火を...)
「あ、そのマッチ...」
「うん、俺とメルを出会わせてくれたものだよ」
メルからマッチを買ったあの日の事を、俺は忘れたことがない。
「よかったです、いい人に使ってもらえて」
「メルがいい子だから、このマッチは綺麗に輝くんだと思うよ」
メルがにこにこしている。
部屋をあたためた後、俺はバスタブに湯を入れる。
「メル、先に入って?」
「でもそれでは、カムイが風邪をひいてしまいます」
(いつも俺の心配ばかりしているな)
「俺は鍛えているから大丈夫だよ。それに、エリックに伝えないといけないから、先に行ってくるよ」
「分かりました。気をつけてくださいね...」
「うん」
俺はメルの頭を撫で、急ぎ足でエリックの元へ向かった。
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「なんだと、あのばば...お嬢様がおまえらの家にきた⁉」
「エリック、女性にばばあはいけないよ」
「あのボンボン嬢が情報を掴んでいるとはどういうことなんだ?」
俺はまた、一つの仮定をたてた。
「警察上層部が買収されているなら、不可能ではないだろう?」
「...もうあの警察署も、掃除の時期か」
「膿をだす、の間違いでしょ?...くしゅっ!」
「そういえばおまえ、何故濡れている?」
「色々あってね...。それじゃあそういうことで!」
俺は急いでメルのところへ帰る。
...一人で置いておくのは心配だ。
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俺は隠れ家に戻り、ソファーに腰掛ける。
(たしかここの隠れ家は、誰かと一緒に隠れる想定で作ったから、ベッドもシングルのものが並んで二つあったはず...。食料は買う場所を変えて...)
そんなことを考えていると、
「きゃあ⁉」
バスルームの方から悲鳴が聞こえた。
「メル!」
ー*ー
私の目の前には、黒いカサカサとした生き物。
(ど、どうしましょう...殺すなんてできませんし、でも触れませんし...)
私が焦っていると、バスルームの扉が勢いよく開く。
「メル!大丈...」
「カムイ、その...その虫さんを逃がしてあげたいのですが、怖くて触れないんです」
「う、うん。取り敢えず逃がすね」
カムイはぱしっと掴むと、窓を開け、瞬時に逃がして窓を閉めた。
「カムイ、ありがとうございます!」
(虫さん、ちゃんと逃がせてよかったです)
「あの、メル...大変言いづらいんだけど」
カムイが顔を真っ赤にしてそっぽを向く。
「湯船に入ってくれる?」
「...!ごめんなさい!」
私は湯船に入る。
「いや、気にしな...くしゅっ!」
このままではカムイが風邪をひいてしまう。
そう思った私は、恥ずかしい気持ちを抑え、カムイに言った。
「あの...カムイも一緒に入りませんか?」
ー**ー
この子はなんて純真無垢なんだろう。
(うん、メルはただ、俺が心配なだけで...)
俺は必死に動揺を抑える。
「じゃあ、入浴剤を使ってみようか」
「入浴剤、ですか?」
(そうか、入浴剤も使ったことがないのか...)
女性なら大抵どんな香りがいいだとか、そういうのがあるのだが、メルとは無縁だったのだと思うと、なんだか切なくなる。
「うん、色々な香りがあるんだけど...今日はこの、シトラスオレンジの香りを使ってみようか」
俺は後ろを向いたまま、バスタブに向かって入浴剤を投げ入れる。
「わあ...。お湯の色が変わりました!オレンジの香りがします。なんだかとっても温かいです」
メルは気に入ってくれたようだ。
「じゃあ...俺も準備してくるね」
俺は扉を閉め、服を脱ぎながら考える。
一瞬だけ見た、メルの身体...。
細かった、綺麗だった。だが、俺は見逃していなかった。
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