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Until the day when Christmas comes.
第1話
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ー*ー
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
「なんでマッチが売れてないんだこの役立たずめ!」
おばあさまが死ぬまでは、こんな父ではありませんでした。
《人を妬んではいけないよ。努力しなさい...》
おばあさまが最後に私にそう言いました。
だから、今日も私は...
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「マッチはいりませんか...?」
風がふいていて、とても寒い。
誰かにマッチを買ってもらわないと、家に入ることが出来ない。
(全部売ったら、か...)
この時、マッチを必要とする人は多かったはず。
しかしながら、こんな寒い日にこんな場所にいるのは、だいたいがお金がない人たちばかり...。
(マッチは売れるのでしょうか?)
「学校のクリスマス会、楽しみだね!」
「そうね!」
(学校とは、どんな場所なんでしょうか?)
私はあいにく、学校に行ったことがない。
「あの、マッチを...」
「邪魔よ!」
私は突き飛ばされて転んでしまった。
「この路地裏、本当に貧乏な奴等ばかりなのね」
ゲラゲラと笑われた気がしますが、意味が理解できない。
周りはクリスマスだからかキラキラしていた。
私は心のなかでお願いした。
いい子にします。
ジングルベルもプレゼントも、温かい食事も諦めます。
だから私に...
(大切な居場所と、一緒にいてくれる人をください)
ー**ー
俺はこの日、たまたま路地裏を歩いていた。
「マッチを...」
(マッチ売りか、あとで買いに行こう)
そんな呑気に構えていると、どさっと音がした。
振り返ってみると、誰かが倒れている。
「大丈夫ですか⁉」
...恐らく歳は十五、六の娘だ。
そばに落ちていたのは、大量のマッチの箱だった。
(俺と二つしか変わらないくらいの子が、マッチ売りなんて...)
「居場所を...」
...流れ星にでも願っていたのだろうか?
何度も居場所やら一緒にいてくれる人やら言っていたが、身体がとても熱い。
(高熱か...)
俺はやむを得ず、目的地とは逆の場所に向かう。
ー*ー
「はあ、はあ...」
息が、苦しい。
額に、冷たいものが当たるのを感じた。
「まだだいぶ高いな...」
そんな声が聞こえた気がした。
(私も天国に行くのでしょうか...)
「...少し下がったな」
「ん...」
目を開けると、そこは見たことのない場所だった。
「あ、あの...」
「気がついた?ごめんね、家とか分からないから...俺の家に連れてきちゃった。それで、きみの名前は?」
《いいかい、人を妬んではいけないよ。努力しなさい...分かったね、ーー》
おばあさまに呼ばれていたけれど、思い出せない。
(おばあさまが死んだのはもう何年も前の事だし...それにあの人は、私をおまえと呼んでいました...)
「ごめんなさい、分かりません...」
正直に答えようと思った。
「え、分からないって?」
「ここ数年、呼ばれていなかったので...。歳は十六です」
「...そう。今まで酷い目に遭ってきたんだろうね...。あのマッチ、全部買うよ」
「え...?」
初対面なのに、どうしてそんなにも私を気にかけてくれるのか理解できなかった。
「俺はカムイ。きみは...熱が引いたら、もしかすると名前を思い出せるかもね」
「あの、マッチを買うって...」
「言葉のままの意味だよ。さあ、今は寝た方がいい。...おやすみ」
私はお礼を言えないまま、眠りについた。
ー**ー
暗くてよく見えなかったが、少女の瞳は恐らく...。
そのせいで虐げられてきたのだろうか。
(彼女の体調がよくなったら聞いてみよう)
この日は何も聞かず、俺は彼女のそばで看病しながらいつの間にか眠りに落ちていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
「なんでマッチが売れてないんだこの役立たずめ!」
おばあさまが死ぬまでは、こんな父ではありませんでした。
《人を妬んではいけないよ。努力しなさい...》
おばあさまが最後に私にそう言いました。
だから、今日も私は...
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「マッチはいりませんか...?」
風がふいていて、とても寒い。
誰かにマッチを買ってもらわないと、家に入ることが出来ない。
(全部売ったら、か...)
この時、マッチを必要とする人は多かったはず。
しかしながら、こんな寒い日にこんな場所にいるのは、だいたいがお金がない人たちばかり...。
(マッチは売れるのでしょうか?)
「学校のクリスマス会、楽しみだね!」
「そうね!」
(学校とは、どんな場所なんでしょうか?)
私はあいにく、学校に行ったことがない。
「あの、マッチを...」
「邪魔よ!」
私は突き飛ばされて転んでしまった。
「この路地裏、本当に貧乏な奴等ばかりなのね」
ゲラゲラと笑われた気がしますが、意味が理解できない。
周りはクリスマスだからかキラキラしていた。
私は心のなかでお願いした。
いい子にします。
ジングルベルもプレゼントも、温かい食事も諦めます。
だから私に...
(大切な居場所と、一緒にいてくれる人をください)
ー**ー
俺はこの日、たまたま路地裏を歩いていた。
「マッチを...」
(マッチ売りか、あとで買いに行こう)
そんな呑気に構えていると、どさっと音がした。
振り返ってみると、誰かが倒れている。
「大丈夫ですか⁉」
...恐らく歳は十五、六の娘だ。
そばに落ちていたのは、大量のマッチの箱だった。
(俺と二つしか変わらないくらいの子が、マッチ売りなんて...)
「居場所を...」
...流れ星にでも願っていたのだろうか?
何度も居場所やら一緒にいてくれる人やら言っていたが、身体がとても熱い。
(高熱か...)
俺はやむを得ず、目的地とは逆の場所に向かう。
ー*ー
「はあ、はあ...」
息が、苦しい。
額に、冷たいものが当たるのを感じた。
「まだだいぶ高いな...」
そんな声が聞こえた気がした。
(私も天国に行くのでしょうか...)
「...少し下がったな」
「ん...」
目を開けると、そこは見たことのない場所だった。
「あ、あの...」
「気がついた?ごめんね、家とか分からないから...俺の家に連れてきちゃった。それで、きみの名前は?」
《いいかい、人を妬んではいけないよ。努力しなさい...分かったね、ーー》
おばあさまに呼ばれていたけれど、思い出せない。
(おばあさまが死んだのはもう何年も前の事だし...それにあの人は、私をおまえと呼んでいました...)
「ごめんなさい、分かりません...」
正直に答えようと思った。
「え、分からないって?」
「ここ数年、呼ばれていなかったので...。歳は十六です」
「...そう。今まで酷い目に遭ってきたんだろうね...。あのマッチ、全部買うよ」
「え...?」
初対面なのに、どうしてそんなにも私を気にかけてくれるのか理解できなかった。
「俺はカムイ。きみは...熱が引いたら、もしかすると名前を思い出せるかもね」
「あの、マッチを買うって...」
「言葉のままの意味だよ。さあ、今は寝た方がいい。...おやすみ」
私はお礼を言えないまま、眠りについた。
ー**ー
暗くてよく見えなかったが、少女の瞳は恐らく...。
そのせいで虐げられてきたのだろうか。
(彼女の体調がよくなったら聞いてみよう)
この日は何も聞かず、俺は彼女のそばで看病しながらいつの間にか眠りに落ちていた。
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