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本当の想い
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「私、色々なものが大嫌いなんです。はじめから間違っていたのか、それともこれでいいのかは分かりません。
できることなら、ずっと笑って誤魔化しておきたいとは思っています」
少女はまた笑ったままそう告げる。
何故そこまでして笑顔を崩さないのか、少し不思議に思った。
飲み物を用意して手渡すと、彼女は一礼してそれを少し飲んでから話を続ける。
「不機嫌そうに見えると、こそこそ言われて鬱陶しいんです。自分たちは何もしないのに...いつも文句ばかり言っている人間が嫌いです」
人間が嫌いだという話をしているはずなのに、彼女はまだ笑顔をはりつけたままだ。
「文句があるなら自分たちでやればいいのに、それは面倒くさいらしいです。
毎日ねちねち言ってくる親も、げたげた笑って誰かを見下す姿勢ばかり見せる生徒たちも嫌いです。
でも、使えない私が1番大嫌いです」
彼女はまた隠している。
というより、自らの感情の表し方が分からなくなってきているのかもしれない。
それにしても...ここまで人間を嫌うということは、相当傷つけられた経験がありそうだ。
「どうして自分のことが嫌いなんですか?」
「成績も運動神経も容姿も、何もかも人より劣っているからです。
相手が見下してくるということはそういうことでしょう?」
それは要するに、自分に対する価値観を見いだせなくなっているということだろうか。
「...誰かと比べずにはいられない、ということですか?」
質問に質問で返すのは失礼なような気もしたが、これ以外の方法なんて分からない。
「みんな同じじゃないといけないって...困っている人の力になりたいって思ったら、誰かの分まで私が頑張るしかないんです。
傷つけられるのが私だけになったら、その先傷つけられるはずだった誰かを助けられるはずでしょ?私には、それくらいの価値しかないから...」
独りを徹底的に追いこみ、心をずたずたに引き裂く。
本当に残念な集団心理だと絶望しそうになる。
『俺はただ、お客様を笑顔にできればそれでいい。
だけど、お客様を本当の笑顔にするのはとても大変なんだ。綺麗事かもしれないけど、みんな違ってみんないいと思いたい』
その考え方は本当にすごいと思う。
だからあの人の考え方を参考にこの場所を護って、もう1度会いたいと考えている。
彼女は周りの人間のことも、彼女自身のこともよく思っていない。
ただひとつ言えるとするならこれだけだ。
「お客様は優しい方です。...ただ、やはりお客様の心の傷を癒してくれる相手が必要だと思います」
できることなら、ずっと笑って誤魔化しておきたいとは思っています」
少女はまた笑ったままそう告げる。
何故そこまでして笑顔を崩さないのか、少し不思議に思った。
飲み物を用意して手渡すと、彼女は一礼してそれを少し飲んでから話を続ける。
「不機嫌そうに見えると、こそこそ言われて鬱陶しいんです。自分たちは何もしないのに...いつも文句ばかり言っている人間が嫌いです」
人間が嫌いだという話をしているはずなのに、彼女はまだ笑顔をはりつけたままだ。
「文句があるなら自分たちでやればいいのに、それは面倒くさいらしいです。
毎日ねちねち言ってくる親も、げたげた笑って誰かを見下す姿勢ばかり見せる生徒たちも嫌いです。
でも、使えない私が1番大嫌いです」
彼女はまた隠している。
というより、自らの感情の表し方が分からなくなってきているのかもしれない。
それにしても...ここまで人間を嫌うということは、相当傷つけられた経験がありそうだ。
「どうして自分のことが嫌いなんですか?」
「成績も運動神経も容姿も、何もかも人より劣っているからです。
相手が見下してくるということはそういうことでしょう?」
それは要するに、自分に対する価値観を見いだせなくなっているということだろうか。
「...誰かと比べずにはいられない、ということですか?」
質問に質問で返すのは失礼なような気もしたが、これ以外の方法なんて分からない。
「みんな同じじゃないといけないって...困っている人の力になりたいって思ったら、誰かの分まで私が頑張るしかないんです。
傷つけられるのが私だけになったら、その先傷つけられるはずだった誰かを助けられるはずでしょ?私には、それくらいの価値しかないから...」
独りを徹底的に追いこみ、心をずたずたに引き裂く。
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だけど、お客様を本当の笑顔にするのはとても大変なんだ。綺麗事かもしれないけど、みんな違ってみんないいと思いたい』
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だからあの人の考え方を参考にこの場所を護って、もう1度会いたいと考えている。
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ただひとつ言えるとするならこれだけだ。
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