54 / 220
Until the day when I get engaged.-The light which comes over darkness-
第19話
しおりを挟む
ー*ー
それから数日後。
(どうすればいいのでしょうか?)
目の前で沈黙している、一人の警官。
これは、数十分ほど前から続いている状況である...。
ーーーーーーーーーー【回想】ーーーーーーーーーー
私はいつものようにカムイと紅茶を飲みながら話をしていた。
すると、ドアがノックされる。
二回...四回...二回。
(この回数に意味があるのでしょうか?)
「メル、覚えておいて。このノックの間隔と回数は...」
ガチャ、とドアが開かれる。
「エリックがきたときだから」
「いるなら早く開けろよ、この服だと寒いんだよ」
「ごめんね、暖炉まだあっためてなかった」
(本当に仲がいいんですね、このおふたりは...)
「私はお部屋にいた方がいいですか?」
「いや、どちらでもかまわない。今日は仕事できたのではなく、単に休憩時間になったので遊びにきただけだからな」
「分かりました」
エリックさんは私のことを名前では呼んでくれない。
どうしてなのか少し気になるが、聞いてもいいのか分からない。
「先生!」
「ごめん、すぐに戻るから!」
外から患者さんであろう声が聞こえ、カムイは医務室へ行ってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そしてそのまま、お互い何も喋らずに長い時間がたってしまった。
(そういえば、ナタリーさんがエリックさんは女性が苦手だと仰っていました)
「あの、エリックさん」
「なんだ?」
「ナタリーさんとはお友だちなんですか?」
「ぶっ!」
エリックさんは紅茶を飲んでいる途中だったため、目の前にいる私におもいきりふきだしてしまった。
「ゲホゲホっ!」
「ごめんなさい、エリックさん!えっと、取り敢えずこのタオルでふいてください」
「す、すまない」
「いえ...」
背後からタオルを掛けられる。
「メル、そのままじゃ風邪引いちゃうよ?」
ー**ー
思いのほか重症だった患者の手当てを無事に済ませ、家に帰ってみると...
(倒れたカップ、むせているエリック、びしょ濡れのメル...)
俺はある推測をたてた。
「人の彼女に向かって紅茶をふくなんて...何してるのかな、エリック?」
「すまない。少し動揺して...」
濡れてしまっているメルをふいていると、メルが口を開いた。
「エリックさんは悪くないんです!その、私が...」
メルはエリックがナタリーと友人関係なのかを聞きたかったらしい。
「なるほど...その瞬間にエリックの口内の紅茶が噴射された、と」
「俺とナタリーが仲がいい様に見えるのか?」
「?はい、名前で呼ばれていたのでもしかしてと思ったのですが...」
俺は笑いをこらえながら言った。
「メル、エリックはね...はじめてナタリーと会ったとき、ナタリーのことを男だと思ってたんだ」
ー*ー
「ええ⁉」
ナタリーさんを、男の人と...?
「あんな馬鹿力を発揮されたら男にしか見えないだろ!」
「あんなに髪のお手入れをしてたのに?しかもあの学園の制服って、女子はスカートでしょ?」
「あいつはスカートを破いてたらしく、あの日は被服室の男子制服を借りてたんだよ!」
「...エリック、それ絶対にベンに言うなよ?確実に殺られる」
私は二人の会話を聞いて、思わず笑ってしまった。
「メル、あんまり笑わないで」
「ごめんなさい、つい...」
「エリック、メルは気にしてるんだよ」
「何をだ?」
「本当にこういう時は鈍感だよな、エリックは。ナタリーのことは呼び捨てなのに、未だに彼女のことは『きみ』だろ?だからメルはきっと、名前で呼んでほしかったんだよ」
私の気持ちをくみとってくれたようで、カムイがエリックさんに話してくれる。
(カムイにはなんでもお見通しみたいです)
「すまない...め、メル」
「...!はい、エリックさん!」
「言っておくけど、メルは俺の彼女だからね?」
「おまえの相手をとったりなどしない」
カムイのおかげで、エリックさんとの距離が縮まった気がする。
(カムイにお礼を言わなくては)
ー**ー
「気をつけて」
「ああ」
エリックは仕事に戻った。
「メル、お風呂に入った方がいいよ。沸かしておくから座って待ってて」
「あの、カムイ」
そう言ってメルは俺の服の裾を引っ張る。
「どうしたの?」
「さっきはありがとうございました!エリックさんともお友だちになれたみたいでよかったです」
「メル、やっぱり気にしてた?」
メルはしまったと言うような顔をしている。
困らせるつもりはなかったのだが、申し訳なく思う。
「あいつには色々事情があって、女性に対して極度の緊張感をもってしまうんだ。許してやってほしい」
「人それぞれだと思いますから」
メルはにこにこしている。
メルの頬に手を添え、俺は今更ながら夕飯の買い出しに行っていないことを思い出した。
「メル、メルがお風呂から出たら、夕飯の買い出しに行こうか」
「はい!楽しみです」
俺はメルのわくわくした顔を見て、買い出しが楽しみになった。
それから数日後。
(どうすればいいのでしょうか?)
