路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Until the day when Christmas comes.

第15話

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ー*ー
目の前に、カムイがいる。
「おいおまえら!やっちまえ!」
何人もが束になり、カムイに襲いかかる。
「カムイ!」
「メル...大丈夫だよ」
カムイは一人、また一人となぎ倒していく。
「おい、動くな!」
(...!)
私の首には、冷たい感触があった。
「こいつがどうなってもいいのか、ええ⁉」
「メル!」
「...っ」
首に僅かな痛みがはしる。
あまりナイフを使いなれていないのか、握っている手が震えている。
「ほらほら、こいつを離してほしかったら土下座して謝れよ!」
カムイは膝をつこうとする。
「カムイ、私はいいです!」
「...」
「カムイが助けにきてくれて嬉しかったです。だから...逃げてください」
(カムイが無事ならそれでいいです)
たとえ、もう一生会えなかったとしても。
「ぎゃあああ!」
次の瞬間、悲鳴が聞こえる。
その悲鳴の主は、
「ひ、ひいっ!」
私にナイフを当てていた男だった。
男の肩にはナイフが刺さっている。
「俺のメルに気安く触るな外道」
カムイからはいつもと違う雰囲気が漂う。
「その腕をみじん切りにされたい?それとも、この場で解体ショーでもする?」
(あれは...殺気というものでしょうか)
「分かった、この女からは手を引く。あんたにも関わらない。だから頼む、命だけは...」
あれだけ威勢がよかった男も、気絶している部下と自らの傷を見て怯えている。
「命以外ならなんでもするんだね?」
「ああ、なんならボスについて話してもいい、だから...」
次の瞬間、その男が泡を吹いて倒れた。
「きゃあ!」
(何が起こったのでしょうか...)
「...吹き矢、か。毒が塗られてたみたいだね」
いつの間に近くにきたのか、カムイが私を縛っていたロープをほどいてくれる。
「あの、カムイ...」
「首の怪我、診せてくれる?」
「はい」
(どうしましょう、震えが止まりません...)
その時、見知った声がした。
「派手に散らかしてくれたな」
ー**ー
「ごめんエリック、首謀者の居場所を吐かせようとしたら吹き矢が飛んできて...その泡を吹いてる状態からして、速効性の毒が塗られていたようだ。彼は助からない」
「この気絶してるやつらは仲間か?」
「うん。だから連れてってくれていいよ」
これで今回は終わりだ。しかし...複雑なことこのうえない。
(あいつの居場所は分からずじまいか)
「あの、エリックさん!」
「なんだ?」
「助けていただきありがとうございました!」
エリックが照れくさそうにそっぽをむく。
「礼ならそいつに言ってくれ。きみのことを探し回っていたのはカムイだからな。...全員連れていけ!この男は死亡。遺体は担架にのせて運べ!」
男に刺さっていたナイフを抜き、俺に渡してくる。
「おまえのだろう。無茶するなと言ったのに」
「ごめん」
「...あとはしっかりやれよ」
すれ違いざま、エリックは俺にだけ聞こえるように言って、廃墟と化した倉庫をあとにする。
(さて、と)
メルの方を見る。
「あの、カムイ...」
「無事でよかった。まずは手当てするね。そこまで深くは切れていないから...ちょっと滲みるよ?」
「...っ!」
「はい、終わり」
痛々しい手当てのあとが残った。
俺はメルを抱きしめた。
「カムイ...?」
「ごめんね、怖かったよね」
「...カムイがきてくれたから、そのあとは怖くなかったですよ?」
(震えてるのに、どうしてこんなに我慢するんだろう?)
「俺に頼って?怖かったときは、そう言ってくれればいいから、もう大丈夫だから...」
「カムイっ」
メルがひっく、としゃくりあげる。
「よしよし、頑張ったね。お父さんのこともそう。よく頑張ったね...」
「カムイ、私は」
「俺から言ってもいい?」
メルは縦に首をふる。
「ありがとう。メル、本当はこんな場所でいうことじゃないんだけど...好きだよ」
ー*ー
これは夢だろうか。
(カムイが、私を好き?)
「カムイ、本当ですか?」
「うん。俺はメルを愛してる。離したくない。メルの優しいところや、頑張り屋さんなところや...全部ひっくるめて好きなんだ。いきなり結婚とか言わないから、俺の恋人になってほしいんだ。それで、俺から離れないで...」
「私は、カムイと一緒にいてもいいんですか?」
「当たり前でしょ?」
カムイの笑顔を見て、私も何か言わなくてはと思った。
「私は...私も、カムイが好きです。カムイには迷惑かもしれませんが...カムイのおかげで、私の毎日は楽しくなったんです。いろんな人とも出会えましたが、全部カムイのお陰なんです。楽しいことも悲しいことも、二人で分けあえたらって、そう思ったんです。私は、気遣いばかりしているカムイも、優しいカムイも、さっきみたいに強いカムイも...全部全部好きなんです!」
(あ...)
言いすぎてしまったと心のなかで反省する。
「そんなに可愛いことを言われたら...。嫌だったら言ってね」
「カムイ?」
ちゅ、と音がして唇と唇が触れあう。
その感触ははじめてで、甘いスイーツを食べているような感覚になった。
(触れただけなのに、とても温かいです)
「...っ、取り敢えず帰ろうか」
「はい!」
カムイの顔が真っ赤になっているのが暗くても分かった。
私たちは手を絡めてゆっくり歩いて帰った。
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