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Until the day when Christmas comes.
第13話
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ー*ー
次の日。私はカムイについてきてもらって、とある場所を目指していた。
「メルは本当に律儀だね」
「一応、父ですから...」
それは、昨夜に遡る...
ーーーーーーーーーー【回想】ーーーーーーーーーー
「それは...父の家です」
「え?」
カムイは酷く焦った顔をした。
「ダメだよ、もしまた酷いことをされたら...!」
「私は...私は、カムイと一緒にいたいんです!だからせめて、お別れくらい言いたいと思いまして...」
カムイは私を抱きしめる。
「カムイ?」
「よかった、いなくなってしまうんじゃないかと思った...」
「お別れくらいは言っておかなくては、カムイの迷惑になってしまうかもしれませんから」
「じゃあ、手紙を渡すのはどうかな?」
「お手紙、ですか?」
その考えは私にはなかった。
「でも、便箋が」
「俺のをあげる」
カムイは筆とインク、そして便箋を用意してくれた。
「何から何までごめんなさい...」
「気にしなくていいんだよ。俺がメルのそばにいたいだけだから。メルの力にもなりたいし」
「ありがとうございます...!」
こうして、カムイと急ごしらえで父に渡すための手紙を用意したのだった。
(読んでくださるのでしょうか?)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そうして、今に至る。
「お父さん、喜んでくれるといいね」
「はい!あの、カムイ...ここからは一人で行ってみたいのですが...」
(これは、あの人との最後の勝負。だから...)
私一人で、挑戦したい。
何かを察してくれたのか、カムイがぴたりと足を止める。
「うん、分かった。ここで待っててあげるから、安心していっておいで?」
「はい!」
「困ったことがあったらすぐに俺を呼んで?」
「ありがとうございます」
私は見覚えのある扉まで駆け寄っていく。
「おと...」
窓から見えた光景に、私は酷く動揺してしまった。
手から手紙が滑り落ちる。
気づくと私は走っていた。
...カムイが待っている方向とは逆の方向に。
ー**ー
俺は心配だったが、メルが一人で頑張ってみたいと思っているのが分かったので見守ることにした。
しばらく見ていると、メルは何も言わずに全く違う道へと走っていってしまった。
「メルっ...!」
メルが書いた手紙が、風で宙を舞っていた。
それをポストに入れようとすると、メルが見ていたであろう光景が見える。
(...そういうことか)
窓から見えたのは、裸で抱きあう男女。
しかも小さな子どもまでいる。
頭を撫でられて、子どもは嬉しそうにしている。
(これは動揺するだろうな)
俺は手紙をポストにつっこんだ。
「ん?何か手紙がきたみたいだ。見てくるよ」
「あなた、早くねっ」
「ああ!」
二人の会話がはっきりと聞こえた。
「...!」
「どうしたの?」
「いや、前に話した使えないやつからだった」
ビリビリに破る音が聞こえる。
(嘘だろ、自分の子どもなのに...)
「さあ、続きをしようか」
そう言ってポストから足音が遠ざかっていく音がする。
「どうして...」
俺は一人、ポストの前で呟いていた。
ー*ー
知らない道まできてしまった。
「ひっく...」
涙が止まらない。
本当に血の繋がった家族がいなくなったのだと思うと、心が軋んだ。
(胸が苦しくてたまらないです...)
ふらふらとさまよいながら、恐らく通ってきたであろう道を辿っていくと...突然後ろから手が伸びてきた。
「んん~っ」
(息ができない。助けて、カムイ...)
私の意識はそこで途切れた。
ー*ー
「メル!どこだ、メル!」
俺は辺りを探したが、全く見当たらない。
(どこまで行ってしまったんだ...)
近くにいた人たちにも必死に聞いた。
「すいません、女の子を探しているんです!」
「どんな子だい?」
「左目に眼帯をしてて...」
「悪いんだけど見てないね」
また別のところに行って、聞いてみる。
「女の子を探しているんです!左目に眼帯をしている...」
「ここでは見てねえな」
「...そうですか」
俺は走っていると、前の人にぶつかる。
「すいません、急いでて...」
「カムイだか?」
「ベン、ナタリー...」
「なになにどうしたの、急にそんな顔して...」
「メルを見てない?」
「あたしたちは見てないけど...まさかいなくなったの⁉」
俺は失意のなかうなずく。
「あたしたちにできることは...」
「...見つかると信じて」
そんな会話をしていると、背後から声をかけられる。
「やっと見つけたぞ」
「エリック?」
「今、大変な情報が入った。部下に見張らせていて偶然報告が入ったのだが...」
エリックは少し言いづらそうにしている。
「はっきり言ってくれ」
エリックは重い口を開いた。
「彼女が...メルが誘拐された。さらったのは、おまえの両親を殺したマフィアの系列グループの奴等だ」
次の日。私はカムイについてきてもらって、とある場所を目指していた。
「メルは本当に律儀だね」
「一応、父ですから...」
それは、昨夜に遡る...