目の前で沈黙している、一人の警官。
これは、数十分ほど前から続いている状況である...。
ーーーーーーーーーー【回想】ーーーーーーーーーー
私はいつものようにカムイと紅茶を飲みながら話をしていた。
すると、ドアがノックされる。
二回...四回...二回。
(この回数に意味があるのでしょうか?)
「メル、覚えておいて。このノックの間隔と回数は...」
ガチャ、とドアが開かれる。
「エリックがきたときだから」
「いるなら早く開けろよ、この服だと寒いんだよ」
「ごめんね、暖炉まだあっためてなかった」
(本当に仲がいいんですね、このおふたりは...)
「私はお部屋にいた方がいいですか?」
「いや、どちらでもかまわない。今日は仕事できたのではなく、単に休憩時間になったので遊びにきただけだからな」
「分かりました」
エリックさんは私のことを名前では呼んでくれない。
どうしてなのか少し気になるが、聞いてもいいのか分からない。
「先生!」
「ごめん、すぐに戻るから!」
外から患者さんであろう声が聞こえ、カムイは医務室へ行ってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そしてそのまま、お互い何も喋らずに長い時間がたってしまった。
(そういえば、ナタリーさんがエリックさんは女性が苦手だと仰っていました)
「あの、エリックさん」
「なんだ?」
「ナタリーさんとはお友だちなんですか?」
「ぶっ!」
エリックさんは紅茶を飲んでいる途中だったため、目の前にいる私におもいきりふきだしてしまった。
「ゲホゲホっ!」
「ごめんなさい、エリックさん!えっと、取り敢えずこのタオルでふいてください」
「す、すまない」
「いえ...」
背後からタオルを掛けられる。
「メル、そのままじゃ風邪引いちゃうよ?」
ー**ー
思いのほか重症だった患者の手当てを無事に済ませ、家に帰ってみると...
(倒れたカップ、むせているエリック、びしょ濡れのメル...)
俺はある推測をたてた。
「人の彼女に向かって紅茶をふくなんて...何してるのかな、エリック?」
「すまない。少し動揺して...」
濡れてしまっているメルをふいていると、メルが口を開いた。
「エリックさんは悪くないんです!その、私が...」
メルはエリックがナタリーと友人関係なのかを聞きたかったらしい。
「なるほど...その瞬間にエリックの口内の紅茶が噴射された、と」
「俺とナタリーが仲がいい様に見えるのか?」
「?はい、名前で呼ばれていたのでもしかしてと思ったのですが...」
俺は笑いをこらえながら言った。
「メル、エリックはね...はじめてナタリーと会ったとき、ナタリーのことを男だと思ってたんだ」
ー*ー
「ええ⁉」
ナタリーさんを、男の人と...?
「あんな馬鹿力を発揮されたら男にしか見えないだろ!」
「あんなに髪のお手入れをしてたのに?しかもあの学園の制服って、女子はスカートでしょ?」
「あいつはスカートを破いてたらしく、あの日は被服室の男子制服を借りてたんだよ!」
「...エリック、それ絶対にベンに言うなよ?確実に殺られる」
私は二人の会話を聞いて、思わず笑ってしまった。
「メル、あんまり笑わないで」
「ごめんなさい、つい...」
「エリック、メルは気にしてるんだよ」
「何をだ?」
「本当にこういう時は鈍感だよな、エリックは。ナタリーのことは呼び捨てなのに、未だに彼女のことは『きみ』だろ?だからメルはきっと、名前で呼んでほしかったんだよ」
私の気持ちをくみとってくれたようで、カムイがエリックさんに話してくれる。
(カムイにはなんでもお見通しみたいです)
「すまない...め、メル」
「...!はい、エリックさん!」
「言っておくけど、メルは俺の彼女だからね?」
「おまえの相手をとったりなどしない」
カムイのおかげで、エリックさんとの距離が縮まった気がする。
(カムイにお礼を言わなくては)
ー**ー
「気をつけて」
「ああ」
エリックは仕事に戻った。
「メル、お風呂に入った方がいいよ。沸かしておくから座って待ってて」
「あの、カムイ」
そう言ってメルは俺の服の裾を引っ張る。
「どうしたの?」
「さっきはありがとうございました!エリックさんともお友だちになれたみたいでよかったです」
「メル、やっぱり気にしてた?」
メルはしまったと言うような顔をしている。
困らせるつもりはなかったのだが、申し訳なく思う。
「あいつには色々事情があって、女性に対して極度の緊張感をもってしまうんだ。許してやってほしい」
「人それぞれだと思いますから」
メルはにこにこしている。
メルの頬に手を添え、俺は今更ながら夕飯の買い出しに行っていないことを思い出した。
「メル、メルがお風呂から出たら、夕飯の買い出しに行こうか」
「はい!楽しみです」
俺はメルのわくわくした顔を見て、買い出しが楽しみになった。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる