36 / 220
Until the day when Christmas comes.
第5話
しおりを挟む
ー*ー
私はカムイを見て気づいた。
「あの...先程のカムイが持っていた大量の荷物は...」
「ああ、メルの服のこと?ナタリーに家に配達してくれって頼んだよ」
「でも、ナタリーは女性だし、一人で持つのは...」
「俺はそんな鬼じゃないよ?ナタリーに旦那がいるって話は聞いたかな?」
(そういえば、そんなことを仰っていた気がします)
旦那のベンは配達に行ってるから...という趣旨の話をしていたのを聞いたのを思い出した。
「その旦那様が配達してくださるのですか?」
「うん、そう。まああの二人、結構仲いいから一緒に来るかもしれないね」
「そうなんですか、楽しみです!」
そのあとも二人で他愛ない会話をしていた。
...そんな穏やかな帰り道、事件が起きた。
「...!」
私は思わずカムイのコートを掴んでしまう。
「メル?どうしたの?」
(あの人たちは...)
ー**ー
メルの様子が明らかにおかしい。
小さな身体をカタカタと震わせ、俺の後ろに隠れてしまった。
「メル?」
メルの視線の先にはごろつきがいた。
(知り合いなのか?)
「メル、落ち着いて。俺から離れないでね」
メルは小さく頷いた。
「あれ?おまえはたしか...『マッチ売りの少女』じゃねえか!身体を売る気にはなったか?」
俺はこの質問の意味を理解するのに少々時間がかかった。
「私は、そんなこと、しません...!」
「いい男捕まえたのか?ああ、この目の前の奴か、こんな奴より俺らの方がいいと思うけど?」
逃げなくては、と思ったときにはもう遅かった。
(八人、か。...いや、遠くの二人も合わせて十人か)
俺は覚悟を決めた。
「...彼女は穢れ無き無垢な少女だ。俺の女に手を出すな」
「...カムイ?」
メルが怖くないようにするために、一応忠告した。
「怖いと思ったら目を瞑ってて。すぐに終わらせるから」
ー*ー
私はカムイの言葉の意味が分からなかった。
しかし、私を優しく抱きしめてくれる片腕はとてもたくましかった。
(目を閉じた方が怖いと思うのですが...)
私はそう思ったため、目を開けていた。
「てめえ...誰に向かって口聞いてんだ、ああ⁉」
(...!きます!)
「カム...」
私は言葉を失った。
あれだけ強かった人たちが、カムイの拳を前に地面に転がっていたからだ。
「まずは三人。次は誰だ?」
「カムイ、大丈夫ですか...?」
「しー...」
カムイは人差し指を口の前に当て、静かにするように言った。
しかしその時すでに遅し。
「『カムイ』だと...⁉あの『悪魔殺し』のカムイか...?ひいっ!逃げろー!」
(『悪魔殺し』...?)
「酷いなあ、『悪魔殺し』だなんて異名がついてるなんて...メル、怪我はない?」
いつもののんびりとした口調に、私は安心しきった。
「は、はい...」
「ならよかった」
彼に聞いていなかったことを、聞いてみることにした。
「あの、カムイ。まだ聞いていなかったのですが...カムイは何のお仕事をしているのですか?」
ー**ー
とうとう聞かれてしまった。
『悪魔殺し』の異名までバレてしまった。
(メルに嘘はつきたくない)
「...医者だよ、表向きは」
「お医者様、ですか?表向きはということは...」
「本当は、この国の警察が見捨てたこの地域で自由に捜査できる、特務捜査官なんだ」
「特務捜査官...?」
「表向きは普通の暮らし。でも、夜は特になんだけど...さっきみたいなマフィアを捕まえる仕事なんだ」
メルは不思議そうな顔で俺を見ている。
「それって、つまり...正義の味方みたいなものですか?」
...なんて純粋な答えだろう。
「ははっ、まあ簡単にいうとそういうことだね」
「すごいです、正義の味方...。私にもお手伝いできますか?」
(きみを危険に巻き込むような真似はしたくないんだけど...)
「じゃあメルは、正義の味方の味方になって?」
「...それってどういうことですか?」
「正義の味方のご飯をつくってほしいな、なんて...ごめん!」
俺は何を言っているのだろう。
マフィアの手から、大切な人たちを守れなかったくせに。
「ご飯、作らせてください!これでもお料理は得意なんです!」
(え?)
