クラシオン

黒蝶

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沢山の攻撃

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「…俺は、あいつを護れなかったんです」
「あいつ、ですか?」
「大切な人が…恋人が目を覚ましません。あいつは飛び降りたとされていますが、本当にそうなのか分からないんです。
多分あいつは、当日休んだ俺の代わりに嫌がらせを受けたんだと思います」
…その嫌がらせを大人が黙認していたとなると、事態は大きく動き出す。
「俺、普段から嫌がらせみたいなことを受けていて…。あいつに話したことなんてなかったのに、何故か気づかれたんです」
「本当に大切に想われているのですね」
そうでなければ、相手を助けようとさえ思わないだろう。
「あいつ、普段はのんびりしてる奴ですごく危なっかしいんです。
ちょっと乙女チックなところがあって、誰にでも優しくて…だから好きになりました」
「その恋人さんとはどんな思い出があるんですか?」
「…あなたは気味悪がらないんですね」
「何をですか?」
「気づいているんでしょ?…同性愛だって。だから、恋人さんって呼んでるんですよね?」
やはりそうか。女性相手に乙女チックなんて言葉は使わない。
可能性はあると思っていたが、まさか当たっているとは思わなかった。
「気分を害されたなら申し訳ありません。ですが俺は、恋愛というものをよく理解していません。
…ひとつ言えるのは、好きという気持ちに性別なんて関係ないということです。好きになったら、それはもう恋でしょう?」
そう話しかけると、少年は悔しそうに泣いていた。
「もっと早くあなたに会いたかった…。俺たちが付き合ってるのを知ったあいつらは、ますます嫌がらせをエスカレートさせてきました。
あいつに被害が及ばなければいいと思っていたのに、あいつらに水をかけられた翌日、光熱を出して寝こんだんです。その間にあいつらはあいつに…優希に手を出しました」
【雪と優希】と刺繍が入った恐らく手作りであろうお守りを優しく抱きしめるように腕で包みながら、ぽろぽろと涙が零れていく。
「いつもふたりで屋上で会ってたんです。俺たちは悪いことなんてしてない、だけど休みの日以外は手を繋ぐことさえ難しい…。だから、ふたりだけの秘密の場所だって、いつもそこで会ってました。
夜、警備員さんが血だらけで倒れているあいつを見つけたそうです。優希がどうしてあんな目に遭わされたのか、真実を知りたい…そう頼んだのに、捜査は本人が起きない限りやらないと言われました」
以前にも似たような事情を抱えたお客様がやってきたような気がする。
「その相手というのは、権力者だったんですか?」
「…店長さん、すごいですね。そのとおりです。…俺を攻撃してた奴等のリーダーが街の権力者で、俺みたいな余所者じゃ勝てません」
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