ーーーーーーーーーー【回想】ーーーーーーーーーー
「それは...父の家です」
「え?」
カムイは酷く焦った顔をした。
「ダメだよ、もしまた酷いことをされたら...!」
「私は...私は、カムイと一緒にいたいんです!だからせめて、お別れくらい言いたいと思いまして...」
カムイは私を抱きしめる。
「カムイ?」
「よかった、いなくなってしまうんじゃないかと思った...」
「お別れくらいは言っておかなくては、カムイの迷惑になってしまうかもしれませんから」
「じゃあ、手紙を渡すのはどうかな?」
「お手紙、ですか?」
その考えは私にはなかった。
「でも、便箋が」
「俺のをあげる」
カムイは筆とインク、そして便箋を用意してくれた。
「何から何までごめんなさい...」
「気にしなくていいんだよ。俺がメルのそばにいたいだけだから。メルの力にもなりたいし」
「ありがとうございます...!」
こうして、カムイと急ごしらえで父に渡すための手紙を用意したのだった。
(読んでくださるのでしょうか?)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そうして、今に至る。
「お父さん、喜んでくれるといいね」
「はい!あの、カムイ...ここからは一人で行ってみたいのですが...」
(これは、あの人との最後の勝負。だから...)
私一人で、挑戦したい。
何かを察してくれたのか、カムイがぴたりと足を止める。
「うん、分かった。ここで待っててあげるから、安心していっておいで?」
「はい!」
「困ったことがあったらすぐに俺を呼んで?」
「ありがとうございます」
私は見覚えのある扉まで駆け寄っていく。
「おと...」
窓から見えた光景に、私は酷く動揺してしまった。
手から手紙が滑り落ちる。
気づくと私は走っていた。
...カムイが待っている方向とは逆の方向に。
ー**ー
俺は心配だったが、メルが一人で頑張ってみたいと思っているのが分かったので見守ることにした。
しばらく見ていると、メルは何も言わずに全く違う道へと走っていってしまった。
「メルっ...!」
メルが書いた手紙が、風で宙を舞っていた。
それをポストに入れようとすると、メルが見ていたであろう光景が見える。
(...そういうことか)
窓から見えたのは、裸で抱きあう男女。
しかも小さな子どもまでいる。
頭を撫でられて、子どもは嬉しそうにしている。
(これは動揺するだろうな)
俺は手紙をポストにつっこんだ。
「ん?何か手紙がきたみたいだ。見てくるよ」
「あなた、早くねっ」
「ああ!」
二人の会話がはっきりと聞こえた。
「...!」
「どうしたの?」
「いや、前に話した使えないやつからだった」
ビリビリに破る音が聞こえる。
(嘘だろ、自分の子どもなのに...)
「さあ、続きをしようか」
そう言ってポストから足音が遠ざかっていく音がする。
「どうして...」
俺は一人、ポストの前で呟いていた。
ー*ー
知らない道まできてしまった。
「ひっく...」
涙が止まらない。
本当に血の繋がった家族がいなくなったのだと思うと、心が軋んだ。
(胸が苦しくてたまらないです...)
ふらふらとさまよいながら、恐らく通ってきたであろう道を辿っていくと...突然後ろから手が伸びてきた。
「んん~っ」
(息ができない。助けて、カムイ...)
私の意識はそこで途切れた。
ー*ー
「メル!どこだ、メル!」
俺は辺りを探したが、全く見当たらない。
(どこまで行ってしまったんだ...)
近くにいた人たちにも必死に聞いた。
「すいません、女の子を探しているんです!」
「どんな子だい?」
「左目に眼帯をしてて...」
「悪いんだけど見てないね」
また別のところに行って、聞いてみる。
「女の子を探しているんです!左目に眼帯をしている...」
「ここでは見てねえな」
「...そうですか」
俺は走っていると、前の人にぶつかる。
「すいません、急いでて...」
「カムイだか?」
「ベン、ナタリー...」
「なになにどうしたの、急にそんな顔して...」
「メルを見てない?」
「あたしたちは見てないけど...まさかいなくなったの⁉」
俺は失意のなかうなずく。
「あたしたちにできることは...」
「...見つかると信じて」
そんな会話をしていると、背後から声をかけられる。
「やっと見つけたぞ」
「エリック?」
「今、大変な情報が入った。部下に見張らせていて偶然報告が入ったのだが...」
エリックは少し言いづらそうにしている。
「はっきり言ってくれ」
エリックは重い口を開いた。
「彼女が...メルが誘拐された。さらったのは、おまえの両親を殺したマフィアの系列グループの奴等だ」
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