メルはノリノリだ。
「うん、じゃあお願いします」
「よかった、これで私も役に立てますね...」
「続きは家に帰ってからにしよう。メルのことも聞きたい」
「はい!」
俺は彼女を抱きしめていた手を緩めて、手を絡めた。
「迷子にならないようにしないと...ね?」
「ありがとうございます...」
少し照れたようにしているところが可愛くて。
俺は彼女から目を離せなかった。
私はカムイを見て気づいた。
「あの...先程のカムイが持っていた大量の荷物は...」
「ああ、メルの服のこと?ナタリーに家に配達してくれって頼んだよ」
「でも、ナタリーは女性だし、一人で持つのは...」
「俺はそんな鬼じゃないよ?ナタリーに旦那がいるって話は聞いたかな?」
(そういえば、そんなことを仰っていた気がします)
旦那のベンは配達に行ってるから...という趣旨の話をしていたのを聞いたのを思い出した。
「その旦那様が配達してくださるのですか?」
「うん、そう。まああの二人、結構仲いいから一緒に来るかもしれないね」
「そうなんですか、楽しみです!」
そのあとも二人で他愛ない会話をしていた。
...そんな穏やかな帰り道、事件が起きた。
「...!」
私は思わずカムイのコートを掴んでしまう。
「メル?どうしたの?」
(あの人たちは...)
ー**ー
メルの様子が明らかにおかしい。
小さな身体をカタカタと震わせ、俺の後ろに隠れてしまった。
「メル?」
メルの視線の先にはごろつきがいた。
(知り合いなのか?)
「メル、落ち着いて。俺から離れないでね」
メルは小さく頷いた。
「あれ?おまえはたしか...『マッチ売りの少女』じゃねえか!身体を売る気にはなったか?」
俺はこの質問の意味を理解するのに少々時間がかかった。
「私は、そんなこと、しません...!」
「いい男捕まえたのか?ああ、この目の前の奴か、こんな奴より俺らの方がいいと思うけど?」
逃げなくては、と思ったときにはもう遅かった。
(八人、か。...いや、遠くの二人も合わせて十人か)
俺は覚悟を決めた。
「...彼女は穢れ無き無垢な少女だ。俺の女に手を出すな」
「...カムイ?」
メルが怖くないようにするために、一応忠告した。
「怖いと思ったら目を瞑ってて。すぐに終わらせるから」
ー*ー
私はカムイの言葉の意味が分からなかった。
しかし、私を優しく抱きしめてくれる片腕はとてもたくましかった。
(目を閉じた方が怖いと思うのですが...)
私はそう思ったため、目を開けていた。
「てめえ...誰に向かって口聞いてんだ、ああ⁉」
(...!きます!)
「カム...」
私は言葉を失った。
あれだけ強かった人たちが、カムイの拳を前に地面に転がっていたからだ。
「まずは三人。次は誰だ?」
「カムイ、大丈夫ですか...?」
「しー...」
カムイは人差し指を口の前に当て、静かにするように言った。
しかしその時すでに遅し。
「『カムイ』だと...⁉あの『悪魔殺し』のカムイか...?ひいっ!逃げろー!」
(『悪魔殺し』...?)
「酷いなあ、『悪魔殺し』だなんて異名がついてるなんて...メル、怪我はない?」
いつもののんびりとした口調に、私は安心しきった。
「は、はい...」
「ならよかった」
彼に聞いていなかったことを、聞いてみることにした。
「あの、カムイ。まだ聞いていなかったのですが...カムイは何のお仕事をしているのですか?」
ー**ー
とうとう聞かれてしまった。
『悪魔殺し』の異名までバレてしまった。
(メルに嘘はつきたくない)
「...医者だよ、表向きは」
「お医者様、ですか?表向きはということは...」
「本当は、この国の警察が見捨てたこの地域で自由に捜査できる、特務捜査官なんだ」
「特務捜査官...?」
「表向きは普通の暮らし。でも、夜は特になんだけど...さっきみたいなマフィアを捕まえる仕事なんだ」
メルは不思議そうな顔で俺を見ている。
「それって、つまり...正義の味方みたいなものですか?」
...なんて純粋な答えだろう。
「ははっ、まあ簡単にいうとそういうことだね」
「すごいです、正義の味方...。私にもお手伝いできますか?」
(きみを危険に巻き込むような真似はしたくないんだけど...)
「じゃあメルは、正義の味方の味方になって?」
「...それってどういうことですか?」
「正義の味方のご飯をつくってほしいな、なんて...ごめん!」
俺は何を言っているのだろう。
マフィアの手から、大切な人たちを守れなかったくせに。
「ご飯、作らせてください!これでもお料理は得意なんです!」
(え?)
メルはノリノリだ。
「うん、じゃあお願いします」
「よかった、これで私も役に立てますね...」
「続きは家に帰ってからにしよう。メルのことも聞きたい」
「はい!」
俺は彼女を抱きしめていた手を緩めて、手を絡めた。
「迷子にならないようにしないと...ね?」
「ありがとうございます...」
少し照れたようにしているところが可愛くて。
俺は彼女から目を離せなかった。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
溺愛彼氏は消防士!?
すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。
「別れよう。」
その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。
飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。
「男ならキスの先をは期待させないとな。」
「俺とこの先・・・してみない?」
「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」
私の身は持つの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。
※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる